08/04/16 20:19:33.47 uZauK+X8
「わ…私は…」
もう、彼らを見下し、蔑む気持ちは消えていた。
残っているのは、私に上手く彼らを動かす力があるかどうかという、懸念だけである。
しかし、後方から数匹のヴァンダが姿を現した時、その迷いは捨てることにした。
「…この通路で迎え撃ちます。φG、fFは前方でヴァンダと応戦。
fG、GTは後方から支援を。fTは、予備の片手杖があったら私に貸して下さい」
「了解っ」
初めて下した、作戦中の命令。
彼らは不平の言葉一つ漏らさず瞬時に行動に移っていた。
突然の増援に、ヴァンダ達は明らかに狼狽していた。
仲間に呼びかける声だけ残して、数秒のうちに2体が物言わぬ肉塊へと変じていた。
後方で難を逃れていたヴァンダの一匹がディーガを放とうとするが、
fGの正確なライフル狙撃が確実にそれを阻害する。
その隙にfFが槍を構えて突撃し、のけぞるヴァンダを串刺しにした。
「すぐに新手が来ます。各自、迎撃の準備を」
次に現れたのは、オルガ2匹。
先の戦いでは不覚を取ったが、今度はこちらの人数が多い。
オルガの火球が1回か2回ほど前衛の二人に降りかかるが、致命傷に至ることはなく、
勇敢に武器を振るう二人によって返り討ちにされた。
「今のうちに撤退を。隊列はそのまま維持して」
後衛の3人、中央に私、殿を前衛の2人が固める形で、出口に向かって進みだす。
201:EPX 7章「a turning point(中編)4/6」
08/04/16 20:21:10.59 uZauK+X8
「ところで…第1小隊は今も出口で待機しているの?」
何度目かの襲撃を退けた後の私の質問に、傍らのfTが答える。
「それが…どうも本部からの指示があって、既に退却済みなんです。
なんでもこの鉱山の地底湖に封印されていた、巨大原生生物の封印が解かれたとか」
「何ですって」
「確かな話ではないですが、その封印が解かれたのも、イルミナスの仕業という話もあって…。
もしもそれが目的だったなら、彼らが今もここに残っている理由はないと第1小隊は判断したようです」
話に聞いた、太古の昔に封印された巨大原生生物。
もしかして、突然のヴァンダ・オルガの発生も、その事象が関連しているのかも知れない。
「そんな危険な生物を、野放しにしろと本部が?」
「いえ…あの、実はこの近くで、新総裁とローグスの新首領が交渉中だったらしくて。
総裁が、『自分達がやるから退却しろ』と命令を下したようです」
あの総裁らしいと言えば、らしかった。
客観的に考えれば、総裁自らがそんな危険な任務につく必要があるのかという話だったが、
私個人としては、さして心配はなかった。
総裁の傍には、師匠がいる。
師匠がいる以上、太古の原生生物だろうがなんだろうが、相手ではない。私はそう確信していた。
「隊長。そのPM、自分が背負います」
私のすぐ後ろに位置していたGTが進み出た。
「自分は後方支援が役目なので、それほど激しく動く必要はありませんし…隊長はお疲れでしょうから」
一瞬、躊躇する。自分のせいでこうなった440を、他人に委ねるのはどうなのかと。
だがすぐに、440の「一人で強くなる必要はない」との言葉が思い出される。
「…お願い」
自分の責任を彼に押し付けるような気がしたが、GTは誇らしげに微笑んだ。
「隊長の信頼に、全力を以って応えます」
信頼。懐かしい言葉だった。かつてマスターと二人でいた時には日常のように聞いていた言葉。
ただ、信頼を受ける立場だったのが、与える立場へと変わっていた。
マスターの信頼が、私に実力以上の力を与えてくれたように。
今度は私が、彼に同じ力を与えることになるのだろうか。
そう思った時に、私は初めて実感していた。
マスターを取り戻すための、本当の一歩を踏み出したという、実感を。
202:EPX 7章「a turning point(中編)5/6」
08/04/16 20:22:43.38 uZauK+X8
GTの申し出た措置が、早速役に立つ場面が来た。
前方を進んでいたfGの前に、突如ヴァンダ・オルガが立ち塞がってきたのだ。
fGは咄嗟に接近用のショットガンに持ち替えようとするものの、不意をつかれて動作が遅れる。
その間にオルガは大きく息を吸い込み、炎の息を吹きかけようとしていた。
体力も回復し、440も背負うことなく身軽になっていた私は、一足飛びに両者の間に割って入る。
扱いやすさに定評のある片手剣は、咄嗟の事態にも素早い対応を可能とした。
斜め下からオルガを斬りつけ、振り上げる際に勢いづいた回転力を活かしてさらにもう一撃。
ガーディアンズにとって基本中の基本にして王道の技、ライジングストライク。
体の隅まで染み付いたその一連の動きは、考えるより早くオルガを宙に舞い上げていた。
体勢を整えたfGが、オルガの落下に合わせて狙いすましたショットガンの一撃を放つ。
密着距離で最大の効力を発揮する散弾がオルガを蜂の巣にした。
「助かりました。遠くの敵に狙いを定めるのは得意ですけど、近寄って来る敵は苦手で」
fGが頭を下げる。
確かに、fGという職は射程の長い攻撃を得意とするが、近づく敵は苦手な様子だった。
それを知った以上、fGの彼に前を歩かせるわけにはいかなかった。
「私が前に出ます。fFとφGの二人は、後方の追撃に備える必要がありますから」
「了解です。…WTは距離を選ばず戦えるのがいいですね。少し羨ましいです」
言われて初めて思い当たる。
私にしろマスターにしろ、特に苦手な距離はないが、それが隊列に如実に反映されるということに。
前に出れば近接用の打撃武器を、中距離ではテクニックを、そして遠距離では弓がある。
先ほどまでは隊の中央でテクニックを主体として戦っていたが、前に出ても別段困ることはない。
つまり、今回のように隊列を組む場合、fFは前衛、fTやfGは後衛とある程度配置が限られるが、
自分はどこに配置されても戦えるのだ。
味方の誰かが倒れる、或いは別行動を取ったとしても、自分がその役割を代用できる。
状況の変化に柔軟に対応できるのがWTであり、またそれができてこそWTと言えるのかも知れない。
私は師匠の言った、WTの極意を思い出していた。
敵だけでなく、味方に合わせる。こういうことなのだろうか。
203:EPX 7章「a turning point(中編)6/6」
08/04/16 20:24:19.07 uZauK+X8
私のいる前方に敵がでてくることも何度かあったが、やはり後方からの襲撃が多かった。
「こいつ、逃げるんじゃねえっ」
fFが苛立たしげに毒づくのが後方から聞こえる。
前方に注意を払うことも忘れてはならないが、状況の把握のため私は後方を振り返る。
fFがどうにか打撃武器を当てようとするものの、ヴァンダ達は巧妙に後退りしながら距離を取っていた。
うかつに追いかけて孤立することを恐れ、fFは今一歩踏み出すことができないでいる。
φGもツインハンドで牽制するが、あくまで本分は近接戦闘なので、ヴァンダには致命傷を与えられない。
距離を取るならfGやGTの射撃が物をいうのだが、彼らは私のいる前方に注意を払っているため、
背後を振り向いて狙いを定めるのは躊躇われる様子だった。
私やマスターも、ヴァンダのような距離を開けるタイプの敵には中々近接戦闘をしかけられなかった。
そういう時、私やマスターならどうしていたか。
状況に当てはめて、一瞬のうちに答えを導き出す。
「fT、ラ・バータで足止めを。その間に前衛は接近を図って」
fTが直ちに氷系テクニックを発動させる。
ダメージと共にヴァンダは氷柱に囚われ、その動きを止めた。
「よっしゃあ」
fFが一瞬で距離を詰める。
一旦接近戦になれば、全職最高の殺傷力を持つ彼の攻撃に耐えられる敵はいない。
「さすが隊長。俺達の戦い方をよく知ってます」
肉片と化したヴァンダを足元に、fFが満足げに笑いかけた。
「俺達、向かってくる敵は得意だけど、逃げる敵は苦手で…ああして足止めしてもらえると助かります」
「私も隊長の指示は適切と思いました。打撃と法撃、両方の戦い方を知っていればこそですね」
fTが言葉を継ぐ。
確かに私は打撃と法撃、両方での戦い方を知ってはいる。
しかし、そのそれぞれを特化職が受け持った時、これほどの効果があるとは思わなかった。
私が一人で戦うより、遥かに素早く、安全に敵を倒せる。
それは、私一人の力とは言えないかも知れないが。
仲間の力を十二分に引き出すというのも、私の力の一つと考えていいのではないだろうか。
『一人で強くなる必要はない』
440の残した言葉が、改めて私の心の奥底にまで染み込んでいった。
204:EPX作者
08/04/16 20:32:12.77 uZauK+X8
以上、中編でした。
周りの者に支えられ、GH-412は真の強さに目覚めていきます。
次回後編にてヴァンダ軍団との決着、そして第2部「412奮闘編」を完結とさせていただきます。
ご期待ください。
205:名無しオンライン
08/04/16 20:53:23.85 U240kjkl
>>198-204
いいねえ、WTの強さがわかってる。全てができるから全てに精通できるんだものな。
自分は実装当初からWTが弱いなんて思ったことは一度もないであります!
それはそうと、自分が今ここで執筆中のものがテーマで微妙にかぶってしまったのは秘密でありますW
206:名無しオンライン
08/04/16 21:36:00.08 BAxCNbDI
>>198-204
そこで前衛がチッキ…などと思った俺は退場した方がいいなww
いや、412かっこいいなぁ、おい!
その凛々しさに嫉妬。
>>190-196
そのソードに対するこだわりはきっと、俺にとってのレーザーと同じものなんだろうなw
なんか俺もネタ書きたくなった。ウチの422とレーザーでw
INする前にここ読むのが楽しみになってます。
各作者さんとも、がんばってください!
207:再会へ続く扉1/2 @ミスラ
08/04/17 19:44:41.51 qwYM3lHm
「それでもまた、許されるなら...いつかあの扉をまた開けたらって思うの」
扉が開く、先程まで音一つ無かった部屋の空気が震えだす
私は廊下に明かりを灯しコーヒーを淹れ、部屋のソファーに腰を下ろし、煙草を取り出す
肺の奥まで其れを吸い込み、そして静かに天井を白く染める
此れは毎日繰り返される、毎日刻まれる私の歴史
ガーディアンズを辞め早一年以上、私の中で繰り返される平和な日常
守るべき者はもういない、私の我侭で、この手でその全てを消した
後悔、そんなモノかどうかは判らない。けれど今でも二人の移った写真は残してある
けど全て終わらせてしまった・・・その筈だった
数日前、昔の同僚が何を思ったのか再びガーディアンズに復職したと聞いた
また新しい部屋、新しいパートナーを与えられ、新たな任に就くつもりだったと
友人がぼそっとこう呟いた「あの日のまま全部、残っていた」
・・・ガーディアンズをやめて三ヶ月を過ぎるとライセンスは剥奪され
その全てのデータは消去される筈、それを覚悟の上でお互い他の道へ歩んだ筈
・・・でもそれ以上その話は聞き出せなかった、自分で確認してみろという事なんだろう
何を今更・・・どうしろと言うのか
ふと部屋の扉に目がいく、あの時の言葉を思い出す・・・
・・・あの日の様な時間が流れていき、煙草が指を焦がしたのはその数分後
208:再会へ続く扉2/2 @ミスラ
08/04/17 19:49:56.81 qwYM3lHm
・・・翌日、私はガーディアンズの門を再び叩いていた
確かに一見変わって無い様には見えた、けれど私の知らない事が増えていた
現役の兵達を見ても私の知らない武器やシールドラインで身を固めている
少なくとも一年前とは大違い・・・少し、不安になってきた
何もかもが変わって見える、友人にからかわれたのか・・・
もし、もし何も残っていなかったら・・・想像に思考が歪む
暫くして書類を持った男が私を呼んだ、答えを聞くのが恐ろしかった
「手続きは済んだ、部屋のコードは君が使っていた時のモノに戻しておいた、それとPMは・・・」
話を半ばまで聞いて私は駆け出していた、男の話を自分で確かめるために・・・
・・・プシュー・・・
・・・部屋のドアが開いた・・・ガーディアンズの人達・・・?
「・・・本当にあの日のまま・・・」
・・・この声・・・どこか懐かしい、けれど思い出せない
「・・・450」
私は・・・GH101の筈、450ではありません・・・
「さっきの話は本当だったのね、記憶デバイスに無理矢理ロックをかけたって・・・」
デバイスZEROでデータを全て消される前に記憶デバイスを一部固定して逃がそうとしたのだろう
結果記憶が残る訳でも無く全てを忘れた訳でも無い、データのデリートも行えず動作自体不安定な状態だ
男の話ではガーディアンズの新兵に使わせる訳にもいかないからジャンクとして廃棄処分も検討されていたそうだ
・・・私は・・・間に合ったのだろうか・・・?
「ずっとそうして待っててくれたのね・・・ごめんね・・・」
訳のわからない事を言い続けるその人はそういって泣きそうな顔になった
キャストの・・・女性・・・やっぱり懐かしい、けど・・・?
「 あのことばを いわなきゃ 」
何?これは・・・何だろう、何故こんな事を・・・判らない・・・
・・・でも私はこの人にこの言葉を言いたかった、ずっと、言いたかった!
