【PSU】新ジャンル「パシリ」十六体目at OGAME3
【PSU】新ジャンル「パシリ」十六体目 - 暇つぶし2ch300:名無しオンライン
08/05/03 02:51:41.72 0oLujo+P
合成待ちの間に初めて書いてみたけど、難しいですねぇ…。
駄文失礼しました。強化行ってきます!

301:名無しオンライン
08/05/03 10:29:15.96 XqERfEgY
マイルームでちょっとHな情報誌を読みふける御主人。

御主人「フムフム…夜のブーストGALS。極上テクで貴方も昇天。
    指名ナンバーワンはモガちゃんと…チェック、チェックと」
パシリ「御主人?何を熱心に読んでいるのですか?」
御主人「オーマイガッ!!」
パシリ「ふむむ、ビス子の繰り出すダイナミック技の数々ですか」
御主人「ちょッ!!やめてよ、返してよッ!ちちち、違うからね、
    これ、ボクの本じゃないからね。友達の小林君のだから!
    いらないって言ったのに無理やり押し付けてきたんだから」
パシリ「その割には随分とチェックが入っていますが?」
御主人「それも小林君のだから!」
パシリ「まったく…本で調べてわざわざこんな店に行かなくても、
    この私が御主人の欲求不満位は解消してあげますのに」
御主人「ちょッ?ナニを言っているんですかパシリさん?」
パシリ「か勘違いしないで下さい!過度な欲求不満は時として、
    任務に支障をきたします。PMとして見過ごせないだけです」
御主人「え?ええ?」
パシリ「色々と準備をしてきますから、御主人は退去してください」

カポーン

暫くしてマイルームはすっかりパブリック・バス。
ヨーガ・マット(泡つき)まで敷いてある。芸が細かい。
そしてPMだろうか、ドレッシングルームに人影。
御主人は部屋中央にて正座待機中。もちろん全裸。

御主人「…パシリ奴…でもアイツ実は結構スタイルいいんだよなぁ
    PMに弄ばれるのもオツでイイかもしれないぞ…ヒャホー!」

プッシュー

ドレッグルームのドアが開いて誰か出て来たようだ。
御主人「あ、本日は攻め中心でお願いしま…」

                                                               
                                                               
            .,-.i二iー-、
            |`.|___|"i._|    欲求不満だそうだな、
            { l_>=<ユ^}    いいだろう、その劣情、私に全てぶつけてみろ!
            i i┬┬'iイ
 ビ リ       十┴┴イ} ー  ,イ彡く,-‐' ゙i,
  __,,, :-―,ァ''" i l `ゝr'´ヽj゙ア´ ̄`ゝニ'ィ,〉
,:f^三ヲ,r一''^ニ´、、__ l ! ィ彡,ャァ'" ,,..,,、  /lトィヘ
ノ ニ、゙リ  ,..,,   ``''ヽ,,,  ''"´   ゙''ヾミ,r/:.l:.:し



パシリ「あ、御主人。私はヒューマンの生理に詳しくありませんので、
    ルウ教官に相談したらご紹介して頂きました。バッチりです」
御主人「騙されたぁ!アッ…アァッー!」



302:名無しオンライン
08/05/03 10:33:47.80 XqERfEgY
思いついて書いてみた。ちょっとは反省している。

303:名無しオンライン
08/05/04 11:00:27.89 J3KYZdp+
>>300 >>302
いいよ~いいよ~両方ともGJ!!

さて…オレも夜のGBAに繰り出す準備を……

ん? 440何して(ry………

304:EPX番外編「孤独の理由その1」
08/05/04 14:29:23.64 KLwsOlty
ナレーション:それは、GH412のマスターがまだ、イルミナスに所属していた頃の話だった…

「ハウザー様。質問があるのですが」
「む…何かね」
「プラントで話していた(>115)SEEDを制御する研究は、ここで行っているのですね」
「そうだ。以前にも話したが、私はある事故に巻き込まれ、特殊な抗体を体内に宿す結果となった」
「その抗体を基にした、特殊な抗SEED剤を開発していることは聞きました。それで、質問ですが」

「…まさか、新しいSEEDウィルスもここで研究している、などということはないでしょうね?」
「(ギクッ)な、何を戯けたことを。どこからそのようなデマを聞きつけたのかね」
「いえ、最近とみに増えている、【ヴォビス】と名乗る特務兵…あれ、どう見ても感染者ですよね?」
「うっ…あれは、その…つまり…」

「…つ、つまりあれは、この抗SEED剤の尊い犠牲者というわけだ。自ら志願したと言え、私も胸を痛めているよ」
「そうですか。無下に扱ったりはしていないでしょうね」
「も、もちろんだとも。キャストだからと言って使い捨ての駒になど、し、しておらんとも」
「それを聞いて安心しました。私も無用な暗殺計画など立てずに済んだというものです」
「は、ははは。君も冗談が上手いではないか」

「冗談?一体何の話ですか?」
「…………」
「そうそう。もう一つ気になることが」
「まっ、まだあるのかね」
「Aフォトン研究者のトムレイン博士と話をしましたが…【ガジェット】なるAフォトン爆弾の研究をしているとか」
「あ、あれはだな。いわゆるその…抑止力という奴だ。組織の維持のため止む無く…分かるだろう」

「なるほど。抑止力…それなら量産の必要はありませんよね」
「むっ…それは」
「積極的に作戦に使用するほどの数はいらないだろう、と言っているのです。…違いますか」
「あ、ああ…そうだとも。必要最小限の数だけあればいい。量産など、か、考えもしなかったぞ…ははは」
「さすがハウザー様。ガジェットの実験にかこつけて…などと、算段を練るだけ無駄でしたね」
「じ、実験にかこつけて何をするつもりかね、何を」

「ふう…使えると思って拾ったが、とんだ外付けモラル判断装置だな。いっそ、今度のモトゥブの作戦で…」
「何か言いましたか」
「まっ、まだいたのかね。いいから早く業務に戻りなさい、業務に」

412「マスターはちょっと、鋭いのか鈍いのか分からない天然な所があって、知らずに敵を作っていたりするのよね」
φG「へぇ、そうなんすか…(ところで【マスター】って、変わった名前だな…)」

305:EPX番外編「孤独の理由その2」
08/05/04 14:32:27.77 KLwsOlty
GT「隊長。お呼びですか」
412「ええ。ちょっと、これを見てほしくて…」
GT「メールですか?どれどれ…」

 『私は今、対イルミナス部隊の隊長をやっています♪
  部下もみんないい人で、この間もイルミナスの拠点を一つ潰しちゃいました(≧▽≦)
  総裁にも誉められて、毎日幸せ一杯です(^0^)』
  
GT「…何ですか。この典型的な自慢メールは」
412「以前に知り合った同タイプ…じゃない、友人…みたいなのがいるのだけど。たまには挨拶でもと思って」
GT「たっ、隊長の書いたものですか?これ」
412「こういうの、初めてだから勝手が分からなくて。文法などに問題があったら添削してほしいのだけど」
GT「(文法以前の問題の気がするが…)」

GT「…とりあえず、自分のことを書く前に、先方の近況を尋ねてみるのは如何でしょうか」
412「なるほど、そういうものなのね。分かったわ。『最近どうですか?』…と」

412「…(本当に、どうしているかしらね、あれから。まあ、きっと宜しくやっているのでしょうけど…)」

 想像1:「カン・ウー50%できちゃった☆ご主人様ったら大喜びで、私の額と言わず頬と言わずアツ~いキs」
 想像2:「バレンタインのお返しに何をくれたと思う?種族を越えた愛って本当にあったのね☆私って、しあわs」
 想像3:「(写真同封の上)二人の子です。名前は470でs」
 
412「やめた」
GT「いきなりフテ寝って、隊長…一体何が」
412「あの子に自慢されるのは我慢ならないの」

GT「…(自分の自慢は平気で、他人の自慢は我慢できない。隊長ってもしかして、典型的な…)」

ナレーション: PMはマスターの鏡と言う。かのマスターに友人がいない理由は、ここにあるのかも…

マスター「もう一度言って御覧なさい」

ナレーション: …と思ったのは、気のせいであった。

306:EPX作者
08/05/04 14:36:33.86 KLwsOlty
閑話休題として、こんなものを投下してみました。
たまには短編をと思ったのですが、短くまとめるのは大変なものですね。

登場人物が壊れ気味なのは、目をつむってやってください。

307:名無しオンライン
08/05/05 18:44:23.55 CxoP4zDk
>306
面白かったですよん

ただあの…


その…


× つむる
○ 瞑る(つぶる)

とか全然思ってないんだから!
何よ!本編の続き期待なんてしてないんだから!勘違いしないでよね!
毎日チェックなんてしてないんだから!

308:名無しオンライン
08/05/05 19:01:56.42 Eni/J6Li
>>307
野暮で申し訳ないが、無駄に揉めるのもアレなので…
その手の書き込みをする時は、3回ぐらい辞書を引いた方が失敗が減って良い感じなんだぜ。

309:名無しオンライン
08/05/05 20:21:31.22 Zx2kz0DA
常用語だし日本人なんだし、その辺は世界観や語感でどっち使うか決めていいと思う

310:名無しオンライン
08/05/06 09:25:18.16 p+eLYhlG
>>306
舞台裏のようで楽しかったです。短編も良いですね。

311:名無しオンライン
08/05/06 11:43:57.19 +C7Q6N3A
>308
>309
単にツンデレ文を書きたかっただけじゃないか?w


312:名無しオンライン
08/05/07 03:00:37.15 XgGjfa21
マスターの様子がおかしくなったのは最近の事でした。
「よくわからないんだ」
「世界に出ても誰もいない。広い世界にたった一人放り込まれたみたいなんだ」
「たまに人に会っても何も言わないんだ。機械を相手にしてるみたいで辛いよ」
マスター…そんな寂しい事を言わないでください。
あなたには私が居ます。私では…駄目ですか?

マスターは見るからに衰弱していました。
最近では日がな一日天井をぼーっと見上げて言葉にならない言葉を吐き出しています。
「出し惜しみ…同じ…マゾい…」
その声はとても小さくて、もし神様が居たとしても聞き取る事は出来ないでしょう。
親しかった友人たちに連絡を取って励まして貰おうとしましたが誰一人として捕まりません。
皆様は何処へ行ってしまわれたのでしょうか?
本当にマスターは一人でこの世界にとり残されてしまったのでしょうか?

薄暗い曇り空の日、その日も私は神様に祈ります。
マスターが元気になってくれますように、と。
マシーナリーの願いなんて聞き届けてくれるのかはわかりませんが、何もしないよりはましだと思ったのです。

「俺、気付いたんだ。もうこの世界には何の未練も無い事に」
突然そんな言葉を口にしてマスターはよろよろと扉に向かいます。
嫌な予感がした私は思わずその背中に抱きつきます。
「ごめんな」
こちらを振り向いて言ったその言葉だけで十分でした。
呆然とする私を置いてマスターはそのまま扉から出ていってしまいます。
気付けば私は涙を流して、開いたままの扉を見つめていました。

その日からマスターは帰って来ません。
何処に行ったのかもわかりません。
私の事ももう覚えていないでしょう。
それでも私はこの一言を胸に仕舞って待っています。

「おかえりなさい」

313:名無しオンライン
08/05/07 07:34:43.77 6EQfVOjO
直近三つのSS見てたら
「ヴォビスはハウザーサマをマスターだと思い込まされてる元パシリ。
キャラが消えるほどマイルームを留守にすると、ハウザーサマが空き巣に入ってパシリを浚って、
無理矢理特殊強化デバイス食わせた上にSEEDウィルス注入してヴォビスにしちゃう。」

とかいう妄想が沸いた

314:名無しオンライン
08/05/07 19:34:40.91 8nAuHQYz
パシリが全く出てこないパシリSS



ある男の部屋に、険しい顔をしたニューマンの女性がやってきた。
「ちょっといい? 今日のお昼頃に買い物に来た440はいないかしら」
「ええ、来ましたよ。カティニウムを3キロほど売ってくれと」
「そうよ、そのカティニウムだけど、さっきセットしようとしたら2キロしかなかったわ」
「なんですって?」
「おたくの装置、故障してるんじゃないの? それとも重いのをいいことに、量をごまかしたりしてないでしょうね!?」
男は別の材料を秤にかけてみたが、間違った値が表示されることはなかった。
また、ガーディアンズ本部に送信される販売の履歴にも「3キロ」と記録されており、詐称があったとは考えにくい。

しばし考えて、男は言った。
「お客様、マイルームにケイソクキを設置することをおすすめします」

315:名無しオンライン
08/05/07 22:21:14.84 auqqcAhn
>>312
ちょっと悲しい短編。再開のありますように。
>>314
犯人は100パーセントわかります。ちょっと推理モノぽくて面白いですね。

316:名無しオンライン
08/05/07 22:47:28.82 FUaF1A8R
>>315
悲しいかな恐らく彼は今頃元気に肉を焼いている事でしょう…。
全ては神様次第だと思います。
…そんな私も最近はメモ帳と睨めっこばかりですけど。

317:EPX 8章「暗雲 1/8」
08/05/09 19:41:59.52 VMlti45O
「隊長って、すごい武器を持ってますよね。何で、使わないんすか?」
ガーディアンズ本部のリフレッシュルームでくつろいでいるところに、fFが話しかけてきた。

あれ以来、私はすっかり第2小隊の部下達と打ち解けていた。
部下達と共に任務も順調にこなし、次々とイルミナスの拠点を制圧する一方で、
マスターの行方は杳として知れないままだった。

そんな私が、マスターと私を唯一結ぶ、「Dear My Partner」の文字の刻まれた武器。
ダガーオブセラフィをぼんやりと眺めていた時のことだった。

「俺には高ランクの双小剣は繊細すぎて上手く扱えないけど、隊長なら問題ないでしょう?
一度見てみたいんすよねえ。颯爽と赤い羽を舞い散らす、隊長の勇姿を」
「ご希望に添えたいのは山々だけど、そういうわけにも行かないのよね」
「何故っすか」
「約束なの。…というより、私が勝手に誓っていることなんだけど」

fFはさらに興味をひかれた様子だったが、あえてそれ以上は踏み込んでこなかった。
その時の私の表情を見て、何か感じるところがあったのかも知れない。

私が、この双小剣の封印を解くとき。
それは、私がマスターを取り戻すための決戦の時だと、決めていたのだ。
別に、通常の任務に使っても差し支えはない。
だが、他の目的でこの武器を振るう度に。
柄に刻んだ文字の重みが、減っていくような気がしてならなかったのだ。

