08/04/25 01:07:47.38 8uz/R8Ea
そうだよ。そろそろチャブ・ダイにしないと。早く実装してホスイ
251:名無しオンライン
08/04/25 03:33:10.08 yOTvIVbX
>>249
触発されて書いてみました。
最近は環境が変わってなかなか書けないのですが、
良作を読むとウズウズと書きたくなりますね。ではでは。
御主人「うーん、420・・・ウチもこたつを片ずけようか?」
420「え、あ、あのもう少し後にしませんポコ?」
御主人「え?もう春だし?普通は片ずけるよ?」
420「そ・・・それはそうポコ・・・でも・・・」
御主人「変な420だね。ともかく、えい」
コタツダイに手をかける御主人。
すると何やらコタツダイから声が聞こえます。
シャト「ニャーニャー」
御主人「・・・420?これは・・・?」
420「ウグ・・・ヒック・・・強化失敗して捨てられて、可哀想だから拾ってポコ・・・」
シャトを抱えて泣きじゃくる420。
420は『捨てられた機械』に反応している様子です。
そんな420を見て御主人は一言。
御主人「うーん・・・まあ仕方無いなぁ。その代わり面倒は見てね420?」
420「え・・・あ・・・はい!了解ポコ!」
どうやらシャトも飼ってもらえそうです。
良かったね420。
420「可愛い!やっちゃいます!!」
シャト「ニャアー!」
252:名無しオンライン
08/04/25 06:36:45.52 HXoSX8jw
久し振りの単発ネタ、イイヨイイヨー>>249,251両者ともGJと言わざるを得ない!
>>249
こたつ布団を取るだけでいいと思うんだけど・・・
でも一緒に収納された420が可愛いから、いいか!
>>251
ほのぼの絵本みたいで和んだ(*´Д`*)
・・・と、思ったら、ちょwww最後www
シャト逃げてぇーーーーーー!!!
253:EPX 幕間(後編1/4)
08/04/25 23:07:13.94 IPF+0sgI
「くそっ、ここでこんな手練を相手にしている暇はないってのに」
激しく切り結ぶなか、イーサン・ウェーバーの呟きが聞こえる。
こちらは教団の教徒に扮しているためか、
"どうせ見逃してくれないだろうから一刻も早く切り伏せよう"と彼は判断している様子だった。
一方こちらも、少しでも隙を見せれば一気に勝負を決められかねないので、
逃げるどころか背を向けることすらできないでいた。
空中に舞う、フォトンとフォトンの交錯する光。
一歩引いては一歩踏み込む、攻防が一瞬のうちに切り替わる剣戟。
何とか間合いを取って、相手の苦手とするであろう遠距離攻撃に切り替えたかったが、
余りの踏み込みの速さにそれもままならない。
悪いことに、騒ぎを聞きつけた衛士が二人ほど駆け寄ってきた。
イーサンは無論のこと、私も詳しい誰何(すいか)を受けたら侵入者であるとすぐに判明してしまう。
なんてこった、と毒づくイーサンと全く同じ気持ちだった。
通路を挟み撃ちにする形で、衛士二人が斬りかかってくる。
…"斬りかかる"?
次の瞬間、私の頭に一つの仮説が浮かび、咄嗟に彼らの持っている武器に目を向ける。
そして、さらに次の瞬間、仮説は確信へと変わった。
きらめくフォトンの軌跡が、ふたつ。
私とイーサンは、互いに背中合わせで武器を振り下ろした格好となっていた。
ややあって、衛士二人の倒れ伏す鈍い音が、通路に響き渡る。
「……なんで、俺を助けた?」
片手剣を軽く一振りし、イーサンがこちらに向き直る。フォトンが残像を残しながら鈍い音を出す。
「…こいつらは、イルミナスの工作員よ」
「何だって?一体、どうしてそんなことが分かるってんだ」
「教団の衛士は、多くが優れたテクニックの使い手。侵入者を見ていきなり武器で斬りかかる真似はしない」
「そ、そりゃそうかも知れないけど、それだけであんた、仲間かも知れない奴を…」
「さらに、持っている武器を見れば、一目瞭然よ」
イーサンが、倒れている衛士の持っている武器を取り上げる。
「これは…GRMの…」
「そういうこと。私達は、GRM製の武器なんか使わないわ」
254:EPX 幕間(後編2/4)
08/04/25 23:08:36.59 IPF+0sgI
「…私の役目は、この機に乗じて動き出した、イルミナスの潜入工作員を始末すること。
外部からの侵入者を捕えることではないわ」
少々苦しいが、でまかせを言って煙に巻くことにする。
「…見逃してくれるって言うのか」
「お互いにね。貴方は私とここで会わなかった。…職務怠慢と、後で責められたくないし。
貴方と雌雄を決してなお、イルミナスを追う余力が残っているかは正直自信がない」
「それは、俺も同じだ。教団の中にあんたみたいな使い手がいたことに、驚いてる」
年相応の屈託ない笑顔に意表をつかれる。
敵であることには違いないのに、警戒心が薄いのか、大物なのか。
「それじゃ、私はこれで」
いずれにしろ、戦いは避けられそうなので、私は先を急ぐことにした。
…が、ふと思い至って足を止める。
「貴方。イーサン・ウェーバー…前総裁の暗殺未遂事件で、指名手配されている…」
「あ、ああ…そうだ」
「理由はどうあれ、人一人を殺めようとしたことは事実。その償いは…どのようにするつもり?」
自分と同じ、罪を犯し指名手配される彼が、どのように感じているのか。
私の生き方を変えるつもりはないが、それを聞いてみたかった。
イーサンはしばし瞑目した後、こう答えた。
「この身を捧げ、グラールのために尽くす…それだけさ。ガーディアンズ時代と何も変わらない」
「変わらない…そう、言い切れるのね?人に裏切り者と蔑まれようと」
「ああ。みんながどう言おうと、俺は俺だ。俺は、俺の信じた道を歩き続ける」
それを最後に、私達は互いに背を向けその場を走り去った。
何も変わらない。彼はそう言っていたが、私はとても同じ事は言えそうもなかった。
私に降りかかったあの事件は、私から色々なものを奪い、様々なものを変えた。
人の目を恐れ、覚めない悪夢に苛まれ、かつて抱いていた誇りも何も失っていた。
同じ罪を犯した身でありながら、彼は変わらないといい、私は変わったと感じる。
それは、単に犯した罪の軽重によるものか、それとも互いのヒトとしての強さの違いか。
分からないが、ただ一点彼の言葉に共感できたものはあった。
自分の信じた道。私には、それしか残されていないのだ。
255:EPX 幕間(後編3/4)
08/04/25 23:10:21.36 IPF+0sgI
「その先には、巫女様が眠っておられるはずよ」
グラール教団最深部にある、幻視の間。
その奥にある、LSSの動力室につながる扉の前に、教徒の姿をした一人の男がいた。
イーサン・ウェーバーと別れてからは、さしたる障害もなく制御室に辿り着いた。
正規の手順で解除しようとしたが、さすがに部外者の私が自由にいじれるものではなく、
やむをえず破壊することに決め、時限爆弾をセットしてきた。
当然、爆破してしまえばLSSも消え、警戒網がしかれるだろう。
そのため、爆発してからなるべく早く彼女達と接触をはかろうと、時間は多めにとっている。
ここ幻視の間に辿り着いてからも、まだかなりの時間の余裕があるはずだった。
「ちぃっ。混乱に乗じて、忌まわしいLSSの元となる巫女共を屠ってやろうとしたものを」
「LSSを止めたいのなら、制御室で正規の解除手順を踏めばいいでしょう。
無理にここの装置を破壊して彼女達を殺して、貴方に何の得があるの?」
「忌まわしき巫女の暗殺こそ我が任務。我らイルミナスの野望を阻む者、生かしておく理由はない」
教徒の格好をしているにも関わらず、男は自らの正体を隠す様子もなかった。
「ありがとう、手間を省いてくれて。その一言が聞きたかったの。
そうと知った以上、私も貴方を生かしておく理由はないわ」
「何?貴様、一体なにも…うぉっ」
教徒の扮装を解き、黒のボディースーツ姿に戻る。
(ローブはあくまで外で目立たないために着るものであり、戦闘時はナノトランサーに収納している)
同時に男に向かって弓を撃ち、怯んだ隙に小剣を抜き、懐めがけて疾走する。
数秒後、私は血だまりの中に倒れる男を足元に立っていた。
制御室に仕掛けた爆弾が爆発するには、まだ時間がある。
それを待って、彼女達を眠らせている装置を解除しようと、私は制御室に入ろうとした。
しかし、そこへ乗り込んできた新たな侵入者が、私の行動を中止に追い込んだ。
「潜伏中とのイルミナス構成員を追って来てみれば…別の闖入者とはな」
見覚えのある、機械的な顔とごつごつした威圧的なボディパーツ。
かつて炎の防衛線で出会った、あの効率主義のキャストfGだった。
256:EPX 幕間(後編4/4)
08/04/25 23:11:34.59 IPF+0sgI
「君の目的は知らんが…我々の手間を省いてくれたことは礼を言おう。
その遺骸をおとなしく引き渡した上で素直に縛につくなら、便宜をはからんでもない」
「何だこいつ。こいつもイルミナスの野郎じゃないのか?」
「なわけないでしょ。こんなとこで仲間割れする理由、ないもの」
次々と、因縁深い顔が目に入る。
あの時の3人が揃ってここにいるというのは、どういう因果の成せる業であろうか。
黙っている私に、キャストfGが続けて語りかける。
「我々は、対イルミナス特殊部隊の者だ。
現在このグラール教団にイルミナスの潜入工作員がいるとの情報を受け、教団への協力を要請した。
だが、教団の連中は頭が固くてな。説得の時間も惜しいので、強引に入らせてもらった。
道中見つけた工作員が、そこで今君の足元に倒れている男だった、というわけだ」
「それはご苦労様。では、遠慮なくこの男は引き取っていって頂戴。
私は私でやることがあるから、どうぞお構いなく」
「そういうわけにはいかんな。理由は知らんが、君も不法侵入者だ。
教団に引き渡してもいいが、そこの男との関係も気になる。ゆっくりと本部で話を聞きたいものだ」
「ガーディアンズに行くわけにはいかないわね。叩くと色々埃の出る身体なもので」
「てめえっ、ごちゃごちゃ言うと、力づくで連れてくぞ」
3人とも、私の正体には気付いていない様子だった。
それも当然。あの時とは全く装いが違うのだから。
さて、この3人をどうするべきか。
恨みに似た感情が、ないでもない。
私を今の境遇に至らせた一因でもある彼らに復讐し、多少なりとも気を晴らすという手もあった。
だが、彼らもガーディアンズだ。
この先、彼らがガーディアンズの本分に目覚める日が来ないとも限らない。
少なくとも私よりは、やり直しはぐっと容易なはずだった。
ガーディアンズを裏切ったことに対する、詫びの気持ちもあれば。
どこかに、自分が何かを成したという足跡を残したいという願望もあったのかも知れない。
私にできる、果てしない償いの一環として。
私は彼らに灸をすえ、真のガーディアンズとして成長する可能性を残してやることにした…。
257:EPX作者
08/04/25 23:17:41.83 IPF+0sgI
以上、幕間でした。
確かに、せっかくの力作がすぐに他の方の作品に流されてしまうと、
寂しさを感じるというのはあるかも知れません。
配慮が足りませんでした。申し訳ありません。
ともあれ、執筆中のものが完成次第、第3部完結編を投下させていただく予定です。
長編に不快を示す方がいらっしゃることは承知しましたが、
何卒完結まではご容赦いただきけたらと思います。
258:名無しオンライン
08/04/26 01:29:57.22 ivWzbCpc
ここでお聞きしますが、今防具特化パシリ作るのなら効率のいい育て方って何でしょうか?
ご教授お願いします。
259:名無しオンライン
08/04/26 08:13:28.26 ClQj9Mf5
>257
続きを期待しておりますぞ!
>258
メルトンにオメガアシッド大量持ち込みして防具パラメータ上昇アイテムと交換
もしくは☆が多く値段が安い服・パーツを買って食べさせる
まぁ初心者スレに行きなされ
優しい兄貴達が手取り足取り腰取り教えてくれるよ
260:名無しオンライン
08/04/26 09:44:05.97 2rd+AWD5
>>259
がビス男かつポコスレ民なのが解った
261:名無しオンライン
08/04/26 11:45:33.99 juyxuH9+
>>258
キャラ作る→全裸に剥く→共有ボックスに身包みを入れる→キャラ作る→全裸に剥く→共有ボックスに身包みをを入れる→キャラ作る・・・
共有ボックスがいっぱいになったら一気に食わせる
262:名無しオンライン
08/04/26 15:59:23.69 Wx7DYsON
>>258
それなりに資金があるなら☆10の安い靴が半額になってるからそれがお奨め。
お金が無くてはぎ取りもしたくなかったらルームグッズショップでダン・ボウルだな。
263:名無しオンライン
08/04/26 18:17:03.62 ivWzbCpc
>>259-262
レスありがとうです。資金はそれなりにありますので
今から服屋さんに買い出しに行ってきます!
264:名無しオンライン
08/04/27 03:45:00.26 IK8YIWvA
礼はSSで頼むぜ
265:継承 II 君、死にたもうことなかれ(中編)1
08/04/27 16:08:45.79 M6jhRN+s
カーボン製の鋭い爪が風を切り、わたくしの頭をかすめます。
髪が数本切れて空を舞うのがちょっと面白いとか感じている場合ではありません。まだ直接当てられてはいませんが、そのうち髪がショートカットになってしまいます。
倒すべき目標のネイ・ファーストを攻撃すれば関係ないネイさんが傷つく。わたくしは完全に攻めあぐねていました。
「おまえたち人間はいつもそうだ!少しでも違えばおそれを抱き、自分より優れていれば妬み、堕落の中に安寧を見いだす醜い怪物だ!
この社会は何もしていない私を色眼鏡で見て排除したりだまして利用するばかり、弱者になんて少しも優しくない偽りの楽園なのさ!何が騎士道だ、この偽善者!」
人間でなくパシリだというつっこみは話がややこしくなりそうなので放っておいて、方法がないときは逃げて隠れるのがセオリーです。
素早い動きを逆手にとって足を払うと、ネイ・ファーストはたやすく転倒し、その間にネイさんをオパオパさんに引っ張ってもらって、わたくしたちは入り組んだ通路の陰に隠れました。しかし…
「隠れたって無駄さ!ほーら、大事なネイが傷つくよ!アハハハ!」
「痛あっ!」
ネイさんの胸に突然数本の傷が浮かび上がり、血が噴き出しました。ネイ・ファーストは自分の胸を爪で抉ったのです。
たとえ自分が苦しんでも憎い相手を痛めつけたいという純粋な悪意など、初めての経験です。わたくしは得体の知れない恐怖を感じました。
何か、何かないんですか!