・・・それを言うために、ずっとここで待ち続けたいた・・・
・・・緑色のフォトンを目に鈍く灯し、GH101はその言葉を紡ぎだす
「・・・お・・かえりな・・・さい・・・」
「・・・ただいま、450・・・っ!」
そして、キャストの女性はついに・・・泣き出した
「もしまた叶うなら、その時はまた一緒にこの扉の外へ...」
209:再会へ続く扉作者
08/04/17 19:56:00.42 qwYM3lHm
(´・ω・`)申し訳ないです、多分誰も内容は判らないと思います
一度引退した身なのですがこの度縁あって再び復帰した記念というか自己のアレというか;
とはいえ装備も全て処分、おいていくのが何となく可哀想だったのでPMも全て初期化。
それでも450の事だけが気がかりだったり・・・(´・ω・`)
何もかもが変わっていたグラールですが、復帰してずっとやりたかった事をやっと出来ます
もう一度ウチの子を450にして一緒に冒険に出かけるヽ(´ー`)ノ
そんなこんなですがスレ汚し大変失礼致しました;
210:名無しオンライン
08/04/17 21:35:07.26 vQCHfbvL
>>209
俺は引退したことはないけど引退していく人たちは何人も見た。
色々考えては切なくなってたから、この話は心に刺さった。
450と楽しい日々を送って下さい。
いつか一緒に戦おうぜ!(そしてどっちがPMを連れて行くか揉めるw
211:名無しオンライン
08/04/17 22:46:19.36 Mx3xujOb
なんか多いな412。戦力評価高いのか412。
メガネ大好き!緑いい色!とか言うノリで作ったが、なんか流行に流されたみたいで悔しい
いや、みんなメガネ大好きなのか。そうか。
納得した。
212:EPX 7章「a turning point(後編)1/5」
08/04/18 00:24:28.49 Y8YYEKPx
「この部屋を抜ければ、出口にたどり着けるはずです」
目の前に開けた、四方に坑道が伸びている大部屋。
そのまま正面奥の坑道まで行ければ問題ないのだが、さすがにそれは楽観的過ぎた。
各坑道からヴァンダやオルガの姿が現れ、通路で戦っていた時とは比べ物にならない数が集まってきた。
爛々と光る無数の双眸は、何匹もの仲間を屠られた怒りに満ちている。
歯を軋ませ、爪を打ち鳴らす音がそこかしこから聞こえてくる。
敵意の塊のような唸り声を揃ってあげる様子から、彼らの思惑がひしひしと感じられた。
私達全員、生かして帰すつもりはないと。
「どうしますか、隊長」
部下達が一様に私に視線を向ける。
ガーディアンの務めとしては、できればこの危険な原生生物は殲滅しておくのが最良と思われる。
が、何しろ数が多すぎる。
無理に殲滅を図ると、先にこちらの体力が尽きる危険がある。
何より、今は一刻も早く440を本部に連れて行くことを優先したかった。
「密集隊形でこのまま進みます。殲滅よりも、脱出を優先して」
「了解」
fF、φGが先頭をきり、前方の道を切り開く。
fGは前方および側面の敵の迎撃、GTは最後方の私に対する援護射撃と各種補助を、
fTは全方向に注意を配り、臨機応変に各方面への牽制を担う。
ヴァンダ達は側面や後方からおびただしい数のディーガを放つ。
立ち塞がる別のヴァンダ達は炎の息で前進を阻もうとする。
ディーガについては身を低くして被弾を抑え、
テクターのいずれかが精神干渉を受けた場合は、極力早く状態異常回復テクニック「レジェネ」で癒す。
炎の息は前衛二人に打ち上げ攻撃を多用させ、好きに攻撃を続けさせないよう指示をしてある。
小隊の中に無傷の者はいなかった。
が、その都度いずれかのフォローが入り、部屋の半ばまで順調に進んでいた。
それも、オルガの何匹かが突撃し、隊列の中に割って入るまでのことだった。
213:EPX 7章「a turning point(後編)2/5」
08/04/18 00:25:28.23 Y8YYEKPx
投げつけられる火球によって、まずfTの足が止まる。
回復処置のために足を止めると、目の前にまで迫ったオルガが炎の息を側面や後方から、
合わせてヴァンダもfTに止めを刺そうと、かさにかかってディーガを投げつけてきた。
φGがfTとディーガの間に割って入り、代わって土塊を受け止める。
φGは元々テクニック等の精神集中を要する技は持たないため精神干渉の痛手はないが、
ディーガのダメージそのものは十分脅威のはずである。
オルガの炎の息と合わせると、命に関わる負傷になりかねない。
私はすかさず杖を振り、φGの傷を癒してやる。
おかげでfTは事無きを得たのだ。名誉の負傷と言って差し支えない。
しかし、私の回復により命拾いをしたφGは、少々意表をつかれる行動をとった。
「ありがとう、助かる」
この上ない爽やかな笑顔で、私に向かってぐっと親指を突き出して一言。
別段私は、言葉遣いについてそうとやかくは言わないので責めるつもりはないが、
今までの口調とかけ離れたフランクな口調に、少々面食らったのは確かだ。
φGは一瞬の間をおいて、ばつの悪そうに頭を下げてきた。
「す、すみません。
入隊前からの癖で、危ないところを助けてもらうとつい、感謝の気持ちをこんな風に…」
それだけ言うと、照れ隠しなのか。
φGは両端に刃のついた武器、双剣を取り出してヴァンダ達に八つ当たりのようにがなりたてる。
「お前らのせいで、恥をかいただろうがっ」
φGの持つ双剣のフォトン光が一気に膨れ上がる。
頭上で双剣を回転させ始め、そのまま敵の群れに飛び込む形で前方に突撃を敢行する。
打撃武器を用いた技の中には、フォトンリアクターの働きによって常識外の動きを可能とするものがある。
自らの体を軸とし、頭上に構えた双剣の刃を風車のように回転させながら遥か前方まで高速移動しつつ、
刃に触れた者を容赦なく切り刻み、吹き飛ばす。
ガーディアンズに伝わる双剣の奥義、「トルネードダンス」もその一つだった。
こちらの隊列も崩れたが、まさに人間大砲のようにヴァンダに飛び込んだφGのおかげで、
敵も混乱をきたしたようだった。
吹き飛んだヴァンダが他のヴァンダをも巻き込み、雪崩式に敵の隊形を崩していく。
大きく開けた前方に、出口へと向かう坑道が姿を垣間見せた。
214:EPX 7章「a turning point(後編)3/5」
08/04/18 00:26:17.50 Y8YYEKPx
「今のうちに、出口へ」
乱戦の中、声を限りに叫ぶ。
反応し、出口へと伸びている坑道を目指して走り出す。
襲い掛かるヴァンダに対しては個別に対応するしかなかったが、
さすがに向こうも統制が取れていないため、そう激しい攻撃にはならなかった。
私は殿をつとめ、足の止まりそうな者がいたらフォローに入る。
そうやって、坑道が目の前に迫ったころ。
視界の隅に、ちらりとそれが目に入る。
一匹のヴァンダ・オルガ。だが、その容貌は明らかに他と異なっていた。
角の形がより威厳を感じさせるものであり、体も一回り大きい。
何より、他のヴァンダやオルガの群れが、その一匹に対してはあからさまに距離を置き、
畏れのようなものをその態度に表していたのだ。
この群れを率いる、王であることに間違いなかった。
王は群れをかきわけ、というより他の群れが道を開けるに任せて進み出る。
低く構えた両の手が、ゆらゆらと蜃気楼のように周囲の景色を歪ませる。
それぞれの掌を、徐々に膨れ上がる緋色の光が覆い包む。
離れているこちらにも熱が伝わってくるかのような、ゆらめく炎の塊を見て、私は悟った。
あれを両方まともに受けて、耐えられる者はこの中にいないと。
まだ掌にまとわりついたままの炎の塊を弄ぶように、ゆっくりと腕を上げる。
勝利を確信したかのように、王は悠然と歩を進めてくる。
後は、いつそれを放つのか決めるだけだと言わんばかりに。
王が誰を狙うかは分からない。
だが、乱戦のためあの炎の玉を避ける十分なスペースがない以上、誰かは確実に的となる。
そして、あの炎の玉を受け、命を絶たれるだろう。
どうすればいいのか。
王の標的が、自分以外の誰かになることを祈るしかないのか。
今までないがしろにしていた自分を隊長として立ててくれた、部下達の誰かを犠牲にしろというのか。
時間はない。しかし、考えねばならなかった。
215:EPX 7章「a turning point(後編)4/5」
08/04/18 00:27:37.35 Y8YYEKPx
オルガの放つ炎の玉も、片手からのものならばさほど脅威ではない。
あの双手からの火球は、放たれた後に空中で一つに固まることで威力を倍増させるのだ。
そこまで考えると、私の頭に一つの案が浮かび上がった。
「fT、GTは回復杖の用意を。fF、φGは彼らの前で盾となってあげて」
それだけ言って、私はあるタイミングに備えて十分に足をためる。
王は私達を一通り見回した後、おもむろに両手を振り下ろし、火球を放つ。
その瞬間を待って、私は猛然と地を蹴り、王に向かって踏み込んだ。
二つの火球は、放たれた後空中で交わることにより一つの強大な火球へと変化する。
ならば、その交差点より前に進み出て、あえて一つだけ受けるようにすれば。
片方の火球が私を直撃し、爆音と共に炎を噴きあげる。
しかし、もう片方の炎は私の脇をすり抜け、後方の部下へと向かっていった。
fFがその片方を受け止め、すかさずGTが回復を行う。
「…そう何度も、同じ手は通用しないわ」
体から炎を吹き上げ、人工皮膚を焼かれる激烈な熱を感じながらも、私は怯まず王の前に立つ。
片方だけならば、致命傷になることはない。それもある。
しかし、今感じているこの苦痛は、私一人で受け止めたものではなかった。
仲間と共に分かち合ったものと思えば、身を焦がす炎も何ほどのものではないと感じられた。
支えるべき者がいる。支えてくれる者がいる。
その思いが、私の長剣を握る腕に不思議なまでの力を与えてくれた。
一歩、王が後ずさる。二歩目は許さなかった。
前方に跳躍し、長剣を縦に構えたまま空中で回転する。
全体重を乗せた長剣のフォトン光が、円周状の軌跡を描き上げる。
その通過地点にいた王の鼻先から下腹部まで、一直線に切り傷を刻みつける。
ぱっくりと開いた傷口から王の体液が噴きだす。
大きくのけぞる王に対し、さらに踏み込んで1回、2回と縦回転する長剣を浴びせかける。
1回目でさらに深く王の体を縦に切り裂き、2回目は長剣の軌跡が王の背中まで突き抜けた。
スピニングブレイク。
フォトンリアクターの開放により連続して空中で縦回転しつつ斬りつける、長剣の上級技。
文字通り真っ二つにされ、王は断末魔の悲鳴を上げる暇もなくその場に崩れ伏した。
216:EPX 7章「a turning point(後編)5/5」
08/04/18 00:28:32.68 Y8YYEKPx
ヴァンダやオルガの群れに大きく動揺が走る。
脱出のチャンスは、今をおいてなかった。
着地と同時に部下の元へ駆け寄った私は、そのまま一丸となって坑道の奥へと走り去る。
出口につくまで、私達を追ってくる足音が聞こえてくることはなかった。
「ありがとう、みんな」
鉱山を抜け、安全なところまで移動したところで、私は改めて頭を下げた。
部下達は互いに顔を見合わせるが、やがてfFが一歩進み出る。
「よしてくださいよ、隊長。俺達、仲間じゃないっすか」
「…仲間?」
「そう、仲間。みんなイルミナスの連中が許せなくて、部隊に志願したんじゃないすか。
…隊長にも、辛い過去があったんだと思います。俺達も同じです。
イルミナスのやったことは、絶対許せない。でも、それより大事なのがあって…それは、ええと」
fFが言葉を探しているうちに、fTが後を続けた。
「大事なのは、イルミナスから皆を守ること、そうでしょう。
我々ガーディアンズの本分は、このグラールの人々を守る…それに尽きるのですから」
それを聞いて私は、心の中で深く溜息をついた。
かつてマスターが口癖のように言っていたこと。
そして、マスターを失うと同時に、私の頭から消え失せてしまっていた言葉。
私は、所詮PMであり、正式なガーディアンではないが、それでも。
マスターの理念を、私が失ってはいけなかったのだ。
常に視線を置き、頭に入れておくべきはイルミナスの滅亡する姿でなく、
イルミナスに苦しめられている人々であった。
マスターと同じものを、彼らは持っている。
第1小隊のような者も中には居るが、ガーディアンは決してハウザーの言っていたような、
自己の利益のみを追い求める者ばかりではなかったのだ。
私は彼らと出会えた幸運に感謝した。
そして、今こそ断言できる。
マスターのいるべき場所は、やはりイルミナスなどではなく、ガーディアンズなのだ、と。
217:EpX 第二部エピローグ1/2
08/04/18 00:30:15.08 Y8YYEKPx
あれから、何日たったろうか。
本部への生還を果たした私は、直ちに440を本部のPM運用部に預けた。
仕事も手につかない、まんじりとした日々を過ごしていたが、ある日。
本部内の通路を歩く、キャストfGと440の姿を見止めた。
「440、無事だったのですね」
キャストfGとはできれば顔を会わせたくなかったが、この際気にはしていなかった。
待ち望んだ440の元気な姿。だが、次の瞬間。
私の笑顔は、凍りついた。
「あっ…ええと、初めまして。440と申します」
丁寧に頭を下げ、挨拶をする440。
同タイプの別PM、というわけではなかった。
私達PMには見分けがつく。この440は、まぎれもなくあの440の筈だった。
何が起こったのか分からずに言葉を失う私に、キャストfGが声をかけてきた。
「ほお、私のPMの復活を、君がそんなに喜んでくれるとは意外だな」
「彼女に…彼女に何をしたの?」
「?何をした、と言われても…見ての通り、無事治療が完了したところだ。
ついでに、記憶も初期化してもらってな。再教育を施したところだ。
以前は何かと勝手な行動に走ることが多かったのでな。
おかげで、今度は順調に、私の命令に忠実に従うPMに育っているよ」
「き、記憶を…記憶を消すって…貴方、それがどういうことだか分かっているの?