「それにしても、どうやって手に入れたんで?リエタナカ工房の作品はそれ自体幻と言われているのに、
その中でも理論上最高のフォトンリアクターを内臓する逸品なんて」
…自分が作ったとはさすがに言えなかった。

「そういや隊長は、PMを連れてませんね。まあ、必ずしも連れてく必要はないかも知れないっすけど。
第1小隊の隊長なんかは、いつも連れまわしてましたよね」
…自分がそのPMだったとも、さすがに言えなかった。

苦笑いしながら、どうやって説明をつけようか考える。
そんなとき、不意に通信機が鳴った。
『412か。至急、見てもらいたいものがある。執務室まで来てくれ』
ガーディアンズ総裁、ライア・マルチネスからの呼び出しだった。

318:EPX 8章「暗雲 2/8」
08/05/09 19:43:00.08 VMlti45O
執務室で私を迎えたのは、全部で3人。
ライア総裁はもちろんその一人。
他には、ライア総裁の秘書的な存在とも言われている、クランプ青年。
そして、かつての私の友人、GH-440。

440の顔を見たとき、私は自然表情を曇らせる。
あの時以来の再会だが、沸き起こるのは胸を刺す痛ましい思いだけだった。

「今から見せるのは、440の記録した映像を再現したものだ。
ある理由で、お前にも見せたほうがいいだろうと判断した」
相変わらずの率直な切り出し方だった。

「実は、第1小隊の連中はちょっと…情けない状態になっててね。
命に別状はないんだが、精神的なものからか、全員寝込んじまってるのさ」
そういえば、ある時期を境にぱったりと、第1小隊の面々とは顔を合わせなくなっていた。
心底見たくない顔だったので何も文句はなかったが、その原因に興味がないわけではない。

「で、その時現場にいた、440から色々聞こうと思ったんだが、どうも要領を得なくてね。
仕方がないから、内蔵されている映像記録を再現するため、今まで編集作業をしていたのさ」

PMの見たもの、聞いたもの。それら全ては、PMに内臓されているデータベースに蓄積されている。
とはいっても、それを映像化するのはかなりの手間なので、そうそう気軽には行われない。
私がかつてプラントから再起動を果たした時も、口頭による尋問だけで済まされていた。
440の場合は、それで総裁を納得させることはできなかったということなのだろうか。

「目を通した総裁は、ある可能性を示唆しました。
彼ら第1小隊に手痛いダメージを負わせた犯人は、貴方に関係のある人物ではないかと。
そこで、貴方に確認をとっていただくことになりました」

私に関係のある人物?
にわかに高まる私の緊張をよそに、ライア総裁が中央のスクリーンに目を向けた。

「さあ、始めるよ…ある意味見応えのある代物だ、アタシももう一度見せてもらう」

319:EPX 8章「暗雲 3/8」
08/05/09 19:45:42.91 VMlti45O
「…間違いありません。これは…この人は、私のマスターです」
映像を見ていた私は、ほどなく断言した。

映されている人物の様相は、大分私の知っているマスターと違っていた。
随分と痩せているし、あのような黒づくめのボディースーツなどは余り好まない筈だった。

だが、ビーストfFに対し巧みにフォイエ等の単体用テクニックを撃ちながら懐に呼びこみ、
間合いに入ったビーストfFが得意げに槍を振ろうとした矢先の動作は、私はよく見知っている。

瞬時に左、右へとステップしながら小剣で斬りつけ、
致命傷を避けようと防具が放つフォトンの干渉波が彼の身体を宙に浮かせる。
それを追ってすかさず跳躍し、そのまま空中で渾身の回転切りを浴びせる。
小剣の上級技、「瞬舞昇連斬」…マスターの得意技の一つだった。

もちろん、その技一つでマスターと決め付けるのは早かったが、
その後に流される映像の一つ一つがマスターの姿を否応なく思い出させていた。

「…どうでもいいが、何でこいつらは一人ずつでかかってるんだ?」
ライア総裁が腕組みをしながら、誰にともなく口を開く。
クランプ青年が、それを受けて自分なりの考えを口にする。

「様子から判断するに、この女性に何か挑発でもされたのでしょうか。
適正種族が特化職を選んだ場合、多くは非常に自分の能力に自信を持っていますから」
「なるほど、複合職のヒューマン如き自分一人で十分と、全員思っちまったわけだ。
だから、簡単に挑発にも乗ってしまった」

私も、同じようなことを考えていた。
確かに私達WTは「守ること」「生き残ること」には長けているが、火力の点で著しく劣る。
こと真っ向からの勝負となると特化職に勝てるか、はなはだ自信がない。

しかし、この映像に流されているマスターの戦い方を見るだに、
それが大きな過ちであることを思い知らされていく。
また、追い求めていたマスターの懐かしい勇姿に、しばらく我を忘れて見入っていた。

320:EPX 8章「暗雲 4/8」
08/05/09 19:46:29.71 VMlti45O
ビーストfFを相手には、彼が苦手とする法撃系の攻撃を主軸に、中距離から遠距離での戦いを展開する。
近づかれた際には、すぐに瞬舞昇連斬で吹き飛ばして間合いを取り、また法撃での攻撃を繰り返す。
もちろんマスターも、接近される度に何度となく槍による攻撃で手傷を負うが、
打たれ強さに長けているマスターが致命傷を負うことはなく、しかもすぐにテクニックで回復してしまう。

持久戦を強いられていることで、明らかにビーストfFは苛立っている様子だった。
ビーストで、しかもfFである彼の圧倒的な攻撃力を以って、持久戦に持ち込まれることはそうそうない。
それだけに、彼には経験の少ない持久戦が、体力はともかく精神を確実に疲弊させている様子だった。

『くそっ、倒れろよコイツ…この俺が攻撃してるんだぞ…何で倒れねえんだよぉっ』
たまりかねて怒声をあげ、大振りになったfFの槍をかいくぐるマスター。
今度の攻撃は小剣での吹き飛ばしではなかった。

『貴方…以前自分で言ったでしょう?WTはね…』
黒煙のようなフォトン光を発する片手杖を振りかざし、真っ直ぐにビーストfFに向けて突きつける。
『…【倒せない】けど、【倒れない】のよ』

杖の先から噴出する、3筋の白い衝撃波が蛇のように地を這いながらビーストfFを直撃する。
衝撃波の一つ一つが彼の顔を苦痛に歪ませるが、それだけでは済ませなかった。
土属性のテクニック「ノスディーガ」は、彼の神経系統の伝達を阻害し、全身の自由を奪っていたのだ。

『今後、必ず短期決戦で済ませられない敵は出てくる。その時に備えて持久戦にも慣れておくことね』
マスターが指先で彼の額を押すと、歯軋りした顔のままその場で仰向けにひっくり返ってしまった。

「やれやれ、敵にアドバイスされるなんざ、情けないったらありゃしないよ」
ライア総裁がため息をつきながら肩をすくめる。
「仕方ありませんね、ビーストの弱点である法撃で攻められた上、相手だけ回復する状況で持久戦となれば、
彼が焦るのも分かります」

「…対して向こうには弱点なしか。その上打たれ強く、回復まであり、しかも多彩な攻撃で弱点をついてくる。
…敵に回すと、WTってのはこんなにも厄介なものなんだね」

321:EPX 8章「暗雲 5/8」
08/05/09 19:47:15.59 VMlti45O
続いて進み出たのは、ニューマンfT。
すぐに勝負をつけてやると意気込んで単体用のテクニック「フォイエ」を連打するものの、
マスターはサイドステップでかわしながら、左手に持つ投刃、俗に言う「カード」で対抗する。
フォイエは直線の軌道であり回避しやすいのに対し、カードは着弾は遅いものの高い誘導性を誇り、
相手が多少軸をずらそうがお構いなしに命中し、彼女の体力を削っていく。

「…相手がfTなら、近づけば勝ちなんじゃないのか?何でちまちまと射撃で応戦するんだか…」
その答えは、私にはすぐに分かる。
「先ほどの、ビーストfFにやったことをそのままやられる危険を考慮してのことかと。
ノスディーガは近距離だとほぼ回避不能ですが、遠距離ならいくらでも誘導を振り切る余裕があります」
「さすがにWTのデータを投入してるだけのことはあるね。それにしても…したたかな奴だよ、全く」

マスターの攻撃手段は、カードだけではなかった。
相手の法撃の隙を見て、土属性の単体テクニック「ディーガ」を行使していた。
ニューマンfTの高い精神力にはさして効果はないが、彼女にはそれが酷く挑発的な行為に見えたようだった。

『ワロテクのくせして生意気にテクなんか!器用ぶってないで、おとなしく劣化fFでもやってりゃ…いい…』
言いかけていたfTの動きが止まる。
先ほどまで矢継ぎ早に行われていたテクニックの詠唱が、ぴたりと止んでしまっていた。

『…その"ワロテク"の法撃でも、貴女を黙らせる効果はあったようね』
かつて私がヴァンダ相手に苦渋をなめた、あの精神干渉をニューマンfTも受けてしまった様子だった。

『さあ、その効果が切れるまで、私が近づくのをどうやって防ぐのかしら?可愛らしいお嬢さん』
マスターが言うまでもなく、この時点で勝負ありだった。

恐怖に顔を引きつらせながら、それでも弓を取り出し追い返そうとするが、
元より攻撃力のないfTの攻撃ではマスターに然程の傷もつけられず、接近を許してしまう。

『職業に上下の差はなく、戦い方もそれぞれあることを知りなさい。
味方を知るのはテクターにとって重要…そのためにはまず、味方を尊ぶことから始めないと、ね』
背を向けて逃げ出そうとするfTの後頭部に、小剣の柄尻を強く打ちつける。
ひとたまりもなく、彼女は気を失ってうつ伏せに倒れる。

「こいつといい、fFといい…油断しなければいくらでも戦いようがあるとは思うんだけどね」
ガーディアンが連敗を喫する様を見るのは面白くないらしく、総裁はぎりっと爪を噛んでいた。

油断もあるが、マスターがWTとしての戦いを知り尽くしているというのも大きいと思われた。
私が彼らとやっても、このように圧倒できる自信はない。
特化職の得意分野に持ち込まれては、やはり勝ち目はないのだ。

322:EPX 8章「暗雲 6/8」
08/05/09 19:48:13.30 VMlti45O
最後のキャストfGは、ライフルでの連続射撃によりマスターを寄せ付けないでいた。
fTの法撃とは比べ物にならない回転に、マスターも攻撃の隙が見出せない様子だった。

そのうちマスターは手近にある柱に身を隠し、ライフルの弾から身を守ることを選択した。
これなら確かにライフルは当たらないが、マスターにも柱の影からでは攻撃手段はない…かと思われた。

しばしの沈黙の後、柱の影から黄色く発光する球状の物体が飛び出した。
最初はあさっての方向に進んでいたが、やがて急に角度を変えて真っ直ぐこちらに向かってくる。
危険を感じたfGが身をかわすが、黄色の球体はまるで生き物のようにfGを確実に追尾する。
そして、目も眩むような光と共にそれは破裂し、周囲に稲光を撒き散らす。

「…ノス・ゾンデ…そんな手があったなんて…」
「アタシはテクニックには詳しくないけど、柱の影からでも自動で敵を追尾する代物があったみたいだね。
全く…WTってのは、何をしてくるか分かったもんじゃないね」

キャストfGは腕を震わせてライフルを取り落としてしまう。
雷属性の法撃により感電し、武器を持っていることができなくなってしまったのだ。

だが、キャストfGはこれでは引き下がらなかった。
両手を頭上に掲げ、上空から呼び出したものを見て、私は目をむいた。

無数に降り注ぐ光の粒子。周囲に存在するもの全てを氷塊に閉じ込める、強力無比なSUVウェポン。
「パラディ・カタラクト」…ヒト一人に対して使用する規模のものではなかった。

『…思い知ったか、劣等種。貴様等には逆立ちしても真似できまい』
私が聞いたこともないような感情的な語調。
してやられたのが余程腹に据えかねたのか、普段はかろうじて抑えていた差別意識を露骨に表す。
だが、驚くのはこれからだった。

視界を覆い隠す光の奔流が止むと、そこに見えたのはマスターの氷像ではなく、
床に開かれた小型のナノトランスゲートだった。
身を乗り出す彼の背後に同様の白い円形状のゲートが開かれたかと思うと、そこから黒い影が飛び出してきた。

「連斬潜昇牙…ここでこれを使ってくるとはね」
ライア総裁が唸りながらスクリーンを睨む。

『困ったらSUVに頼るのは貴方達キャストの悪い癖…それなしでも危機を乗り切る、精神的な強さは必要よ』
背部からの強力な斬撃に力無く崩れ伏すfG。
双鋼爪を手に、マスターは軽やかな動作で着地しながら背中越しに声をかけた。

323:EPX 8章「暗雲 7/8」
08/05/09 19:49:07.79 VMlti45O
『使えない…奴め…何故、フォローに入らない…そんなに…再調整が好きか…』
かろうじて息の残っているfGが、スクリーンのこちら側に向かって毒づいた。

「何を言ってんだか。命令がなきゃ何もしないようにPMを育てたのは自分だろうに」
ライア総裁が傍らに立つ440を振り返る。
人形のようにただ突っ立っている440を見ると、またもあの時のことが頭をよぎってしまう。

マスターがスクリーンのこちら側に歩み寄ってきた。
こちらに向かって手を伸ばす様子から、どうやら440の頭を撫でている様子だった。

『かわいそうに…貴女に罪はないのにね』

黒づくめの姿からかろうじて覗いている両の瞳は、まぎれもなくかつてのマスターのものだった。
懐かしさにかられて涙が溢れそうになるが、腹にぐっと力を込めてそれを抑える。

そんなマスターの様子が一変した。
瞳孔を開き、両手で肩を押さえ、小刻みに震えながらその場に膝をつく。
苦しげな呻き声をあげながら、懐から小さなケースを取り出し、震える手で中の錠剤を口の中に押し込む。
しばらく荒い息遣いのままうずくまっていたが、やがて落ち着いたのか、2,3回大きく深呼吸をする。

『段々…周期が近づいて…予想はしていたけど…』
にわかにスクリーン上に映っている部屋の外から喧騒が近づいてくる。
マスターは弾かれたように立ち上がり、素早くその場を離れていった。

「…以上だ。この後、部屋に駆け込んできたルツと近衛兵によって、第1小隊とPMは拘束された。
もっとも、イーサンとアンドウ・ユウの活躍で教団との和解が成り、こいつらは返してもらったけどね」
スクリーンに映された画面を消すと、ライア総裁はこちらに顔を向けた。
「…で、もう一度聞くが。あの黒づくめの女は、確かにお前の元マスターに違いないか?」
問いかけに、私は無言でうなづいて返事とした。

