07/06/07 12:25:34
●第３回ﾌｧﾝﾀｼﾞｰﾉﾍﾞﾙ大賞の選評 ー>>1の続きー
【荒俣宏】
･…二人で一人の体を共有するという奇怪な分身物語･… ……①
･…私はてっきり、ドイツ統一記念にミュンヘンあたりの幻想作家が書き
上げた海外作品の翻案であろう、と思いこんだほどである。･…･…
ウィーンをはじめ外国の街々の細部描写が堂に入っている。 ……②
…………といって、望ましい受賞作だと主張するつもりもない。
【安野光雅】
…「バルタザールの遍歴」は…･･･････ 地理や歴史の上から言っても、
その時空の構造が現実的に即して、はなはだ巧妙に設定されている。 ･…②
…しかも人間が不可解な二人一役、という一見単純でしかも優れた条件設定…①
なのだから、それならばもっと物語は破格の進展をしてもいいのに、……
【井上ひさし】
どんな物語も、それぞれ、その物語に固有な規則をもっている。この規則定め
こそ作者の特権で、いかなるマカ不思議な規則を設けようとかまわない。･…
･…『バルタザールの遍歴』では、主人公が双生児であること…･････二人二役が
ときに一人二役になり、ときに二人一役になる。………･････ ①
今回の候補作は、この『バルタザールの遍歴』を例外として、いずれも文章に
難があった。雑すぎるのである。･･…･…
【高橋源一郎】
･…一人の体の中に兄弟二人の精神が同居するというアイデア。 ･…①
それを支えている二十世紀初頭のヨーロッパの歴史的背景の丹念な書きこみ。②･
………読みながらどこか読者を拒むような冷たい感覚がうっすら漂っている
ような気がするのは、作者がこの物語を語ることに一生懸命になりすぎて、
余裕がなくなっていたせいなのかもしれない。