今の悲鳴で場所はばれてしまったはずです。
錯乱気味にナノトランサーに使えるものがないかあさっていると、ものすごく古めかしいビジフォンが入っていました。ステージ2の装備はルビーバレットだけではなかったのですね。
『風のシルカ参上』と落書きが書いてありますが、廃品ではなさそうです…すがるような思いで通信してみましたところ。
ぶっ。ぶーん。低い音をたてて画面に映し出されたのは…
「ひゃあああ!?」
わあああ!?って、なんですか、いつぞやのおみくじ巫女さんじゃないですか。驚かせないでくださいよ…
「あ、あなたはあのときの…何で星霊への祈りの思念に割り込んでくるんですか!」
それはこっちが聞きたいのですが。何ですか、これもしかして電波ジャックですか?やっぱりグラール教団って電波集だ…あ、いえ、なんでもありません。
266:継承 II 君、死にたもうことなかれ(中編)2
08/04/27 16:10:59.72 M6jhRN+s
わたくしは手短に巫女さんに事情を説明しました。
「なるほど。似たような事例はグラールにもあります。本当はトップシークレットなんですがあなたは知りましたよね…
今の幻視の巫女クユウ・ミクナ(カレン・エラ)とその双子の妹である前の幻視の巫女ミレイ・ミクナのつながりです」
そ、そういえばそんなこと言ってましたね。忘れてましたが。
「あれは二人が双子だからというのもありますが、二人の父親ドウギ・ミクナが星霊紋という禁術を用いてなしたことだったんです」
それは知ってますけど、だいぶ違うような。結局なんだかよくわからないままじゃないですか…
「落ち着いて考えてみてくださいよ。これだけ力のある幻視の巫女姉妹でさえ互いのことを知らないままだったんですよ?
全く同じように傷つくなんて、双子の巫女で、禁術を使ってでさえ起こらないことなんです」
あ…ということは、ネイさんとファーストは、本当に同一人物なのですか!?でも、そんなことが…
わたくしのここでの目標はネイ・ファーストを倒すこと。ミッション情報で確認しても変わりありません。
二人が同一人物となれば解決自体はさほど難しくはないはずです…ネイさんを死なせても、理屈としてはネイ・ファーストを倒していることになるのですから。
でも、それでは倫理的に問題があります。
難しい顔をして考え込みだしたわたくしを見て、巫女さんは提言してくれました。
「そういったことにはグラールの科学で何でも説明をつけようとする私たちよりももっと詳しい人に任せましょう。これも本当は門外不出のものなんですが…あなたには恩がありますし、今からそちらに転送します」
非科学的なのもどうかとは思いますが、教団自体そうなのでとりあえず黙っておくこととして。
しかし、詳しい?いったい誰のことなんですか、それは。
「グラール教団が封印している、独立後のニューデイズ文化の基礎になったデータ、外宇宙から流れてきた『ニホン』の記録。
その中でも星霊紋の元になった術の使い手の記録です。今持っているそれは魂を操る神銃、ルビーバレットですね?その銃にセットして撃ち出してみてください。呼び出すことができるはずです」
星霊紋…聞こえはいいですが、それはある種の呪いです。すごくいやな予感がするんですが…でも、やらなければ解決できそうにないですね。コールッ!
雰囲気を出すために意味のない言葉を叫びながらデータを撃ち出すと、地面にニューデイズ文字のような模様が浮かび上がり、その中に人影が見えました。
267:継承 II 君、死にたもうことなかれ(中編)3
08/04/27 16:13:22.02 M6jhRN+s
フラクソジャケットとカブガラハカマ、レギュラースイムサンダルのようでいて装飾も何もない地味な服一式に、乱暴に切った黒い髪。一目で昔の人というのがわかりました。
「何だ、ここは…欧羅巴の召喚魔術か?いや、違うか…あまりにも不安定だ」
あ、あなたが星霊紋を使えたという…いったい何者ですか?
「陰陽師だ。陳腐な召喚で不本意ではあるが仕方あるまい、手を貸してやる」
眉間のしわを隠そうともせず、オンミョージと名乗ったその方は進み出ました。ネイ・ファーストは新手が出たとみるとすぐさま爪で連撃を繰り出しましたが、
オンミョージさんは貫かれると紙切れになり、またオンミョージさん自身はネイ・ファーストの背後から現れました。
「悪いが少しばかり問答につきあってもらう。事情が把握できておらんのでな…お前は知性を見て取れるにもかかわらず、己を見るなり襲いかかってきた。なぜだ?」
「おまえが、人間やそのネイに味方するからさ!」
「人間が憎いということか」
「そうだ!私は生まれてからずっと、あの忌々しい人間どもに迫害されてきた。どこにも私の居場所なんてなかったんだ!私が正しいなどとは言わない…でも、私を虐げた人間は許さない。
私が生きるためにバイオモンスターを使って人間を殺すのさ!そしてそのネイも人間の味方、人間に味方する者はみんな私の敵だ!」
狂気じみた、幸福への渇望。熱にうかされるような形相は、ネイ・ファーストがこれまで受けてきた迫害を物語るに十分すぎるほどでした。
「壊してやる、この腐った人間社会の何もかも!そうして私は初めて安らぎを得ることができるんだ!」
「下種め…もう語ることはない。滅びろ」
オンミョージさんの声が低く冷たくなり、殺気がみなぎってきました。
腕組みをほどき、見るだけで殺せそうな視線を向けます。ネイ・ファーストもこれにはたじろぎました。
「妖怪あやかしの類は己の専門分野でな。戦争よりは楽でいい…明治の世に廃されたこの陰陽道を今ひとたび見せてやるぞ、妖」
「ばけものとか言うなーッ!」
「五行相克、木気を以て土気を克す…」
オンミョージさんが手にした金属の杖で床を突き、主の口からも聞いたことのない詠唱がなされると、床をつき破って蔓草が生え、ネイ・ファーストの体にからみつきました。
そのまま硬くなった蔓草は、とがった先端をネイ・ファーストの体に突き刺していきます。
絞り出すような悲鳴と、赤い血が流れ落ちました。植物をふりほどいて向かってくるのを見ても、オンミョージさんは眉一つ動かしませんでした。
268:継承 II 君、死にたもうことなかれ(中編)4
08/04/27 16:15:15.34 M6jhRN+s
飛び道具としてだけではなく身代わり、フェイントとさまざまな用途に用いているシキカミに似た紙人形、呪いを放つ言葉。
オンミョージさんは見たこともない技術でネイ・ファーストを圧倒しています。どっちが悪役かわからないくらいです。
たしかに強いんですが…でも、これはやりすぎです!わたくしが精一杯レスタを連発しても、同時に傷つくネイさんへの回復がおいつきません!
やめるよう声をはりあげましたが、オンミョージさんは黙って冷たい一瞥をくれただけでした。
人の話を聞いてください!かくかくしかじかで、このままではネイさんが死んでしまうんです!
「見ればわかる。だが関係ない話だ。一人犠牲になって皆が助かるのが最善だというのなら、そうするべきではないのか?ましてこいつは」
馬鹿言わないでください!
怒りにまかせて、わたくしはオンミョージさんの言葉を遮るように叫んでいました。
わたくしを見るオンミョージさんの目が細められ、表情が消えました。
「玄人に求められるのは任務の遂行だ。情がなんだというのだ?結果が出せなければ意味がない…わからんのか、己はお前の迷いを断つことを手伝ってやると言ったのだ」
何ですって…
悪い予感は的中したようです。オンミョージさんはネイ・ファーストを倒すことを最優先し、ネイさんが死ぬことを当然としているのです。
手足をあらぬ方向にねじ曲げられてネイ・ファーストは倒れ、オンミョージさんは刀を抜き放ってその首に突きつけました。
269:継承 II 君、死にたもうことなかれ(中編)5
08/04/27 16:16:25.24 M6jhRN+s
「この者は妖を操り人を苦しめる大罪人だ。過去に虐げられていたのなら、今人を虐げていいというのか?
否!法は感情のためにあるものではない、秩序を守るためにあるのだ。罪にはしかるべき報いを与えねばならん。それが社会というものだ」
ま、また裁判のようなことを。だからといって何もしていない人を巻き込んでいいわけがないじゃないですか!
「無関係ではない。こいつらは同一人物だ。このネイとはネイ・ファーストに残された良心が形をなした妖だろう」
そ、そうだったんですか…でも、だったらなおさらまずいですよ!良心が死んじゃうなんて。
「咎のあるをばなおも憐れめ、か。甘い、甘すぎる。同情の余地が残っていれば罰しないなど、罪人を野放しにすると同義だ。お前は次の犠牲者が出ることを考えていないだけだ」
そのとき、ネイ・ファーストが急に起きあがり、オンミョージさんを背後から爪で貫こうとしました。しかし。
「…!」
わたくしが割り込むまでもなく、ネイ・ファーストは全身を見えない糸に縛られたように苦悶の表情を浮かべながら硬直し、再び地面をなめることになりました。
オンミョージさんは自分を狙えばこうなるように呪いをかけていたのでしょう。もちろんネイさんも同様に苦しんでいますが…
「このとおりだ。罪人も妖も動物と同じ、罰して苦痛や死を与えてやらねば何度でも同じことを繰り返す。お前の守るべきものは何だ?自己満足で武士道を語るな」
う…それは…
「人間の歴史は戦いの歴史。人は生きるためいくつもの犠牲のうえで自然とその権現たる神や妖怪を克し歩んできた。
己の知る限りでは、反動で他に被害を及ぼす禁術以外の方法でこいつらを分けることはできん。それゆえ犠牲を払ってでも滅ぼすべきだというのだ。さあ、それを覆す考えはあるのか!」
なんだかすごく悲しくなってきました。オンミョージさんの言うことは的確で、ただ情のためだけにネイさんを死なせないようにしているわたくしでは言い返せません。
わたくしの騎士道は、ただのわがままなのでしょうか?
わたくしは、何のために人を守るのでしょう?認識できる範囲で自分が満足するためだけじゃないんでしょうか?
オンミョージさんは他に被害が出るからと禁術を使うのをやめています。この場だけではなく、もっと広い視点で考えているのです。
わたくしはそこまでは考えられません。もしかしたらわたくしのしたことのために知らないところで泣く人がいるかもしれないのです。それは本当に正しいことなのでしょうか…?
270:継承 II 君、死にたもうことなかれ(中編)6
08/04/27 16:17:16.31 M6jhRN+s
顔を伏せて棒立ちになっていると、すっかりそこにいることを忘れかけていたオパオパさんが心配そうにわたくしの服を引っ張りました。
オパオパさんも昔、邪悪な生物に操られた父親を救ったのだと聞いています。その澄んだ目…もといガラス板様の光センサーを見て、それで決心がつきました。
わたくしは顔をあげ、自分よりずっと背の高いオンミョージさんの顔を真正面から見据えました。
やります。勝算のあるなしなんて関係ありません。
任務は成功させる、ネイさんは守る。たとえこれが自己満足にすぎないのだとしても、何もしなければどのみち解決なんてしません。
目の前のことをやりもせずに諦めるなんて、納得できるはずないです!
「ああ、やってみろ!お前が方法を考え出せなければ己がやつらを滅して解決してやる」
そう言いながら、オンミョージさんは刀をおさめてとどめを刺すのをやめました。
このとき初めてわたくしは彼の気持ちに気づきました。
本当は殺していいとは思っていない、でもそれを押し殺して背中で泣きながら、守るべきもののために今までいくつもの犠牲を払ってきたのだと。
どうにもならないことに対して、不条理でも最善の方法をとらなければならないというプロであるがゆえの悲哀。
確立されていない方法でも希望があるのなら今一度賭けてみたいと、そう思っておられるからわたくしに任せたのでしょう。
期待は、裏切りませんよ!