「…そうか」
ライア総裁は、しばらく腕組みして考え込んでいたが、やがてこう切り出した。
私にとって予想外の、衝撃的な提案だった。

「なあ、412。
ここらであの女のことは忘れて、改めて正式なガーディアンとして、新しい人生を歩む気はないか」

324:EPX 8章「暗雲 8/8」
08/05/09 19:50:05.57 VMlti45O
「理由を、これから話そう」
しばらく思考機能の停止していた私の耳に、ライア総裁の声が響く。

「まず、見たところあの女は既にイルミナスを抜けている。
それでいてガーディアンズに戻ってこない所を見ると、説得は難しいだろう…というのが一点。
そして、もう一点が大事なんだが…」

ライア総裁が目で合図をすると、クランプ青年が小さくうなづいて懐から何かを取り出した。
透明なビニールに入っているのは、小さな錠剤だった。

「現場で教団が押収したものを、後に和解した際譲られたものです。
状況から、あの女性が最後に服用したものと同一の物であると考えられます」
「こいつをマヤに見せたところ、嫌な事実が分かってね。こいつ、一体何の薬だと思う?」

情報が足りなさ過ぎて、漠然とした推測程度しか導き出せない。
一呼吸おいて総裁が答えたものは、予想の遥か斜め上をいっていた。

「こいつは、ごく初期のノウハウで作られた、抗SEED剤…SEEDフォーム化を抑える薬、ということらしい」

耳に入った言葉の意味を、頭の中で整理する。
だが、途中でそれは、強い感情の奔流に押し流されていた。
まさか、の段階で、完全に頭がそれ以上考えることを拒否していた。

信じられない、信じたくない、信じてたまるものか。
足が震え、動悸が高鳴り、視界が揺れる。ただただ心の中で否定の言葉を繰り返す。

「…お前の、マスターは…」
嫌だ。聞きたくない。言わないで。
ひたすら心の中で拒絶するも、ライア総裁は無情にも決定的な言葉を突き刺した。

「…お前のマスターは、SEEDウィルスに、感染し」
ありったけの絶叫で言葉を遮る。
自分の悲鳴で総裁の言葉をかき消せば、突きつけられた事実を洗い流せると思わんばかりに。
耳を塞ぎ、目を固く閉じ、狂ったように頭を振りながら、声を限りに叫ぶ。

割れんばかりに痛む頭の中に、うっすらと考えが浮かぶ。
私の任務は、最悪の形で終わろうとしている、と。

325:EPX作者
08/05/09 19:57:28.03 VMlti45O
お待たせしました。EPX第3部完結編、8章の投下です。
続きは2,3日後になると思います。

なお、今回は2点ばかり補足をさせていただきます。

・本編に出てきた双鋼爪のスキル「レンザンセンショウガ」ですが、
 ゲーム上ではこのスキルにはいわゆる「無敵時間」は一切存在しません。
 従って、潜行中にパラディ・カタラクトをやり過ごすことも本来できない(はず)です。
 本ストーリーのみにおけるアレンジとお考えください。

・これは一部から通して決めていた設定ですが、
 本ストーリー上で薬は原則存在しません。
 本編で繰り広げられた「特化職VS複合職」も、その前提において語られているものです。
 決して、特化職の方の地位を不当に貶めるものではないことをご了承ください。

326:名無しオンライン
08/05/09 22:46:23.00 2jr0s2O1
>>325
楽しませて貰いました。

だけど、いくらなんでもこれで「特化職そんなに弱くない!」とか喚きだす奴はいないだろー

327:名無しオンライン
08/05/10 03:23:02.01 gUqYURDd
>305

412 「ご主人様~、メールが来てますよ」
主人「オウ、ご苦労…って、これお前宛だぞ?」
412 「え? …本当だ、私宛ですね。
    誰だろう、わざわざご主人様じゃなくて私にメールなんて」

 『私は今、対イルミナス部隊の隊長をやっています♪
  部下もみんないい人で、この間もイルミナスの拠点を一つ潰しちゃいました(≧▽≦)
  総裁にも誉められて、毎日幸せ一杯です(^0^)』

412 「…ご、ご主人様、これは一体?」
主人「俺に聞くな、分かるわけないだろ。
    お前は何時の間にこんな痛々しいお友達を作ったのだ、ええ?」
412 「そ、そんなぁ~、こんな人は趣味じゃないですよぅ。
    差出人の第2小隊隊長なんて、会った事もありませんし」
主人「見知らぬメールは捨てる! そう教えただろ」
412 「そ、そうですね! 背筋が凍るから消しちゃいましょう!」



EX412「返事が来ない…何か間違ってたのかしら?」
G T 「………(隊長、悪いですけど返事が来る方が色々と大問題ですよ!)」

328:名無しオンライン
08/05/10 04:06:03.66 LokZRxu0
<GH-490>
ある軍用データから復元された犬型マシナリー。ご主人様といつでも一緒。
戦闘 : 情熱派


某日マイルーム

「ご主人様、何ですかそれは?」
「ん、あぁついこないだ出たばっかりの新デバイスらしい。珍しそうだから交換してきたんだが…」
「490と言うとあの噂のマスコット系のタイプですね、ちょっと試してみていいですか?」
「いやちょっと考えたい。 なんか交換条件のアイテムが妙だったのが気がかりでな…、それにいやに高い戦闘値を要求してるし」

交換アイテムは通称マガシパーツと呼ばれる珍品中の珍品、それを丸々マガシ一体分と言う交換条件だった。
そもそもこんな怪しいパーツと交換してもらえるという時点で怪しさの臨界点をブッチギリで超越しているわけだがまあそれについては不問としておく。
それよりも気になるのが490の色だ、あの色は何処かで・・・。

「あのー…ご主人様?」
「あ、あぁすまないちょっと考え事をしていた。 でもよくよく考えたら戦闘値が足りないから使えないんだな、残念だが」
「大丈夫ですよきっと、ちょっとくらい足りてなくても何とかなります! だから使ってみていいですか?」
「んーまあそうだな、ちょっとくらいなら大丈夫か…」
「それじゃいただきますっ! もぎもぎ…うっ…」

一口齧ったところでデバイスを取り落とし呻き苦しむパシリ。
デバイスは何度か使った事があったがこんな事は一度もあった事が無いし、条件に合わないデバイスだからといってここまで苦しむはずが…。

「だ、大丈夫か!?」
「うぅ…あぁっ!」
「うわっ、なんだ!?」

パシリの体から放たれるまばゆい光に思わず目を閉じる。 この光に見覚えはあった、パシリが姿を変化させる時の光に似ている。
やがて光が収まったのを感じると恐る恐る目を開いた。 すると俺の目の前には…。

「ぬぅぅぅ、ありがとうございますご主人様ぁぁぁ。 おかげでぇ成長する事がぁ出来ました」(CV.若本)
「ぬおっ! だ、だれだお前!」
「GHィ-490でぇございます」(CV.若本)

赤くゴツイ体をして野太いとかいう次元を遥かに凌駕する特長のある声を放つ自称490.
いやどう見てもマガシです本当に(ry

「ハッ、って事はあのデバイスが原因でパシリがこんな姿になってしまったって事か」
「左様でぇございます」(CV.若本)
「なんてこった…性格が変わったどころか原型を全く留めてないぞ…。 元に戻そうにも手元にはデバイスも無ければ金も無い…」
「おやぁ? ご主人様はメセタが必要なご様子、ならばぁ外へ狩りだしと行きましょうぞぉ」(CV.若本)
「え、ちょっ! その格好で外に出る気か!? ってか捕まる、言動的にも見た目的にも!」

頭を抱える俺の腕を自称パシリが強引に引っ掴み外へと連れ出されていく。
道中ほとんど人に会わなかったのが唯一の救いだったかもしれない、俺は強引に先導するパシリと通報される恐怖に挟まれながらミッションへと進んでいくのであった。


329:名無しオンライン
08/05/10 04:06:41.22 LokZRxu0

「ぬぅぅぅん、どぉぉぉだぁぁぁぁ!」(CV.若本)
「お、おー…」

流石はマガシの姿をしているだけの事はあった、敵がみるみる内に塵と化していく光景はまさに嵐の如く。
手にした二本のセイバーを縦横無尽に振り回し、暴走列車さながらの勢いで突き進んでいく。

「ご主人様ぁ、突っ込みぃますので援護ぉをお願いします」(CV.若本)
「いやこの強さで援護いらないだろ…」
「ぬぅははぁぁ! 勝っても負けても死ぬ、無意味なゲームの始まりだぁぁぁ!!」(CV.若本)
「ちょ、死ぬのかよ! それじゃ意味無いだろ!」

とまあこんなノリを続けつつ、俺はただ ( ゚д゚)ポカーン としているのが精一杯だった。

(以下CV.若本)
「これがぁパートナァァの実力よぉっ」
「ご主人様ぁ何処へ行かれましたかなぁ…?」
「サンドゥイッチ攻撃ぃぃぃ」
「私の方ぁがかわいいですからぁ!」

「結局何もしないまま最後まで来てしまった…」
「ごぉ主人様との協力がぁあってこそでぇございます」(CV.若本)
「いやまあ何でもいいや…おっと、最後の敵が来たみたいだぞ」

文字通りそのエリアの最後を飾る量の敵が一斉に姿を現した、そろそろ俺の出番だと前に出ようとしたところを490が制する。

「ここはぁ私めにお任せ下さい」(CV.若本)

そう言って両手を天高く掲げる490、一部のキャストやパシリのみが使えるSUVウェポンシステム。
上空に巨大な魔方陣のような物が描かれ徐々に広がっていく、徐々に…徐々に…

「…ってちょっとでか過ぎないか? 一体何を転送しようと…」
「ぬははははぁぁ!! 貴様らの死へのカウントダウンだぁ!!」(CV.若本)
「だから一体何を呼び出そうと…」

そこまで言いかけて上空の魔方陣から姿を現しつつあるそれに気が付いた。
天を覆うほどの巨大な魔方陣から出現しつつあったもの、それはイルミナスの手によって一度パルムの地に落とされ修復作業が進んでいたコロニーそのものだった。

「コロニーの軌道を変化させたのだぁぁ、もはや貴様らに抗う術などなぁい!!」(CV.若本)
「ま、待て! そんなもん落としたら俺達だってひとたまりも無いぞ!」
「ぬぅぅん、この運命には逆らえぬのだ諦めるがいいぃぃ!!」(CV.若本)
「だからそれだと意味が無いだろ、ってあぁもう! 畜生いい加減目を覚ませ!」

ショック療法、これ以外の手はもう思いつかない。 手にしていた武器で490の後頭部を思いっきり殴打。
すると同時にまばゆい光が放たれ、パシリはいつも見るパシリの姿に戻っていった。

「ぶ、ぶるぁっ!? あ、あれ私は今まで何を…?」
「正気に戻ったかパシリ! あぁでもまだアレが止まってない!」
「な、なんですかあれは! ど、どうすればいいんですかご主人様ぁ!?」
「SUVの事は俺に聞かれても良くわからん! と、とにかく魔方陣の方へ押し返すんだ!」
「は、はいぃぃぃ!!」


330:名無しオンライン
08/05/10 04:06:56.72 LokZRxu0
・・・

『ハーイ! グラールチャンネル5、ヘッドラインニュース! 今日のニュースをピーックアップ!
 本日未明Gコロニーがまたも落下の危機に見舞われました。 犯人はコロニーにハッキングをかけSUVウェポンシステムでコロニーを大地に落とそうとしていた模様ですが未遂に終わりました。
 ガーディアンズではイルミナス工作員による犯行とみて捜査を続けています。 では続いて次のニュースです…』

「…終わったな…」
「…終わりましたね…」
「…そろそろ帰るか…」
「…帰りましょうか…」

この一件で二人がデバイス恐怖症になったのはいうまでも無い事である。

進化デバイスは用法用量を守って正しくお使い下さい。

331:名無しオンライン
08/05/10 04:10:52.55 LokZRxu0
490の素材を見て思いついて書き殴った、後悔はしていない

なんでこいつマガシパーツ使うんだ・・・w

332:1/5
08/05/10 04:34:31.64 gUqYURDd
私はGH-412、とあるガーディアンのパートナーマシナリーをしています。
皆さんもご存知の通り、新型マシナリーGH490の配布が始まりました!
ムー○ンと言うには微妙、とはいえ他に例え様がない未知のタイプです。

主人「で、何故にマガシで作るわけ?」
412 「…ナレーションに突っ込まないでくださいよぅ」

そう、GH-490は量産型マガシのパーツと交換なのです。
マガシの生首、胴体、手足をメルトンさんに差し出すと、進化デバイスがもらえます。
…一体、あんな物を受け取って何をしているんでしょう?
まさか、得意のフライパンでじっくりコトコト煮込んで元を作っている!?
ああ、嫌な事を考えたら今後パルム西に行けなくなっちゃいます。

主人「それより、生首って表現はどうかと」
412 「た、確かに生々しいですけどナレーションに突っ込まないでくださいー」

そんなわけで、私達は早速GH-490にしたという素早いお知り合いの部屋に向っています。
GH-490、パートナーマガシリーは一体どんな性格なのでしょう…?

主人「その呼び方でも結局パシリなんだな」
412 「…それより呼び方に突っ込まないんですか?」

333:2/5
08/05/10 04:35:19.02 gUqYURDd
主人「頼もーう」
412 「こんにち…!?」
鉄子「いらっしゃーい。さ、こっちにいるよー」

ご主人様のお知り合いはキャストの女性でした。
ルカラル・トルソで自慢の胸をどーんと強調している、大人っぽい人…。

412 「(ご主人様、女性のお方なんて聞いてませんよ!?)」
主人「(どうでもいいだろ、GH-490の方が本命なんだ)」
412 「(で、でも…! あんまりじろじろ見ちゃダメです!)」
鉄子「お待たせー、これがGH-490だよ!」

鉄子さんが手を差し出した先には、赤の塊がどんと立っていました。
カバというにはあまりにスマート…ムー○ンというには足がちょっと長すぎる…。
何とも言いようのないモノが、そこにいました。

主人「これはまた強烈なインパクトだな…」
490 「フガフガー」
主人「何その呻き声、中に何か入ってるのか? 入ってるだろコレ」
412 「もしかして…防具特化っていう噂があったから440さんが中に!?」
鉄子「あのさ、私がコンクリ使ったみたいな言い方しないでくれる!?
    それに、コイツは元々450なの! 私だって腰折れてないでしょ!」
主人「お前のその440ユーザー=┏発言も問題があると思うぞ」

334:3/5
08/05/10 04:36:01.99 gUqYURDd
主人「で、もう外には連れ出したのか?」
鉄子「や、まだだよ。変えたばっかりだし、引っ越してたから」
412 「わぁ、綺麗なお庭~」

今回はGH-490の他に、ニューデイズに引っ越せるパスも配布開始となりました。
何故かカクワネ・オブジェを要求してくるメルトンさんの趣味は本当に未知数です。

鉄子「だから、餌やって反応を楽しんでみようってとこ」
主人「反応も何も、全部共通だった気がするんだが」
鉄子「いーや、もしかすると特別なリアクションがあったり!?」

鉄子さんは、そう言いながらアセナリンを差し出しました。
すると…。

490 「フガガ、フガフガガ」
主人「何言ってるか分からん! だが凄い嫌そうな目付きだ!」
412 「だって明らかに古そうですよ、そのアセナリン…」
鉄子「ほっほー、じゃこれならどうだっ!?」

鉄子さんは今度は、ディアードを差し出しました。
…私達はこの時、とんでもない現状を目にするとは少しも予想していませんでした。

335:4/5
08/05/10 04:36:56.15 gUqYURDd
*ぱかっ*

490 「ククク、こぉいつは美味い! 滴る血のよ~うな味だ!」

*ぱたんっ*

…。
と、とても説明しても信じられそうにない出来事が起こりました。
490さんの頭が突然開き、そこからマガシの顔が現れたんです!