PMの今まで経験や思い出…全てを奪い去る行為なのよ」
私の脳裏に、かつて炎の防衛線で440がぼやいていたことを思い出す。
自分は、主人の都合によって何度初期化されたか分からない、と。
PMにとって、よくあることではあったが。
命の恩人でもあった440の今の姿を見ては、そんな一言で理性的に片付けることはできなかった。
「理解できんな。私の所有物を私が扱うことについて、君がとやかく言う権利があるのかね」
キャストfGは、本気で理解できないといった様子で首をかしげる。
「あ、貴方は…貴方という人は…っ」
背丈の差も考えず掴みかかろうとする拍子に、またも眼鏡がずり落ちる。
何ともしまらない話だが、こんな時でも癖というものは消えないもので、つい眼鏡を直そうとする。
218:EpX 第二部エピローグ2/2
08/04/18 00:34:24.83 Y8YYEKPx
そこへ、差し伸べられる小さな手。
440が、私の眼鏡の位置を直してくれていた。
かつてのように、私が自身でそうするよりも早く。
まったく同じ仕草、同じ力加減、そして。
彼女がそうする時にいつも込めていた、労わりの気持ちをも思い起こさせていた。
「あ…あれ?私、一体何を…。ご主人様の命令もないのに…」
440は、自分で自分の行動の理由が分からない様子だった。
私は、たまらず440を抱きしめた。
余りに強くそうしたので440が小さく悲鳴を上げるが、どうしても手を緩められなかった。
ごめんなさい、440。
私は、まだ泣くことはできない。
泣き虫だった私は、マスターと別れたあの日を境に、誓ったから。
いつかマスターに、私が貴女にしているように強く抱きしめてもらう、その日まで。
何があろうと、決して泣かないと。
ありったけの力で歯を食いしばり、涙の溢れそうになるのを無理矢理抑える。
それが自然、440を抱く腕に伝わってしまうのだ。
440は、私の代わりに「死んだ」。
私に大切な言葉を残し、大事な出会いを用意してくれた。
貴女がいたからこそ、私は色々なものに気付くことができた。
そう、貴女は私にとって、「転機」そのものだったのだ。
私は、立ち止まるわけにはいかない。
マスターとの誓いを守るため、何を踏み台にしてでも進み続けなくてはならない。
でも、今だけは。
私のために「死んで」しまった、440を悼みたかった。
『主人を取り戻すなら、あんたは主人の持っていないものを身に着けなくちゃならない』
『あんたは、一人で強くなる必要はない』
440の残してくれた言葉を、私は心の奥深くで噛み締めていた。
いつまでも、いつまでも。
219:EPX作者
08/04/18 00:48:26.53 Y8YYEKPx
以上をもって、第二部「412奮闘編」を完了いたします。
お付き合いいただいた方、ありがとうございます。
GH412は、失った物と引き換えに大きな物を手に入れます。
マスターを取り戻すのに必要な、確かな手ごたえを掴んだのです。
第三部にて、EPXは完結予定ですがその前に。
彼女のマスターに何が起こっていたのか。
次回はそれに関するエピソードを幕間として投下しようと思います。ご期待ください。
>205
私は、貴方程強い心をもってWTを信じていたとは必ずしも言い切れませんが、
愛着の程は今までのエピソードで表現できていればと思います。
テーマの重複は、私もここの皆さんもきっと気にしないと思います。期待しています。
>206
スライサーの描写には自信がなかったので、あえて避けてきました。
かの技による圧倒的な快進撃を期待していたのなら、すみません。
また、412への温かい言葉、ありがとうございます。
220:名無しオンライン
08/04/18 02:07:39.81 SI6VcVaV
ちっ、EPX作者の独断場じゃねーかっ
221:名無しオンライン
08/04/18 19:33:26.33 YMayUVs5
>>219
ラスカルふいたw でもダブルセイバーは両剣だな。 双剣だとツインセイバーになってしまうw
いやどうでもいい事なんだけどちょっと気になっただけなんだ。すまそ
こういった友情劇大好き。おもわずグッときちゃったよ
第三部期待期待
222:EPX作者
08/04/21 22:07:25.35 3nHQO58q
>220
投稿量を振り返るだに自分がKYな人間に思えてきましたが、
ほかの皆さんの投稿がない間の保守代わりとでも思っていただけたら幸いです。
>221
ダブルセイバーの日本語表記については大変失礼しました。申し訳ありません。
第3部についてはただいま鋭意執筆中ですので、今しばらくお待ちください。
前回の予告通り、これからは第3部の前の幕間として、
しばしPM412のマスターに視点を移した物語を展開します。
それではこれより、EPX幕間を投下いたします。
223:EPX 幕間(前編1/4)
08/04/21 22:09:30.30 3nHQO58q
私はよく、夢を見る。
ガーディアンズを抜け、イルミナスの傘下に入り、初めての任務に当たった時のことを。
永遠に抜けられない、悪夢として。
『見ろ、やったぞ…ビースト共め、次々と醜い化け物に変わって行く』
『これは…何…これは…。今散布したのは、鎮圧用の催涙弾じゃなかったの?』
『何を言う、同志。我らの手柄だぞ。にっくき獣共に天誅を下す…これがイルミナスの力だ、これが』
『違う…これは、違う。私は、こんなものを望んでいたわけでは…』
『どうした、同志。顔色がわる…ぐはっ』
『おのれ、裏切り者…よくも同志を』
『何が…何が真の平等よ。これは…ただのテロだわ。貴方達に理想を語る資格なんか、ない』
私は、その場にいた「元」同志を全員切り伏せ、ダグオラシティを駆け回る。
次々と、SEEDフォームに変じてゆくビースト達。
大人も、子供も、苦しげに呻きながらその姿を、心を蝕まれていく。
どうにもならなかった。
事の真実に気付いた時には、SEEDウィルス…私が催涙弾と信じていたそれは、
ダグオラシティに満遍なく散布されていたのだ。
悲鳴が耳にこびりつく。断末魔の声が胸を突き刺す。
すがりつく腕をとっても、その腕がSEEDの物に変わっていく、
おぞましい感触を味わうだけだった。
これが、イルミナスの正体。
私がガーディアンズを捨ててまで求めた理想をかけた、組織の実態。
私は、理性も何もかなぐり捨て、只叫ぶ。
イルミナスの名を、ハウザーの名を。ありったけの呪詛をこめて。
この日から、私にとってイルミナスは、敵となった。
といって、今更ガーディアンズに戻ることは、許されるものではなかった。
何故なら。
モトゥブを襲った、大規模なSEEDフォーム化事件。
私はその事件の、唯一生き残った実行犯だからだ。
モトゥブに住むあまねく人々の恨みを背負って、生きていかねばならなくなったからだ。
224:EPX 幕間(前編2/4)
08/04/21 22:13:25.87 3nHQO58q
薄暗い一室で、目を覚ます。
いつものように、涙でにじむ目元をぬぐい、私は寝台から身を起こす。
あの日以来、私は犯罪者となった。
史上稀に見る悲劇を引き起こした、張本人となった。
言い訳はしない。
被害者や、その関係者の前で「ウィルスとは知らなかった、許してくれ」などと言える訳がない。
言うべき言葉など、私には何もない。あってはならない。
ダグオラシティを脱出し、イルミナスを脱走する形で抜け出した後、私は考えた。
私のとるべき、これからの行動について。
自首して、正式に裁きを受ける。それもいい。
極刑となることは明らかだが、甘んじて受け入れる準備はある。
ただ、思うのは。
それで、己の罪が赦されるものなのだろうかという、疑念。
仮に死を賜り、あの世とやらで犠牲者に会ったとき。
彼らは、私を赦してくれるだろうか?
あの世で彼らに会う前に、この世でやるべきことがあるのではないか。
死ぬまでに、自分にできうるあらゆる手を尽くして償いとするのが筋ではなかろうか。
もちろん、それで赦しを得られるとは限らない。
だが、赦される、赦されないに関係なく。
私は、最後の最後まで自分の償いに手を抜かず、尽くさなければならないと思った。
そのために、何をするべきか。
すぐに思い浮かんだのは、イルミナスの壊滅。
悲劇の元凶たるイルミナスを壊滅させるのは、私に課せられた当然の義務と言えた。
だが、まだ足りない。
まだ、やるべきことはある筈だ。
225:EPX 幕間(前編3/4)
08/04/21 22:15:34.76 3nHQO58q
何を?
考えて、やがて思い浮かぶ。
私はそもそも、何のためにガーディアンズを裏切り、イルミナスに下ることになったのか。
ハウザーの言った、「真の平等」…その言葉を必要とする人々がいるという、現実。
そして、私の選んだ道でもある「弱き人々を護る」…そのために必要な、成すべきことがあると。
「虐げられし人々の解放」
当時は漠然としか感じられなかったが、今こそはっきりと、私にはそれが見えていた。
ヒューマンに限らず、グラールのそこかしこで不当に貶められ、虐げられている者はいる。
私はそれを、イルミナスでのわずかな活動を通して見てきた。
私は、彼らを解放しよう。
小鳥の運ぶ水で山火事を消すようなものと分かっていても。
私は私の命と力の及ぶ限り、彼らのために尽くそう。
当時はそれがはっきり見えていなかったために、私は多くの人間を殺めることになったのだ。
その理想を貫かずして、あの世で彼らに合わせる顔はないだろう。
そんな決意をしてから、既に数ヶ月経っていた。
私は、私なりに手を尽くしてきた。
しかし、それが本当に正しいことなのか、自身を疑う気持ちもあった。
モトゥブでの人身売買組織の噂を聞き、その末端と思われるグループの拠点に乗り込み、壊滅させた。
そこにいた、ビーストやニューマンの子供はもちろん解放したが。
彼らは無事、親元に帰るなり、新しい生活を送るなりできているだろうか。
行き着く場所まで辿り着けず野垂れ死にするようなことは、なかったろうか。
モトゥブでの行動はまだいい。
パルムにて敢行した、囚人護送車の襲撃。
元々ろくに言い分も認められず、不当に貶められたヒューマンの囚人を救おうと起こしたことだが、
理由はともかくこれはれっきとした犯罪である。
ただその時は、冤罪の可能性のある彼らにもう一度チャンスを与えたいと、それしか考えていなかった。
脱走に手を貸し、結果的に余分な罪を背負わせただけだったのではないだろうか。
幾人かについては、伝え聞いた情報を元に真犯人を探し出したり、証言を覆す証拠を見つけたりはしてきた。
ただ、全員を救うことができたとは言いがたい。
彼らはそれでも感謝していたが、私は納得できていなかった。
226:EPX 幕間(前編4/4)
08/04/21 22:17:10.95 3nHQO58q
己の行動に疑問を持つことも度々だが、その都度。
迷う暇があったら一歩でも足を動かすことだ、と自分に言い聞かせてきた。
迷って足を止める、一分一秒が惜しい。
そうして無駄にする時間の数だけ、自分にできる最善の努力から遠ざかってしまうのだから。
その他、イルミナスから奪った活動資金や、こまごまとした依頼で得た報酬などは、
ことごとくモトゥブの再建資金として寄付してきた。
自分に残されるものは、生きるのに最低限必要な食料や衣類、日々の宿代、それぐらいだった。
ずいぶんと、痩せたと思う。
自分で言うのもなんだが、以前は女としては比較的がっしりとした、肉付きのいい体格だと思っていた。
今は、骸骨のようなとまでは言わないが、自分より細身の女性はそういないと思えるぐらいになっている。
それも、決して健康的なものではない。
これで十分、などと一瞬でも思ってはいけない。
犯した罪を償うのに、十分などという言葉は存在しないのだ。
私を止める資格は、私にはない。
生きている限り、私は進み続けなくてはならない。
疲れ、空腹、そして病。
何であろうと、歩みを止める理由にはならない。
ただ一つ、例外があるとすれば。
私は、かつての無二の相棒の顔を思い出す。
私のPM、GH-412。
彼女が私の予想を超える成長を遂げ、私の予想も尽かない強い意志をもって私を止めるのなら。
「…難しいかしらね、やっぱり」
何かにつけて、すぐ目に涙をためる412の顔を思いだす。
それでも、期待してしまう。
いつか彼女が、私以上の強さと意志をもって、私を迎えに来てくれる日の到来を。
救いを求める甘えでしかないと、分かっていながら。
227:EPX作者
08/04/22 20:53:43.06 B/cQHCOp
続けて「幕間(中編)」、投下します。
228:EPX 幕間(中編1/4)
08/04/22 20:54:49.50 B/cQHCOp
現在、私はニューデイズのあばら家にて寝泊りをしている。
宿主に打ち捨てられて久しい廃屋だが、私には丁度いい拠点と言えた。
ニューデイズでは、LSSなるシステムを用いてSEEDの脅威から人々を守る代償として、
巫女、および教徒の何人かを犠牲にしているという話を聞いていた。
必要なことといえ、また彼女達は皆自分から志願したという話を聞いているといえ、
私は本当に彼女達が納得しているのか、確かめる必要があると感じた。
事の次第を確かめるために一度、グラール教団本部に乗り込んだことがあった。
が、教団の中に潜伏していたイルミナス工作員の妨害で目的は果たせず、
彼らの何人かを返り討ちにして逃げ帰るのが精一杯だった。
おかげで正規のグラール教徒も警戒を強め、侵入もままならない状況に陥っていた。
そのようないきさつで一度は断念したが、チャンスは思わぬところから巡ってきた。
モトゥブの酒場でくだをまいていた、ローグスの一員と思われる男達の話を聞いたのだ。
それによると、かつてガーディアンズ前総裁の暗殺を図り指名手配された、
あのイーサン・ウェーバーが教団への侵入を企てているとのことで、
口の軽い男達はご丁寧に決行の日まで洩らしていた。
彼の侵入と時期を同じくして入り込めば、少なくとも警戒は二分されることになる。
そう考えた私は、ただちにニューデイズに移動し、この廃屋で機会をうかがっていたのだ。
そして、今日が彼等の言っていた、決行の日となる。
229:EPX 幕間(中編2/4)
08/04/22 20:56:45.55 B/cQHCOp
身支度を整える。といっても、さほどの手間はない。
必要なものはナノトランサーに収納済みだし、着替えもいつもの通り。
身体全体にぴったりフィットする、伸縮性の強い黒のボディースーツで全身を覆い隠し、
その上にフードつきのフォマールセットに似た、灰色のローブを纏う。
顔全体も、目元と口元を残し黒い布を幾重にも巻きつけ、さらに目深にフードをかぶることで、
一切素肌を見せないようにする。
以前はもう少し、女として己を着飾る努力を払っていないこともなかったが、
今は徹底して、素肌を隠すことにのみ気を配っている。
無論、指名手配され追われていることによる用心もあるが、もっと大きな理由がある。
誰にも漏らすことのできない、大きな理由が。
ローブの奥にしまいこんでいた、小さなケースを取り出す。
中に入っている錠剤をいくつか、無造作に口の中に放り込む。
そんな、いつもの所作と同時にふと、懐からカードがこぼれ出す。
ガーディアンとしての身分証明のようなもの。パートナーカードだった。
カードの中央で、かつての自分の顔写真がまっすぐ自分を見据えている。
もちろん、カードの状態は「活動停止中」。これからも変わることはない。
後悔はするまい、過去は振り返るまいと常に言い聞かせてきたが。
ガーディアンズ時代の、今から思えば輝かしいと言って差し支えない日々を思い出す度、
追憶に胸の奥をかき乱されてしまう。
弱音を吐き出しそうな己を必死になって叱咤することに追われてしまう。
カードを見る度に思い出すものは、もう一つあった。
ほんの気紛れで、初めて他のガーディアンにカードを渡した時のこと。
本来全く違う道を歩んでいたもの同士の道が、わずかに交わったあの日のことを。
今にして思えば、あの日は私にとって、心から笑うことのできた最後の楽しい思い出と言えた。
私以外の者とあんなに親しげに言葉を交わす412を見るのも、初めてのことだった。
あの時の彼は、今も己の道をひたすすんでいるのだろうか。
もしも万一、もう一度顔を合わすことがあっても、彼は恐らく私だと気付きはしないだろう。
だから私はその時、心の中でのみ声をかけるのだ。
私も、貴方と同じように己の決めた道を、歩み続けているつもりだと。
泥にまみれ、足を引きずる惨めな道程と笑われようと、蔑まれようと。
230:EPX 幕間(中編3/4)
08/04/22 20:58:34.97 B/cQHCOp
教団本部を一望できる場所に身を潜め、私はその時が来るのを待つ。
果たして、にわかに教団に騒ぎが巻き起こり、門番も慌しく内部へ駆け込んでいった。
イーサン・ウェーバーが教団に忍び込んだことに、疑いはなかった。
もっとも、事態は私の予想を超えて混乱の度合いを増していた。
イーサン・ウェーバーだけでなく、ガーディアンズからも数名、侵入者があったのだ。
遠目で見た限りでは、侵入者の数は3人。
一人は年端もいかない少女と、もう一人は何とも印象の語りようがない、一見無個性なガーディアン。
しかし、最後の一人は見覚えがあった。
かつて研修生時代、イーサン・ウェーバーと首席を争ったという噂のエリートの一人。
ヒューガ・ライト本人であった。
しかし、今にも侵入を試みんとする彼からは、ある種の悪寒を感じられた。
それが、何によるものか。私には、よく分かった。
分からないのは、その理由だった。
何故、彼からそのような気配を感じるのか。
しばし気を取られるが、すぐに我に返る。
このチャンスを、逃すわけにはいかない。
231:EPX 幕間(中編4/4)
08/04/22 20:59:51.87 B/cQHCOp
前回の潜入時に発見していた裏口を通り、私は教団本部への侵入を果たした。
用意していた教団の服を着込み仮面を被り、教徒に扮する。
さすがに2方面から別口の侵入があるためか、こちらに対する警戒はおざなりなものだった。
すれ違う教徒のいずれも、私に注意を払うことはなかった。
前回の調査で、LSSの制御室は教団本部に、動力室は支天閣にあることを調べ上げた。
彼女達は幻視の間のさらに奥にある、動力室で眠りについているという。
LSS制御室にて制御装置を解除するか、破壊するかなどでLSSを無効化した上で、
動力室にて手動で、彼女達を眠らせている装置を解除すれば目を覚ますはずだった。
彼女達は、全員喜んでLSSの犠牲になることを承知したと言う。
だが、果たして本当にそうだろうか?