-続く-
271:名無しオンライン
08/04/27 16:27:17.71 M6jhRN+s
続き投下です。
えらく時間がかかっていますが、仕事が忙しかっただけでなく、実はけっこう悩んで大幅に書きなおしたからというのもありまして。
解説の中で理由を書いてます。
「地球人」
ファンタシースター2の事実上のラスボス。実体化したダークファルスを封印してしまったほか、高度な文明をアルゴルにもたらし、
環境管理コンピュータ・マザーブレインを作って砂漠の惑星であったモタビアを緑化させるなど意外にすごいことをやっている。
同時に彼らがもたらしたのは、楽な生活ができるようになった(この時代、モタビアでは働かなくても生きていける)ことによる人心の堕落であった。
そうやってアルゴルの人々を腐敗させたのは、ここでの地球人は自らの心を律することができなかったために地球をつぶしてしまった人々であり、
たどりついたアルゴルで質素ながらも幸せに暮らす人々に嫉妬して征服に乗り出したから。
なので、アルゴルを守ろうとするユーシスたちと最後に戦うことになる。
ここで出したオリジナルの陰陽師も地球人ですが、時代設定がそれよりもだいぶ前。
アルゴルへ進出した地球人との直接の接点はありませんが、激動の時代に生きた、精神性がむしろユーシスたちに近い人として描いております。
本当はサクラ大戦の大神一郎を出したかったんですが、社会秩序を優先する冷たい人として描くのはあんまりなので急遽変更。
副題とこの時代の日本人であることなどはその名残で。
生きることが決して楽ではなかった時代にたくましく生きた人々、その精神の復権こそがファンタシースター2のメインテーマであると筆者は理解しております。
「ヒトガタ」
PSOの本星である惑星コーラルの文明にはどうも地球文明の影響が少なからず入り込んでいるようで、
陰陽道のヒトガタや日本刀(アギト)、グングニルやデュランダールといった名称のものが見受けられる。
どうやら地球文明はアルゴルだけでなくコーラルのほうにも出ていっていたようだ。
「ネイ・ファースト」
ネイのオリジナル。ファンタシースター2の中ボスの一人。プラントで偶然生まれたバイオモンスターと人間のハーフで、研究所から逃げ出した。
その後安住の地を探すが、人とは違う長くとがった耳などの特徴は迫害にさらされる要因となり、やがて彼女は激しく人間を憎むようになっていく。
そして自分を生み出した研究施設に戻り、バイオモンスターを大量生産して人間に復讐を始めた。
本当は愛してほしいのに誰からも愛されないこと、それがネイ・ファーストを自暴自棄にさせ、破滅的思考へと進ませたのであろう。
その行為に耐えられなくなった彼女の良心が分裂して生まれたのが、ユーシスに拾われたほうのネイなのである。
異邦人を警戒するというあまりにも自然な人の業が生み出した悲劇、ネイ・ファーストはその被害者であったのだとも言える。
272:名無しオンライン
08/04/28 01:46:42.20 SfXTgdkB
>>社会秩序を優先する冷たい人
ラチェット(劇場版)とかそんな感じだけどもうセガ関係なくなりそう。
大神隊長は次の機会を期待いたします。
273:ワルキャスとワルパシリ
08/04/28 15:37:47.24 9a7CNLeA
そして横合いから爆弾投下
それは変なパシリと変な主のお話。
「あー…おっぱい揉みたい…」
「いきなり何言い出すかなこのアホは…」
ワルキャスとワルパシリ~たまにはコンナ日々・改~
「モトゥブの暑さで脳みその回路が焼ききれたんじゃネェのか?」
「残念、俺はいたってノーマルだぞワルパシリ」
モトゥブ勤務についたワルキャス。
就任当初はイルミナスや謎の組織との戦いで割りとシリでアスであったが、
あまりにも長いのと中の人の都合で追って別の機会に出そうと思う。
ワルキャスの故郷、グランブルファミリーの仕切る町、グランブルシティ。
現在、ワルキャスはそこのガーディアンズを引っ張り、新生ローグスとの橋渡しの一翼を担っていた。
ロボヘッドから、金髪ヤンキーな人顔にチェンジし、
テンガロンハットを水晶髑髏に被せる様はまさにカウボーイ。
性格の悪い411こと、ワルパシリからキンキンに冷えたハッピージュース受け取って漏らしたセリフが。
「あー…おっぱい揉みたい…」
まるで呼吸するかのようにエロセリフを吐く様は、相変わらずのエロキャストであった。
酒好きが高じて自分の部屋にBARをつくるまでになったワルキャスのマイルーム。
今日もお疲れとばかりに、ハッピージュースを空けながらワルキャスのエロ講義がはじまった。
「だってそうだろ! 最近のガーディアンズはイヤラシ過ぎる!」
「そりゃお前は元からイヤラシイ、つか変態だろう」
「…まあ、そりゃあな」
「…(だめだこいつ…はやく去勢しないと…)」
「まあ…これを見たまえワルパシリ君」
ワルパシリが微かに青筋を立てながらも、ワルキャスはどこから出したのか映像端末を引っ張り出した。
そこに浮かぶのはつい先日あった雑誌機関協賛のイルミナス電撃作戦用アミューズメントミッション、
通称”DMC”の場面…決して卑猥な言葉を1秒間に10回以上発言するデスメタルバンドではない。
274:名無しオンライン
08/04/28 15:44:28.56 9a7CNLeA
「なんだ? お前の戦闘記録か?」
「見てみろ、このPT面子を!」
「うわっ! な、なんだよこれ…うわぁ…」
それは最近流行のミクミコやボルワイヤルを着た女性ガーディアンズの面々。
弓を打てばたゆんっ、剣を振るえばポヨンッ…みたいな効果音が聞こえそうな映像ばかり。
思わずワルパシリも赤面して映像を眺めてしまった。
「な、ケシカランだろう?」
「ぅ…ああ、まあな」
「まったく、風紀の乱れは心の乱れともいうからな…嘆かわしい事だぁ!」
酒が入ってるのか感情が高ぶってるのか、拳を震わせながら力説する変態キャスト。
そして、ワルパシリをがばぁと抱き寄せ、膝上にちょんとのっけてしまう。
不意の抱き寄せに反撃できず、ワルパシリはもがくのみ。
「って…ぎゃわあああっ! ななあなななななああああ!? なにしやがるっ!」
「でだ、ワルパシリ君、本題に入ろう…デェイ!」
ワルキャスは背中から取り出したパッケージをBARのテーブルにドンと乗っけた。
それはPMの拡張バージョンアップツール、箱には水着姿の可愛らしいウサ耳パシリの姿が。
「PM…461…? あ、新型デバイスか!」
「正解ッ!」
「正解ッ…じゃねぇー! はっ…はなせ、ばかっ!」
急に抱き寄せられ、顔を真っ赤にしながら抗議するワルパシリであったが、心なしか力が弱いのは気のせいか。
275:名無しオンライン
08/04/28 15:48:18.94 9a7CNLeA
フフフフと笑うワルキャスはそのまま彼女を丸め込めようと耳元で誘惑させる。
「だってよー…こう、いつまでもメイド服ってのもマンネリだよなぁ~…
たまにはワルパシリにも気分転換で水着でも~と、おもった俺のこころやさしいいい~心遣いって奴よ」
「それとこれとはかんけーねぇ! つか、急に抱きしめんなっ…反則だっ反則っ! むきいいいい!」
「フハハハハハハハハ!」
腕の中でじたばたするものの、拘束を解くには力不足。
しかし、その手足が映像端末にあたり、コロコロと床に落ち、音声ボリュームが最大になる。
”もおーっ…ワルキャスさんさっきからじろじろみないでよーっ♪”
”いやーっはっはっは、君があまりにも綺麗だから見惚れちゃったよー♪”
”まったく、戦闘中だというのに…そ、そんなに…キワドい…か…? 確かに…胸や臀部が強調されて…”
”フフフフッ…そういったクールで可愛い所がお前のいい所だぜ?”
”フッ…フンッ! ほ、ほめたつもりだろうが…そ、そんな手は…き、きかんぞ…もぅ”
その声が耳に押し込まれた瞬間、ワルキャスは凍結状態。
ワルパシリは黙って腕をすり抜けると、デスダンサーを抜き放った。
その目線には殺意が篭もり、狙いは眼前のワルキャスに向けられている。
「…そういえば、ソレ使うのに戦闘値いるよな? ちょっと稼がせてもらうわ、ゴシュジンサマ!」
「ひいいいいいいっ…お手柔らかに…」
「断るッ! シネエエエエエエエ!」
「デスヨネエエエエエエエッ!」
今宵も狩られる変態が一人…ワルパシリが水着姿になるのはまだ遠い。
それは変なパシリと変な主のお話。
以上でし。
ほんとに戦闘値がたりない…上げ方が解らない俺がいる。
水着着せたい…(´・ω・`)
276:名無しオンライン
08/04/28 23:54:39.66 BRVf2JZ8
ワル二人キター!
戦闘値はクリアランクで獲得できますよ。
難易度に関係なく、Sランクでクリアすれば1/4ほど増えるので
単純作業に絶えられるなら通路を駆け抜けるとか。
そして、根性で1レスにまとめたSS投下
277:名無しオンライン
08/04/28 23:59:10.29 BRVf2JZ8
男「430さん、これにリフォームしてもいいですか?」
つ[バイオ・パニック]
430「黄色い救急車でもお呼びしましょうか、ご主人さま?」
男「ちょwwwテラ都市伝説wwwwwww」
430「そんな部屋に住みたがる人が健常者だとは思えません」
男「いや、そうじゃなくて、フラワー飾って『さっき水を止めました、もうじきみんな枯れるでしょう』とか
豆料理のときに『味はともかく、長靴いっぱい食べたいよ』とか言ってみたくて…」
430「そんな一時のネタのために、あんなお部屋にするなんていやです!
大体、誰がこの部屋を掃除して差し上げてると思っているんですか!
ご主人さまは私に未開のジャングルを開拓させるおつもりなのですか!?」
男「(´・ω・`)」
430「そ、そんな顔したって、ダメなものはダメです!」
男「(´;ω;`)」
430「…はー、分かりましたよ、もう…。一週間、一週間だけですよ!」
男「(`・ω・´)」
430「それじゃあリフォームしますから、お外で時間をつぶしててください。…はぁ」
* * *
男「そろそろ終わったかな~、ら~ん らんらら らんら…あ、あれ?」
男の部屋は彼が期待していた腐海の中ではなく、ごく普通の飾り付けがされた洋室になっていた。
男「あの~430さん、やっぱりいやだった?」
430「違うんです! あのチケットを使ったのに、こうなっちゃって…」
男「中身が摩り替わってたのかなぁ…。しょうがない、サポートに電話してみるよ」
男「さて、どう伝えたものか―っ!?」
窓に映っていたものに気づき、男は驚愕した。ギョロリとした目つきの、人間?らしき姿。
慌てて飛び退きもう一度窓を見るが、そのとき既にそいつの姿はもうなかった。
男「き、気のせい…?」
430「キャアアアァァァァーーーーッ!!」
男「! どうした430!」
慌てて隣の部屋に飛び込むと、大勢のカラスが430の全身を啄んでいた。
男「うわっ、なんだこいつら! 430から離れろ!」
430「ふぇぇぇ、ごしゅじんさまぁ!」
男「どうなってるんだ一体…!?」
バリィィン!
間髪入れず、巨大な犬が窓を突き破って部屋に侵入してきた。
全身真っ黒で目は血走り、大きく裂けた腹部から内臓が覗いている―
430「いやああっ、何これ!? なにこれえっ!!」
男「い、430さん、応戦して! 構わないから撃ちまくって!」
430「やだ、逃げる! 怖いのやだあっ!」
男「くっ、しょうがない!」
恐慌状態に陥った430を抱えて男は駆ける。まずはこの場所から逃げ出さなくては!
そう思い、なんとかマイルームの入り口にたどり着く。あわててロックを解除したその先には―
フシューッ フシューッ !!
異常に筋肉の発達した、大男らしき怪物が…
男&430「…………きゅーっ」 バタン
リフォームチケットでマイルームを模様替え!
「ホラー&バイオレンス」
四六時中、ゾンビが襲いくる恐怖の内装です。
バイオ・パニック Maid in CAPCOM (c)
278:名無しオンライン
08/04/29 01:07:13.18 tj3GkMqV
ちょwバイオ違いww
こんな部屋でくつろげるヒトはさすがにいないだろう…と。
その部屋の作成元の特産品でもある、某殺意の波動の使い手なら或いは?
279:名無しオンライン
08/04/29 02:50:32.83 bPlxq9Yo
>>277
男はジブリファンなのかw
てか、リフォームってレベルじゃねーぞ!
>>278
そして「殺意の波動に目覚めた430」とかになるんですね、わかります!
280:名無しオンライン
08/04/29 23:08:08.41 Mxm8dC+S
書いてたらスゲー長くなっちまった
短編が流行る中、またしても空気を読まずに長文乙な俺サーセン
281:1/12
08/04/29 23:09:09.61 Mxm8dC+S
私はGH-412、とあるガーディアンのパートナーマシナリーをしています。
合成ボーナス期間に入り、私達は足りない素材を補うべくラフォン野営基地に来ていました。
今回の目標は、パルム超高級木材パル・ウォルナの伐採です。
主人「フゥ、日頃通ってるのに木材が足りんとはな」
412 「ご主人様…カン・ウーを1日で10本以上も作れば無理もないですよ」
主人「38の壁を越えるには仕方のない事だ」
412 「これだけカン・ウーばかり作るのはご主人様だけだと…あれ?」
私はふと、不自然な感じに気付きました。
振り向くとそこにはいつもの人口森林が広がっていますが、私には分かりました。
いつもと違う、何か異質の存在がそこにいる事を。
主人「どうした、何かあるのか?」
412 「…いえ、分からないんですが変な感じがしまして」
主人「…どれどれ?」
ご主人様が大きな手で草木を押し退けると、そこには驚くべき光景がありました。
主人「こ、これは…」
私も手を口に当てて、その光景を疑いました。
全身が傷付き、服も所々が破けてしまっている人が倒れていたからです。
しかし、少し見つめればそれはすぐに人ではないと分かりました。
何故なら…その「ヒトガタ」は私達パートナーマシナリーの耳をしていたからです。
282:2/12
08/04/29 23:09:49.61 Mxm8dC+S
主人「…これは、ニャックルか」
ニャックルとは、大流行のマシナリーであるGH-422の通称です。
マシナリーの中でも最高基準の攻撃力を持ち、ボッガ・ズッバの使い手でもあるので
テクターは勿論、前衛職にさえ高い人気を誇る汎用型マシナリーです。
以前はGH-420シリーズは総じて癖のあるパラメータになるので通好みでしたが
今ではEXデバイスがあるので、打撃合成特化型GH-422も存在しています。
412 「どうしたんでしょう…こんな所で行き倒れているなんて」
主人「おーい、生きてるか?」
ご主人様がついついと頬を押しますが、422さんは起きる気配がありません。
412 「ご主人様、私がスキャニングしてみましょうか?」
主人「そうだな、そうしてくれ」
私は意味もなく眼鏡をちきっと直して、スキャンモードに入りました。
その結果…ジェネレーターやリアクターに異常はなく、全てが正常値でした。
つまり、単に疲れて寝ているだけと言う事です。
412 「うーん…異常はないみたいなので多分その内起きるんじゃないですか?」
主人「正に猫だな、しかしこのままはいサヨウナラというわけにもいかん格好だな」
412 「確かに…このまま元気にオハヨウと言う感じではなさそうです」
主人「412」
412 「はい、何でしょうか?」
主人「今は夕方だ」
283:3/12
08/04/29 23:10:34.55 Mxm8dC+S
主人「仕方ないから部屋に運ぶか…」
そういうと、ご主人様は422さんについてる葉っぱ等を手で払い除けて
ひょいっと抱き上げ…抱き上げ? え、ちょ、ちょっと…それは、それはぁ!?
412 「ご、ご主人様ぁ!」
主人「何だ、大声出して」
412 「よ、よりによって何でお姫様抱っこなんですかぁ!?」
主人「米袋の如く担いだら失礼だろ」
412 「よりによって米袋に例えるんですか…って、そうじゃなくて!