主人「…何だ、今のは?
    俺の目が間違っていなければ、あれはマガシさんだよな」
412 「は、はい、間違いなくあれはマガシの顔でした!」
鉄子「ど、どうなってんの!? いくら何でも特別すぎて恐れ多いよ!
    ってか、ガーディアンズとしてどうなのよ、その構造は!?」

鉄子さんは恐る恐る、490さんの顔をツンツンと指で突付きます。

490 「フガー」
主人「何事もなかったように唸ってやがる…」
鉄子「そ、そーよねぇ。いくら材料がアレでもそのまま使わないでしょ!?」
412 「…で、でも確かにぱかって開いて、あの独特の声で!」
鉄子「よ、よし! それならもう1回試してみようじゃない!」

鉄子さんは今度は、希少鉱石のリルスニアを差し出しました。

*ぱかっ*

490 「ほほう、貴様いい心掛けだな!? それなら仕えてやっても構わんというものだ!」

*ぱたんっ*

336:5/5
08/05/10 04:38:18.60 gUqYURDd
三人「………」
490 「フガー」

また、何事もなかったように490さんは唸っていました。
やっぱり、頭が突然開いてその中からマガシの顔が出てきました!

主人「これ、材料にきぐるみ被せて作ってあるんじゃないか?」
鉄子「や、やめてよ! ある意味で面白いけどある意味連れ回したくなくなるじゃない!
    それにサイズが合わないわよ、どう見ても収まり切らないわ!」

この時、私には耐え難い好奇心が生まれていました。
ここで耐え切れれば勝者なのでしょうけど…私は耐え切れない、ダメな方のようです。

412 「あ、あの~…合成させてみるのは如何でしょうか?」
主人「こいつに合成させるのか!? ガジェット作られそうだな」
鉄子「…けど何て言うかすっごい見てみたい!」

鉄子さんは早速、余っていた武器基板をセットして素材を490さんに渡しました。

*ぱかっ*

490 「ククク…セットしてしまったか。しかしもう遅い…どうせ貴様はorzになる運命なのだ。
    成功しても10%、失敗してもオキク・ドール…無意味な合成ゲームの始まりだ!」
主人&鉄子「うーわ、腹立つわコイツ!」



-終-

337:名無しオンライン
08/05/10 04:39:18.86 gUqYURDd
というわけで、俺も490ネタ書いてみた
書き終わったら>328があったんで、かぶってスマソ

338:名無しオンライン
08/05/10 06:55:26.47 RooTrQCK
朝から、コーヒー吹いたwwwwww

もし490の中にちっちゃいマガシが居たら、ソニチを見直すwwwwww

339:名無しオンライン
08/05/10 11:18:51.66 utwAm8+0
「ん? 490だけ解説書に続きがあるぞ…」

490は特殊能力として、以下の合成が行えます。
ハシラドケイ ×1
マガシヘッド ×1

「……」


チッ チッ チッ  カチッ

「11時だ!貴様らの睡眠へのカウントダウンだ!」
「やらなきゃよかったああぁぁぁーーーっ!」

340:EPX 9章「過去の絆と未来の栄光 1/6」
08/05/11 23:37:09.73 ZutNUJPz
「…落ち着いたか」
数分後、ようやく私はライア総裁の声が耳に届くようになっていた。
我に返ると同時に、両頬がじんじんと熱くなっているのが感じられてきた。
どうやらライア総裁に1発2発と言わずに頬を張られていたらしい。

「いいか、よく聞け。SEED感染そのものは、完全に絶望的な状況というわけじゃない」
「ヒューガ・ライト氏の例もあります。シドウ博士のワクチンを投与すれば回復の見込みはあります」
さっと視界が明るくなる。マスターを連れ戻しさえすれば、SEED感染から回復させることは可能ということだ。

「だが、問題はそこじゃない」
明るくなりかけた私の顔に、さっと影をさすライア総裁の一言。
「この、抗SEED剤…さっきも言ったが、ごく初期の、SEED研究の進んでいない時期に作られたものらしくてね。
とりあえず心身の変異は抑えられるが、ウィルス自体の増殖は止められず、また正常な細胞に深刻な被害を与えてしまう」

「…ただ、マヤ博士にも解析しきれない、未知の構成要素も含まれているという話があったのが気になりますが。
どのみち命に関わる副作用があるということです。投与を続ければ、確実に寿命は縮みますね」
「さっきの映像を見る限り、既に症状はかなり進んでいるようだ。
あれからさらに、一月近くは経っている。下手をすると、既に副作用で死んでしまっているかも知れない」

もう一度叫びたかったが、さすがにあれだけ声を張り上げた後で、その余力はなかった。

「既に死んでいる者を、いくら探しても見つかりっこない。
生きていたとしても、あとどのくらいの余命があるか知れたものじゃない。
マヤのワクチンでSEED感染は治せても、この薬の副作用まで治せるわけじゃないからね。
あいつの命がある内に探し出すのは、極めて難しいだろう」

「対してお前は、対イルミナス特殊部隊の隊長として、目覚しいほどの成果をあげている。
ここだけの話、お前には部隊の全権を任せてもいいという話があるくらいだ。
お前には、輝かしい未来が待っている。過去の絆を大事にするのも結構だが…」

「…私に、マスターを見捨てろと?」
「何と言ってもらっても構わない。が、よく考えろ。
お前には今や、大切な仲間もいる。そいつらを全部ほっぽって、お前のマスターを探し当てたとしても。
お前のマスターはほどなく世を去り、お前は主を失ったPMとして初期化される。
ガーディアンズ総裁としては、人材不足の今、お前を失うという損失は避けたいんだ」

最後に総裁は、こんな言葉で謁見をしめくくった。
「近々、お前達にはイルミナス本部の攻略任務を下す予定だ。ガジェット量産基地の制圧作戦と連動してね。
重要な任務だ…アタシは、その任務を任せられるのはお前しかいないと思っている。
期待に答えて欲しい…ガーディアンズのため、グラールのため、そしておまえ自身の未来のために」

341:EPX 9章「過去の絆と未来の栄光 2/6」
08/05/11 23:38:03.56 ZutNUJPz
重い足取りで第2小隊の詰所に戻った私を迎えたのは、部下達の歓声と紙吹雪、けたたましいクラッカーの音だった。
「おめでとうございます、隊長」
「やりましたね、新総隊長。我々も鼻が高いです」

目を白黒させる私に、fTが一歩前に進み出て言った。
「まだ、聞いていませんか?今度、イルミナス本部の攻略作戦が発動されることを。
そして、隊長が全部隊の指揮を取る、総隊長に任命されることを」

「地獄耳の自分が、調査部より情報をせしめたんすよ。
何でも、ようやくガジェット量産基地が判明して、その制圧作戦が進んでいる一方で。
俺たち対イルミナス特殊部隊に、イルミナス本部へ総攻撃を行うよう任務が下される予定だって」
φGが後を続けた。

去り際にライア総裁が言ったことは、このことだったのだ。
部下達はいちはやくその情報を聞きつけ、こうして前祝いの準備をしてくれていたらしい。

気のいい仲間達。自分を慕ってくれる部下達。
私の出世を、自分のことのように喜んでくれる彼らを見て、私はさすがに心揺らいだ。

マスターは、既にイルミナスを抜けている。
対イルミナス特殊部隊との接点は、最早無い。
それでも私がマスターを追うと言うのなら、必然的に彼らとは縁を切らねばならなくなる。

仮に、私が首尾よくマスターを連れ戻したとしても。
その時は、私は只のPMに戻る約束になっている。
主がいる以上、私は一個の独立したキャストであり続けるわけにはいかないのだ。
その規則は、例えライア総裁自身にも曲げられるものではない。

過去の絆をのみ追い求め、今の絆を全て捨て去ることは、本当に正しいことなのか。
私の選択一つで、彼らの笑顔や祝福の言葉を全て袖にすることになってもいいのか。

どちらかを捨てねばならない、究極の選択。
部下達の祝賀会に否応なしに巻き込まれる私は、まだどちらとも決められないままでいた。

342:EPX 9章「過去の絆と未来の栄光 3/6」
08/05/11 23:38:49.43 ZutNUJPz
かなり無礼講の度を増してきた祝賀の席を、もみくちゃにされながらどうにか一旦抜け出してきた。
そんな私に声をかけてきたのは、意外な人物だった。

「貴方は、確か…トムレイン博士…?」
目の前に立っている、白衣に身を包んだ温和な顔の老人。
この老人こそが、Aフォトン研究の第一人者として名高い、カナル・トムレイン博士だった。
イルミナスに脅され、心ならずも凶悪なAフォトン爆弾「ガジェット」を開発した本人。
ガーディアンズに救い出されてからは、その保護の下、惑星リュクロスの調査に当たっていると聞く。

「412君…少し、話をさせてもらって構わないだろうか」
遠慮がちにかけられる、物静かな声。
「…君の、マスターについての話だよ。まずは、ついてきてくれたまえ」

予想外の人物からマスターの話題が飛び出す。
返事を待たず、トムレイン博士は薄暗い通路を奥に向かって歩き出す。
私は無言のまま、その後についていった。

着いた先は、ガーディアン用の救護室。
任務中に負傷したガーディアンは、よくここで治療を受ける。
博士の指差した先に、見覚えのある顔が3人、仲良くベッドに横たわっていた。
先ほどの映像で見たばかりの、第1小隊の面々だった。

「君のマスターとは、面識があるのだよ…私が、イルミナスに囚われていた頃にね」
博士は静かに語りだした。
「彼女は、変わっていない…彼らがこうして生きていることを見ても、それは明らかだ」

博士の話によると、マスターはイルミナス在籍の間、虜囚の身の博士と度々会話を交わしていたらしい。
イルミナスには珍しい、心根の優しい正義感に満ちた娘だと、博士が誉めてくれた。

「…ガジェットの話をした時、彼女は大いに憤慨したよ。
脅されて作らされた私に同情を寄せると同時に、イルミナスに対して大きな不信感をも抱いておった。
そうして、ついには自分が私に代わり、ガジェットの量産を阻止してみせると言い出した頃だった。
…ハウザーの命令で、ダグオラシティの制圧任務が下されたのは」

あの、モトゥブでのSEEDフォーム化事件のことだった。

「彼女は、何も知らずにあの悲劇を担わされたに違いない。でなければ、あの娘が承知するわけがない。
モトゥブの民を、無差別にSEEDフォームに変えるなどと言う、非人道的なテロなど…」

343:EPX 9章「過去の絆と未来の栄光 4/6」
08/05/11 23:39:40.65 ZutNUJPz
「彼女は、度々君のことを話していたよ」
博士は真っ直ぐに私を見つめ、白い髭を震わせる。
「彼女はガーディアンズでも孤独だったなら、イルミナスでも浮いていた。
そんな彼女に常につき従い、喜びも悲しみも共にした、君のことをいつも嬉しそうに話していた。
例えば、君のかけているその眼鏡…それは、君が彼女に憧れて真似をした結果だそうだね?」

博士の言葉に、当時自分がGH-410だった頃のことを思い出す。
マスターはかつて、普段でも任務中でも、常に眼鏡をかけていた。
度が入っておらず、伊達であることは早くに知っていたが、わざわざ任務中でもそれをつける意味はと、
聞いたことに対する答えは、今も覚えている。

この眼鏡は、常に自分の理性を量るためにあるのだと。
眼鏡が顔からずれるほどの激しい動きをした時、自分が冷静であるかを否応なく確認することになる。
そうして、任務や戦闘に気を取られ、自分の守るべきものを忘れることのないよう戒めているのだと。

それを知った私は、半ば無理矢理拝み倒す形で眼鏡つきのPMタイプ、GH-412に変えてもらったのだった。
以来、眼鏡がずれるたびにマスターの言葉が頭をよぎり、眼鏡の位置を直すことが癖になっていった。

「…そんな彼女が、あの作戦に参加する直前、言ったのだよ。
もしかして自分は、この任務によって人の道を踏み外すことになるかも知れない。
それに気付くことすらないまま、間違った道をひた進むはめに陥るやも知れない。
その時のために、自分は自分の心の半分をガーディアンズに置いてきた。
自分が間違っていた時は、必ずその心の片割れ…そう、君が彼女を正してくれると、ね」

私は、懐に閉まってある「Dear My Partner」の文字の刻まれた小剣をそっと撫でた。
別れの際にかけられた、マスターの言葉がまざまざと思い出される。
胸の熱くなる私に、さらに博士は続けた。

「私から言うのもおかしな話かも知れんがね。彼女を、救ってやってくれないか。
心ならずあの悲劇を引き起こした彼女は、きっと苦しんでおる。
それを助けられるのは、君しかいないのだよ」

博士は、皺の深いまなじりに涙をにじませる。
「私は…心ならずも数々の罪を犯し、それでいて生き長らえている。
これ以上、私に関わった友人が不幸な終わりを迎えることなど、あってほしくはないのだよ…」

この瞬間、私は迷いを捨てた。
私はマスターを捨てたとしても、多くの自分を慕う部下や、暖かく見守ってくれる総裁などがいる。
しかし、マスターには私しかいないのだ。
私に見捨てられたら、マスターは独りで死んでいくしかないのだ。