星霊主長であるイズマ・ルツの命令とあれば、それに逆らえる教徒がいるとは思えない。
心の中では、納得していない者もいるはずだった。
制御室に向けて急いでいると、またも前方から人影が走ってくるのが見えた。
侵入騒ぎにどの教徒も忙しく駆け回っているため、今回もそうかと最初は思った。
が、今度は違っていた。
「こんなところにも教徒が…悪いが眠ってもらう」
男はこちらに向かう足取りを緩めることなく、走りながら片手剣を抜き放ってきた。
全身フォトンの武器でどうやって「眠らせる」のか興味はあるが、
むざむざ相手の思うとおりにさせるつもりはない。
カムフラージュのために持っていた両手杖を捨て、ナノトランサーから小剣を実体化させる。
互いにすれ違い際抜き打ったフォトンの刃が、まばゆいばかりの光を放ち相手の刃から主の身を守る。
一瞬の差で身体を両断されかねない程の、鋭い踏み込みと斬撃。
男の技量は、相当なものだった。
「…できる…」
こちらが言いたい台詞を、男が代弁した。
黒いコートを翻し、男はこちらに向き直る。
明らかに自分より年下の、まだ少年の面影を残した顔立ちに、明るい茶色の髪。
深い襟のついた黒いコートに身を包んだその姿はローグスのようにも見えるが、
私はその顔を見間違えることはなかった。
先に見た研修生時代の2大エリート、ヒューガ・ライトに対するもう一人。
かつて『合の時』にてHIVE撃滅作戦を成功させた立役者、イーサン・ウェーバーその人だった。
232:名無しオンライン
08/04/23 13:59:36.14 hK+4Y3/h
なんていうか、タイトルが続き続きばかりで
間に挟みづらいんだよな
たまに投稿しても、どうせEPX作者の投稿が何レスも後ろについて流れてっちゃうしさ・・・
面白いから仕方ないけど、主にご挨拶的な感じで恐れながら割り込ませて頂く勇気は
なかなか出ないね
233:名無しオンライン
08/04/23 15:12:01.84 xkKUop4s
>>232
俺みたいに空気読まずに忘れられそうな頃に続きが仕上がる長編をやってたりするのもいるんだし、
そんなのでも一応ちゃんと読んでもらえてるんだから、気にせずに書くといいと思うよ。
234:名無しオンライン
08/04/23 17:17:37.73 hK+4Y3/h
EPXが完結してスレが落ち着いた頃に書くよ
ここはもう長編作者ばかりで使い物にならない
前はちょっとしたやり取りや短編モノが多くて、その方が色々見られて楽しかったんだよな
投下する作者の人数も多かったしさ
235:名無しオンライン
08/04/23 17:31:31.51 bujhqJqA
わがままだなぁ
236:名無しオンライン
08/04/23 17:39:58.55 hK+4Y3/h
保管庫見てればそう思うって
237:名無しオンライン
08/04/23 18:55:36.80 xkKUop4s
そう思う人がいる以上、短編の流れも作りたいな。
ちょっとアイデア練ってくる。
238:名無しオンライン
08/04/23 19:05:27.58 DV8KhR82
一話完結は短編に含まれるだろうか
そう書けてるかも疑問だが、流れを無視して投下してやる
239:1/6
08/04/23 19:06:40.72 DV8KhR82
私はGH-412、とあるガーディアンのパートナーマシナリーをしています。
電撃ミッションカーニバルも終わり、私達にも普通の日々が戻って来ました。
お祭の後にまず私達がやる事は、戦利品の大整理でした。
店員「ありっしたー」
412 「ふぅ…塵も積もれば結構な山っと」
使う予定が今後一切なさそうなアシッド、ベリーを大量に売り払い
それなりの金額になった事に少し驚きながら帰ろうとすると、私の目にある物が飛び込んできました。
EX_GH-480デバイス、GH-470と同じ珍しい男性型マシナリー進化デバイスです。
初日は爆発的に売れたこのデバイスも、今ではセール対象品として山積みされてました。
412 「…紳士かぁ、淑女デバイスとかは出ないのかな」
私はそんな事を呟きながら、自分が穿いているミニスカートを見ました。
私達、マシナリーは一応ロングスカートに似せた服装が用意されているタイプもありますが
変な切れ込みが入っていたり、わざと下着を見せるような作りの物しかありません。
以前ガーディアンズで流行った、セレブドレスみたいな普通のロングスカートは、私達の憧れの1つでもあります。
…本当、淑女タイプのデバイス出ないかな。
*ぐらぐら*
412 「…あれ? 今なんか動いて…」
*どどーっ*
412 「わきゃーっ!」
店員「お、お客さーん!?」
240:2/6
08/04/23 19:07:47.31 DV8KhR82
-自宅-
主人「…遅い」
買物に出かけさせた412の帰りが異様に遅い。
確かに俺は溜まり放題だった使わない素材を売るついでに買物を頼んだわけだが。
それにしたって3時間以上も帰って来ないのはおかしい。
狭い上に何度も歩いたこのコロニーの中、迷おうと思って迷えるような場所ではない。
主人「…店頭でゴージャス☆パシリンやってる所でも見つけたか?
しかし1話30分、延々と同じ話だけリピートするのをそこまで見入るわけもないな…。
通りすがりの孔明の罠にかかった…孔明がそんな世の中に溢れてたらとっくに破滅か」
我ながらどうしようもない事を考えているな。
悩んでいても仕方ない、そう判断した俺は探しに出かけようと椅子から立ち上がった。
*ぴんぽーん*
同僚が9割辞めた今、滅多に使われない部屋のインターホンが鳴り響いたのは丁度その時だった。
ようやく帰ってきたか、変な言い訳をしたらどうお仕置きしてくれようか。
そんな事を考えながらドアを開けると…。
480 「ぐす…ひっく」
どういうわけか泣いている、小柄な執事がいた。隣にはVariety Shopの男店員。
あまりに似つかわしくない泣き方をする執事と店員、何とも異様な光景に俺は呆然としてしまった。
主人「…どちら様?」
店員「あ、すいません…この412さんのマスターさんでいらっしゃいますか?」
主人「…そうだが、それとこの年甲斐もなくガキの泣き方している480とどう関係してるので?」
店員「実は話すと少し長いんですが…」
241:3/6
08/04/23 19:09:10.41 DV8KhR82
どうやら店員の話によると、このいい加減に殴り倒したくなる女々しい爺が俺の412の変貌した姿らしい。
無理矢理積み立てすぎたデバイスが一気に崩れ落ち、その下に412がいたというわけだ。
進化デバイスを使うと性格が変わるのもあり、その際には記憶が吹っ飛ぶという副作用があるが
積み立ててあったのは初期出荷版だったので、偶然にも記憶がそのままという不具合が発生したようだ。
…不幸中の幸いとは言えそんな物を積み立てる店というのもアレだな、今度クレームをつけてくれよう。
主人「で、こいつはどうなるので?」
店員「それに関しては今、GRM本社に問い合わせて特別な412進化デバイスを発注しました。
それを使えば記憶を維持したまま412に戻れますが、特注品なので時間がかかりまして…」
主人「どれくらい?」
店員「なるべく早くしてほしいとは頼みました。最低でも3日はかかるとの事です。
私達の不手際ですので、料金は全てこちらで負担させて頂きます。
誠に申し訳ありません…。」
店員は深々と頭を下げた。
元に戻れるならそれはそれでいいのだが、問題は俺よりもまだメソメソ泣いているコイツだ。
突然の姓転換に老化、数日の我慢が出来るのかどうか…。
店員「それでは、私はこれで失礼させて頂きます。
何か続報が入りましたら、すぐにご連絡させて頂きます」
主人「うむ、ご苦労様」
店員が去り、そこには俺と元412な480が残された。
内股でベソかく姿は、程好く俺に殺意を芽生えさせるほどにイライラする物だった。
元少女とはいえこれはキツい…さっさと元に戻してもらわねばならないな。
主人「ええい、いい加減泣き止め! イライラする!」
480 「だって…だってぇ~…ぐす」
主人「あぁ~! その返答が余計にイラつく! 何この新境地の怒り!?
このまま行けば殺しかねーん、いやむしろこの場でたたっ斬るッ!」
480 「ごごご、ごめんなざいごめんなざい! ずびばぜぇ~ん!」
242:4/6
08/04/23 19:10:27.27 DV8KhR82
480 「…どうしましょう」
主人「どうするも何も、デバイスが届くまで我慢するしかないだろ」
480 「あうう…こんな姿で過ごさなきゃならないんですかぁ…」
主人「…とりあえずだな、その間少しは姿に見合った仕草と言葉使いにしてくれ。
爺の格好で女の仕草や言葉使いをされると、こうピキッと来る」
480 「そんな事言われても、男性の仕草なんて知りませんよぅ」
主人「何その発言、俺を男と見てないわけ!? …とりあえず座ってみろ」
そう言われて私は、座布団が敷いてあるいつもの私の場所に座りました。
480 「…すわりまし」
主人「何処の世界に内股で正座する紳士がいるんだよ!
しかも座る途中でスカート直すな! 穿いてないだろ、スカート!」
480 「そ、そんなぁ…だって男性の仕草なんて」
主人「だから、ある程度は俺の真似をすればいいだろうが!」
そんなわけで、私はNGを出されてもう1回座る事になりました。
*どっかり*
480 「これでいいで…」
主人「胡座かいて座る紳士が何処にいるんだよ!
主従逆転か!? 新ジャンル作るつもりかお前わ!?」
480 「そ、そんな事言ったって真似しろってご主人様が…」
主人「丸ごと真似してどうする! 俺が紳士に見えるかコラ!?
自分で言って少々情けないが、俺の仕草+お前の仕草÷2くらいにしとけ!」
480 「え、えーとそれじゃあ…」
*ぽりぽり…ぱこーん!*
480 「いたぁーい!」
主人「俺が何時ケツをかいた!? 何処をどう計算したらそうなるんだ!?