お、おんぶとか他にも色々と方法があるじゃないですかぁ!」
主人「この体格差でおんぶしたらズリ落ちて返って危ないだろうが」
412 「…そ、それならナノトランサーに入れるとか」
主人「運んでる最中に起きられたら俺の背中が危険な事になるから却下だ」
412 「う、うぅ~…」
主人「で、他に反論は?」
412 「ありません…お姫様抱っこされていいのは私だけなのにぃ…ブツブツ」
羨ましい光景を、私はただただ嫉妬しながら見ているしかありませんでした。
そして、ご主人様がいざ運ぼうとした矢先…。
*がすがすがすがす!*
422 「しゅわーっち!!」
主人「あいで! 寝ぼけながらダンガして来やがった!」
412 「ご、ご主人様…やっぱりトランサーに入れた方が…」
主人「その方が非常に嫌な予感がする!
くっそ、何発かクリティカルしやがった…」
284:4/12
08/04/29 23:11:14.36 Mxm8dC+S
-部屋-
こうして私達は、行き倒れた422さんを部屋のベッドまで運びました。
運び終えてから2時間、422さんは未だに目を覚ます気配がありません。
412 「けど、よく寝てますねー…」
主人「こうなるまで、ろくに眠っていなかったのかもしれないな」
412 「でもとっさに連れて来ちゃいましたけど、大丈夫でしょうか?
422さんのマスターさんが探していたりしないでしょうか…?」
主人「起きてから連絡とってもらえば大丈夫だろう?」
412 「…そっか、そうでしたね」
*がばっ!*
422 「………?」
主人「…お、起きたか?」
412 「あ、良かったぁ。目を覚ましたんですねー?」
422 「………」
突然起き上がった422さんは、ご主人様を見るなり…。
422 「きゃあああああああああああ!!!!
な、何この男!? 私をこんな所に連れ込んで何のつもり!?
私があまりに可愛過ぎるからって何を企んでるのよーっ!!」
物凄い勢いで叫びまくりました…。
主人「うわ、よりによって説明が面倒臭い起き方しやがった…。
しかもツッコミ所満載だし、ここは同姓の412に説得を任せる!」
412 「ええ~っ!? 机の物をこんなに投げられてる状況で説得なんて…」
主人「健闘を祈る。早くしないとミ・カンを投げられるぞ!」
285:5/12
08/04/29 23:11:57.49 Mxm8dC+S
422 「いやー、助けてくれた人とは知らずすいませんでしたー。
そうでしたそうでした、私ったら疲れてつい寝ちゃったんですよねー」
何とか説得を終えた422さんは、ケラケラと笑いながらミ・カンを頬張ってました。
その向かい側には、ご主人様とシャワーを浴び終えたばかりの私が座ってます。
はい、結局間に合わずミ・カンを1つ頭に投げつけられました…。
412 「分かってくれて何よりです、はぁ…」
主人「さて、聞きたい事は山程あるぞ。何故あんな所で寝てたんだ?」
422 「え、私の好物ですか? 420シリーズの好物と言えばマタタビでしょ!
けど私は違うんですよねー、やっぱりこの季節はイシダイがグーッド!」
主人「お前の好物なんてどうでもいいわ!
ネルとコウブツじゃ字数も1文字も合ってないだろうが!」
422 「イシダイの刻みを貼り付けたグッレ・ミサッルなんかは格別なんですよね!
形が魚に何か似てるし、食べ応えも十分だから一度お試しあれ!」
主人「聞いてないなコイツ!」
412 「あ、あの~…422さん? マスターはどうしたんですか?」
私がご主人様の一言を出すと、それまでマシンガントークだった422さんがぴたりと止まりました。
顔を暗くして俯く反応から、あまりいい質問ではなかったようです。
422 「………」
412 「はぐれて1人でいるなら、きっと心配してますよ?
連絡を取って、お迎えに来てもらいましょう?」
422 「…来やしないわよ、あんな奴!」
412 「そんな事ないですよ、422さんの事が大事でしょうからきっと…」
422 「大事じゃない私なんかの為に来る訳ないじゃない!
どうせあんな奴、私よりもローグスや英雄様が大事なのよ!」
412 「ローグス? 英雄? …そ、それだけじゃどういう意味かさっぱり分かりませんよ」
主人「…成る程な、大体読めたぞ」
286:6/12
08/04/29 23:12:57.08 Mxm8dC+S
主人「お前さんのマスター、タイラーとイーサンにお熱なわけだな?」
422 「………」
412 「あれ、ドン・タイラーなら分かりますけどどうしてイーサンまで…」
主人「ここ最近の事だから俺もよく知らんが、イーサンが原隊復帰したそうだ。
それで、成績優秀なガーディアンにだけ協力要請を出す事が出来るようになったわけだ」
412 「…そうだったんですか。犯罪者を処罰なしで復帰させるなんて…」
主人「そこにツッコむのか。実に正論だが」
その後、ご主人様は詳しく説明してくれました。
イーサン・ウェーバーはスピンングストライク、グラビティブレイク、アブソリュートダンスと
一撃が強力なPAを駆使する上に、非常に効果の高いレスタの使い手でもあるらしく
それまで人気のあったブルース・ボイドさんを押し退ける人気が集まりつつあるそうです。
あれだけ自分勝手さが理由で不人気だったのに、強くて使えると分かると
尻尾を振るガーディアンズの現金さは昔からちっとも変わってません。
主人「で、用済みになったお前さんは構われもしなくなったと」
422 「…はいそうですよ! 前は私だけが頼りとか言っちゃってたくせに
今じゃ合成基板を渡されるだけで口1つ聞いてくれやしませんよ!
合成も高属性じゃないと叩かれる毎日…だから私は逃げたんです!」
412 「叩くなんてそんな…酷い!」
主人「珍しい話でもないな。武器の属性値は結構重要だからな。
中にはそれが原因で辞表を出したり、デバイスゼロに頼る奴もいるらしい。
全財産を賭けるような合成、昔から成功するわけがないと分かってるのにな」
422 「貴方はいい環境に巡り会えてるかもしれないけど、PM全部がそうじゃないのよ…。
私なんてまだいい方よ、中には知らぬ間に壊されてたりするのもいるんだから…!」
422さんは手を震わせながら、冷却水をうっすらと流していました。
きっと、こうなるまではご主人様に良くしてもらっていたのでしょう…。
一変した環境が信じられずに飛び出す気持ち、恵まれた私には分からないのかもしれません。
287:7/12
08/04/29 23:13:45.02 Mxm8dC+S
412 「で、でも…これからどうするんですか?」
422 「…さぁね、戻っても叩かれるだけの扱いが待ってるだけだろうし。
本部に申請しても、記憶を飛ばされて丸っころになれるくらいだろうし。
私はそんなのは嫌! 私が私でなくなるなんて絶対嫌よ!」
412 「だけど、このまま放浪するなんて…ご主人様…」
主人「何なら、最後にお前さんのマスターを試してみたらどうだ?」
突然のご主人様の提案に、422さんはそれまで俯いていた顔を上にあげました。
主人「本部でお前さんのマスターに、行き倒れになって保護されている事をアナウンスしてもらう。
引き取りに来るか無視するかで、お前さんがどう思われているか分かるだろ」
422 「…無駄ですよ、そんなの。だってマスターはいつもGBRに…」
主人「やるだけやってみるのもいいんじゃないか?
それまでは面倒見てやってもいいから、な?」
412 「そうですよ…どうせならハッキリさせちゃいましょう!
もしかしたら、とっても心配してグラール全域を探し回ってるかも!?」
422 「…私の事を、心配して…?」
主人「最後はお前さん次第だけどな。戻りたいか、マスターの元に?」
422さんの目から、冷却水が今までより多く流れ始めました。
頬を伝い、ぽたぽたと置かれている茶碗のお茶の量を増やしながら…。
422 「…戻りたいに決まってるじゃないですか…あの頃みたいに。
だってどんなに酷い扱いされても、マスターはあの人だけなんですから…!」
主人「決まりだな、早速明日申請するとしよう」
412 「さ、涙を拭きましょ? せっかくの可愛い顔が台無しですよー」
私は手持ちのハンカチをすっと差し出しました。
けど、422さんはハンカチではなく私に抱き付いて…。
422 「…ずび~~~~」
412 「わわわわわ、そ、それは私のお洋服~!!」
288:8/12
08/04/29 23:14:40.34 Mxm8dC+S
こうして私達の少しの間だけの3人生活が始まりました。
422さんはそれまでまともな御飯を食べていなかったらしく、それは凄い食べっぷりでした。
おまけに寝相が凄い悪くて、私も何度かダンガされて結構いいのをもらってしまいました。
…早く終わるといいな、422さんの為にも、私の健康と食費の問題の為にも!
そうして3日が過ぎた頃、ご主人様の元に本部から連絡が入りました。
422さんのマスターさんが捜索願を出していて、これから引き取りに来ると。
主人「後1時間もしたら迎えに来るらしい」
422 「ほ…本当なんですか!? 本当にあいつ…来るんですか!?」
412 「良かったじゃないですか、422さん!
やっぱり試してよかった、探してくれてたじゃないですか!」
422 「うん、うん…よかった…ありがとう…」
主人「泣くのはマスターが来てからにしな」
422さんは何とか涙を堪えて、迫る1時間後に備えて必死におめかしを始めました。
おめかしと言っても、普段と変わりないか寝癖がないかチェックする程度なんですけどね。
待つ事30分程度、普段私達以外が開ける事のないドアがノック音を奏でました。
入ってきたのはご主人様よりちょっと低い程度のビースト男性。
獣男「…見つけた、ようやく見つけた!」
422 「…ます、たー?」
獣男「…何処行ってやがった、探したんだぞ!」
422 「…ま、ますたぁ~!!」
422さんは早速、顔をくちゃくちゃにしながら自分のマスターに抱きつきました。
マスターさんも422さんの頭を撫で回し、優しく抱き返していました。
…何だか、私まで冷却水が零れそうです。
289:9/12
08/04/29 23:16:03.15 Mxm8dC+S
獣男「…もう何処にも行かせないぜ!」
422 「ますたー…ごめんなさい、ごめんなさい…。
もうどこにもいきません、ずっといっ…」
獣男「俺のクレアダブルス基板~!!」
3人 「…へ?」
そう言うや否や、マスターさんは突然怒りに満ちた表情で422さんを叩いてしまいました。
私達は状況が良く飲み込めず、422さんを庇えず…くれあだぶるすきばん?
一体この人は何を言ってるんだろう? 422さんは422さんで、基板なんかじゃ…。
獣男「てめぇこの野郎! 俺がどれだけ苦労してその基板拾ったと思ってんだ!?
ようやく材料が揃って合成しようとしたその日にいなくなりやがって、アァ!?」
422 「きゃうっ…!」
マスターさんは422の胸倉を掴み、そのまま上に持ち上げました。
獣男「いなくなるんだったら、合成終わってからにしやがれ!
そうでなくても打撃100作るのはタリィんだ、分かってんのかこの糞が!」
422 「あ…あぐ…っ」
412 「ちょ、ちょっと! あんまりじゃないですか!
422さんは貴方に迎えに来てもらって、また仲良く過ごしたいと思ってたのに!」
私がいてもたってもいられず、噛み付くとマスターさんはギロリとこちらを睨みました。
獣男「何お前? うっぜー事言いやがんな、このデコ助が?
俺のクレアダブルス基板を見つけてくれた事には感謝するんだけどよー?
人んとこのパシリの扱い方に文句付けねーでくれる?」
412 「…デ、デコ助!? そ、それはともかく、貴方は422さんを何だと思ってるんですか!?
さっきから基板基板って、422さんはパートナーであって基板なんかじゃないです!」
獣男「あー、超ウゼーしお前。 コイツは俺のパシリだ、俺の為に動いてトーゼンだっつの。
人権とかそんなのは存在しねーんだよ、分かるー?」
290:10/12
08/04/29 23:17:05.83 Mxm8dC+S
412 「あ、貴方って人は…!」
主人「やめとけ」
勢いでレイピアを取り出そうとする私を、ご主人様は手を出して止めました。
マスターさんはまるでリュックサックを背負うかのように、胸倉を掴んだまま422さんを後ろにやりました。
もう422さんは、乱暴な扱いに耐え切れず気を失ってしまっていました。
獣男「んじゃそんなわけで、見つけてもらってあざーっす。
お宅んとこのパシリも調教し直した方がいいんじゃねーのォ?」
私が我慢出来ず、ご主人様の手を押し退けてでも噛み付こうとした時でした。
主人「なぁ412、確かガーディアンズの仕事は護る事って言ってた奴いたよな」
412 「…え? は、はい、炎の絶対防衛線の時のWTさんがそう…」
主人「じゃあ、マシナリー護るのもガーディアンズの仕事だよな」
412 「…! は、はい! 勿論です!」
主人「じゃあ、たまには俺もガーディアンズらしい仕事をするか」
ご主人様は、トランサーからビル・デ・アクスを取り出すと、マスターさんに近寄っていきました。
基板を取り戻して上機嫌なマスターさんは、その気配に気付けなかったのでしょう…。
主人「…ふんっ!」
*ごぃぃぃぃ~ん*
獣男「まっしぶっ!」
マスターさんは、ビル・デ・アクスの峰打ちを食らって大きくふっ飛びました。
手を放された422さんを片手で受け止め、廊下の壁に叩き付けられるマスターさんに向けて。
主人「そっくり返すぞ。人のPMの扱い方に文句付けないでくれる?」
その姿は、とっても格好良かったです…。
291:11/12
08/04/29 23:17:54.76 Mxm8dC+S
そして、422さんのマスターさんは懲罰房に行く事が決定されました。
ご主人様が、昔から良くしてくださるレオ教官に事の詳細を話した結果、
ガーディアンらしからぬ行動として、1ヶ月の懲罰房後、3ヶ月の謹慎処分となりました。
とはいえ、同僚を吹き飛ばしてしまったご主人様も1週間の謹慎処分となってしまいました…。
422さんの後の待遇については、あまりに酷い環境だったので本人に任せてもらえるそうです。
412 「…422さん」
422 「気にしないで、むしろ吹っ切れる事が出来たから。
あんな救い様のない奴なら、こっちから捨ててやるっての!」
空元気を振り回す422さんは、必死に笑って窓の外を見つめてました。
手が微かに震えているのが、本当はとても悲しいんだと言う事を訴えてきます。
良かれと思ってやった事が辛い結果になり、ご主人様もただ黙り続けていました。
412 「…これから、どうするんですか?」
422 「それはもう決めてある。私、強化措置申請を出そうと思ってるんだ」
パートナーマシナリーの強化措置。
それは私達マシナリーが、キャストと同等の存在になる強化を受ける待遇の事です。
キャストの人権すら侵害しかねないこの強化措置は、余程の事情がなければ受けられません。
私も話で聞いただけで、都市伝説とも言えるほどの夢のようなお話でした。
422 「…このまま全部忘れて、新しい人の元に行くんじゃ意味がない。
私はこの嫌な思い出を忘れず、ガーディアンになりたいと思ってるの。
そして、二度と私みたいなマシナリーが出て来ないように、人を教える立場になりたい!」
主人「…いいんじゃないか? 幸い今はイーサンが戻ったばかりだ。
あの単純バカが乗りそうな話だ、上手く巡れば実現できる可能性は十分ある」
422 「ええ、私はやってみせますよ! 」
412 「…頑張ってください、私応援します!」
422 「うん、ありがと!」
292:12/12
08/04/29 23:18:41.84 Mxm8dC+S
422 「それじゃ、しばらくよろしくお願いしまーす!」
二人「…はい?」
422さんはそそくさっと座布団に座り、ミ・カンを頬張り始めました。
422 「いやーだって、強化措置申請通るまで何処かで過ごさなきゃならないじゃないですか?