344:EPX 9章「過去の絆と未来の栄光 5/6」
08/05/11 23:40:44.61 ZutNUJPz
『私の、彼女に関する心当たりは一つしかない。
もし、彼女が我々と同様ガジェット量産基地の場所を探り当てたなら、彼女は必ずそこに行く。
私の作った悪夢の兵器を、命に代えても無に帰すために』

宴の終わった、深夜の詰め所にて荷物をまとめる私の脳裏に、トムレイン博士の言葉が響く。
一刻の猶予もない。
マスターがガジェット量産基地の中枢部に辿り着く前に、マスターを止めなければならない。

ガジェットをそのまま破壊しては、誘爆システムによって辺り一面にAフォトンが拡散してしまう。
その誘爆システムを解除するには、GRMの技術の結晶たる制御システムをハッキングする必要がある。
マスター個人に、そこまでの技術がある筈がなかった。
そうなると、マスターならどうするか。
時限爆弾で自分だけ安全なところに行ってから起爆、などという真似をするとは思えない。
必ず、基地周辺を襲う悲劇と運命を共にするだろう。

私は、マスターにそんな真似をさせるわけにはいかない。
マスターが命に代えても信ずる道を貫くというのなら。
私も、命に代えてマスターとの誓いを果たしてみせる。
例えそれが、マスター自身と刃を交わすことになろうとも。

「隊長…こんな夜更けに、お出かけですか」
突然後ろから声をかけられ、びくりと肩を震わせる。
詰め所の入り口に立っていたのは、部下のfGだった。

「あ…私は…」
「行くんですね。大切な人を救いに」
何と言ったものか思案していた私に、fGは穏やかに微笑んで言い当てた。
「先ほどの祝賀の様子を見て、もしやと思っていたのですが。
隊長はどうやら、いつも話していた大切な人と、今度の作戦との二者択一を迫られていたのですね」

部下達に、私は何度と無くマスターの話はしていた。
もちろん、自分とマスターの真の関係は明かさないまま、ただ皆と引き合わせたいとの願いを込めて。

「追っていた人が既にイルミナスを抜けていたのでは、確かに我々が隊として追うことはできません。
しかし、隊長なら…隊を抜けてでも、その大切な人を救いに行くのではないかと、皆で話していたんですよ。
…まあ、さすがに今夜早速とまでは、予想はできませんでしたが」

いつの間にそんな話を、と思ったが。
恐らく、自分で情報通だと言ったφGがかぎつけたのだろうと推測された。

345:EPX 9章「過去の絆と未来の栄光 6/6」
08/05/11 23:41:53.70 ZutNUJPz
「…ごめんなさい。私、皆を裏切るような真似をして」
「まあ、正直ちょっと寂しいとは思いましたけどね。自分達には隊長を引き止める程の魅力はなかったのかと」
fGは悪戯っぽく笑いかける。

「でも、隊長らしいと思います。物静かで冷静に見えるけど、情は深く、また頑固で」
「…そ、そんなに私、頑固に見えるかしら」
「それはもう。特に、私達が危険を侵すようなことは、頑として聞きませんでしたよね」
「皆のことを、信じてなかったわけじゃないのよ。あ、最初は…ちょっと違っていたけど」

当初の、誰も信じられず独り突っ張っていた頃を思い出す。
彼らは、そんな私を暖かく迎え入れてくれたのだった。

「ええ、もちろん。ただ、効率よりも私達を優先してくださった隊長だからこそ、皆ついていったのですよ」

fGはそこまで言うと、懐から小さな袋を取り出して私の手に握らせた。
「隊長は確か、PAフラグメントはほとんど持ってらっしゃいませんでしたね。
ですから、それを必要とするスキルやテクニックもお持ちでない。
私達からそれぞれ一つずつ、使い込んだ奥義をディスク化したものを贈らせていただきます。
本当は違法なんですが…隊長の戦いのお役に立てればと」

「わ、私のために…?」
「それと、自分はfGなので、WTである隊長に有用なPAは持っていません。だから、代わりにこれを」
fGはさらに、首にかけてあったそれを外して私の前に差し出す。

「母からガーディアンズ就任祝いにもらった、お守りです。私と同じように、隊長も守ってくれるかと」
「そ、そんな大事なものを…もらえないわ」
「貰って下さい。そして、覚えておいて欲しいのです。
例え隊を抜けようと、私達の隊長を慕う気持ちに、変わりはないと」

私は、うつむいたままfGがお守りを私の首にかけるのを受け入れた。

モトゥブでの任務からここまで、彼らには常に驚かされてきたが、今更ながら改めて思う。
私は、彼らに出会えて幸せだと。
そして、ヒトとはこんなにも暖かいものなのだと、マスターにも教えてあげたかった。
たとえ、薬の副作用とやらで余命わずかだとしても。
残された命に私と同じ幸福を吹き入れ、同じ気持ちを分かち合いたい。

ガジェット量産基地へと向かう旅路の中で、私はしみじみと感じていた。
自らの誓いに、ひとりでは持ち得ない重みと深みが加わっていく手ごたえを。

346:EPX作者
08/05/11 23:50:53.21 ZutNUJPz
第9章の投下です。
GH-412は、今築かれている友情、未来の栄光を振り切って過去の絆を取り戻そうと、
決戦の地、イル・カーボ基地へと向かいます。

折しも、我らがアンドウ・ユウが総裁の命令にて基地に乗り込む、数時間前の話。
華々しい戦果をあげる、アンドウ・ユウという名の表舞台の裏で繰り広げられる、
語られることなき歴史の影。どうか最後まで見届けてください。

347:名無しオンライン
08/05/12 03:20:11.92 2sFaAqBe
もうすぐ、最後か………楽しみに待ってるぜ!!!

348:名無しオンライン
08/05/12 23:08:37.19 tqwGenME
fGは地味だが、戦場の全てを見ている。
縦横無尽に戦場を駆け巡るHuや回復に補助に攻撃にとめまぐるしく走り回るFoとは違った視点で
常に戦場の全てを視界に納め、有効な弾と配布先を考えながら、絶えず引き金を引いている。

一ライフラーとしてここでfGに出番をくれたことを嬉しく思う。隊長を最も観察していたのは、fGのはずなのだ。

349:極めて平凡な一日1
08/05/13 03:54:11.86 LaqCg9lv
今日はご主人様が非番です!

久しぶりすぎて涙が出そうです。
最近はDMC(デ●ルメイク●イじゃありませんよ)やら、
GBR(ゴミドロップブーストロードじゃありませんよ)やらで毎日忙しそうにしていましたから。
そんなこんなでご主人様と一緒に今日はゆっくりできます。
戸棚の中に隠したとっておきのミックスジュースにハッピージュースを混ぜてちょっとづつ酔わせて挙句、
あわよくば取り返しのつかない事を私にしてもらうのです…!
私がそんな妄想を一人繰り広げているとご主人様がぼそりと言いました。
「模様替え…したいな…」
確かに長い事忙しくしていたので大分長い事部屋をいじってません。
壁にかけられた英雄イーサンは右上の画鋲が外れてへたってますし、
巫女様のポスターは私が破り捨てたので貼り付けられた4隅だけが寂しく貼り付いています。
ちょっとだけ残っている脚が無様です。
そんなふしだらな格好でご主人様を誘うからそうなるのです。いい気味です。
「おーい!いくぞー!」
腕を組んで巫女の残骸と睨めっこしているとそんな声が聞こえます。
あわわわわ!私とした事がご主人様がとっとと準備を終えて待っていてくださると言うのに何て事を!
大慌てで私はご主人様を追いかけるのでした。

まずはコロニーの二階で家具を見ます。
ですが、新商品の入荷はありません。
なんでもカジノに買い占められてしまって小売店に流れて来ないので困っている、との事でした。
いつかとっちめてやらなければいけません。
普通にコインを売ってくれればいいのに、
ケチ臭く一日銀1枚とかいうふざけた枚数しかくれない上になんて嫌がらせなんでしょうか。
新しい家具の購入を諦めて、私達はパルムへ向かいます。
なんでもメルトンさんなる一年以上暇そうにしていた人が
やっとアイテム交換という仕事を手に入れて色々とアイテム交換をしてくれるそうです。
だから精霊の涙とかあんな値段で売れるんですね。
ただの飴の分際でやたらと高級すぎると思いました。

350:極めて平凡な一日2
08/05/13 03:55:48.29 LaqCg9lv
パルムに着いた私とご主人様はメルトンさんの前で仲良くこんなポーズをしていました。→ orz
交換に必要だと言われたアイテムの数々は「いらねっ」と捨ててきたり、
「いらねっ」とNPCに売り払ったり、ダン・ボウルに「ゴミ」と書いてテロしたりと
とりあえずとにかく持ってませんでした。
なんとか持っていたアイテムや近くにいた子供から拝み倒して頂いたコルトバ・ヌイミ、
都合よく鉄道強盗があったのでその解決をして集めたインバータサーキットで
フェイクドアとフェイクシェルフを手に入れました。
かわいいです。ほくほくです。
…べ、別に私がわがまま言って手に入れて貰ったんじゃないですからねっ!

部屋をオリエント・ブラックにして今日の戦利品を並べます。
私のナノトランサーに仕舞ってあったニューデイズ・イスとかも一緒にセットして…っと。
す、素敵すぎます!!
このオリエンタルな空気、この場に居るだけで私の気品が数倍上がりそうな空間になりました。
るんらら~♪(両手を広げてくるくると回る私)
そんな風に舞い上がってると扉の方からしゅこーっと音がします。
「すんませーん、グランドクロスの赤いの売って欲しいんですけどぉ~」
あ、お客様です。これは新しい部屋で私を素敵に見せるチャンスです!
私はツインセイバーをだらりと手に持ち、振り返りながらこう言います。
「イ尓好們好(にーめんはお)」
「す、すみませんでしたぁぁぁ!!!」
どうしてでしょうか?猛烈な勢いで逃げられました。
「そりゃツインセイバー持ってる時点で怖いのに無表情でニイハオじゃ逃げるだろうて…」
ご主人様がため息混じりにそう言いますが、私にはさっぱりわかりません。
人間って難しいですね…(遠い目)

351:極めて平凡な一日3
08/05/13 03:56:56.16 LaqCg9lv
逃げてしまった客に後悔しても遅いので、反省もそこそこにちょっと遅いですがお昼ご飯にする事にしました。
素敵だと思ったんだけどなぁ…。
さて今日のメニューはコルトバ・フォアでステーキです。
素敵な部屋で素敵な私とステーキを食べれば、ご主人様も素敵に私にメロメロになってくれるはず!
…と、思ったのですけどご主人様には何の変化もありません。
『バーニンレーンジャッ!かーがやくガオゾランに~』
いつも通りご主人様はテレビから流れるバーニングレンジャーに夢中でした。
ハッピージュースが足りなかったみたいです。メモメモ。
次回はもうちょっと増やす事にしましょう。
しかしバニレンに負けた私、ちょっとセンチになりそうです。
切なさ炸裂すっぞ!しぎゃあああ!!

お昼ごはんを食べてまったりタイムです。
私はいつもご主人様がいないこの時間はClosedの看板をぶら下げてサボ…
ってはいないのですがお客が来なくて暇だったのでお昼寝をするのが日課だったので眠くていけません。
かくーん。かくーん。
私の首が時を刻んだのを確認したご主人様が優しく
「そろそろお昼寝の時間だろう?」と言ってくれたのでお昼寝する事にします。
滅多に無いご主人様との時間を大切にしたいのですが、眠気には勝てません。
しかし何故ご主人様は昼寝の時間だと知っているのでしょうか?
いつも夜に戻って来て共有倉庫からアイテムを取り出してから、
私のナノトランサーに仕舞っていたので気付いているはずが無いのですが…?
そんな事を考えていると眠気が更に増してきした。
おやすみなさい、ご主人様…。
「相変わらずかわいい寝顔だなぁ…」
かわいい?そんな言葉が聞こえた気がしましたが、私の意識は夢の中へと落ちていくのでした。


352:極めて平凡な一日4
08/05/13 03:57:29.34 LaqCg9lv
「おーい、そろそろ夕方だぞーいい加減起きろー」
私がご主人様とうふふ☆きゃっきゃっ☆な夢を見ていたら邪魔が入りました。
しかもご主人様の声真似までしてやがります。こりゃ絶命して貰うしかありません。
私は右手に持ったブラックハーツを正面に突き出します。
「我が眠りを妨げる者!何人たりとも許しはせんぞー!!」
「はうあっ!危ないって!なんだよ!そのタイラー並の技の切れは!!」
その声を聞いて私の意識は覚醒します。
私とした事が寝ぼけてご主人様に刃を向けてしまったみたいです。
「ああああ!私とした事が何て事を!このままではご主人様に顔向けできません!こうなった上は潔く腹を…!」
「いい!いい!そんな事で腹を切るな!寝ていたのを起こそうとした俺が悪かった!こうなった上は潔く腹を…!」
「そんな!ご主人様が腹を切る必要はありません!全て私の不心得がしでかした始末!だから私が…!」
と、そんな押し問答を10分程繰り返していたら、
お互いに不毛だと気付いたので「おはようございます」をしました。
ご主人様がお腹を切らなくて良かったです。もし死なれてしまったかと考えると。
目から涙が零れそうになります。
涙どころでは無くて滝になりそうです。
「えっと、いきなり泣き出してどうしたんだ?」
気付けば本当に涙を流していたみたいです。
妄想も現実になると怖いですが涙で水溜りが出来るのもかなり怖いです。
「えっと、ああそうだ。色々ありすぎて忘れるところだったけど、これ行かないか?」
やっと普通に話が出来るようになった私にご主人様は一枚の紙切れを差し出してくれます。
何々?『ニューデイズ花火大会』のお知らせ。ってちょっと季節早すぎませんか?
確かに夕飯の買い物なんかに行った時にもう花火売ってるのかい!と突っ込みを入れた事もありましたけど、
まさか打ち上げ花火まで作ってるとは…。ニューデイズ、恐るべし。
「ん?どうした?嫌なら無理にとは言わないが…」
「行きます!是非とも行きます!」
ご主人様がせっかちに結論を急ごうとしたので私は大きな声で行くと宣言します。
「お、おう…」
こんなチャンス逃してなるもんですか!さっきのとっておきは失敗しました。
次は失敗しません!乙女の意地を見せてあげますわ!