それもう紳士じゃねぇよ!年頃の娘に嫌われるスーツ着せられたオヤジだよ!」
243:5/6
08/04/23 19:11:28.94 DV8KhR82
480 「…ふえ~ん」
主人「お前、少しはデータに俺以外の男のデータ入ってないのかよ!」
480 「だ、だって…ほとんどご主人様と2人だけの任務じゃないですかぁ」
主人「言われてみればそうだ…しかし有名人のデータくらいあるだろ?」
480 「さ、探してみます…」
私がデータを漁ると、該当する項目がチラホラと出てきました。
480 「まず、レオジーニョ・サントサ・ベラフォード…。
次にトニオ・リマ、次にヒューガ・ライトが検索結果に出てきました」
主人「オッサンは態度はいいが仕草が紳士とは言い難いな…。
トニオは論外、残るはヒューガか…まぁ、紳士には一番近いかもしれんな」
480 「ヒューガさんを参考にすればいいんですか?」
主人「そうするしかないな」
私はヒューガ・ライトさんの行動パターンをデータから解析して、インプットしました。
そうすると私の頭の中に、紳士として異性にするべき事などが溢れて来ました。
480 「あ、ご主人様、これならいけそうです」
主人「よし、早速やってみろ」
*しゅたっ*
480 「ああ、何と言う逞しい御方なのでしょう…私達が出会えたのも星霊のお導き。
この出会いに感謝の意を込めて、私と晩酌でも如何…」
*どごぉっ!*
480 「ぎゃん!?」
主人「よりによってナンパを真似すな! 薔薇の世界に誘うつもりか!?
どう解析したら同性愛の紳士になる、このたわけが!」
480 「だ、だって私は元々女性ですし~…。
それに、好きな人は口説けってデータ…!!??」
…とっさに告白…しちゃった!?
244:6/6
08/04/23 19:12:17.70 DV8KhR82
480 「あ、あわわわわ!? ななな、何でもないですぅ~!!」
主人「その姿で首振るな! 殺意がゲージMAX突破す…ん?」
首をうりんうりんとさせている私を怒鳴るご主人様の動きが途端に止まりました。
よ、よかったぁ…聴こえてなかったみたい。動力炉止まって死んじゃうかと思ったぁ…。
そ、それはともかく! ご主人様は私をじーっと凝視してます。
480 「…どど、どうしたんですかぁ?」
主人「…それの処理は奥でやれよ」
ご主人様が指した方向には…とっても大きい物がそびえ立っていました。
…その大きな物は、私の…!??!
480 「きゃ、きゃあああああああ!!!! な、何ですかこれぇぇ!!??」
主人「お前が欲情したからだろ…男はそうなるもんなんだ」
480 「よ、欲情なんてしてませぇ~ん! ご主人様、助けて下さいぃ~!」
主人「だから奥でじっとしてればその内何とかなる」
480 「ふぇぇ~ん、今何とかできないんですかぁ~!?」
主人「死んでも断る! 薔薇の世界に足を踏み入れてたまるか!」
…そんなわけで、私はしばらく外出禁止となりました。
-終-
245:名無しオンライン
08/04/23 19:28:06.94 7TEwPPjx
このスレはあんまり深く考えずに好き勝手書けば良いんだと思うけどな。
長編好きと短編好きが両方居て、の議論は何度も起きてるし否定はできないけど。
因みに俺は未読分から見てるから短編が流れても見逃すことはないな。
>>244
どうやって落とすのかと思ったら倫理的におkな流れで笑ったw
議論はさておき普通にGJなんだぜ。
246:名無しオンライン
08/04/23 20:11:57.00 pbIKfXOs
新ジャンルワラタ。
主人の突っ込みが銀魂を彷彿とさせるな。ともかくGJ!
247:名無しオンライン
08/04/23 20:47:13.96 ffHrjmOx
> 何この新境地の怒り!?
これいい、もらった
248:名無しオンライン
08/04/24 15:57:00.57 wM8dlJAf
各パシリスレの勢いに末期感を感じざるを得ない…
でも作家さんら頑張れ超頑張れ
249:名無しオンライン
08/04/24 19:29:44.12 qSgXORxm
単体は考えるのがムズいな…
男「4月ももう終わりだってのに、こたつ出しっぱなしは無いよなぁ。
そろそろ片付けるか…」
こたつをナノトランサーに収納する男。
シュンッ
客「お邪魔しまーす」
男「っと、客だ。420、応対してくれ!420~!」
* * * ナノトランサー内部 * * *
420「キャアァァァーーー! 目、目が回るうぅぅーー!
ここどこーー!
ごご、ご主人さまー、たーーすーーけーーてーーー!!」
男「なんか背中がムズ痒いな…。420、どこ行った~!?」
250:名無しオンライン
08/04/25 01:07:47.38 8uz/R8Ea
そうだよ。そろそろチャブ・ダイにしないと。早く実装してホスイ
251:名無しオンライン
08/04/25 03:33:10.08 yOTvIVbX
>>249
触発されて書いてみました。
最近は環境が変わってなかなか書けないのですが、
良作を読むとウズウズと書きたくなりますね。ではでは。
御主人「うーん、420・・・ウチもこたつを片ずけようか?」
420「え、あ、あのもう少し後にしませんポコ?」
御主人「え?もう春だし?普通は片ずけるよ?」
420「そ・・・それはそうポコ・・・でも・・・」
御主人「変な420だね。ともかく、えい」
コタツダイに手をかける御主人。
すると何やらコタツダイから声が聞こえます。
シャト「ニャーニャー」
御主人「・・・420?これは・・・?」
420「ウグ・・・ヒック・・・強化失敗して捨てられて、可哀想だから拾ってポコ・・・」
シャトを抱えて泣きじゃくる420。
420は『捨てられた機械』に反応している様子です。
そんな420を見て御主人は一言。
御主人「うーん・・・まあ仕方無いなぁ。その代わり面倒は見てね420?」
420「え・・・あ・・・はい!了解ポコ!」
どうやらシャトも飼ってもらえそうです。
良かったね420。
420「可愛い!やっちゃいます!!」
シャト「ニャアー!」
252:名無しオンライン
08/04/25 06:36:45.52 HXoSX8jw
久し振りの単発ネタ、イイヨイイヨー>>249,251両者ともGJと言わざるを得ない!
>>249
こたつ布団を取るだけでいいと思うんだけど・・・
でも一緒に収納された420が可愛いから、いいか!
>>251
ほのぼの絵本みたいで和んだ(*´Д`*)
・・・と、思ったら、ちょwww最後www
シャト逃げてぇーーーーーー!!!
253:EPX 幕間(後編1/4)
08/04/25 23:07:13.94 IPF+0sgI
「くそっ、ここでこんな手練を相手にしている暇はないってのに」
激しく切り結ぶなか、イーサン・ウェーバーの呟きが聞こえる。
こちらは教団の教徒に扮しているためか、
"どうせ見逃してくれないだろうから一刻も早く切り伏せよう"と彼は判断している様子だった。
一方こちらも、少しでも隙を見せれば一気に勝負を決められかねないので、
逃げるどころか背を向けることすらできないでいた。
空中に舞う、フォトンとフォトンの交錯する光。
一歩引いては一歩踏み込む、攻防が一瞬のうちに切り替わる剣戟。
何とか間合いを取って、相手の苦手とするであろう遠距離攻撃に切り替えたかったが、
余りの踏み込みの速さにそれもままならない。
悪いことに、騒ぎを聞きつけた衛士が二人ほど駆け寄ってきた。
イーサンは無論のこと、私も詳しい誰何(すいか)を受けたら侵入者であるとすぐに判明してしまう。
なんてこった、と毒づくイーサンと全く同じ気持ちだった。
通路を挟み撃ちにする形で、衛士二人が斬りかかってくる。
…"斬りかかる"?
次の瞬間、私の頭に一つの仮説が浮かび、咄嗟に彼らの持っている武器に目を向ける。
そして、さらに次の瞬間、仮説は確信へと変わった。
きらめくフォトンの軌跡が、ふたつ。
私とイーサンは、互いに背中合わせで武器を振り下ろした格好となっていた。
ややあって、衛士二人の倒れ伏す鈍い音が、通路に響き渡る。
「……なんで、俺を助けた?」
片手剣を軽く一振りし、イーサンがこちらに向き直る。フォトンが残像を残しながら鈍い音を出す。
「…こいつらは、イルミナスの工作員よ」
「何だって?一体、どうしてそんなことが分かるってんだ」
「教団の衛士は、多くが優れたテクニックの使い手。侵入者を見ていきなり武器で斬りかかる真似はしない」
「そ、そりゃそうかも知れないけど、それだけであんた、仲間かも知れない奴を…」
「さらに、持っている武器を見れば、一目瞭然よ」
イーサンが、倒れている衛士の持っている武器を取り上げる。
「これは…GRMの…」
「そういうこと。私達は、GRM製の武器なんか使わないわ」
254:EPX 幕間(後編2/4)
08/04/25 23:08:36.59 IPF+0sgI
「…私の役目は、この機に乗じて動き出した、イルミナスの潜入工作員を始末すること。
外部からの侵入者を捕えることではないわ」
少々苦しいが、でまかせを言って煙に巻くことにする。
「…見逃してくれるって言うのか」
「お互いにね。貴方は私とここで会わなかった。…職務怠慢と、後で責められたくないし。
貴方と雌雄を決してなお、イルミナスを追う余力が残っているかは正直自信がない」
「それは、俺も同じだ。教団の中にあんたみたいな使い手がいたことに、驚いてる」
年相応の屈託ない笑顔に意表をつかれる。
敵であることには違いないのに、警戒心が薄いのか、大物なのか。
「それじゃ、私はこれで」
いずれにしろ、戦いは避けられそうなので、私は先を急ぐことにした。
…が、ふと思い至って足を止める。
「貴方。イーサン・ウェーバー…前総裁の暗殺未遂事件で、指名手配されている…」
「あ、ああ…そうだ」
「理由はどうあれ、人一人を殺めようとしたことは事実。その償いは…どのようにするつもり?」
自分と同じ、罪を犯し指名手配される彼が、どのように感じているのか。
私の生き方を変えるつもりはないが、それを聞いてみたかった。
イーサンはしばし瞑目した後、こう答えた。
「この身を捧げ、グラールのために尽くす…それだけさ。ガーディアンズ時代と何も変わらない」
「変わらない…そう、言い切れるのね?人に裏切り者と蔑まれようと」
「ああ。みんながどう言おうと、俺は俺だ。俺は、俺の信じた道を歩き続ける」
それを最後に、私達は互いに背を向けその場を走り去った。
何も変わらない。彼はそう言っていたが、私はとても同じ事は言えそうもなかった。
私に降りかかったあの事件は、私から色々なものを奪い、様々なものを変えた。
人の目を恐れ、覚めない悪夢に苛まれ、かつて抱いていた誇りも何も失っていた。
同じ罪を犯した身でありながら、彼は変わらないといい、私は変わったと感じる。
それは、単に犯した罪の軽重によるものか、それとも互いのヒトとしての強さの違いか。
分からないが、ただ一点彼の言葉に共感できたものはあった。
自分の信じた道。私には、それしか残されていないのだ。
255:EPX 幕間(後編3/4)
08/04/25 23:10:21.36 IPF+0sgI
「その先には、巫女様が眠っておられるはずよ」
グラール教団最深部にある、幻視の間。
その奥にある、LSSの動力室につながる扉の前に、教徒の姿をした一人の男がいた。
イーサン・ウェーバーと別れてからは、さしたる障害もなく制御室に辿り着いた。
正規の手順で解除しようとしたが、さすがに部外者の私が自由にいじれるものではなく、
やむをえず破壊することに決め、時限爆弾をセットしてきた。
当然、爆破してしまえばLSSも消え、警戒網がしかれるだろう。
そのため、爆発してからなるべく早く彼女達と接触をはかろうと、時間は多めにとっている。
ここ幻視の間に辿り着いてからも、まだかなりの時間の余裕があるはずだった。
「ちぃっ。混乱に乗じて、忌まわしいLSSの元となる巫女共を屠ってやろうとしたものを」
「LSSを止めたいのなら、制御室で正規の解除手順を踏めばいいでしょう。
無理にここの装置を破壊して彼女達を殺して、貴方に何の得があるの?」
「忌まわしき巫女の暗殺こそ我が任務。我らイルミナスの野望を阻む者、生かしておく理由はない」
教徒の格好をしているにも関わらず、男は自らの正体を隠す様子もなかった。
「ありがとう、手間を省いてくれて。その一言が聞きたかったの。
そうと知った以上、私も貴方を生かしておく理由はないわ」
「何?貴様、一体なにも…うぉっ」
教徒の扮装を解き、黒のボディースーツ姿に戻る。
(ローブはあくまで外で目立たないために着るものであり、戦闘時はナノトランサーに収納している)
同時に男に向かって弓を撃ち、怯んだ隙に小剣を抜き、懐めがけて疾走する。
数秒後、私は血だまりの中に倒れる男を足元に立っていた。
制御室に仕掛けた爆弾が爆発するには、まだ時間がある。
それを待って、彼女達を眠らせている装置を解除しようと、私は制御室に入ろうとした。
しかし、そこへ乗り込んできた新たな侵入者が、私の行動を中止に追い込んだ。
「潜伏中とのイルミナス構成員を追って来てみれば…別の闖入者とはな」
見覚えのある、機械的な顔とごつごつした威圧的なボディパーツ。
かつて炎の防衛線で出会った、あの効率主義のキャストfGだった。
256:EPX 幕間(後編4/4)
08/04/25 23:11:34.59 IPF+0sgI
「君の目的は知らんが…我々の手間を省いてくれたことは礼を言おう。
その遺骸をおとなしく引き渡した上で素直に縛につくなら、便宜をはからんでもない」
「何だこいつ。こいつもイルミナスの野郎じゃないのか?」
「なわけないでしょ。こんなとこで仲間割れする理由、ないもの」
次々と、因縁深い顔が目に入る。
あの時の3人が揃ってここにいるというのは、どういう因果の成せる業であろうか。
黙っている私に、キャストfGが続けて語りかける。
「我々は、対イルミナス特殊部隊の者だ。
現在このグラール教団にイルミナスの潜入工作員がいるとの情報を受け、教団への協力を要請した。
だが、教団の連中は頭が固くてな。説得の時間も惜しいので、強引に入らせてもらった。
道中見つけた工作員が、そこで今君の足元に倒れている男だった、というわけだ」
「それはご苦労様。では、遠慮なくこの男は引き取っていって頂戴。
私は私でやることがあるから、どうぞお構いなく」
「そういうわけにはいかんな。理由は知らんが、君も不法侵入者だ。
教団に引き渡してもいいが、そこの男との関係も気になる。ゆっくりと本部で話を聞きたいものだ」
「ガーディアンズに行くわけにはいかないわね。叩くと色々埃の出る身体なもので」
「てめえっ、ごちゃごちゃ言うと、力づくで連れてくぞ」
3人とも、私の正体には気付いていない様子だった。
それも当然。あの時とは全く装いが違うのだから。
さて、この3人をどうするべきか。
恨みに似た感情が、ないでもない。
私を今の境遇に至らせた一因でもある彼らに復讐し、多少なりとも気を晴らすという手もあった。
だが、彼らもガーディアンズだ。
この先、彼らがガーディアンズの本分に目覚める日が来ないとも限らない。
少なくとも私よりは、やり直しはぐっと容易なはずだった。
ガーディアンズを裏切ったことに対する、詫びの気持ちもあれば。
どこかに、自分が何かを成したという足跡を残したいという願望もあったのかも知れない。
私にできる、果てしない償いの一環として。
私は彼らに灸をすえ、真のガーディアンズとして成長する可能性を残してやることにした…。
257:EPX作者
08/04/25 23:17:41.83 IPF+0sgI
以上、幕間でした。
確かに、せっかくの力作がすぐに他の方の作品に流されてしまうと、
寂しさを感じるというのはあるかも知れません。
配慮が足りませんでした。申し訳ありません。
ともあれ、執筆中のものが完成次第、第3部完結編を投下させていただく予定です。
長編に不快を示す方がいらっしゃることは承知しましたが、
何卒完結まではご容赦いただきけたらと思います。
258:名無しオンライン
08/04/26 01:29:57.22 ivWzbCpc
ここでお聞きしますが、今防具特化パシリ作るのなら効率のいい育て方って何でしょうか?