私身寄りいないし、寝る場所探すにしても見つかるまで野ざらしってわけにもいかないですしー」
主人「食いながら喋るな! テーブルに粒飛んでるだろうが!
いや違う! 何故俺の部屋に居座る気満々なんだ!?」
422 「水臭いなぁー、短い間共に過ごした仲間じゃないですかー?」
412 「そ、そりゃそうですけど、ダメですっ!」
422 「えー、どうしてよー?」
412 「とにかくダメなものはダメなんですっ!」
422さんはちょいちょい、と私を手招きしました。
むすっとしながら近寄ると、422さんはニヤニヤしながら耳元に囁いてきました。
422 「だーいじょぶだって、貴方とご主人様の邪魔はしないからー♪」
412 「………~~~~~!!!?????」
-終-
293:名無しオンライン
08/04/30 10:28:56.81 y6S92Dyo
長いけど読みやすくてGJ
みんなパシリは大事にね!
294:名無しオンライン
08/04/30 17:27:40.87 avTvMnPW
>>264
遅ばせながら防具特化パシリが完成しましたー。
有難うございました!
セラフィ20枚セット完了!
psu20080430_151436_000.bmp
295:名無しオンライン
08/05/02 08:59:54.71 qwFTqmOS
>>294
おめでとう。
確かにssだが、ちょと違うw
で、490追加らしいがどんな型なんだろう…
犬型なら一月だけ課金したる
296:名無しオンライン
08/05/02 09:06:24.41 Iqe+01rd
>295
殺意の波動に目覚めたアキバ系ムーミン
だった気がする
297:名無しオンライン
08/05/02 09:53:20.01 xrp6YIdu
>>294
おめでとう、だがここはパシリスレ、パシリの話を書くところだぜ
大丈夫、最初はみんな素人だ、何でもいいからネタになりそうなのがあったらレッツトライ!
298:おかえりなさい 1/2
08/05/03 02:49:38.96 0oLujo+P
今日は私を連れて行ってくれませんでした。
御主人様と離れたくない私は「連れてってください!連れてってください!」と駄々をこねましたが、
「今日は精霊運が悪くてリーダーになれないから無理なんだ」と私を置いてミッションに向かってしまいました。
御主人様が居なくなって広くなった部屋が凄く淋しい。
少し散らかっている事に気付いた私は部屋の掃除をする事にしました。
拳を軽く握って、綺麗になった部屋を見てもらって驚いて貰うんだ!、と小さく気合を入れて、
チャブ・ダイの上やお店のカウンターを拭いたり床の埃を掃除機で吸い取ります。
何で私には掃除機機能がついていないのでしょう?とか考えたりもしましたが、
自分の身体の中に埃とかを入れるのはちょっと嫌だったので無くてもいいやと思いました。
ふと部屋の片隅にあるBTラバーズが目に入って、結局手に入らなかったコヒブミテリの事を思い出します。
今あるのは一個だけですが本当はもっといっぱいあったのです。
あまりにもいっぱい出るのでお店の人に引き取って貰ったり、私が食べたりしたら一個になってしまいました。
御主人様、来年も一緒に探しましょうね?
お昼頃にご主人様から合成の依頼をされていた事を思い出しました。
合成が必ず成功する薬とかあったら絶対に飲むのですが、そんな便利な物はありません。
私の身体の中でタイタニアがぐるぐる。メギフォトンがぐるぐる。
闇の色をしたかっこいい武器をご主人様に届けたい。
私は少しだけ神様に祈ってみます。御主人様の無事も一緒に。
いい属性が出来ますように。そしてそれを御主人様に見てもらえますように、と。
やる事が無くなってしまって、少し眠ってしまっていたら珍しくお客さんが来ました。
「ハビラオ方面が大変なことになってるから武器が欲しい」と言って御主人様の使い古した武器を買って行きました。
御主人様の使った物を手放すのは少し淋しかったのですが、売れた事で喜んで貰えるなら、と自分を納得させました。
お客さんを見送った後で御主人様の行き先を思い出します。
ハビラオ方面です。
「ハビラオ方面が大変なことになってるから武器が欲しい」
299:おかえりなさい 2/2
08/05/03 02:50:19.88 0oLujo+P
御主人様!
背中を冷たい物が流れる感じがします。私には汗なんか流れないはずなのに。
どうしましょう。大丈夫でしょうか。ただのキノコ狩りだと言ってました。大丈夫。
ご主人様は凄腕だから、きっと大丈夫だと自分を納得させます。
ビジフォンをつけて、ニュースを確認。いつも通りにハルがのんきにニュースを読み上げています。
コルトバ・フォアが餌の穀物の値上がりによる影響で値上がりするとか言ってますが興味はありません。
食費が上がるのは大変ですが、今はそんな事を心配している場合では無いのです。
ハビラオ地区で何が起きてるのでしょう?肝心な時に訳に立たないハルに少し苛立ちを覚えました。
結局有力な情報は得られないままビジフォンを消して、部屋を隅々までうろうろうろうろ。
あれからどれ位時間が経ったでしょう?
いつもならそろそろ帰ってくる時間。時計を見ます。さっき見たときから一分と経ってません。
心配で心配で居ても立ってもいられなくなった私はついに部屋を飛び出そうとしました。
すると扉の所で何かにぶつかった感触がして、私は尻餅をついてしまいました。
額を押さえながら見上げると、そこには少し驚いた顔をしたご主人様の姿。
でも驚いた顔は一瞬だけ。すぐに笑顔になってご主人様はこう言います。
「ただいま」
私は目から何かが流れそうになる感覚を必死に抑えます。
また無事に会えました。だから私はとびきりの笑顔でこう言いたいのです。
「おかえりなさい、ご主人様」
300:名無しオンライン
08/05/03 02:51:41.72 0oLujo+P
合成待ちの間に初めて書いてみたけど、難しいですねぇ…。
駄文失礼しました。強化行ってきます!
301:名無しオンライン
08/05/03 10:29:15.96 XqERfEgY
マイルームでちょっとHな情報誌を読みふける御主人。
御主人「フムフム…夜のブーストGALS。極上テクで貴方も昇天。
指名ナンバーワンはモガちゃんと…チェック、チェックと」
パシリ「御主人?何を熱心に読んでいるのですか?」
御主人「オーマイガッ!!」
パシリ「ふむむ、ビス子の繰り出すダイナミック技の数々ですか」
御主人「ちょッ!!やめてよ、返してよッ!ちちち、違うからね、
これ、ボクの本じゃないからね。友達の小林君のだから!
いらないって言ったのに無理やり押し付けてきたんだから」
パシリ「その割には随分とチェックが入っていますが?」
御主人「それも小林君のだから!」
パシリ「まったく…本で調べてわざわざこんな店に行かなくても、
この私が御主人の欲求不満位は解消してあげますのに」
御主人「ちょッ?ナニを言っているんですかパシリさん?」
パシリ「か勘違いしないで下さい!過度な欲求不満は時として、
任務に支障をきたします。PMとして見過ごせないだけです」
御主人「え?ええ?」
パシリ「色々と準備をしてきますから、御主人は退去してください」
カポーン
暫くしてマイルームはすっかりパブリック・バス。
ヨーガ・マット(泡つき)まで敷いてある。芸が細かい。
そしてPMだろうか、ドレッシングルームに人影。
御主人は部屋中央にて正座待機中。もちろん全裸。
御主人「…パシリ奴…でもアイツ実は結構スタイルいいんだよなぁ
PMに弄ばれるのもオツでイイかもしれないぞ…ヒャホー!」
プッシュー
ドレッグルームのドアが開いて誰か出て来たようだ。
御主人「あ、本日は攻め中心でお願いしま…」
.,-.i二iー-、
|`.|___|"i._| 欲求不満だそうだな、
{ l_>=<ユ^} いいだろう、その劣情、私に全てぶつけてみろ!
i i┬┬'iイ
ビ リ 十┴┴イ} ー ,イ彡く,-‐' ゙i,
__,,, :-―,ァ''" i l `ゝr'´ヽj゙ア´ ̄`ゝニ'ィ,〉
,:f^三ヲ,r一''^ニ´、、__ l ! ィ彡,ャァ'" ,,..,,、 /lトィヘ
ノ ニ、゙リ ,..,, ``''ヽ,,, ''"´ ゙''ヾミ,r/:.l:.:し
パシリ「あ、御主人。私はヒューマンの生理に詳しくありませんので、
ルウ教官に相談したらご紹介して頂きました。バッチりです」
御主人「騙されたぁ!アッ…アァッー!」
302:名無しオンライン
08/05/03 10:33:47.80 XqERfEgY
思いついて書いてみた。ちょっとは反省している。
303:名無しオンライン
08/05/04 11:00:27.89 J3KYZdp+
>>300 >>302
いいよ~いいよ~両方ともGJ!!
さて…オレも夜のGBAに繰り出す準備を……
ん? 440何して(ry………
304:EPX番外編「孤独の理由その1」
08/05/04 14:29:23.64 KLwsOlty
ナレーション:それは、GH412のマスターがまだ、イルミナスに所属していた頃の話だった…
「ハウザー様。質問があるのですが」
「む…何かね」
「プラントで話していた(>115)SEEDを制御する研究は、ここで行っているのですね」
「そうだ。以前にも話したが、私はある事故に巻き込まれ、特殊な抗体を体内に宿す結果となった」
「その抗体を基にした、特殊な抗SEED剤を開発していることは聞きました。それで、質問ですが」
「…まさか、新しいSEEDウィルスもここで研究している、などということはないでしょうね?」
「(ギクッ)な、何を戯けたことを。どこからそのようなデマを聞きつけたのかね」
「いえ、最近とみに増えている、【ヴォビス】と名乗る特務兵…あれ、どう見ても感染者ですよね?」
「うっ…あれは、その…つまり…」
「…つ、つまりあれは、この抗SEED剤の尊い犠牲者というわけだ。自ら志願したと言え、私も胸を痛めているよ」
「そうですか。無下に扱ったりはしていないでしょうね」
「も、もちろんだとも。キャストだからと言って使い捨ての駒になど、し、しておらんとも」
「それを聞いて安心しました。私も無用な暗殺計画など立てずに済んだというものです」
「は、ははは。君も冗談が上手いではないか」
「冗談?一体何の話ですか?」
「…………」
「そうそう。もう一つ気になることが」
「まっ、まだあるのかね」
「Aフォトン研究者のトムレイン博士と話をしましたが…【ガジェット】なるAフォトン爆弾の研究をしているとか」
「あ、あれはだな。いわゆるその…抑止力という奴だ。組織の維持のため止む無く…分かるだろう」
「なるほど。抑止力…それなら量産の必要はありませんよね」
「むっ…それは」
「積極的に作戦に使用するほどの数はいらないだろう、と言っているのです。…違いますか」
「あ、ああ…そうだとも。必要最小限の数だけあればいい。量産など、か、考えもしなかったぞ…ははは」
「さすがハウザー様。ガジェットの実験にかこつけて…などと、算段を練るだけ無駄でしたね」
「じ、実験にかこつけて何をするつもりかね、何を」
「ふう…使えると思って拾ったが、とんだ外付けモラル判断装置だな。いっそ、今度のモトゥブの作戦で…」
「何か言いましたか」
「まっ、まだいたのかね。いいから早く業務に戻りなさい、業務に」
412「マスターはちょっと、鋭いのか鈍いのか分からない天然な所があって、知らずに敵を作っていたりするのよね」
φG「へぇ、そうなんすか…(ところで【マスター】って、変わった名前だな…)」
305:EPX番外編「孤独の理由その2」
08/05/04 14:32:27.77 KLwsOlty
GT「隊長。お呼びですか」
412「ええ。ちょっと、これを見てほしくて…」
GT「メールですか?どれどれ…」
『私は今、対イルミナス部隊の隊長をやっています♪
部下もみんないい人で、この間もイルミナスの拠点を一つ潰しちゃいました(≧▽≦)
総裁にも誉められて、毎日幸せ一杯です(^0^)』
GT「…何ですか。この典型的な自慢メールは」
412「以前に知り合った同タイプ…じゃない、友人…みたいなのがいるのだけど。たまには挨拶でもと思って」
GT「たっ、隊長の書いたものですか?これ」
412「こういうの、初めてだから勝手が分からなくて。文法などに問題があったら添削してほしいのだけど」
GT「(文法以前の問題の気がするが…)」
GT「…とりあえず、自分のことを書く前に、先方の近況を尋ねてみるのは如何でしょうか」
412「なるほど、そういうものなのね。分かったわ。『最近どうですか?』…と」
412「…(本当に、どうしているかしらね、あれから。まあ、きっと宜しくやっているのでしょうけど…)」
想像1:「カン・ウー50%できちゃった☆ご主人様ったら大喜びで、私の額と言わず頬と言わずアツ~いキs」
想像2:「バレンタインのお返しに何をくれたと思う?種族を越えた愛って本当にあったのね☆私って、しあわs」
想像3:「(写真同封の上)二人の子です。名前は470でs」
412「やめた」
GT「いきなりフテ寝って、隊長…一体何が」
412「あの子に自慢されるのは我慢ならないの」
GT「…(自分の自慢は平気で、他人の自慢は我慢できない。隊長ってもしかして、典型的な…)」
ナレーション: PMはマスターの鏡と言う。かのマスターに友人がいない理由は、ここにあるのかも…
マスター「もう一度言って御覧なさい」
ナレーション: …と思ったのは、気のせいであった。
306:EPX作者
08/05/04 14:36:33.86 KLwsOlty
閑話休題として、こんなものを投下してみました。
たまには短編をと思ったのですが、短くまとめるのは大変なものですね。
登場人物が壊れ気味なのは、目をつむってやってください。
307:名無しオンライン
08/05/05 18:44:23.55 CxoP4zDk
>306
面白かったですよん
ただあの…
その…
× つむる
○ 瞑る(つぶる)
とか全然思ってないんだから!