353:極めて平凡な一日5
08/05/13 03:58:49.77 LaqCg9lv
夜のニューデイズ、川辺に佇む二人。
仲良く手に持つは線香花火。よく読まなかった私が馬鹿でした。
まさか『(線香)花火(どれだけ長持ちさせられるか)大会』だったとは思いませんでした。
これならご主人様と素敵な家で素敵なディナーで素敵な夜を過ごしたほうが良かったと言う物です!
だいたいご主人様も私を子供扱いしすぎです!
私がこんな物で…!こんな物で…!
あ、落ちました。悲しいです。でもこの儚さが何処か私達みたいで。
とても綺麗です。暗闇の中で煌くその姿が永遠に続く時間の中で一瞬煌く私達みたいで。
永遠に存在しないからこそ、この世界は輝いているんだと思います。
そういえばいつだかご主人様がこんな事を言っていたのを思い出します。
「人の一生なんて短いもんだよ。でもさその短い間で一瞬でも輝こうと頑張るんだよ。
その輝こうとしてる命をさ、俺は守りたいんだ。SEEDとかの訳のわからない物で壊されたく無いんだ。
そんな人たちの為に俺はガーディアンズになったんだよ」
ご主人様の顔を見ます。かっこいいです。他の誰にも負けません。他の誰でも勝てません。
私にはご主人様しかいないのです。私だけのご主人様です。
私だけの…うふふ、思わず顔がにやけてしまいます。
私の視線に気付いたご主人様が口を開きました。
「時々思うんだ。俺のやってる事なんて無駄なんじゃないかって。
俺如きじゃなんにも出来ないんじゃないかって」
「そんな事はありません!ご主人様は一生懸命です!だって…!だって!」
急に弱気になったご主人様に不安になった私は一生懸命言葉を紡ごうとします。
だけども私の中にある言葉はとても少なくて、言葉の変わりに涙が出ました。
私の瞳から零れる涙を拭ってくれながらご主人様は言葉を続けます。
「あ、いや泣かせるつもりはなかったんだ。ごめんな。
でもお前が居てくれてよかったよ。多分一人だったらとっくにダメになってたと思う。
帰る場所があるって幸せなんだなって最近思ったよ。
だからこそ俺は皆を守りたいって強く思うんだ」
―私が居てくれて良かった―
その言葉を聞いた瞬間私の目からは再び涙が零れます。
今度の涙は悲しいから流すのではありません。嬉しくて嬉しくて、凄く嬉しいから流れる涙なんです。
顔をくしゃくしゃにして泣いてしまった私にご主人様はおろおろします。
そんな優しいご主人様が大好きです。そんなご主人様に思われてる事が幸せです。
私の思いは届いていたのですね!私が欲しいだなんてそんな!
それなら私はいつでも準備OK!ベッドメイキングだってばっちり習得済なんですから!

354:極めて平凡な一日6
08/05/13 03:59:31.54 LaqCg9lv
…ってアレ?
違和感。身体がいつもと違います。
身体中の全機能が低下していく感覚、眠りと似ているけど何処か違う。
声も出す事が出来ません。…怖い!
ご主人様に会う事が出来なくなる!そんな恐怖が私を襲います。
嫌だ!そんなのは嫌だ!ああ…!
だけども私はその感覚に逆らう事は出来ず、眠りとは違う意識の暗闇の中へと落ちていきました。



気付けば私はご主人様に背負われて、家への帰り道の途中でいました。
「いきなり気を失うからびっくりしたよ。ルウに聞いてみたら、
それはただのオーバーヒートでしょうからなんら心配はありません、だってさ」
ご主人様の背中の上に居る事に気付いたそれ所ではありません。
トク、トク、トク、トク。
心臓の音がいつもより速く聞こえて、ご主人様に気付かれやしないかと少し不安になります。
だって気付かれたら恥ずかしいじゃないですか。
あ、そういえば私マシナリーでした。よく考えたら心臓ありません。
この鼓動はご主人様の物なんですね。
ふふ。ちょっと残念な気がしましたけど安心しました。
「私マシナリーで良かったです」
「なんだそりゃ、変わった奴だな」
ご主人様は笑います。
…トクン、トクン、トクン…。
だってそうでしょ?
こうしてご主人様に背負われていても、マシナリーである私ならこの小さな鼓動を聞かれなくて済むのですから…。

355:名無しオンライン
08/05/13 04:00:49.40 LaqCg9lv
勢いだけでこんな長文を書いてしまった。スレ汚し正直すまんかったorz

356:名無しオンライン
08/05/13 18:20:35.65 Md4+f45s
うむ、パシリはやっぱ黒可愛いくないとな
キャラが生き生きしてて読んでておもしろかった、GJ!

357:EPX 10章「a decisive battle(前編) 1/5」
08/05/13 22:15:19.48 m0koaUhk
身にまとう、漆黒のボディースーツが闇に溶け込む。
ガジェット量産基地の薄暗い通路が私の黒尽くめの身体を覆い包み、敵の目をくらます役目を担う。
駆ける。ただ駆ける。
狙うはガジェット生産工場、そしてその制御装置。

基地の場所は、イルミナスの拠点を潰していく過程で比較的早くに判明していた。
が、うかつに手を出すと誘爆システムにより大量のAフォトン爆弾が一度に爆発し、
メルボア・シティの悲劇を再発させてしまいかねない。
その解除を行う手立てが見つからずに今まで手をこまねいていたが、ある情報が私に決意させた。

今日、この日。あのハウザーが視察のため基地を訪れるという情報。

ハウザーは、単なるイルミナスの幹部ではなかった。
SEEDフォームを操るその一点だけでも、プラントで出会った時から異質なものを感じてはいたが。
実際にイルミナスに入り、彼の直属の部下として働いたわずかな期間で、それはよりはっきりと感じられた。
他のイルミナスの面々とは、明らかに一線を画した存在であることを。

イルミナスの首領であったルドルフ・ランツの死と、それに代わる新首領の誕生。
その本当の意味を知っている人間で、「自分の意思を持っている者」は恐らく私一人だろう。

ヒトとヒトとの争いの範疇を抜け出した、より根本的な脅威。
イルミナスの力を根こそぎ奪い取ったハウザーを評すに、この表現は決して大げさではない。
私を陥れた私怨を抜きにしても、グラールそのものの滅亡に関わる存在を見過ごす道理はなかった。

たった一つ。
メルボア・シティの悲劇を再現せずに、ガジェット基地の破壊とハウザーの抹殺を同時に果たす方法がある。
図らずもハウザーの力の一部を分け与えられることになった、私にのみ行使できる方法が。

「…最後の確認に、おあつらえ向きの相手ね」
こちらを捕捉したマシナリー、GSM-05シーカーが通路の奥から3体、機械音を響かせて迫ってくる。
私はこの期に及んでなお躊躇っていたが、やがて意を決して右手の手袋を外す。
あらわになる自らの掌から、意図的に目をそらす。

シーカーが狭い通路にも関わらず、側面に回り込もうと虚しく壁に機体をこすりつける仕草をよそに、
私は一気にその内の一体目掛けて突進する。
発射される頭部ミサイルを横目にやりすごし、あらわにした掌を機体の中央に接触させる。

358:EPX 10章「a decisive battle(前編) 2/5」
08/05/13 22:18:36.27 m0koaUhk
素手でマシナリーを破壊することなど、当然私にはできない。
その代わり、狙いを定めたその一体は、やがて私を付けねらう動きをやめていた。

「さあ、動きなさい…私の意思に従って」
言葉と共に、力強く念じる。
それに呼応するように、狙いを定めた一体は他の2体に向けて攻撃を始めた。

私の体内に蓄積されている、膨大な量のSEEDウィルス。
有機物、無機物を問わないイルミナスの新型SEEDウィルスは、私の皮膚を通していとも簡単に感染をとげる。

あのモトゥブで散布されたSEEDウィルスは、私の身体をも蝕んでいた。
防護スーツの隙間から入り込んだウィルスに感づいた私は、イルミナスを抜ける前にある場所に立ち寄った。
ハウザーの指揮の元、SEEDウィルスの研究を行っていた研究室。
そこに放置されていた、試作中の抗SEED剤…これが、単なるSEEDフォーム化抑制の薬でないことは、
ハウザーから直接聞いていた。

『私がプラントでSEEDフォームを操っていた、その理由の一端がここにある。
きっかけは、とある事故に私自身が巻き込まれた結果、私の中に特別な抗体ができたことから始まる』
『…抗体?』
『そうだ。本来SEEDフォーム化してもおかしくなかった私は、何故か逆にSEEDを操る術を身に着けていた。
いくつもの偶然が重なった奇跡と言えるが…それで終わらせるのは惜しいと思ってね。
研究班に、私の抗体を基にしたある薬を量産するよう、命じたのだ』

その薬こそが、私が研究室から持ち出し、私がヒトの姿と意思を保つため常に携帯している抑制剤だった。
この薬の服用により、私は体内のSEEDウィルスによる変異を抑えるだけでなく、
元々ウィルス自身が持っている、感染者への意識干渉に方向性を持たせることができるようになるという。
その代わり、試作中のためか強力な副作用があり、服用者は確実に寿命を縮めることになる。

SEEDへの干渉能力より、もっと安全性を重視した薬を作ってはどうかと提案したが、ハウザーは無視した。
今思えば、当然のことだった。
ハウザーにとってイルミナスは使い捨ての駒であり、安全性などは考慮する必要のない事項だったのだから。

私は今まで、ヒトとしての最低限の尊厳は忘れまいと、このSEEDへの干渉能力はないものとして封印してきた。
が、他ならぬハウザーを倒すために、私はその尊厳すら捨てる決意をしたのだ。

実験の結果は良好だった。
SEED感染させたシーカーは私の意思を受け、最後には自爆して他の2体を巻き添えにし、その機能を停止していた。

「…本番は、これからね」
たどりついた、ガジェット生産工場。そこにたたずむ制御装置を睨み、私は一人呟いた。

359:EPX 10章「a decisive battle(前編) 3/5」
08/05/13 22:24:11.13 m0koaUhk
「くっ…さすがにGRMの最新技術で作られているだけは」
制御装置へのSEEDウィルス感染を試みた私は、改めてGRMの技術の程を見せ付けられる結果となった。

ガジェットの誘爆システムを管理する、集中管理システム。
それを私のSEEDウィルスに感染させれば、私の意思一つでシステムの解除は可能となるだろう。
それだけではなく、ガジェットの爆発の規模すらも調整し、この基地のみを跡形なく破壊することもできる筈だった。
その爆発にハウザーを巻き込み、全てを終わらせる。それが私の狙いだった。

だが、GRMそのものがSEEDウィルスの研究を行っているだけあって、それに対する防備も優れていた。
通常、ウィルスは感染媒体の中でどんどん自発的に増えていくのだが、それが装置に影響を及ぼす前に、
内蔵されているセキュリティシステムがウィルスを駆逐してしまうのだ。

もっと、一度にたくさんのウィルスを送り込むことができれば話は別だが、
掌からの接触感染だけではどうしても、これ以上のウィルスを一気に送り込むことはできない。

どうすれば、GRMのセキュリティシステムを上回るウィルスを一度に送り込むことができるか。
少し考え、やがてまた一つの案が思い浮かぶ。今まで覚悟していたより、さらに絶望的な案が。

試作の抗SEED剤は、体内のSEEDウィルスが心身に影響を及ぼすのを防ぐことはできるが、
ウィルスの増殖そのものを抑えることはできない。
増殖の一途をたどるウィルスを抑えるため、身体にかかる負担も比例して高まる。
それが服用者の寿命を縮める要因となるのだが、私はこれを逆用することを思い浮かべていた。

例えば、爆薬などで私の身体を開き、体内のSEEDウィルスを一気にばらまけば。
接触感染に加え、空気感染により周辺もろとも感染させられる可能性は高い。
いわば、この部屋全体を小型のHIVEと化するのだ。私の意思を乗せた、特殊なHIVEに。

自分で考えておきながら、思わず身を震わせる。
要するに、自爆と同じことなのだ。自らの命を自分で絶つ、生命の本能に逆らう行為。
元々、この甚だ完成度の低い薬を服用している時点で、死は避けられないものと覚悟はしていた。
が、今ここで命を絶つことを考えた時点で、その覚悟がまだ非常に弱いものだと思い知らされた。

今、ここで死ぬ。
いつか、どこかで死ぬという漠然としたものでなく、目の前につきつけられた事実。
こんな擦り切れた命でも、それを失うとなると自分でも驚くほどにそれを拒む気持ちが頭をもたげる。
死にたくない。そう思うのは命あるものの本能であり、恥ずべきことではない。
しかし、命に代えてもという決意が、目前にある死のイメージを前にこれほど揺るぐものとは。

理屈も何も超えた、本質的な恐怖。
「怖い」ただその原始的な感情一つが今、私の心、信念、理想の全てを黒く塗り潰そうとしていた。

360:EPX 10章「a decisive battle(前編) 4/5」
08/05/13 22:26:36.19 m0koaUhk
別に、ハウザーなど自分がやらなくとも誰かが倒してくれるかも知れない。
自分の道を違えることになろうと、生きてさえいればやり直せる。
そんな自己保身の本能から来る言葉を否定しようと、私は必死に己を叱咤する。

ここで自分がやらなければ、ハウザーによってさらなる不幸が撒かれる。
モトゥブの民を苦しめたより、さらに大きな悲劇が引き起こされてもいいのか、と。

ダグオラシティで見た、大勢の苦しむ人々の姿を思い出す。
彼らは皆、今の私と同じように突然の死の恐怖にさらされたのだ。
何の覚悟も持たされないまま、何の選択の余地もなく。
それを引き起こしたのは自分だ。自分が彼らの顔を恐怖に歪めたのだ。
ここで自分が死の選択肢に屈して道を違えたとしたら、彼らは何と言うだろうか。

彼らを否応無く殺しておいて、自分が同じ立場に立ったら尻尾を巻いて逃げ出すのか。
それでは私が彼らにやったことを、自分で肯定することになる。
彼らにやったことを悔いてなどいないと、証明することになってしまう。

私が見たかったのは、彼らの苦しむ顔なのか?
違う!
私はいつだって、彼らの笑顔が見たかったのだ。守るべき人々の、心からの笑顔が。

ならば、比べてみるがいい。
ハウザーによって将来苦しめられるであろう、大勢の守るべき人々。
彼らの苦しむ顔と、喜ぶ顔。どちらが見たいのか。
自分一人の死の恐怖と引き換えに、彼らの恐怖の顔を笑顔に変えることが許されるのならば。

私の信じた道は、そのために今まで築かれ、踏みしめられてきたのではないか。
あらゆるものを奪われ、汚され、それでも唯一残された、心の財産なのではなかったか。

いつの間にか、膝を抱えてうずくまっていた。
顔を上げた時、私は改めて決意していた。

私は、ここでハウザーを倒す。
グラールの民に振りまかれる恐怖の種を、私の手で取り除いてみせる。
そうして私は、唯一の財産を心に抱いたまま彼らに会いに行こう。
私の手で殺めた、私の守りたかった、モトゥブの罪なき大勢の人々に。