ご教授お願いします。
259:名無しオンライン
08/04/26 08:13:28.26 ClQj9Mf5
>257
続きを期待しておりますぞ!
>258
メルトンにオメガアシッド大量持ち込みして防具パラメータ上昇アイテムと交換
もしくは☆が多く値段が安い服・パーツを買って食べさせる
まぁ初心者スレに行きなされ
優しい兄貴達が手取り足取り腰取り教えてくれるよ
260:名無しオンライン
08/04/26 09:44:05.97 2rd+AWD5
>>259
がビス男かつポコスレ民なのが解った
261:名無しオンライン
08/04/26 11:45:33.99 juyxuH9+
>>258
キャラ作る→全裸に剥く→共有ボックスに身包みを入れる→キャラ作る→全裸に剥く→共有ボックスに身包みをを入れる→キャラ作る・・・
共有ボックスがいっぱいになったら一気に食わせる
262:名無しオンライン
08/04/26 15:59:23.69 Wx7DYsON
>>258
それなりに資金があるなら☆10の安い靴が半額になってるからそれがお奨め。
お金が無くてはぎ取りもしたくなかったらルームグッズショップでダン・ボウルだな。
263:名無しオンライン
08/04/26 18:17:03.62 ivWzbCpc
>>259-262
レスありがとうです。資金はそれなりにありますので
今から服屋さんに買い出しに行ってきます!
264:名無しオンライン
08/04/27 03:45:00.26 IK8YIWvA
礼はSSで頼むぜ
265:継承 II 君、死にたもうことなかれ(中編)1
08/04/27 16:08:45.79 M6jhRN+s
カーボン製の鋭い爪が風を切り、わたくしの頭をかすめます。
髪が数本切れて空を舞うのがちょっと面白いとか感じている場合ではありません。まだ直接当てられてはいませんが、そのうち髪がショートカットになってしまいます。
倒すべき目標のネイ・ファーストを攻撃すれば関係ないネイさんが傷つく。わたくしは完全に攻めあぐねていました。
「おまえたち人間はいつもそうだ!少しでも違えばおそれを抱き、自分より優れていれば妬み、堕落の中に安寧を見いだす醜い怪物だ!
この社会は何もしていない私を色眼鏡で見て排除したりだまして利用するばかり、弱者になんて少しも優しくない偽りの楽園なのさ!何が騎士道だ、この偽善者!」
人間でなくパシリだというつっこみは話がややこしくなりそうなので放っておいて、方法がないときは逃げて隠れるのがセオリーです。
素早い動きを逆手にとって足を払うと、ネイ・ファーストはたやすく転倒し、その間にネイさんをオパオパさんに引っ張ってもらって、わたくしたちは入り組んだ通路の陰に隠れました。しかし…
「隠れたって無駄さ!ほーら、大事なネイが傷つくよ!アハハハ!」
「痛あっ!」
ネイさんの胸に突然数本の傷が浮かび上がり、血が噴き出しました。ネイ・ファーストは自分の胸を爪で抉ったのです。
たとえ自分が苦しんでも憎い相手を痛めつけたいという純粋な悪意など、初めての経験です。わたくしは得体の知れない恐怖を感じました。
何か、何かないんですか!
今の悲鳴で場所はばれてしまったはずです。
錯乱気味にナノトランサーに使えるものがないかあさっていると、ものすごく古めかしいビジフォンが入っていました。ステージ2の装備はルビーバレットだけではなかったのですね。
『風のシルカ参上』と落書きが書いてありますが、廃品ではなさそうです…すがるような思いで通信してみましたところ。
ぶっ。ぶーん。低い音をたてて画面に映し出されたのは…
「ひゃあああ!?」
わあああ!?って、なんですか、いつぞやのおみくじ巫女さんじゃないですか。驚かせないでくださいよ…
「あ、あなたはあのときの…何で星霊への祈りの思念に割り込んでくるんですか!」
それはこっちが聞きたいのですが。何ですか、これもしかして電波ジャックですか?やっぱりグラール教団って電波集だ…あ、いえ、なんでもありません。
266:継承 II 君、死にたもうことなかれ(中編)2
08/04/27 16:10:59.72 M6jhRN+s
わたくしは手短に巫女さんに事情を説明しました。
「なるほど。似たような事例はグラールにもあります。本当はトップシークレットなんですがあなたは知りましたよね…
今の幻視の巫女クユウ・ミクナ(カレン・エラ)とその双子の妹である前の幻視の巫女ミレイ・ミクナのつながりです」
そ、そういえばそんなこと言ってましたね。忘れてましたが。
「あれは二人が双子だからというのもありますが、二人の父親ドウギ・ミクナが星霊紋という禁術を用いてなしたことだったんです」
それは知ってますけど、だいぶ違うような。結局なんだかよくわからないままじゃないですか…
「落ち着いて考えてみてくださいよ。これだけ力のある幻視の巫女姉妹でさえ互いのことを知らないままだったんですよ?
全く同じように傷つくなんて、双子の巫女で、禁術を使ってでさえ起こらないことなんです」
あ…ということは、ネイさんとファーストは、本当に同一人物なのですか!?でも、そんなことが…
わたくしのここでの目標はネイ・ファーストを倒すこと。ミッション情報で確認しても変わりありません。
二人が同一人物となれば解決自体はさほど難しくはないはずです…ネイさんを死なせても、理屈としてはネイ・ファーストを倒していることになるのですから。
でも、それでは倫理的に問題があります。
難しい顔をして考え込みだしたわたくしを見て、巫女さんは提言してくれました。
「そういったことにはグラールの科学で何でも説明をつけようとする私たちよりももっと詳しい人に任せましょう。これも本当は門外不出のものなんですが…あなたには恩がありますし、今からそちらに転送します」
非科学的なのもどうかとは思いますが、教団自体そうなのでとりあえず黙っておくこととして。
しかし、詳しい?いったい誰のことなんですか、それは。
「グラール教団が封印している、独立後のニューデイズ文化の基礎になったデータ、外宇宙から流れてきた『ニホン』の記録。
その中でも星霊紋の元になった術の使い手の記録です。今持っているそれは魂を操る神銃、ルビーバレットですね?その銃にセットして撃ち出してみてください。呼び出すことができるはずです」
星霊紋…聞こえはいいですが、それはある種の呪いです。すごくいやな予感がするんですが…でも、やらなければ解決できそうにないですね。コールッ!
雰囲気を出すために意味のない言葉を叫びながらデータを撃ち出すと、地面にニューデイズ文字のような模様が浮かび上がり、その中に人影が見えました。
267:継承 II 君、死にたもうことなかれ(中編)3
08/04/27 16:13:22.02 M6jhRN+s
フラクソジャケットとカブガラハカマ、レギュラースイムサンダルのようでいて装飾も何もない地味な服一式に、乱暴に切った黒い髪。一目で昔の人というのがわかりました。
「何だ、ここは…欧羅巴の召喚魔術か?いや、違うか…あまりにも不安定だ」
あ、あなたが星霊紋を使えたという…いったい何者ですか?
「陰陽師だ。陳腐な召喚で不本意ではあるが仕方あるまい、手を貸してやる」
眉間のしわを隠そうともせず、オンミョージと名乗ったその方は進み出ました。ネイ・ファーストは新手が出たとみるとすぐさま爪で連撃を繰り出しましたが、
オンミョージさんは貫かれると紙切れになり、またオンミョージさん自身はネイ・ファーストの背後から現れました。
「悪いが少しばかり問答につきあってもらう。事情が把握できておらんのでな…お前は知性を見て取れるにもかかわらず、己を見るなり襲いかかってきた。なぜだ?」
「おまえが、人間やそのネイに味方するからさ!」
「人間が憎いということか」
「そうだ!私は生まれてからずっと、あの忌々しい人間どもに迫害されてきた。どこにも私の居場所なんてなかったんだ!私が正しいなどとは言わない…でも、私を虐げた人間は許さない。
私が生きるためにバイオモンスターを使って人間を殺すのさ!そしてそのネイも人間の味方、人間に味方する者はみんな私の敵だ!」
狂気じみた、幸福への渇望。熱にうかされるような形相は、ネイ・ファーストがこれまで受けてきた迫害を物語るに十分すぎるほどでした。
「壊してやる、この腐った人間社会の何もかも!そうして私は初めて安らぎを得ることができるんだ!」
「下種め…もう語ることはない。滅びろ」
オンミョージさんの声が低く冷たくなり、殺気がみなぎってきました。
腕組みをほどき、見るだけで殺せそうな視線を向けます。ネイ・ファーストもこれにはたじろぎました。
「妖怪あやかしの類は己の専門分野でな。戦争よりは楽でいい…明治の世に廃されたこの陰陽道を今ひとたび見せてやるぞ、妖」
「ばけものとか言うなーッ!」
「五行相克、木気を以て土気を克す…」
オンミョージさんが手にした金属の杖で床を突き、主の口からも聞いたことのない詠唱がなされると、床をつき破って蔓草が生え、ネイ・ファーストの体にからみつきました。
そのまま硬くなった蔓草は、とがった先端をネイ・ファーストの体に突き刺していきます。
絞り出すような悲鳴と、赤い血が流れ落ちました。植物をふりほどいて向かってくるのを見ても、オンミョージさんは眉一つ動かしませんでした。
268:継承 II 君、死にたもうことなかれ(中編)4
08/04/27 16:15:15.34 M6jhRN+s
飛び道具としてだけではなく身代わり、フェイントとさまざまな用途に用いているシキカミに似た紙人形、呪いを放つ言葉。
オンミョージさんは見たこともない技術でネイ・ファーストを圧倒しています。どっちが悪役かわからないくらいです。
たしかに強いんですが…でも、これはやりすぎです!わたくしが精一杯レスタを連発しても、同時に傷つくネイさんへの回復がおいつきません!
やめるよう声をはりあげましたが、オンミョージさんは黙って冷たい一瞥をくれただけでした。
人の話を聞いてください!かくかくしかじかで、このままではネイさんが死んでしまうんです!
「見ればわかる。だが関係ない話だ。一人犠牲になって皆が助かるのが最善だというのなら、そうするべきではないのか?ましてこいつは」
馬鹿言わないでください!
怒りにまかせて、わたくしはオンミョージさんの言葉を遮るように叫んでいました。
わたくしを見るオンミョージさんの目が細められ、表情が消えました。
「玄人に求められるのは任務の遂行だ。情がなんだというのだ?結果が出せなければ意味がない…わからんのか、己はお前の迷いを断つことを手伝ってやると言ったのだ」
何ですって…
悪い予感は的中したようです。オンミョージさんはネイ・ファーストを倒すことを最優先し、ネイさんが死ぬことを当然としているのです。
手足をあらぬ方向にねじ曲げられてネイ・ファーストは倒れ、オンミョージさんは刀を抜き放ってその首に突きつけました。
269:継承 II 君、死にたもうことなかれ(中編)5
08/04/27 16:16:25.24 M6jhRN+s
「この者は妖を操り人を苦しめる大罪人だ。過去に虐げられていたのなら、今人を虐げていいというのか?
否!法は感情のためにあるものではない、秩序を守るためにあるのだ。罪にはしかるべき報いを与えねばならん。それが社会というものだ」
ま、また裁判のようなことを。だからといって何もしていない人を巻き込んでいいわけがないじゃないですか!
「無関係ではない。こいつらは同一人物だ。このネイとはネイ・ファーストに残された良心が形をなした妖だろう」
そ、そうだったんですか…でも、だったらなおさらまずいですよ!良心が死んじゃうなんて。
「咎のあるをばなおも憐れめ、か。甘い、甘すぎる。同情の余地が残っていれば罰しないなど、罪人を野放しにすると同義だ。お前は次の犠牲者が出ることを考えていないだけだ」
そのとき、ネイ・ファーストが急に起きあがり、オンミョージさんを背後から爪で貫こうとしました。しかし。
「…!」
わたくしが割り込むまでもなく、ネイ・ファーストは全身を見えない糸に縛られたように苦悶の表情を浮かべながら硬直し、再び地面をなめることになりました。
オンミョージさんは自分を狙えばこうなるように呪いをかけていたのでしょう。もちろんネイさんも同様に苦しんでいますが…
「このとおりだ。罪人も妖も動物と同じ、罰して苦痛や死を与えてやらねば何度でも同じことを繰り返す。お前の守るべきものは何だ?自己満足で武士道を語るな」
う…それは…
「人間の歴史は戦いの歴史。人は生きるためいくつもの犠牲のうえで自然とその権現たる神や妖怪を克し歩んできた。
己の知る限りでは、反動で他に被害を及ぼす禁術以外の方法でこいつらを分けることはできん。それゆえ犠牲を払ってでも滅ぼすべきだというのだ。さあ、それを覆す考えはあるのか!」
なんだかすごく悲しくなってきました。オンミョージさんの言うことは的確で、ただ情のためだけにネイさんを死なせないようにしているわたくしでは言い返せません。
わたくしの騎士道は、ただのわがままなのでしょうか?