何よ!本編の続き期待なんてしてないんだから!勘違いしないでよね!
毎日チェックなんてしてないんだから!
308:名無しオンライン
08/05/05 19:01:56.42 Eni/J6Li
>>307
野暮で申し訳ないが、無駄に揉めるのもアレなので…
その手の書き込みをする時は、3回ぐらい辞書を引いた方が失敗が減って良い感じなんだぜ。
309:名無しオンライン
08/05/05 20:21:31.22 Zx2kz0DA
常用語だし日本人なんだし、その辺は世界観や語感でどっち使うか決めていいと思う
310:名無しオンライン
08/05/06 09:25:18.16 p+eLYhlG
>>306
舞台裏のようで楽しかったです。短編も良いですね。
311:名無しオンライン
08/05/06 11:43:57.19 +C7Q6N3A
>308
>309
単にツンデレ文を書きたかっただけじゃないか?w
312:名無しオンライン
08/05/07 03:00:37.15 XgGjfa21
マスターの様子がおかしくなったのは最近の事でした。
「よくわからないんだ」
「世界に出ても誰もいない。広い世界にたった一人放り込まれたみたいなんだ」
「たまに人に会っても何も言わないんだ。機械を相手にしてるみたいで辛いよ」
マスター…そんな寂しい事を言わないでください。
あなたには私が居ます。私では…駄目ですか?
マスターは見るからに衰弱していました。
最近では日がな一日天井をぼーっと見上げて言葉にならない言葉を吐き出しています。
「出し惜しみ…同じ…マゾい…」
その声はとても小さくて、もし神様が居たとしても聞き取る事は出来ないでしょう。
親しかった友人たちに連絡を取って励まして貰おうとしましたが誰一人として捕まりません。
皆様は何処へ行ってしまわれたのでしょうか?
本当にマスターは一人でこの世界にとり残されてしまったのでしょうか?
薄暗い曇り空の日、その日も私は神様に祈ります。
マスターが元気になってくれますように、と。
マシーナリーの願いなんて聞き届けてくれるのかはわかりませんが、何もしないよりはましだと思ったのです。
「俺、気付いたんだ。もうこの世界には何の未練も無い事に」
突然そんな言葉を口にしてマスターはよろよろと扉に向かいます。
嫌な予感がした私は思わずその背中に抱きつきます。
「ごめんな」
こちらを振り向いて言ったその言葉だけで十分でした。
呆然とする私を置いてマスターはそのまま扉から出ていってしまいます。
気付けば私は涙を流して、開いたままの扉を見つめていました。
その日からマスターは帰って来ません。
何処に行ったのかもわかりません。
私の事ももう覚えていないでしょう。
それでも私はこの一言を胸に仕舞って待っています。
「おかえりなさい」
313:名無しオンライン
08/05/07 07:34:43.77 6EQfVOjO
直近三つのSS見てたら
「ヴォビスはハウザーサマをマスターだと思い込まされてる元パシリ。
キャラが消えるほどマイルームを留守にすると、ハウザーサマが空き巣に入ってパシリを浚って、
無理矢理特殊強化デバイス食わせた上にSEEDウィルス注入してヴォビスにしちゃう。」
とかいう妄想が沸いた
314:名無しオンライン
08/05/07 19:34:40.91 8nAuHQYz
パシリが全く出てこないパシリSS
ある男の部屋に、険しい顔をしたニューマンの女性がやってきた。
「ちょっといい? 今日のお昼頃に買い物に来た440はいないかしら」
「ええ、来ましたよ。カティニウムを3キロほど売ってくれと」
「そうよ、そのカティニウムだけど、さっきセットしようとしたら2キロしかなかったわ」
「なんですって?」
「おたくの装置、故障してるんじゃないの? それとも重いのをいいことに、量をごまかしたりしてないでしょうね!?」
男は別の材料を秤にかけてみたが、間違った値が表示されることはなかった。
また、ガーディアンズ本部に送信される販売の履歴にも「3キロ」と記録されており、詐称があったとは考えにくい。
しばし考えて、男は言った。
「お客様、マイルームにケイソクキを設置することをおすすめします」
315:名無しオンライン
08/05/07 22:21:14.84 auqqcAhn
>>312
ちょっと悲しい短編。再開のありますように。
>>314
犯人は100パーセントわかります。ちょっと推理モノぽくて面白いですね。
316:名無しオンライン
08/05/07 22:47:28.82 FUaF1A8R
>>315
悲しいかな恐らく彼は今頃元気に肉を焼いている事でしょう…。
全ては神様次第だと思います。
…そんな私も最近はメモ帳と睨めっこばかりですけど。
317:EPX 8章「暗雲 1/8」
08/05/09 19:41:59.52 VMlti45O
「隊長って、すごい武器を持ってますよね。何で、使わないんすか?」
ガーディアンズ本部のリフレッシュルームでくつろいでいるところに、fFが話しかけてきた。
あれ以来、私はすっかり第2小隊の部下達と打ち解けていた。
部下達と共に任務も順調にこなし、次々とイルミナスの拠点を制圧する一方で、
マスターの行方は杳として知れないままだった。
そんな私が、マスターと私を唯一結ぶ、「Dear My Partner」の文字の刻まれた武器。
ダガーオブセラフィをぼんやりと眺めていた時のことだった。
「俺には高ランクの双小剣は繊細すぎて上手く扱えないけど、隊長なら問題ないでしょう?
一度見てみたいんすよねえ。颯爽と赤い羽を舞い散らす、隊長の勇姿を」
「ご希望に添えたいのは山々だけど、そういうわけにも行かないのよね」
「何故っすか」
「約束なの。…というより、私が勝手に誓っていることなんだけど」
fFはさらに興味をひかれた様子だったが、あえてそれ以上は踏み込んでこなかった。
その時の私の表情を見て、何か感じるところがあったのかも知れない。
私が、この双小剣の封印を解くとき。
それは、私がマスターを取り戻すための決戦の時だと、決めていたのだ。
別に、通常の任務に使っても差し支えはない。
だが、他の目的でこの武器を振るう度に。
柄に刻んだ文字の重みが、減っていくような気がしてならなかったのだ。
「それにしても、どうやって手に入れたんで?リエタナカ工房の作品はそれ自体幻と言われているのに、
その中でも理論上最高のフォトンリアクターを内臓する逸品なんて」
…自分が作ったとはさすがに言えなかった。
「そういや隊長は、PMを連れてませんね。まあ、必ずしも連れてく必要はないかも知れないっすけど。
第1小隊の隊長なんかは、いつも連れまわしてましたよね」
…自分がそのPMだったとも、さすがに言えなかった。
苦笑いしながら、どうやって説明をつけようか考える。
そんなとき、不意に通信機が鳴った。
『412か。至急、見てもらいたいものがある。執務室まで来てくれ』
ガーディアンズ総裁、ライア・マルチネスからの呼び出しだった。
318:EPX 8章「暗雲 2/8」
08/05/09 19:43:00.08 VMlti45O
執務室で私を迎えたのは、全部で3人。
ライア総裁はもちろんその一人。
他には、ライア総裁の秘書的な存在とも言われている、クランプ青年。
そして、かつての私の友人、GH-440。
440の顔を見たとき、私は自然表情を曇らせる。
あの時以来の再会だが、沸き起こるのは胸を刺す痛ましい思いだけだった。
「今から見せるのは、440の記録した映像を再現したものだ。
ある理由で、お前にも見せたほうがいいだろうと判断した」
相変わらずの率直な切り出し方だった。
「実は、第1小隊の連中はちょっと…情けない状態になっててね。
命に別状はないんだが、精神的なものからか、全員寝込んじまってるのさ」
そういえば、ある時期を境にぱったりと、第1小隊の面々とは顔を合わせなくなっていた。
心底見たくない顔だったので何も文句はなかったが、その原因に興味がないわけではない。
「で、その時現場にいた、440から色々聞こうと思ったんだが、どうも要領を得なくてね。
仕方がないから、内蔵されている映像記録を再現するため、今まで編集作業をしていたのさ」
PMの見たもの、聞いたもの。それら全ては、PMに内臓されているデータベースに蓄積されている。
とはいっても、それを映像化するのはかなりの手間なので、そうそう気軽には行われない。
私がかつてプラントから再起動を果たした時も、口頭による尋問だけで済まされていた。
440の場合は、それで総裁を納得させることはできなかったということなのだろうか。
「目を通した総裁は、ある可能性を示唆しました。
彼ら第1小隊に手痛いダメージを負わせた犯人は、貴方に関係のある人物ではないかと。
そこで、貴方に確認をとっていただくことになりました」
私に関係のある人物?
にわかに高まる私の緊張をよそに、ライア総裁が中央のスクリーンに目を向けた。
「さあ、始めるよ…ある意味見応えのある代物だ、アタシももう一度見せてもらう」
319:EPX 8章「暗雲 3/8」
08/05/09 19:45:42.91 VMlti45O
「…間違いありません。これは…この人は、私のマスターです」
映像を見ていた私は、ほどなく断言した。
映されている人物の様相は、大分私の知っているマスターと違っていた。
随分と痩せているし、あのような黒づくめのボディースーツなどは余り好まない筈だった。
だが、ビーストfFに対し巧みにフォイエ等の単体用テクニックを撃ちながら懐に呼びこみ、
間合いに入ったビーストfFが得意げに槍を振ろうとした矢先の動作は、私はよく見知っている。
瞬時に左、右へとステップしながら小剣で斬りつけ、
致命傷を避けようと防具が放つフォトンの干渉波が彼の身体を宙に浮かせる。
それを追ってすかさず跳躍し、そのまま空中で渾身の回転切りを浴びせる。
小剣の上級技、「瞬舞昇連斬」…マスターの得意技の一つだった。
もちろん、その技一つでマスターと決め付けるのは早かったが、
その後に流される映像の一つ一つがマスターの姿を否応なく思い出させていた。
「…どうでもいいが、何でこいつらは一人ずつでかかってるんだ?」
ライア総裁が腕組みをしながら、誰にともなく口を開く。
クランプ青年が、それを受けて自分なりの考えを口にする。
「様子から判断するに、この女性に何か挑発でもされたのでしょうか。
適正種族が特化職を選んだ場合、多くは非常に自分の能力に自信を持っていますから」
「なるほど、複合職のヒューマン如き自分一人で十分と、全員思っちまったわけだ。
だから、簡単に挑発にも乗ってしまった」
私も、同じようなことを考えていた。
確かに私達WTは「守ること」「生き残ること」には長けているが、火力の点で著しく劣る。
こと真っ向からの勝負となると特化職に勝てるか、はなはだ自信がない。
しかし、この映像に流されているマスターの戦い方を見るだに、
それが大きな過ちであることを思い知らされていく。
また、追い求めていたマスターの懐かしい勇姿に、しばらく我を忘れて見入っていた。
320:EPX 8章「暗雲 4/8」
08/05/09 19:46:29.71 VMlti45O
ビーストfFを相手には、彼が苦手とする法撃系の攻撃を主軸に、中距離から遠距離での戦いを展開する。
近づかれた際には、すぐに瞬舞昇連斬で吹き飛ばして間合いを取り、また法撃での攻撃を繰り返す。
もちろんマスターも、接近される度に何度となく槍による攻撃で手傷を負うが、
打たれ強さに長けているマスターが致命傷を負うことはなく、しかもすぐにテクニックで回復してしまう。
持久戦を強いられていることで、明らかにビーストfFは苛立っている様子だった。
ビーストで、しかもfFである彼の圧倒的な攻撃力を以って、持久戦に持ち込まれることはそうそうない。
それだけに、彼には経験の少ない持久戦が、体力はともかく精神を確実に疲弊させている様子だった。
『くそっ、倒れろよコイツ…この俺が攻撃してるんだぞ…何で倒れねえんだよぉっ』
たまりかねて怒声をあげ、大振りになったfFの槍をかいくぐるマスター。
今度の攻撃は小剣での吹き飛ばしではなかった。
『貴方…以前自分で言ったでしょう?WTはね…』
黒煙のようなフォトン光を発する片手杖を振りかざし、真っ直ぐにビーストfFに向けて突きつける。
『…【倒せない】けど、【倒れない】のよ』
杖の先から噴出する、3筋の白い衝撃波が蛇のように地を這いながらビーストfFを直撃する。
衝撃波の一つ一つが彼の顔を苦痛に歪ませるが、それだけでは済ませなかった。
土属性のテクニック「ノスディーガ」は、彼の神経系統の伝達を阻害し、全身の自由を奪っていたのだ。
『今後、必ず短期決戦で済ませられない敵は出てくる。その時に備えて持久戦にも慣れておくことね』
マスターが指先で彼の額を押すと、歯軋りした顔のままその場で仰向けにひっくり返ってしまった。
「やれやれ、敵にアドバイスされるなんざ、情けないったらありゃしないよ」
ライア総裁がため息をつきながら肩をすくめる。
「仕方ありませんね、ビーストの弱点である法撃で攻められた上、相手だけ回復する状況で持久戦となれば、
彼が焦るのも分かります」
「…対して向こうには弱点なしか。その上打たれ強く、回復まであり、しかも多彩な攻撃で弱点をついてくる。
…敵に回すと、WTってのはこんなにも厄介なものなんだね」
321:EPX 8章「暗雲 5/8」
08/05/09 19:47:15.59 VMlti45O
続いて進み出たのは、ニューマンfT。
すぐに勝負をつけてやると意気込んで単体用のテクニック「フォイエ」を連打するものの、
マスターはサイドステップでかわしながら、左手に持つ投刃、俗に言う「カード」で対抗する。