361:EPX 10章「a decisive battle(前編) 5/5」
08/05/13 22:32:46.48 m0koaUhk
死の直前に込めた意志でウィルスに干渉できる時間は、そう長くないだろう。
まして相手がハウザーなら、時間をかければ逆にSEEDの制御を奪われかねない。

視察に来るなら、ハウザーは必ずこの生産工場を訪れる。
それまでじっと身を潜め、彼がこの部屋に来る気配を感じ次第、直ちに作戦を決行する。
誘爆システムの解除、そして必要な分のガジェット起爆。
一瞬のうちに行えば、さすがに制御を奪われる暇はない筈だ。

残りわずかとなっていた抑制剤を服用し、じっと息を整える。
心の中で、繰り返し体内のSEEDウィルスにやるべきことを呼びかける。
自爆によって振りまかれるウィルスに、自分の意志を十分に乗せるために。

ハウザーはかつて、SEEDも使い方によっては人類のためになり得ると言った。
もちろん彼は口から出任せのつもりだったのだろうが。

「…皮肉なものね。私は貴方を殺すことによって、貴方の言葉を証明するのよ」

恐らくは最初で最後の、SEEDウィルスを真にヒトのために使う機会。
それを、既にイルミナスを抜けている私が、「SEEDの有効活用」を口にするハウザーに対して使う。
何とも皮肉な話だった。

一方で別の妄想も、脳裏に浮かんでいた。
間一髪のところで、私に差し伸べられる救いの手。
常に私を慕い、後ろをついて来ていた、私の無二の相棒。その成長した姿。

こんなことを考えること自体、まだ未練がある証拠だと、再び自分を叱りつける。

迫り来る、死の足音。心が挫けないよう、固く目を閉じる。
やがて、入り口の扉が開いた音を耳にした時には、思わず心臓が跳ね上がる心地がした。
覚悟の時は、今。
イルミナスより渡されていた、自決用の小型爆弾を飲み込もうとしたが、その手がぴたりと止まる。

私はまだ、妄想を見続けているのか?
ありえないはずのその光景は、自分が夢を見ているかと錯覚するに十分なものだった。

懐かしい、しかし一回り大きくなったシルエット。
臆することなく真っ直ぐに自分を見つめてくる、よく見知った眼鏡の奥の瞳。
一目で成長の程がうかがえるその姿に、私は目元が潤むのを必死に抑えなければならなかった。

私の相棒、GH-412。彼女は、間に合ったのだ。

362:EPX作者
08/05/13 22:36:13.39 m0koaUhk
ついに再会を果たした、半端者の主従。
GH-412は、果たして彼女の主人を止めることができるのか。
中編へと続きます。

363:名無しオンライン
08/05/13 23:11:36.61 hYMN+z+7
うわ、もう少しで終わるのかと思いきや「前編」ときたか…
しかも「中」編へ続く…

面白いんだけど、自分の設定とキャラクターにそこまで思い入れがあるなら
他の投稿方法をとった方がより高い評価と敷居をゴニョゴニョ
スレッドはみんなで使ってね

364:名無しオンライン
08/05/13 23:57:39.87 m8RLGvZz
途中で投稿方法を変えると携帯の人とか困るから、ここまで来たらこのままで良いんじゃないかね。
最後にzipで一括うpとかもしておくと良いかとも思うけどね。

365:名無しオンライン
08/05/14 01:34:57.09 U3UkKYAg
>>364に同意~
ここまで来て他に変えてとかってのは、
正直困るからこのまま最期までやって欲しいな~

366:名無しオンライン
08/05/14 10:12:48.00 pkhgTSBy
ただでさえ超過疎だから
スレ投下のが良いかな、とは1意見

367:EPX作者
08/05/14 20:15:37.42 BM/baiaC
>363
もっともなご指摘に、何だか色々な意味で恥ずかしさをおぼえ、
残りはうpろだにまとめてあげて終わらせようかとも思いました。

ですが、後2回分でもあることですし、>364~>366さんの意見もありますので、
このままあげてしまおうと思います。

今後、二度とこのような無謀な長編は投下しませんので、
今作だけは皆様方、堪忍袋の緒をきらさずこらえていただけるようお願いいたします。

368:EPX 10章「a decisive battle(中編) 1/7」
08/05/14 20:17:23.90 BM/baiaC
かつてのマスターとはかけ離れた姿。
それでも、紛れもない私の主人。丸玉の状態から私を育ててくれた、あのマスターだった。
再びマスターにまみえることができたというだけで涙が溢れそうになるが、ぐっとこらえる。
私がマスターを取り戻すには、まだやらねばならないことがあったからだ。

「…会いたかったです。マスター」
どう声をかけようかしばし迷ったが、結局は正直な気持ちが口をついて出た。

「ここへ、何をしにきたの」
マスターのいらえは感情が感じられず、普通ならばすげない反応と思われるものだった。
顔すらも布を巻いて覆い隠し、表情が読み取れなかったが、私は何も気にならなかった。
マスターがマスターとして今、ここにある。それ以上、何も望むことはない。

「もちろん、連れ戻しにです。ガーディアンズに」
「私は戻れない。それだけの罪を犯してきたのだから」
「いいえ、戻れます。どんな罪を犯そうと、それを償う気持ちがある限り」
「罪を償う。そんな都合のいいお題目に酔いしれる内、結局己の幸せに帰結するのは、私が許せない」
「ありません。マスターなら、そのようなことは」
「ヒトは、弱いものよ…ついさっきだって、私はもう少しで挫けるところだった」

マスターが何に挫けるところだったのか、それは気になったが。
私の返す言葉は、決まっていた。

「ヒトは、一人では弱くて当たり前なのです、マスター。私も一人では弱いままだった。
ガーディアンズで見つけた、多くの仲間…それに支えられて今、私はここにいるのです」
「…あなたは、見つけたのね。心許せる仲間を」
「はい。マスターにも、私がいます。マスターが挫けそうな時は、私が支えます」
「言うようになったわね。『私がついています』とは昔から言っていたけど。
『支える』なんて言ったのは、これが初めてよ」

しばし、沈黙が部屋を支配する。
Aフォトン爆弾『ガジェット』の駆動音が静かに響き渡る。

「…これから私が、ここで何をしようとしていたか…聞きたいかしら」
やがて口を開いたマスターに、私は黙ってうなずいて返す。

369:EPX 10章「a decisive battle(中編) 2/7」
08/05/14 20:18:53.89 BM/baiaC
マスターの話によって、私はマスターの身に起こったこと、何をやろうとしていたかを知らされた。
私の予想を大きく上回る、苦難と試練の連続。
それに今まで独りで耐えてきたことを考えただけで、マスターの胸に飛び込んでしまいたくなる。
が、今ここでそんな甘えを見せては、マスターは決して救われることはないだろう。
感情のまま泣き声を張り上げた所で、マスターの心が癒されることはない。

「……マスターは、間違っています」
マスターが、心の奥底で望んでいる筈の言葉。意を決して、口にした。

「マスターは、独りで事を成そうとしています。だから、命と引き換えにしかハウザーを倒せない。
ガーディアンズの力を合わせれば、ハウザーにも勝てます。相討ちを狙う必要もありません」
「私に、自らの責任を他人に押し付けるようなことをしろと?」

「ガーディアンズを、他人と思わなければいいだけのことです。
それに、力を合わせた結果導き出されるものも、れっきとした自分自身の力です。
私は、それを学んできました。一つの小さな命を…心を失うのと引き換えに、学びました。
マスター、これだけは言わせて下さい。
理想とは、人と分かち合って薄れるものではありません。むしろ、より強固なものへと変わりうるのです」

じっと私を見つめるマスター。
表情は伺えないが、私にはマスターが、目を細めて喜んでくれているように感じられている。
また、沈黙が続く。
私はただ耐え、マスターの出方を待つ。

「…あなたの言いたいことは、分かったわ」
再び沈黙を破ったマスターの言葉に、何かをふっきったような力強さが感じられた。
「ならば、証明してちょうだい。あなたがそうやって築いてきたものの力を。
私を止め、私に代わってハウザーを倒しうる強さを、あなたが手に入れたという証を」

私は、返答の代わりに、今まで絶えずかけていた眼鏡を、自らの手で外した。
「マスター…この眼鏡は、私がマスターに憧れてつけたものです。
常に、マスターの後をついていこうとした心の表れ…私は今、敢えてこれを外します。
マスターを救うために、マスターを越える…その決意の証として」

「そして、今こそ私は、誓いを果たします」
ナノトランサーから取り出した、二振りの小剣。
封印を解かれた真紅の刃は、私の小剣を振るう動きに合わせて幻想的な赤い羽を舞い散らす。

「『Dear My Partner』この文字と小剣に込められた、マスターの思いに応えるため。
マスターの心の半分たる私の力をもって、マスター…貴女を、止めて見せます」

370:EPX 10章「a decisive battle(中編) 3/7」
08/05/14 20:20:21.43 BM/baiaC
ガジェット生産工場からはなれた、基地内の一角。
その小部屋で、私とマスターは相対していた。
ガジェットの傍では万一を思って全力で戦えないだろうとマスターが言い出してのことだった。

互いに双小剣を構え、じりじりと距離を測ったまま時計回りに歩を進める。
半円を描いたところで足を止め、次の瞬間。
私とマスターの双小剣が、円の中央でぶつかりあっていた。

フォトンの干渉波がきらめく中、私は赤い羽を舞い散らせて次々と刃を繰り出す。
それをことごとく阻むマスターの双小剣は、しかしそれもこちらの身体に届くことはなかった。
手数が勝負の、双小剣のぶつかり合い。
赤と紫の二色のフォトンは、一歩も譲り合うことなく幾筋もの軌跡を絡み合わせていた。

やがて、マスターの攻撃にわずかな歪みが生じる。
キャスト特有の精密な動作を身上とする私の攻撃が、
そのわずかな隙に付け入ろうとマスターの左脇腹に延びていく。
が、それが届く前に、マスターは私の腹部を蹴り飛ばし、距離を取っていた。

ラインによるフォトンの干渉波が、蹴りのダメージをほぼ無効化する。
互いに離れて仕切り直しかと一瞬気を抜きかけたが、本能によって咄嗟に武器パレットの変更を行う。
出現したマドゥーグに、すぐさまテクニックの行使をさせる。
繰り出した火球は、間一髪のところで相手の火球を相殺していた。

右手に小剣、左手にマドゥーグをセットしたまま、二人で平行に部屋の中を駆け巡る。
飛び交う火球が或いは脇をかすめ、或いは互いにぶつかり合って爆音と共に視界を塞ぐ。
何度目かの火球の激突にタイミングを合わせ、私は小剣を手にマスター目掛けて懐に飛び込む。

「舞転瞬連斬!」
「飛懐蹴破斬!」

炎の幕を割って入ってきたマスターが、横回転の末体重をかけた小剣を振り下ろすのが垣間見えた。
フォトンアーツによって一時的に強化された脚部がマスターの刃とぶつかり合い、押しのけあう。

息をつく間もなく、マスターは大振りの槍を取り出し、頭上でひと回しした後真っ直ぐに突いてくる。
対して私は武器を双剣に切り替え、2本の刃で槍による鋭い一撃を脇へとそらす。
そのまま再び、フォトンの光の交錯が二人の間に繰り広げられる。

2本の刃で攻撃と防御を使い分ける私に対し、マスターは或いは刃で、或いは柄の部分で防ぎ、なぎ払い、
突き崩そうとしてくる。
やがて頭上に振り下ろされる槍を、交差させた双剣で受け止める形で二人は足を止めた。

371:EPX 10章「a decisive battle(中編) 4/7」
08/05/14 20:21:42.66 BM/baiaC
「ここまで成長していたなんてね。驚いたわ…本当に」
マスターが槍を引き、後方に飛びすさる。
もしかすると、これで終わるのかと一瞬思ったが、さすがにその考えは甘かった。

「だけど、成長しているのはあなただけじゃない」
そう言ってマスターが取り出したのは、三叉に分かれたフォトンの刃を取り付けた、手甲のような武器。
双鋼爪と呼ばれるそれをマスターが装着しているのを見て、私はある違和感を思い出していた。

440の映像記録でも、最後にマスターは双鋼爪を取り出していたが、私の知る限り。
マスターは鋼爪や鋼拳といった、素手に近い武器で敵を引き裂いたり殴りつけたりする武器は好まなかった。
そうであったが故に、私自身もその手の武器には詳しくなく、当然扱いにも長じていない。
あの時は、映像の中のマスターに対する懐かしい思いが大半を占めていたが、今思えば確かに疑問だった。

「生き残るため、こういう武器も使わざるを得なかった。あなたにこれが受け切れるかしら」
言い終わるや否や、懐に飛び込んでくるマスターの動きは、私の所有するデータにないものだった。
双方向からの爪の攻撃に加え、蹴りも含めた変幻自在の連続攻撃に翻弄され、
さらに下方向から振り上げられる爪の一撃に空中へと打ち上げられる。
体勢を整える間もなく、後を追って跳躍してきたマスターの一撃で強く地面に叩きつけられてしまう。

立ち上がろうとする私に、マスターの更なる追撃が容赦なくふりかかる。
突き出した両の手から放たれる、球状に圧縮されたフォトン弾。
身体のひしゃげるような感覚と共に、私は後方の柱に打ち付けられるように吹き飛ばされていた。

「【連斬星弾牙】…単体の敵用に特化した双鋼爪の奥義。生き残れたなら、覚えておきなさい」

柱を背に身を起こした私の身体に、鋭い痛みが走る。
今の技で大きなダメージを受けたのは確かだが、それとは別に、異質の痛みがあった。
身体の内部で、自分に対して反乱を起こされているような、不快な痛み。
原因は明らかだった。
ヤマタミサキ。敵の自滅をうながす感染効果を付与する武器の一撃を、私は受けてしまったのだ。

このままじわじわと命を削られる状態で、まともには戦えない。
私はすぐさま武器パレットを切り替え、状態異常治癒テクニック「レジェネ」を使おうとする。

「そんな暇を、私が与えると思う?」
冷たく言い放つマスターが、いつの間にか持ち替えていた杖を振り下ろした。
途端に、私の周囲一帯に降り注がれる、白色に近い輝きを放つ雷の槌。
地面への着弾と同時に稲妻を周囲に撒き散らす雷系の範囲テクニック「ラ・ゾンデ」は、
私の多少の回避も物ともせずに、周囲ごと私を巻き込んでしまう。

