05/02/12 03:03:16
十代の時に読んだ、E・ブロンテの「嵐が丘」
(原題Wuthering Heights)は衝撃的だった。
これを読んだ時のその感動は、私にとって大変大きな物であったけれど、
なにぶんもう随分前の事になるから、
今となっては、その感情的性格を失っており、
その様子を上手く説明できないのが残念でならない。
「嵐が丘」は自然主義的な描写よりも、
精神性を重んじて書かれており、
どちらかといえば抽象性の高い文学作品であるけれども、
作品の中で起こった事の全てが、
実際目の前で繰り広げられた現実のように当時の私に影響を与え、
今でも時々、作品の中のシーンや文章の一端が、
私の頭の中に浮かぶ事があるのだ。
「嵐が丘」の中には強烈な個性を持った登場人物が数人いるが、
中でもやはり、主役のヒースクリフとキャサリン(母)のキャラクターは
時に印象的で、この2人の奇妙で密な関係性こそが、「嵐が丘」という、
当時にしては異端の趣きを持ったこの作品を構成している核なのであるが、
そして、私は当時、そのキャサリンに随分入れ込んでいた。
キャサリンの魅力について語るには、
私の文才では遠く及ばないと思われるが、
私が彼女のどういった面に惹かれたか問われれば、
私は一言、それは彼女の狂気である、と答えるだろう。
私には昔から、女の狂気というものに惹かれる性質があるらしい。
科学と理性が重んじられる現代において、女性の狂気は、
ある種の病名を付けられ、好ましくない物として扱われているけれども、
私には、女が時として見せる狂気の一面は、
幾分尊く、神聖なものに感じられるのである。