06/05/20 17:27:23
お前ら平野を誤解してるぞこれを読め
これはね、まったく核心をついたご忠告だと思います。それには、しかし、深い誤
解があるんだな、やっぱり。
というのは、僕は、彼らに対して、勝手に共感を抱いているんです。そして、まさ
しく自分のこととして、「自己嫌悪的な」アプローチで批判してるんです。だけど
、彼らにとって僕が、依然として、彼らとは異質なエスタブリッシュされた人間で
あって、何だか上からものを言われている感じという受け止め方をしているなら、
それは単純に悲しいことなんです(たとえそうだとしても、怒りの矛先を僕に向ける
のはやっぱりお門違いだと思うけど)。客観的に見ればそうかも知れないけど、彼
らからそうした形で切断されると、僕は帰属する世界がなくなってしまうような気
がする。また十代の頃の「トニオ・クレーゲル」に戻ってしまうというか。
同じことは、文学の世界では何度も起こってるんだと思います。フローベールが
「ボヴァリー夫人」を書いた時、世間は、ああいう芸術至上主義的な、高踏的な
作家が、あんな田舎医者の愚かな妻の話を、しかも「外科医のメスさばきを思わ
せるような」あんな冷徹なやり方で書いてるんだから、さぞかし、シニカルな気
分だったんだろうと想像したと思うけど、ご存じの通り、彼は風俗壊乱罪で訴え
られた法廷で、「ホヴァリー夫人は私だ」と証言している。僕はこれは、本音だ
と思う。