372:EPX 10章「a decisive battle(中編) 5/7」
08/05/14 20:22:40.21 BM/baiaC
幾度となく降り注がれる、雷の槌。
転がり回って直撃だけは避けるものの、感染による侵食作用と併せ、確実にダメージは蓄積していた。

何としても、マスターの攻撃をしのいで回復処理をしなければならない。
そんな私の目に映ったのは、先ほどしたたかに背を打ちつけた、部屋を支える柱の一つだった。
咄嗟に私はその柱の影に飛び込む。
範囲系テクニックといえど、視界をふさぐ柱の向こうの敵を巻き込むことはできない。
事実、やむことなく注がれていた雷の槌は、私が柱の影に隠れた途端ぴたりと止んでいた。

ほぅ、と一息を入れ、おもむろに回復杖を取り出す。
そんな私の背後から、柱越しにマスターの悲しそうな声が届いた。

「それで、防いだつもり?」

眼前に突きつけられたそれを見て、私はようやく思い出した。
440の映像記録で、キャストfGと戦った際に見せた、マスターのある戦法を。
柱の影に隠れて射撃を防いだ上で、マスターは何をしていたか。

ふわふわと漂う、黄色く発光する稲光をまとった光の球。
すでに柱を回りこみ、私の周囲で今か今かとその瞬間を待っていた。
私が柱の影から飛び出す前に、それは眩い光を放って爆発していた。

障害物をも回り込む、高性能の誘導弾とも言える雷系のテクニック「ノス・ゾンデ」
一度映像記録で見ておきながら、私はむざむざ同じ手をくらってしまったのだ。

回復もできないまま、身体の損傷も限界にきていたところにこの一撃は致命的だった。
急激に視界が暗くなり、身体の力が抜けていく。
震える足を何とか踏ん張り、柱によりかかって倒れることを拒否するが、
無慈悲にも2回目の雷球が視界をよぎった時、私は悟った。

この一撃に、耐えることはできないと。

ノス・ゾンデの破裂する音が、不自然な程遠くで聞こえたような気がした。
足の感覚がなくなり、ずるずると背中を擦る柱の感触も消えていく。
一瞬尻餅をつく感覚が脳を刺激するが、それもすぐに掻き消えていった。

真っ暗な空間に一人取り残されているような感覚だけが、ぼんやりと残されていた。
それもすぐに曖昧になり、やがて意識も大いなる闇の中に飲まれていった…。

373:EPX 10章「a decisive battle(中編) 6/7」
08/05/14 20:23:40.46 BM/baiaC
412は、本当に成長していた。
様子から見て、キャストへの強化措置を受けたのは明らかだが、そこから手に入れた強さは、
まぎれもなく412自身のものだった。

私と同じ、WTの機能を付与することを選んでくれたことも嬉しかった。
私の後をついてくるだけでなく、私を越えると言い切った時には、思わず抱きしめてやりたくなった。
戦い方も単なる私の猿真似でなく、WTとして真摯に鍛え上げ、自分なりに物にしたことは明らかだった。
私の一方的な【約束】を【誓い】にまで昇華させ、ここまで追いかけてきてくれた。

それだけで、十分だった。
誰に対しても恥じることない、自慢の相棒と胸を張って言えた。

「本当に…よく、ここまで…」
最早動くことのかなわない、412の冷たい頬をそっと撫でる。
あと、一歩。
私を止める、あと一歩が足りなかったことを責める気持ちなど毛頭なかった。

待っていて、412。あなた一人を、逝かせはしない。
ハウザーの野望を道連れに、私は私の道の最後の一歩を踏み出すから。
向こうに行ってから、好きなだけあなたの文句を聞いてあげる。
さびしかったでしょう、辛かったでしょう、痛かったでしょう。
思う存分、私にぶち撒けて構わないから。

先ほどまで、死の恐怖に必死に耐えながらどうにか覚悟を固めていたのとは、まるで違っていた。
向こうで412が待っている。そう考えると、死ぬのもそう悪くはないとすら思えてしまう。
そういう意味では、412の言っていた「一人では弱い」という言葉も、真理をついていたのかも知れない。

柱にもたれかかった格好の412を、静かに寝かせてやる。
眠ったような顔の412の顔を思い残すことなく見つめたあと、すっくと立ち上がる。

後は、やるべきことをやるだけだ。
そう心の中で呟き、412に背を向けようとした時のことだった。

412の首にかかっていた、見覚えのないお守りのようなもの。それが、異常な光を放ちだした。
何事かと見入る私をよそに、そのお守りはますます光を強め、ついには音を立てて砕け散った。
その次の瞬間、私は目を疑った。

完全に機能を停止していたはずの412が、ゆっくりとその身を起こし始めていたのだ。

374:EPX 10章「a decisive battle(中編) 7/7」
08/05/14 20:25:06.87 BM/baiaC
目を覚ますと同時に、私は自分の身に起こっていたことを思い出していた。
私は、マスターとの戦いに敗れ、その機能を停止した筈だった。
それが、今こうして、身体に何の損傷もない状態で身を起こすことができている。

「な、何故…完全に、機能を停止していたはずなのに」
マスターの狼狽する声を耳にしながら、私はある物に目をとめた。

fGが言っていた、母からもらったお守り。それが、見る影もなく砕け散っていた。
散乱している中身の破片を一つ手に取り、私は思わず息を呑む。

「これは…スケープドール…」
ナノトランス技術を利用した、最新の携帯医療装置。
所持者の命を奪うほどの傷や損傷を、自動的に完全回復させて砕け散るというこの道具は、
ガーディアンズでも然るべき階級の者が、大規模な作戦の際にのみ携帯を許される程の貴重品だった。

この小さな人形のような道具が、私の命の身代わりになったことは明らかだった。

ありがとう。貴方のおかげで、私はもう一度チャンスを与えられた。
母からのお守りを惜しげもなく託してくれたfGに、私は深く感謝した。
同時に、私の背中を押すいくつもの大きな思いが私を突き動かす。

「これが、私の得た強さです」
なおも狼狽の意を隠せないマスターに、私は立ち上がって言った。
「私一人なら、あの時点であなたに敗れていたでしょう。でも、私には彼らがいる。
私を隊長と慕い、彼らよりあなたを取ることを選んでなお、その帰りを待っていてくれる彼らが」

「あなたが…隊長ですって」
「ええ。でも、最初は周りを全く見ず、独りで空回りしているだけだった。
独りで戦うことだけが、自分の強さと疑わず。
そうしなければ、マスターに追いつくことはできないと思っていたのです。でも」

「本当は、逆だった。
マスターに足りない唯一のものを手に入れることで初めて、私はあなたの前に立つことが許される。
そうしてマスターにないものを補うこと…それこそが、唯一無二の相棒として必要なことだったのです」

「戦いはこれからです。私は、彼らが私に託してくれた力を駆使して、今度こそ。
あなたを、越えてみせます」

375:EPX作者
08/05/14 20:33:16.17 BM/baiaC
一度はマスターに敗れた、GH-412。
しかし、仲間の思いに背中を押され、再び立ち上がります。
今度こそマスターを止めることはかなうのか。そして、二人を待つ運命は。

次回、最終回。ご期待ください。

376:名無しオンライン
08/05/14 22:06:59.26 3kp6u3YF
あえて言おう!
wktkがとまらねえ!

377:名無しオンライン
08/05/15 15:59:52.85 K/GuCdjN
面白いからいいんだけどね、自分でも言ってるけど長すぎです
長くなっていいなら、いろんな場面が盛り込めるわ好きな所で切れるわで
面白くできるのは当たり前かも

378:名無しオンライン
08/05/15 16:45:10.97 PakZGzpw
面白いんだからいーんじゃない?
書きたい物が膨らんじゃったならしょうがないと思うけどなぁ

379:名無しオンライン
08/05/15 18:36:49.83 0aVyST0q
ちょいツン気味な>377の長編に期待汁!
って、ばっちゃが言ってた

それはそうと俺もwktkが止まらねぇ!
377も頑張れ!主に俺の為に!

380:名無しオンライン
08/05/15 18:44:26.28 P/i22ZtP
当たり前とは言うけど、人に理解して貰えるように適切で正確な言葉を選んで書こうと思えば、それなりの知識も時間もかかるだろうに
面白くできるのは当たり前、と簡単に言うには、どうかと思う出来だとは思うけどなぁ

俺も短いやつなら何度か書いて投下したことあるけど、長いやつは1話分書くのに5時間かかった上に、意味不明な文脈になったからやめたw
まぁ、俺がバカでアホなだけなんだろうけど('ω')

381:名無しオンライン
08/05/15 19:57:11.76 0aVyST0q
>380
いやここは一つ>377にお手本を示して貰おうじゃないか
当然、自分では書けないのに
「長ければ面白く書けるのは当たり前!」
なんて言わないだろうしさ!
面白くて長いSSって言うかLS!期待してるぜ!377!

382:名無しオンライン
08/05/15 19:58:21.56 S3G1sUzj
>>377
ダレさせないってだいぶ技術が居る事だと思うけどなぁ。
まぁ、期待して待ってるぜ!

383:名無しオンライン
08/05/15 20:17:20.78 19UBCO9p
そんな気張らずに書きたいものを書けばいいと思うよ。
話がごちゃごちゃになりそうだったら、
ノートなんかにキャラクターのイメージとか話のイメージとか殴り書きしてイメージを固めていけばいいと思う。

…と言っても自分もそんなに数かいてないから偉そうな事いえないけどなぁ。

384:EPX 10章「a decisive battle(後編) 1/4」
08/05/15 22:01:35.77 icIXj89u
立ち上がった412は、何故か上級回復テクニック「ギ・レスタ」を使ってきた。
戦闘不能者を蘇生させるほどの強力な回復テクニックだが、今ここで使う必要があるのだろうか。

412の思惑はともかく、再び双鋼爪を装着する。
紫の飛沫を撒き散らしながら、412目掛けて間合いを詰める。
【連斬星弾牙】少なくともこの技を破らない限り、412に勝ち目はない。

412は、一歩退いたかと思うと、いつの間にか持ち変えていた双剣を低く構えていた。
私の見たことのない構えだった。
脇に抱え込むようにしていた双剣の一方を、私の最初の一撃に合わせて勢いよく体ごと突き出してきた。

槍のように突き出された双剣を、竜巻のようなフォトンの渦が覆い包む。
私の爪による飛沫をまとった斬撃の全ては、双剣を覆う膜に弾き返されてしまう。
さらに一瞬の溜めを置いた後の一撃が、私を後方へと押し飛ばしていた。

吹き飛ばされながらも体勢を整え、着地と同時に両の手を脇に添え、フォトンを圧縮させていく。
【連斬星弾牙】締めの一撃であるフォトン弾を放とうとした時、私は見た。

412が双剣を振り下ろした軌跡に沿って迫り来る、巨大な斜め十字のフォトンの刃を。

巨大な十字の刃は突き出したフォトン弾を飲み込むようにかき消し、さらに双鋼爪本体をも打ち砕いた。
私の見たことのない、双剣の奥義。
412がこんな技を身に着けていたことに、驚きを隠せなかった。

「ガーディアンの技は、日々進歩しています。マスターがいなくなった、その後も」
砕かれた双鋼爪の破片を呆然と見つめる私に、412が双剣を振り下ろしながら語りかけた。
「今の技は、『クロスハリケーン』…部下のfFが私に託してくれた、双剣の新奥義です」

「あなたに…託した?」
正直、412の言ったことはまだ理解しきれていなかった。

「ガーディアンズの規約を破ってまで、彼らは私にPAディスクを渡してくれたのです。
改めて言います。今の私は、独りで戦っているのではありません」

「…借り物の力で、私を倒せると思わないことね」
仲間の力を借りて戦う。言葉とは裏腹に、私はそう言い切った412に何ともいえない頼もしさを感じていた。
が、手を抜くわけにはいかない。
私は手近な柱の影に隠れ、ノス・ゾンデによる遠隔攻撃を図った。
一度は412の命を奪いかけた、このテクニック。これすらも、412が破れると言うのなら。

385:EPX 10章「a decisive battle(後編) 2/4」
08/05/15 22:02:17.55 icIXj89u
「fT。貴方のPAディスク、使わせてもらうわ」
駆けながらナノトランサーからディスクを取り出し、セットする。
そのまま片手杖を取り出し、柱の前で足をとめる。
柱の左側から回りこんできた雷球に素早く反応し、反対の右方向から柱の向こうへと飛び込んだ。

柱を背に杖を構えたままのマスターと目を合わせる。
雷球はすぐに柱を回りこんでこちらを追尾してくるが、その前に私は杖を突き出していた。

構えた杖を中心に、眩いばかりの白色光が放たれる。
白色光は私の身体をすっぽり包み、周囲へと広がっていく。
柱の向こうから回り込んできた雷球は、私の放つ光の奔流に包まれて空しく消滅した。
光の衝撃波はそのままマスターをも巻き込み、柱に磔の状態へと追いやる。

光属性、唯一の攻撃テクニック「レグランツ」
自らも光の衝撃波にさらされ、傷を負う事を厭わない精神力を持つものだけが行使できる、特殊テクニック。
その絶え間ない光の奔流は、完全にマスターを柱へと固定し、ダメージを与え続けていた。

やがて、柱の方が衝撃波に耐え切れずに瓦解した。
瓦礫の中からマスターが身を起こす間に、私は再び双小剣を取り出す。

「勝負です、マスター」
真紅の双小剣が舞い散らす赤い羽の渦を突っ切り、マスターの懐に飛び込む。
対抗して双小剣を取り出し、正面から切りつけるマスターが私を捉えることはなかった。

自分でも制御困難な、空中での複雑な軌道修正に内心悲鳴を上げながら、それでも果敢に斬りかかる。
すっかり翻弄されている様子のマスターの背後に、さらなる一撃を繰り出す。
背後からの一撃すら防ぐマスターを視界に納めたまま、上空後方へと退避した。

「それも、新奥義ね…どうやら、予測困難な軌道による一撃離脱の奇襲攻撃。でも」
マスターが片手杖を取り出すのを、空中から視認する。
「逃げたつもりでしょうけど、忘れないで。私はWT、遠距離攻撃もお手の物よ」

私の着地に合わせて、恐らくは強力な単体テクニックを叩き込むつもりだろう。
逃げ場はない。このまま私が何もせずに着地するのなら。

φGから授けられた、双小剣の奥義【連牙宙刃翔】
その真価は、この一見攻撃後の予備動作と見える、後方への退避から発揮される。
極めて強力、かつトリッキーなこの技に、さすがのマスターも裏をかかれた様子だった。
左右に携えた、浮遊しながら膨大な量のフォトンリアクターを纏わせる双小剣。
それを、一気に解き放った。


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