わたくしは、何のために人を守るのでしょう?認識できる範囲で自分が満足するためだけじゃないんでしょうか?
オンミョージさんは他に被害が出るからと禁術を使うのをやめています。この場だけではなく、もっと広い視点で考えているのです。
わたくしはそこまでは考えられません。もしかしたらわたくしのしたことのために知らないところで泣く人がいるかもしれないのです。それは本当に正しいことなのでしょうか…?
270:継承 II 君、死にたもうことなかれ(中編)6
08/04/27 16:17:16.31 M6jhRN+s
顔を伏せて棒立ちになっていると、すっかりそこにいることを忘れかけていたオパオパさんが心配そうにわたくしの服を引っ張りました。
オパオパさんも昔、邪悪な生物に操られた父親を救ったのだと聞いています。その澄んだ目…もといガラス板様の光センサーを見て、それで決心がつきました。
わたくしは顔をあげ、自分よりずっと背の高いオンミョージさんの顔を真正面から見据えました。
やります。勝算のあるなしなんて関係ありません。
任務は成功させる、ネイさんは守る。たとえこれが自己満足にすぎないのだとしても、何もしなければどのみち解決なんてしません。
目の前のことをやりもせずに諦めるなんて、納得できるはずないです!
「ああ、やってみろ!お前が方法を考え出せなければ己がやつらを滅して解決してやる」
そう言いながら、オンミョージさんは刀をおさめてとどめを刺すのをやめました。
このとき初めてわたくしは彼の気持ちに気づきました。
本当は殺していいとは思っていない、でもそれを押し殺して背中で泣きながら、守るべきもののために今までいくつもの犠牲を払ってきたのだと。
どうにもならないことに対して、不条理でも最善の方法をとらなければならないというプロであるがゆえの悲哀。
確立されていない方法でも希望があるのなら今一度賭けてみたいと、そう思っておられるからわたくしに任せたのでしょう。
期待は、裏切りませんよ!
-続く-
271:名無しオンライン
08/04/27 16:27:17.71 M6jhRN+s
続き投下です。
えらく時間がかかっていますが、仕事が忙しかっただけでなく、実はけっこう悩んで大幅に書きなおしたからというのもありまして。
解説の中で理由を書いてます。
「地球人」
ファンタシースター2の事実上のラスボス。実体化したダークファルスを封印してしまったほか、高度な文明をアルゴルにもたらし、
環境管理コンピュータ・マザーブレインを作って砂漠の惑星であったモタビアを緑化させるなど意外にすごいことをやっている。
同時に彼らがもたらしたのは、楽な生活ができるようになった(この時代、モタビアでは働かなくても生きていける)ことによる人心の堕落であった。
そうやってアルゴルの人々を腐敗させたのは、ここでの地球人は自らの心を律することができなかったために地球をつぶしてしまった人々であり、
たどりついたアルゴルで質素ながらも幸せに暮らす人々に嫉妬して征服に乗り出したから。
なので、アルゴルを守ろうとするユーシスたちと最後に戦うことになる。
ここで出したオリジナルの陰陽師も地球人ですが、時代設定がそれよりもだいぶ前。
アルゴルへ進出した地球人との直接の接点はありませんが、激動の時代に生きた、精神性がむしろユーシスたちに近い人として描いております。
本当はサクラ大戦の大神一郎を出したかったんですが、社会秩序を優先する冷たい人として描くのはあんまりなので急遽変更。
副題とこの時代の日本人であることなどはその名残で。
生きることが決して楽ではなかった時代にたくましく生きた人々、その精神の復権こそがファンタシースター2のメインテーマであると筆者は理解しております。
「ヒトガタ」
PSOの本星である惑星コーラルの文明にはどうも地球文明の影響が少なからず入り込んでいるようで、
陰陽道のヒトガタや日本刀(アギト)、グングニルやデュランダールといった名称のものが見受けられる。
どうやら地球文明はアルゴルだけでなくコーラルのほうにも出ていっていたようだ。
「ネイ・ファースト」
ネイのオリジナル。ファンタシースター2の中ボスの一人。プラントで偶然生まれたバイオモンスターと人間のハーフで、研究所から逃げ出した。
その後安住の地を探すが、人とは違う長くとがった耳などの特徴は迫害にさらされる要因となり、やがて彼女は激しく人間を憎むようになっていく。
そして自分を生み出した研究施設に戻り、バイオモンスターを大量生産して人間に復讐を始めた。
本当は愛してほしいのに誰からも愛されないこと、それがネイ・ファーストを自暴自棄にさせ、破滅的思考へと進ませたのであろう。
その行為に耐えられなくなった彼女の良心が分裂して生まれたのが、ユーシスに拾われたほうのネイなのである。
異邦人を警戒するというあまりにも自然な人の業が生み出した悲劇、ネイ・ファーストはその被害者であったのだとも言える。
272:名無しオンライン
08/04/28 01:46:42.20 SfXTgdkB
>>社会秩序を優先する冷たい人
ラチェット(劇場版)とかそんな感じだけどもうセガ関係なくなりそう。
大神隊長は次の機会を期待いたします。
273:ワルキャスとワルパシリ
08/04/28 15:37:47.24 9a7CNLeA
そして横合いから爆弾投下
それは変なパシリと変な主のお話。
「あー…おっぱい揉みたい…」
「いきなり何言い出すかなこのアホは…」
ワルキャスとワルパシリ~たまにはコンナ日々・改~
「モトゥブの暑さで脳みその回路が焼ききれたんじゃネェのか?」
「残念、俺はいたってノーマルだぞワルパシリ」
モトゥブ勤務についたワルキャス。
就任当初はイルミナスや謎の組織との戦いで割りとシリでアスであったが、
あまりにも長いのと中の人の都合で追って別の機会に出そうと思う。
ワルキャスの故郷、グランブルファミリーの仕切る町、グランブルシティ。
現在、ワルキャスはそこのガーディアンズを引っ張り、新生ローグスとの橋渡しの一翼を担っていた。
ロボヘッドから、金髪ヤンキーな人顔にチェンジし、
テンガロンハットを水晶髑髏に被せる様はまさにカウボーイ。
性格の悪い411こと、ワルパシリからキンキンに冷えたハッピージュース受け取って漏らしたセリフが。
「あー…おっぱい揉みたい…」
まるで呼吸するかのようにエロセリフを吐く様は、相変わらずのエロキャストであった。
酒好きが高じて自分の部屋にBARをつくるまでになったワルキャスのマイルーム。
今日もお疲れとばかりに、ハッピージュースを空けながらワルキャスのエロ講義がはじまった。
「だってそうだろ! 最近のガーディアンズはイヤラシ過ぎる!」
「そりゃお前は元からイヤラシイ、つか変態だろう」
「…まあ、そりゃあな」
「…(だめだこいつ…はやく去勢しないと…)」
「まあ…これを見たまえワルパシリ君」
ワルパシリが微かに青筋を立てながらも、ワルキャスはどこから出したのか映像端末を引っ張り出した。
そこに浮かぶのはつい先日あった雑誌機関協賛のイルミナス電撃作戦用アミューズメントミッション、
通称”DMC”の場面…決して卑猥な言葉を1秒間に10回以上発言するデスメタルバンドではない。
274:名無しオンライン
08/04/28 15:44:28.56 9a7CNLeA
「なんだ? お前の戦闘記録か?」
「見てみろ、このPT面子を!」
「うわっ! な、なんだよこれ…うわぁ…」
それは最近流行のミクミコやボルワイヤルを着た女性ガーディアンズの面々。
弓を打てばたゆんっ、剣を振るえばポヨンッ…みたいな効果音が聞こえそうな映像ばかり。
思わずワルパシリも赤面して映像を眺めてしまった。
「な、ケシカランだろう?」
「ぅ…ああ、まあな」
「まったく、風紀の乱れは心の乱れともいうからな…嘆かわしい事だぁ!」
酒が入ってるのか感情が高ぶってるのか、拳を震わせながら力説する変態キャスト。
そして、ワルパシリをがばぁと抱き寄せ、膝上にちょんとのっけてしまう。
不意の抱き寄せに反撃できず、ワルパシリはもがくのみ。
「って…ぎゃわあああっ! ななあなななななああああ!? なにしやがるっ!」
「でだ、ワルパシリ君、本題に入ろう…デェイ!」
ワルキャスは背中から取り出したパッケージをBARのテーブルにドンと乗っけた。
それはPMの拡張バージョンアップツール、箱には水着姿の可愛らしいウサ耳パシリの姿が。
「PM…461…? あ、新型デバイスか!」
「正解ッ!」
「正解ッ…じゃねぇー! はっ…はなせ、ばかっ!」
急に抱き寄せられ、顔を真っ赤にしながら抗議するワルパシリであったが、心なしか力が弱いのは気のせいか。
275:名無しオンライン
08/04/28 15:48:18.94 9a7CNLeA
フフフフと笑うワルキャスはそのまま彼女を丸め込めようと耳元で誘惑させる。
「だってよー…こう、いつまでもメイド服ってのもマンネリだよなぁ~…
たまにはワルパシリにも気分転換で水着でも~と、おもった俺のこころやさしいいい~心遣いって奴よ」
「それとこれとはかんけーねぇ! つか、急に抱きしめんなっ…反則だっ反則っ! むきいいいい!」
「フハハハハハハハハ!」
腕の中でじたばたするものの、拘束を解くには力不足。
しかし、その手足が映像端末にあたり、コロコロと床に落ち、音声ボリュームが最大になる。
”もおーっ…ワルキャスさんさっきからじろじろみないでよーっ♪”
”いやーっはっはっは、君があまりにも綺麗だから見惚れちゃったよー♪”
”まったく、戦闘中だというのに…そ、そんなに…キワドい…か…? 確かに…胸や臀部が強調されて…”
”フフフフッ…そういったクールで可愛い所がお前のいい所だぜ?”
”フッ…フンッ! ほ、ほめたつもりだろうが…そ、そんな手は…き、きかんぞ…もぅ”
その声が耳に押し込まれた瞬間、ワルキャスは凍結状態。
ワルパシリは黙って腕をすり抜けると、デスダンサーを抜き放った。
その目線には殺意が篭もり、狙いは眼前のワルキャスに向けられている。
「…そういえば、ソレ使うのに戦闘値いるよな? ちょっと稼がせてもらうわ、ゴシュジンサマ!」
「ひいいいいいいっ…お手柔らかに…」
「断るッ! シネエエエエエエエ!」
「デスヨネエエエエエエエッ!」
今宵も狩られる変態が一人…ワルパシリが水着姿になるのはまだ遠い。
それは変なパシリと変な主のお話。
以上でし。
ほんとに戦闘値がたりない…上げ方が解らない俺がいる。
水着着せたい…(´・ω・`)
276:名無しオンライン
08/04/28 23:54:39.66 BRVf2JZ8
ワル二人キター!
戦闘値はクリアランクで獲得できますよ。
難易度に関係なく、Sランクでクリアすれば1/4ほど増えるので
単純作業に絶えられるなら通路を駆け抜けるとか。
そして、根性で1レスにまとめたSS投下
277:名無しオンライン
08/04/28 23:59:10.29 BRVf2JZ8
男「430さん、これにリフォームしてもいいですか?」
つ[バイオ・パニック]
430「黄色い救急車でもお呼びしましょうか、ご主人さま?」
男「ちょwwwテラ都市伝説wwwwwww」
430「そんな部屋に住みたがる人が健常者だとは思えません」
男「いや、そうじゃなくて、フラワー飾って『さっき水を止めました、もうじきみんな枯れるでしょう』とか
豆料理のときに『味はともかく、長靴いっぱい食べたいよ』とか言ってみたくて…」
430「そんな一時のネタのために、あんなお部屋にするなんていやです!
大体、誰がこの部屋を掃除して差し上げてると思っているんですか!
ご主人さまは私に未開のジャングルを開拓させるおつもりなのですか!?」
男「(´・ω・`)」
430「そ、そんな顔したって、ダメなものはダメです!」
男「(´;ω;`)」
430「…はー、分かりましたよ、もう…。一週間、一週間だけですよ!」
男「(`・ω・´)」
430「それじゃあリフォームしますから、お外で時間をつぶしててください。…はぁ」
* * *
男「そろそろ終わったかな~、ら~ん らんらら らんら…あ、あれ?」
男の部屋は彼が期待していた腐海の中ではなく、ごく普通の飾り付けがされた洋室になっていた。
男「あの~430さん、やっぱりいやだった?」
430「違うんです! あのチケットを使ったのに、こうなっちゃって…」
男「中身が摩り替わってたのかなぁ…。しょうがない、サポートに電話してみるよ」
男「さて、どう伝えたものか―っ!?」
窓に映っていたものに気づき、男は驚愕した。ギョロリとした目つきの、人間?らしき姿。
慌てて飛び退きもう一度窓を見るが、そのとき既にそいつの姿はもうなかった。
男「き、気のせい…?」
430「キャアアアァァァァーーーーッ!!」
男「! どうした430!」
慌てて隣の部屋に飛び込むと、大勢のカラスが430の全身を啄んでいた。
男「うわっ、なんだこいつら! 430から離れろ!」
430「ふぇぇぇ、ごしゅじんさまぁ!」
男「どうなってるんだ一体…!?」
バリィィン!
間髪入れず、巨大な犬が窓を突き破って部屋に侵入してきた。
全身真っ黒で目は血走り、大きく裂けた腹部から内臓が覗いている―
430「いやああっ、何これ!? なにこれえっ!!」
男「い、430さん、応戦して! 構わないから撃ちまくって!」
430「やだ、逃げる! 怖いのやだあっ!」
男「くっ、しょうがない!」
恐慌状態に陥った430を抱えて男は駆ける。まずはこの場所から逃げ出さなくては!