フォイエは直線の軌道であり回避しやすいのに対し、カードは着弾は遅いものの高い誘導性を誇り、
相手が多少軸をずらそうがお構いなしに命中し、彼女の体力を削っていく。
「…相手がfTなら、近づけば勝ちなんじゃないのか?何でちまちまと射撃で応戦するんだか…」
その答えは、私にはすぐに分かる。
「先ほどの、ビーストfFにやったことをそのままやられる危険を考慮してのことかと。
ノスディーガは近距離だとほぼ回避不能ですが、遠距離ならいくらでも誘導を振り切る余裕があります」
「さすがにWTのデータを投入してるだけのことはあるね。それにしても…したたかな奴だよ、全く」
マスターの攻撃手段は、カードだけではなかった。
相手の法撃の隙を見て、土属性の単体テクニック「ディーガ」を行使していた。
ニューマンfTの高い精神力にはさして効果はないが、彼女にはそれが酷く挑発的な行為に見えたようだった。
『ワロテクのくせして生意気にテクなんか!器用ぶってないで、おとなしく劣化fFでもやってりゃ…いい…』
言いかけていたfTの動きが止まる。
先ほどまで矢継ぎ早に行われていたテクニックの詠唱が、ぴたりと止んでしまっていた。
『…その"ワロテク"の法撃でも、貴女を黙らせる効果はあったようね』
かつて私がヴァンダ相手に苦渋をなめた、あの精神干渉をニューマンfTも受けてしまった様子だった。
『さあ、その効果が切れるまで、私が近づくのをどうやって防ぐのかしら?可愛らしいお嬢さん』
マスターが言うまでもなく、この時点で勝負ありだった。
恐怖に顔を引きつらせながら、それでも弓を取り出し追い返そうとするが、
元より攻撃力のないfTの攻撃ではマスターに然程の傷もつけられず、接近を許してしまう。
『職業に上下の差はなく、戦い方もそれぞれあることを知りなさい。
味方を知るのはテクターにとって重要…そのためにはまず、味方を尊ぶことから始めないと、ね』
背を向けて逃げ出そうとするfTの後頭部に、小剣の柄尻を強く打ちつける。
ひとたまりもなく、彼女は気を失ってうつ伏せに倒れる。
「こいつといい、fFといい…油断しなければいくらでも戦いようがあるとは思うんだけどね」
ガーディアンが連敗を喫する様を見るのは面白くないらしく、総裁はぎりっと爪を噛んでいた。
油断もあるが、マスターがWTとしての戦いを知り尽くしているというのも大きいと思われた。
私が彼らとやっても、このように圧倒できる自信はない。
特化職の得意分野に持ち込まれては、やはり勝ち目はないのだ。
322:EPX 8章「暗雲 6/8」
08/05/09 19:48:13.30 VMlti45O
最後のキャストfGは、ライフルでの連続射撃によりマスターを寄せ付けないでいた。
fTの法撃とは比べ物にならない回転に、マスターも攻撃の隙が見出せない様子だった。
そのうちマスターは手近にある柱に身を隠し、ライフルの弾から身を守ることを選択した。
これなら確かにライフルは当たらないが、マスターにも柱の影からでは攻撃手段はない…かと思われた。
しばしの沈黙の後、柱の影から黄色く発光する球状の物体が飛び出した。
最初はあさっての方向に進んでいたが、やがて急に角度を変えて真っ直ぐこちらに向かってくる。
危険を感じたfGが身をかわすが、黄色の球体はまるで生き物のようにfGを確実に追尾する。
そして、目も眩むような光と共にそれは破裂し、周囲に稲光を撒き散らす。
「…ノス・ゾンデ…そんな手があったなんて…」
「アタシはテクニックには詳しくないけど、柱の影からでも自動で敵を追尾する代物があったみたいだね。
全く…WTってのは、何をしてくるか分かったもんじゃないね」
キャストfGは腕を震わせてライフルを取り落としてしまう。
雷属性の法撃により感電し、武器を持っていることができなくなってしまったのだ。
だが、キャストfGはこれでは引き下がらなかった。
両手を頭上に掲げ、上空から呼び出したものを見て、私は目をむいた。
無数に降り注ぐ光の粒子。周囲に存在するもの全てを氷塊に閉じ込める、強力無比なSUVウェポン。
「パラディ・カタラクト」…ヒト一人に対して使用する規模のものではなかった。
『…思い知ったか、劣等種。貴様等には逆立ちしても真似できまい』
私が聞いたこともないような感情的な語調。
してやられたのが余程腹に据えかねたのか、普段はかろうじて抑えていた差別意識を露骨に表す。
だが、驚くのはこれからだった。
視界を覆い隠す光の奔流が止むと、そこに見えたのはマスターの氷像ではなく、
床に開かれた小型のナノトランスゲートだった。
身を乗り出す彼の背後に同様の白い円形状のゲートが開かれたかと思うと、そこから黒い影が飛び出してきた。
「連斬潜昇牙…ここでこれを使ってくるとはね」
ライア総裁が唸りながらスクリーンを睨む。
『困ったらSUVに頼るのは貴方達キャストの悪い癖…それなしでも危機を乗り切る、精神的な強さは必要よ』
背部からの強力な斬撃に力無く崩れ伏すfG。
双鋼爪を手に、マスターは軽やかな動作で着地しながら背中越しに声をかけた。
323:EPX 8章「暗雲 7/8」
08/05/09 19:49:07.79 VMlti45O
『使えない…奴め…何故、フォローに入らない…そんなに…再調整が好きか…』
かろうじて息の残っているfGが、スクリーンのこちら側に向かって毒づいた。
「何を言ってんだか。命令がなきゃ何もしないようにPMを育てたのは自分だろうに」
ライア総裁が傍らに立つ440を振り返る。
人形のようにただ突っ立っている440を見ると、またもあの時のことが頭をよぎってしまう。
マスターがスクリーンのこちら側に歩み寄ってきた。
こちらに向かって手を伸ばす様子から、どうやら440の頭を撫でている様子だった。
『かわいそうに…貴女に罪はないのにね』
黒づくめの姿からかろうじて覗いている両の瞳は、まぎれもなくかつてのマスターのものだった。
懐かしさにかられて涙が溢れそうになるが、腹にぐっと力を込めてそれを抑える。
そんなマスターの様子が一変した。
瞳孔を開き、両手で肩を押さえ、小刻みに震えながらその場に膝をつく。
苦しげな呻き声をあげながら、懐から小さなケースを取り出し、震える手で中の錠剤を口の中に押し込む。
しばらく荒い息遣いのままうずくまっていたが、やがて落ち着いたのか、2,3回大きく深呼吸をする。
『段々…周期が近づいて…予想はしていたけど…』
にわかにスクリーン上に映っている部屋の外から喧騒が近づいてくる。
マスターは弾かれたように立ち上がり、素早くその場を離れていった。
「…以上だ。この後、部屋に駆け込んできたルツと近衛兵によって、第1小隊とPMは拘束された。
もっとも、イーサンとアンドウ・ユウの活躍で教団との和解が成り、こいつらは返してもらったけどね」
スクリーンに映された画面を消すと、ライア総裁はこちらに顔を向けた。
「…で、もう一度聞くが。あの黒づくめの女は、確かにお前の元マスターに違いないか?」
問いかけに、私は無言でうなづいて返事とした。
「…そうか」
ライア総裁は、しばらく腕組みして考え込んでいたが、やがてこう切り出した。
私にとって予想外の、衝撃的な提案だった。
「なあ、412。
ここらであの女のことは忘れて、改めて正式なガーディアンとして、新しい人生を歩む気はないか」
324:EPX 8章「暗雲 8/8」
08/05/09 19:50:05.57 VMlti45O
「理由を、これから話そう」
しばらく思考機能の停止していた私の耳に、ライア総裁の声が響く。
「まず、見たところあの女は既にイルミナスを抜けている。
それでいてガーディアンズに戻ってこない所を見ると、説得は難しいだろう…というのが一点。
そして、もう一点が大事なんだが…」
ライア総裁が目で合図をすると、クランプ青年が小さくうなづいて懐から何かを取り出した。
透明なビニールに入っているのは、小さな錠剤だった。
「現場で教団が押収したものを、後に和解した際譲られたものです。
状況から、あの女性が最後に服用したものと同一の物であると考えられます」
「こいつをマヤに見せたところ、嫌な事実が分かってね。こいつ、一体何の薬だと思う?」
情報が足りなさ過ぎて、漠然とした推測程度しか導き出せない。
一呼吸おいて総裁が答えたものは、予想の遥か斜め上をいっていた。
「こいつは、ごく初期のノウハウで作られた、抗SEED剤…SEEDフォーム化を抑える薬、ということらしい」
耳に入った言葉の意味を、頭の中で整理する。
だが、途中でそれは、強い感情の奔流に押し流されていた。
まさか、の段階で、完全に頭がそれ以上考えることを拒否していた。
信じられない、信じたくない、信じてたまるものか。
足が震え、動悸が高鳴り、視界が揺れる。ただただ心の中で否定の言葉を繰り返す。
「…お前の、マスターは…」
嫌だ。聞きたくない。言わないで。
ひたすら心の中で拒絶するも、ライア総裁は無情にも決定的な言葉を突き刺した。
「…お前のマスターは、SEEDウィルスに、感染し」
ありったけの絶叫で言葉を遮る。
自分の悲鳴で総裁の言葉をかき消せば、突きつけられた事実を洗い流せると思わんばかりに。
耳を塞ぎ、目を固く閉じ、狂ったように頭を振りながら、声を限りに叫ぶ。
割れんばかりに痛む頭の中に、うっすらと考えが浮かぶ。
私の任務は、最悪の形で終わろうとしている、と。
325:EPX作者
08/05/09 19:57:28.03 VMlti45O
お待たせしました。EPX第3部完結編、8章の投下です。
続きは2,3日後になると思います。
なお、今回は2点ばかり補足をさせていただきます。
・本編に出てきた双鋼爪のスキル「レンザンセンショウガ」ですが、
ゲーム上ではこのスキルにはいわゆる「無敵時間」は一切存在しません。
従って、潜行中にパラディ・カタラクトをやり過ごすことも本来できない(はず)です。
本ストーリーのみにおけるアレンジとお考えください。
・これは一部から通して決めていた設定ですが、
本ストーリー上で薬は原則存在しません。
本編で繰り広げられた「特化職VS複合職」も、その前提において語られているものです。
決して、特化職の方の地位を不当に貶めるものではないことをご了承ください。
326:名無しオンライン
08/05/09 22:46:23.00 2jr0s2O1
>>325
楽しませて貰いました。
だけど、いくらなんでもこれで「特化職そんなに弱くない!」とか喚きだす奴はいないだろー
327:名無しオンライン
08/05/10 03:23:02.01 gUqYURDd
>305
412 「ご主人様~、メールが来てますよ」
主人「オウ、ご苦労…って、これお前宛だぞ?」
412 「え? …本当だ、私宛ですね。
誰だろう、わざわざご主人様じゃなくて私にメールなんて」
『私は今、対イルミナス部隊の隊長をやっています♪
部下もみんないい人で、この間もイルミナスの拠点を一つ潰しちゃいました(≧▽≦)
総裁にも誉められて、毎日幸せ一杯です(^0^)』
412 「…ご、ご主人様、これは一体?」
主人「俺に聞くな、分かるわけないだろ。
お前は何時の間にこんな痛々しいお友達を作ったのだ、ええ?」
412 「そ、そんなぁ~、こんな人は趣味じゃないですよぅ。
差出人の第2小隊隊長なんて、会った事もありませんし」
主人「見知らぬメールは捨てる! そう教えただろ」
412 「そ、そうですね! 背筋が凍るから消しちゃいましょう!」
EX412「返事が来ない…何か間違ってたのかしら?」
G T 「………(隊長、悪いですけど返事が来る方が色々と大問題ですよ!)」
328:名無しオンライン
08/05/10 04:06:03.66 LokZRxu0
<GH-490>
ある軍用データから復元された犬型マシナリー。ご主人様といつでも一緒。
戦闘 : 情熱派
某日マイルーム
「ご主人様、何ですかそれは?」
「ん、あぁついこないだ出たばっかりの新デバイスらしい。珍しそうだから交換してきたんだが…」
「490と言うとあの噂のマスコット系のタイプですね、ちょっと試してみていいですか?」
「いやちょっと考えたい。 なんか交換条件のアイテムが妙だったのが気がかりでな…、それにいやに高い戦闘値を要求してるし」
交換アイテムは通称マガシパーツと呼ばれる珍品中の珍品、それを丸々マガシ一体分と言う交換条件だった。
そもそもこんな怪しいパーツと交換してもらえるという時点で怪しさの臨界点をブッチギリで超越しているわけだがまあそれについては不問としておく。
それよりも気になるのが490の色だ、あの色は何処かで・・・。
「あのー…ご主人様?」
「あ、あぁすまないちょっと考え事をしていた。 でもよくよく考えたら戦闘値が足りないから使えないんだな、残念だが」
「大丈夫ですよきっと、ちょっとくらい足りてなくても何とかなります! だから使ってみていいですか?」
「んーまあそうだな、ちょっとくらいなら大丈夫か…」
「それじゃいただきますっ! もぎもぎ…うっ…」
一口齧ったところでデバイスを取り落とし呻き苦しむパシリ。
デバイスは何度か使った事があったがこんな事は一度もあった事が無いし、条件に合わないデバイスだからといってここまで苦しむはずが…。
「だ、大丈夫か!?」
「うぅ…あぁっ!」
「うわっ、なんだ!?」
パシリの体から放たれるまばゆい光に思わず目を閉じる。 この光に見覚えはあった、パシリが姿を変化させる時の光に似ている。
やがて光が収まったのを感じると恐る恐る目を開いた。 すると俺の目の前には…。
「ぬぅぅぅ、ありがとうございますご主人様ぁぁぁ。 おかげでぇ成長する事がぁ出来ました」(CV.若本)
「ぬおっ! だ、だれだお前!」
「GHィ-490でぇございます」(CV.若本)
赤くゴツイ体をして野太いとかいう次元を遥かに凌駕する特長のある声を放つ自称490.
いやどう見てもマガシです本当に(ry
「ハッ、って事はあのデバイスが原因でパシリがこんな姿になってしまったって事か」
「左様でぇございます」(CV.若本)
「なんてこった…性格が変わったどころか原型を全く留めてないぞ…。 元に戻そうにも手元にはデバイスも無ければ金も無い…」
「おやぁ? ご主人様はメセタが必要なご様子、ならばぁ外へ狩りだしと行きましょうぞぉ」(CV.若本)
「え、ちょっ! その格好で外に出る気か!? ってか捕まる、言動的にも見た目的にも!」
頭を抱える俺の腕を自称パシリが強引に引っ掴み外へと連れ出されていく。
道中ほとんど人に会わなかったのが唯一の救いだったかもしれない、俺は強引に先導するパシリと通報される恐怖に挟まれながらミッションへと進んでいくのであった。
329:名無しオンライン
08/05/10 04:06:41.22 LokZRxu0
「ぬぅぅぅん、どぉぉぉだぁぁぁぁ!」(CV.若本)
「お、おー…」
流石はマガシの姿をしているだけの事はあった、敵がみるみる内に塵と化していく光景はまさに嵐の如く。
手にした二本のセイバーを縦横無尽に振り回し、暴走列車さながらの勢いで突き進んでいく。
「ご主人様ぁ、突っ込みぃますので援護ぉをお願いします」(CV.若本)
「いやこの強さで援護いらないだろ…」
「ぬぅははぁぁ! 勝っても負けても死ぬ、無意味なゲームの始まりだぁぁぁ!!」(CV.若本)
「ちょ、死ぬのかよ! それじゃ意味無いだろ!」
とまあこんなノリを続けつつ、俺はただ ( ゚д゚)ポカーン としているのが精一杯だった。
(以下CV.若本)
「これがぁパートナァァの実力よぉっ」
「ご主人様ぁ何処へ行かれましたかなぁ…?」
「サンドゥイッチ攻撃ぃぃぃ」
「私の方ぁがかわいいですからぁ!」
「結局何もしないまま最後まで来てしまった…」
「ごぉ主人様との協力がぁあってこそでぇございます」(CV.若本)
「いやまあ何でもいいや…おっと、最後の敵が来たみたいだぞ」
文字通りそのエリアの最後を飾る量の敵が一斉に姿を現した、そろそろ俺の出番だと前に出ようとしたところを490が制する。
「ここはぁ私めにお任せ下さい」(CV.若本)
そう言って両手を天高く掲げる490、一部のキャストやパシリのみが使えるSUVウェポンシステム。
上空に巨大な魔方陣のような物が描かれ徐々に広がっていく、徐々に…徐々に…
「…ってちょっとでか過ぎないか? 一体何を転送しようと…」
「ぬははははぁぁ!! 貴様らの死へのカウントダウンだぁ!!」(CV.若本)
「だから一体何を呼び出そうと…」
そこまで言いかけて上空の魔方陣から姿を現しつつあるそれに気が付いた。
天を覆うほどの巨大な魔方陣から出現しつつあったもの、それはイルミナスの手によって一度パルムの地に落とされ修復作業が進んでいたコロニーそのものだった。
「コロニーの軌道を変化させたのだぁぁ、もはや貴様らに抗う術などなぁい!!」(CV.若本)
「ま、待て! そんなもん落としたら俺達だってひとたまりも無いぞ!」
「ぬぅぅん、この運命には逆らえぬのだ諦めるがいいぃぃ!!」(CV.若本)
「だからそれだと意味が無いだろ、ってあぁもう! 畜生いい加減目を覚ませ!」
ショック療法、これ以外の手はもう思いつかない。 手にしていた武器で490の後頭部を思いっきり殴打。
すると同時にまばゆい光が放たれ、パシリはいつも見るパシリの姿に戻っていった。
「ぶ、ぶるぁっ!? あ、あれ私は今まで何を…?」
「正気に戻ったかパシリ! あぁでもまだアレが止まってない!」
「な、なんですかあれは! ど、どうすればいいんですかご主人様ぁ!?」
「SUVの事は俺に聞かれても良くわからん! と、とにかく魔方陣の方へ押し返すんだ!」
「は、はいぃぃぃ!!」
330:名無しオンライン
08/05/10 04:06:56.72 LokZRxu0
・・・
『ハーイ! グラールチャンネル5、ヘッドラインニュース! 今日のニュースをピーックアップ!
本日未明Gコロニーがまたも落下の危機に見舞われました。 犯人はコロニーにハッキングをかけSUVウェポンシステムでコロニーを大地に落とそうとしていた模様ですが未遂に終わりました。
ガーディアンズではイルミナス工作員による犯行とみて捜査を続けています。 では続いて次のニュースです…』
「…終わったな…」
「…終わりましたね…」
「…そろそろ帰るか…」
「…帰りましょうか…」
この一件で二人がデバイス恐怖症になったのはいうまでも無い事である。
進化デバイスは用法用量を守って正しくお使い下さい。
331:名無しオンライン
08/05/10 04:10:52.55 LokZRxu0
490の素材を見て思いついて書き殴った、後悔はしていない
なんでこいつマガシパーツ使うんだ・・・w
332:1/5
08/05/10 04:34:31.64 gUqYURDd
私はGH-412、とあるガーディアンのパートナーマシナリーをしています。
皆さんもご存知の通り、新型マシナリーGH490の配布が始まりました!
ムー○ンと言うには微妙、とはいえ他に例え様がない未知のタイプです。
主人「で、何故にマガシで作るわけ?」
412 「…ナレーションに突っ込まないでくださいよぅ」
そう、GH-490は量産型マガシのパーツと交換なのです。
マガシの生首、胴体、手足をメルトンさんに差し出すと、進化デバイスがもらえます。
…一体、あんな物を受け取って何をしているんでしょう?
まさか、得意のフライパンでじっくりコトコト煮込んで元を作っている!?
ああ、嫌な事を考えたら今後パルム西に行けなくなっちゃいます。
主人「それより、生首って表現はどうかと」
412 「た、確かに生々しいですけどナレーションに突っ込まないでくださいー」
そんなわけで、私達は早速GH-490にしたという素早いお知り合いの部屋に向っています。
GH-490、パートナーマガシリーは一体どんな性格なのでしょう…?
主人「その呼び方でも結局パシリなんだな」
412 「…それより呼び方に突っ込まないんですか?」
333:2/5
08/05/10 04:35:19.02 gUqYURDd
主人「頼もーう」
412 「こんにち…!?」
鉄子「いらっしゃーい。さ、こっちにいるよー」
ご主人様のお知り合いはキャストの女性でした。
ルカラル・トルソで自慢の胸をどーんと強調している、大人っぽい人…。
412 「(ご主人様、女性のお方なんて聞いてませんよ!?)」
主人「(どうでもいいだろ、GH-490の方が本命なんだ)」
412 「(で、でも…! あんまりじろじろ見ちゃダメです!)」
鉄子「お待たせー、これがGH-490だよ!」
鉄子さんが手を差し出した先には、赤の塊がどんと立っていました。
カバというにはあまりにスマート…ムー○ンというには足がちょっと長すぎる…。
何とも言いようのないモノが、そこにいました。
主人「これはまた強烈なインパクトだな…」
490 「フガフガー」
主人「何その呻き声、中に何か入ってるのか? 入ってるだろコレ」
412 「もしかして…防具特化っていう噂があったから440さんが中に!?」
鉄子「あのさ、私がコンクリ使ったみたいな言い方しないでくれる!?
それに、コイツは元々450なの! 私だって腰折れてないでしょ!」
主人「お前のその440ユーザー=┏発言も問題があると思うぞ」
334:3/5
08/05/10 04:36:01.99 gUqYURDd
主人「で、もう外には連れ出したのか?」
鉄子「や、まだだよ。変えたばっかりだし、引っ越してたから」
412 「わぁ、綺麗なお庭~」
今回はGH-490の他に、ニューデイズに引っ越せるパスも配布開始となりました。
何故かカクワネ・オブジェを要求してくるメルトンさんの趣味は本当に未知数です。
鉄子「だから、餌やって反応を楽しんでみようってとこ」
主人「反応も何も、全部共通だった気がするんだが」
鉄子「いーや、もしかすると特別なリアクションがあったり!?」
鉄子さんは、そう言いながらアセナリンを差し出しました。
すると…。
490 「フガガ、フガフガガ」
主人「何言ってるか分からん! だが凄い嫌そうな目付きだ!」
412 「だって明らかに古そうですよ、そのアセナリン…」
鉄子「ほっほー、じゃこれならどうだっ!?」
鉄子さんは今度は、ディアードを差し出しました。
…私達はこの時、とんでもない現状を目にするとは少しも予想していませんでした。
335:4/5
08/05/10 04:36:56.15 gUqYURDd
*ぱかっ*
490 「ククク、こぉいつは美味い! 滴る血のよ~うな味だ!」
*ぱたんっ*
…。
と、とても説明しても信じられそうにない出来事が起こりました。
490さんの頭が突然開き、そこからマガシの顔が現れたんです!
主人「…何だ、今のは?
俺の目が間違っていなければ、あれはマガシさんだよな」
412 「は、はい、間違いなくあれはマガシの顔でした!」
鉄子「ど、どうなってんの!? いくら何でも特別すぎて恐れ多いよ!
ってか、ガーディアンズとしてどうなのよ、その構造は!?」
鉄子さんは恐る恐る、490さんの顔をツンツンと指で突付きます。
490 「フガー」
主人「何事もなかったように唸ってやがる…」
鉄子「そ、そーよねぇ。いくら材料がアレでもそのまま使わないでしょ!?」
412 「…で、でも確かにぱかって開いて、あの独特の声で!」
鉄子「よ、よし! それならもう1回試してみようじゃない!」
鉄子さんは今度は、希少鉱石のリルスニアを差し出しました。
*ぱかっ*
490 「ほほう、貴様いい心掛けだな!? それなら仕えてやっても構わんというものだ!」
*ぱたんっ*
336:5/5
08/05/10 04:38:18.60 gUqYURDd
三人「………」
490 「フガー」
また、何事もなかったように490さんは唸っていました。
やっぱり、頭が突然開いてその中からマガシの顔が出てきました!
主人「これ、材料にきぐるみ被せて作ってあるんじゃないか?」
鉄子「や、やめてよ! ある意味で面白いけどある意味連れ回したくなくなるじゃない!
それにサイズが合わないわよ、どう見ても収まり切らないわ!」
この時、私には耐え難い好奇心が生まれていました。
ここで耐え切れれば勝者なのでしょうけど…私は耐え切れない、ダメな方のようです。
412 「あ、あの~…合成させてみるのは如何でしょうか?」
主人「こいつに合成させるのか!? ガジェット作られそうだな」
鉄子「…けど何て言うかすっごい見てみたい!」
鉄子さんは早速、余っていた武器基板をセットして素材を490さんに渡しました。
*ぱかっ*
490 「ククク…セットしてしまったか。しかしもう遅い…どうせ貴様はorzになる運命なのだ。
成功しても10%、失敗してもオキク・ドール…無意味な合成ゲームの始まりだ!」
主人&鉄子「うーわ、腹立つわコイツ!」
-終-
337:名無しオンライン
08/05/10 04:39:18.86 gUqYURDd
というわけで、俺も490ネタ書いてみた
書き終わったら>328があったんで、かぶってスマソ
338:名無しオンライン
08/05/10 06:55:26.47 RooTrQCK
朝から、コーヒー吹いたwwwwww
もし490の中にちっちゃいマガシが居たら、ソニチを見直すwwwwww
339:名無しオンライン
08/05/10 11:18:51.66 utwAm8+0
「ん? 490だけ解説書に続きがあるぞ…」
490は特殊能力として、以下の合成が行えます。
ハシラドケイ ×1
マガシヘッド ×1
「……」
チッ チッ チッ カチッ
「11時だ!貴様らの睡眠へのカウントダウンだ!」
「やらなきゃよかったああぁぁぁーーーっ!」
340:EPX 9章「過去の絆と未来の栄光 1/6」
08/05/11 23:37:09.73 ZutNUJPz
「…落ち着いたか」
数分後、ようやく私はライア総裁の声が耳に届くようになっていた。
我に返ると同時に、両頬がじんじんと熱くなっているのが感じられてきた。
どうやらライア総裁に1発2発と言わずに頬を張られていたらしい。
「いいか、よく聞け。SEED感染そのものは、完全に絶望的な状況というわけじゃない」
「ヒューガ・ライト氏の例もあります。シドウ博士のワクチンを投与すれば回復の見込みはあります」
さっと視界が明るくなる。マスターを連れ戻しさえすれば、SEED感染から回復させることは可能ということだ。
「だが、問題はそこじゃない」
明るくなりかけた私の顔に、さっと影をさすライア総裁の一言。
「この、抗SEED剤…さっきも言ったが、ごく初期の、SEED研究の進んでいない時期に作られたものらしくてね。
とりあえず心身の変異は抑えられるが、ウィルス自体の増殖は止められず、また正常な細胞に深刻な被害を与えてしまう」
「…ただ、マヤ博士にも解析しきれない、未知の構成要素も含まれているという話があったのが気になりますが。
どのみち命に関わる副作用があるということです。投与を続ければ、確実に寿命は縮みますね」
「さっきの映像を見る限り、既に症状はかなり進んでいるようだ。
あれからさらに、一月近くは経っている。下手をすると、既に副作用で死んでしまっているかも知れない」
もう一度叫びたかったが、さすがにあれだけ声を張り上げた後で、その余力はなかった。
「既に死んでいる者を、いくら探しても見つかりっこない。
生きていたとしても、あとどのくらいの余命があるか知れたものじゃない。
マヤのワクチンでSEED感染は治せても、この薬の副作用まで治せるわけじゃないからね。
あいつの命がある内に探し出すのは、極めて難しいだろう」
「対してお前は、対イルミナス特殊部隊の隊長として、目覚しいほどの成果をあげている。
ここだけの話、お前には部隊の全権を任せてもいいという話があるくらいだ。
お前には、輝かしい未来が待っている。過去の絆を大事にするのも結構だが…」
「…私に、マスターを見捨てろと?」
「何と言ってもらっても構わない。が、よく考えろ。
お前には今や、大切な仲間もいる。そいつらを全部ほっぽって、お前のマスターを探し当てたとしても。
お前のマスターはほどなく世を去り、お前は主を失ったPMとして初期化される。
ガーディアンズ総裁としては、人材不足の今、お前を失うという損失は避けたいんだ」
最後に総裁は、こんな言葉で謁見をしめくくった。
「近々、お前達にはイルミナス本部の攻略任務を下す予定だ。ガジェット量産基地の制圧作戦と連動してね。
重要な任務だ…アタシは、その任務を任せられるのはお前しかいないと思っている。
期待に答えて欲しい…ガーディアンズのため、グラールのため、そしておまえ自身の未来のために」