そう思い、なんとかマイルームの入り口にたどり着く。あわててロックを解除したその先には―
フシューッ フシューッ !!
異常に筋肉の発達した、大男らしき怪物が…
男&430「…………きゅーっ」 バタン
リフォームチケットでマイルームを模様替え!
「ホラー&バイオレンス」
四六時中、ゾンビが襲いくる恐怖の内装です。
バイオ・パニック Maid in CAPCOM (c)
278:名無しオンライン
08/04/29 01:07:13.18 tj3GkMqV
ちょwバイオ違いww
こんな部屋でくつろげるヒトはさすがにいないだろう…と。
その部屋の作成元の特産品でもある、某殺意の波動の使い手なら或いは?
279:名無しオンライン
08/04/29 02:50:32.83 bPlxq9Yo
>>277
男はジブリファンなのかw
てか、リフォームってレベルじゃねーぞ!
>>278
そして「殺意の波動に目覚めた430」とかになるんですね、わかります!
280:名無しオンライン
08/04/29 23:08:08.41 Mxm8dC+S
書いてたらスゲー長くなっちまった
短編が流行る中、またしても空気を読まずに長文乙な俺サーセン
281:1/12
08/04/29 23:09:09.61 Mxm8dC+S
私はGH-412、とあるガーディアンのパートナーマシナリーをしています。
合成ボーナス期間に入り、私達は足りない素材を補うべくラフォン野営基地に来ていました。
今回の目標は、パルム超高級木材パル・ウォルナの伐採です。
主人「フゥ、日頃通ってるのに木材が足りんとはな」
412 「ご主人様…カン・ウーを1日で10本以上も作れば無理もないですよ」
主人「38の壁を越えるには仕方のない事だ」
412 「これだけカン・ウーばかり作るのはご主人様だけだと…あれ?」
私はふと、不自然な感じに気付きました。
振り向くとそこにはいつもの人口森林が広がっていますが、私には分かりました。
いつもと違う、何か異質の存在がそこにいる事を。
主人「どうした、何かあるのか?」
412 「…いえ、分からないんですが変な感じがしまして」
主人「…どれどれ?」
ご主人様が大きな手で草木を押し退けると、そこには驚くべき光景がありました。
主人「こ、これは…」
私も手を口に当てて、その光景を疑いました。
全身が傷付き、服も所々が破けてしまっている人が倒れていたからです。
しかし、少し見つめればそれはすぐに人ではないと分かりました。
何故なら…その「ヒトガタ」は私達パートナーマシナリーの耳をしていたからです。
282:2/12
08/04/29 23:09:49.61 Mxm8dC+S
主人「…これは、ニャックルか」
ニャックルとは、大流行のマシナリーであるGH-422の通称です。
マシナリーの中でも最高基準の攻撃力を持ち、ボッガ・ズッバの使い手でもあるので
テクターは勿論、前衛職にさえ高い人気を誇る汎用型マシナリーです。
以前はGH-420シリーズは総じて癖のあるパラメータになるので通好みでしたが
今ではEXデバイスがあるので、打撃合成特化型GH-422も存在しています。
412 「どうしたんでしょう…こんな所で行き倒れているなんて」
主人「おーい、生きてるか?」
ご主人様がついついと頬を押しますが、422さんは起きる気配がありません。
412 「ご主人様、私がスキャニングしてみましょうか?」
主人「そうだな、そうしてくれ」
私は意味もなく眼鏡をちきっと直して、スキャンモードに入りました。
その結果…ジェネレーターやリアクターに異常はなく、全てが正常値でした。
つまり、単に疲れて寝ているだけと言う事です。
412 「うーん…異常はないみたいなので多分その内起きるんじゃないですか?」
主人「正に猫だな、しかしこのままはいサヨウナラというわけにもいかん格好だな」
412 「確かに…このまま元気にオハヨウと言う感じではなさそうです」
主人「412」
412 「はい、何でしょうか?」
主人「今は夕方だ」
283:3/12
08/04/29 23:10:34.55 Mxm8dC+S
主人「仕方ないから部屋に運ぶか…」
そういうと、ご主人様は422さんについてる葉っぱ等を手で払い除けて
ひょいっと抱き上げ…抱き上げ? え、ちょ、ちょっと…それは、それはぁ!?
412 「ご、ご主人様ぁ!」
主人「何だ、大声出して」
412 「よ、よりによって何でお姫様抱っこなんですかぁ!?」
主人「米袋の如く担いだら失礼だろ」
412 「よりによって米袋に例えるんですか…って、そうじゃなくて!
お、おんぶとか他にも色々と方法があるじゃないですかぁ!」
主人「この体格差でおんぶしたらズリ落ちて返って危ないだろうが」
412 「…そ、それならナノトランサーに入れるとか」
主人「運んでる最中に起きられたら俺の背中が危険な事になるから却下だ」
412 「う、うぅ~…」
主人「で、他に反論は?」
412 「ありません…お姫様抱っこされていいのは私だけなのにぃ…ブツブツ」
羨ましい光景を、私はただただ嫉妬しながら見ているしかありませんでした。
そして、ご主人様がいざ運ぼうとした矢先…。
*がすがすがすがす!*
422 「しゅわーっち!!」
主人「あいで! 寝ぼけながらダンガして来やがった!」
412 「ご、ご主人様…やっぱりトランサーに入れた方が…」
主人「その方が非常に嫌な予感がする!
くっそ、何発かクリティカルしやがった…」
284:4/12
08/04/29 23:11:14.36 Mxm8dC+S
-部屋-
こうして私達は、行き倒れた422さんを部屋のベッドまで運びました。
運び終えてから2時間、422さんは未だに目を覚ます気配がありません。
412 「けど、よく寝てますねー…」
主人「こうなるまで、ろくに眠っていなかったのかもしれないな」
412 「でもとっさに連れて来ちゃいましたけど、大丈夫でしょうか?
422さんのマスターさんが探していたりしないでしょうか…?」
主人「起きてから連絡とってもらえば大丈夫だろう?」
412 「…そっか、そうでしたね」
*がばっ!*
422 「………?」
主人「…お、起きたか?」
412 「あ、良かったぁ。目を覚ましたんですねー?」
422 「………」
突然起き上がった422さんは、ご主人様を見るなり…。
422 「きゃあああああああああああ!!!!
な、何この男!? 私をこんな所に連れ込んで何のつもり!?
私があまりに可愛過ぎるからって何を企んでるのよーっ!!」
物凄い勢いで叫びまくりました…。
主人「うわ、よりによって説明が面倒臭い起き方しやがった…。
しかもツッコミ所満載だし、ここは同姓の412に説得を任せる!」
412 「ええ~っ!? 机の物をこんなに投げられてる状況で説得なんて…」
主人「健闘を祈る。早くしないとミ・カンを投げられるぞ!」
285:5/12
08/04/29 23:11:57.49 Mxm8dC+S
422 「いやー、助けてくれた人とは知らずすいませんでしたー。
そうでしたそうでした、私ったら疲れてつい寝ちゃったんですよねー」
何とか説得を終えた422さんは、ケラケラと笑いながらミ・カンを頬張ってました。
その向かい側には、ご主人様とシャワーを浴び終えたばかりの私が座ってます。
はい、結局間に合わずミ・カンを1つ頭に投げつけられました…。
412 「分かってくれて何よりです、はぁ…」
主人「さて、聞きたい事は山程あるぞ。何故あんな所で寝てたんだ?」
422 「え、私の好物ですか? 420シリーズの好物と言えばマタタビでしょ!
けど私は違うんですよねー、やっぱりこの季節はイシダイがグーッド!」
主人「お前の好物なんてどうでもいいわ!
ネルとコウブツじゃ字数も1文字も合ってないだろうが!」
422 「イシダイの刻みを貼り付けたグッレ・ミサッルなんかは格別なんですよね!
形が魚に何か似てるし、食べ応えも十分だから一度お試しあれ!」
主人「聞いてないなコイツ!」
412 「あ、あの~…422さん? マスターはどうしたんですか?」
私がご主人様の一言を出すと、それまでマシンガントークだった422さんがぴたりと止まりました。
顔を暗くして俯く反応から、あまりいい質問ではなかったようです。
422 「………」
412 「はぐれて1人でいるなら、きっと心配してますよ?
連絡を取って、お迎えに来てもらいましょう?」
422 「…来やしないわよ、あんな奴!」
412 「そんな事ないですよ、422さんの事が大事でしょうからきっと…」
422 「大事じゃない私なんかの為に来る訳ないじゃない!
どうせあんな奴、私よりもローグスや英雄様が大事なのよ!」
412 「ローグス? 英雄? …そ、それだけじゃどういう意味かさっぱり分かりませんよ」
主人「…成る程な、大体読めたぞ」
286:6/12
08/04/29 23:12:57.08 Mxm8dC+S
主人「お前さんのマスター、タイラーとイーサンにお熱なわけだな?」
422 「………」
412 「あれ、ドン・タイラーなら分かりますけどどうしてイーサンまで…」
主人「ここ最近の事だから俺もよく知らんが、イーサンが原隊復帰したそうだ。
それで、成績優秀なガーディアンにだけ協力要請を出す事が出来るようになったわけだ」
412 「…そうだったんですか。犯罪者を処罰なしで復帰させるなんて…」
主人「そこにツッコむのか。実に正論だが」
その後、ご主人様は詳しく説明してくれました。
イーサン・ウェーバーはスピンングストライク、グラビティブレイク、アブソリュートダンスと
一撃が強力なPAを駆使する上に、非常に効果の高いレスタの使い手でもあるらしく
それまで人気のあったブルース・ボイドさんを押し退ける人気が集まりつつあるそうです。
あれだけ自分勝手さが理由で不人気だったのに、強くて使えると分かると
尻尾を振るガーディアンズの現金さは昔からちっとも変わってません。
主人「で、用済みになったお前さんは構われもしなくなったと」
422 「…はいそうですよ! 前は私だけが頼りとか言っちゃってたくせに
今じゃ合成基板を渡されるだけで口1つ聞いてくれやしませんよ!
合成も高属性じゃないと叩かれる毎日…だから私は逃げたんです!」
412 「叩くなんてそんな…酷い!」
主人「珍しい話でもないな。武器の属性値は結構重要だからな。
中にはそれが原因で辞表を出したり、デバイスゼロに頼る奴もいるらしい。
全財産を賭けるような合成、昔から成功するわけがないと分かってるのにな」
422 「貴方はいい環境に巡り会えてるかもしれないけど、PM全部がそうじゃないのよ…。
私なんてまだいい方よ、中には知らぬ間に壊されてたりするのもいるんだから…!」
422さんは手を震わせながら、冷却水をうっすらと流していました。
きっと、こうなるまではご主人様に良くしてもらっていたのでしょう…。
一変した環境が信じられずに飛び出す気持ち、恵まれた私には分からないのかもしれません。
287:7/12
08/04/29 23:13:45.02 Mxm8dC+S
412 「で、でも…これからどうするんですか?」
422 「…さぁね、戻っても叩かれるだけの扱いが待ってるだけだろうし。
本部に申請しても、記憶を飛ばされて丸っころになれるくらいだろうし。
私はそんなのは嫌! 私が私でなくなるなんて絶対嫌よ!」
412 「だけど、このまま放浪するなんて…ご主人様…」
主人「何なら、最後にお前さんのマスターを試してみたらどうだ?」
突然のご主人様の提案に、422さんはそれまで俯いていた顔を上にあげました。
主人「本部でお前さんのマスターに、行き倒れになって保護されている事をアナウンスしてもらう。
引き取りに来るか無視するかで、お前さんがどう思われているか分かるだろ」
422 「…無駄ですよ、そんなの。だってマスターはいつもGBRに…」
主人「やるだけやってみるのもいいんじゃないか?
それまでは面倒見てやってもいいから、な?」
412 「そうですよ…どうせならハッキリさせちゃいましょう!
もしかしたら、とっても心配してグラール全域を探し回ってるかも!?」
422 「…私の事を、心配して…?」
主人「最後はお前さん次第だけどな。戻りたいか、マスターの元に?」
422さんの目から、冷却水が今までより多く流れ始めました。
頬を伝い、ぽたぽたと置かれている茶碗のお茶の量を増やしながら…。
422 「…戻りたいに決まってるじゃないですか…あの頃みたいに。
だってどんなに酷い扱いされても、マスターはあの人だけなんですから…!」
主人「決まりだな、早速明日申請するとしよう」
412 「さ、涙を拭きましょ? せっかくの可愛い顔が台無しですよー」
私は手持ちのハンカチをすっと差し出しました。
けど、422さんはハンカチではなく私に抱き付いて…。
422 「…ずび~~~~」
412 「わわわわわ、そ、それは私のお洋服~!!」
288:8/12
08/04/29 23:14:40.34 Mxm8dC+S
こうして私達の少しの間だけの3人生活が始まりました。
422さんはそれまでまともな御飯を食べていなかったらしく、それは凄い食べっぷりでした。
おまけに寝相が凄い悪くて、私も何度かダンガされて結構いいのをもらってしまいました。
…早く終わるといいな、422さんの為にも、私の健康と食費の問題の為にも!
そうして3日が過ぎた頃、ご主人様の元に本部から連絡が入りました。
422さんのマスターさんが捜索願を出していて、これから引き取りに来ると。
主人「後1時間もしたら迎えに来るらしい」
422 「ほ…本当なんですか!? 本当にあいつ…来るんですか!?」
412 「良かったじゃないですか、422さん!
やっぱり試してよかった、探してくれてたじゃないですか!」
422 「うん、うん…よかった…ありがとう…」
主人「泣くのはマスターが来てからにしな」
422さんは何とか涙を堪えて、迫る1時間後に備えて必死におめかしを始めました。
おめかしと言っても、普段と変わりないか寝癖がないかチェックする程度なんですけどね。
待つ事30分程度、普段私達以外が開ける事のないドアがノック音を奏でました。
入ってきたのはご主人様よりちょっと低い程度のビースト男性。
獣男「…見つけた、ようやく見つけた!」
422 「…ます、たー?」
獣男「…何処行ってやがった、探したんだぞ!」
422 「…ま、ますたぁ~!!」
422さんは早速、顔をくちゃくちゃにしながら自分のマスターに抱きつきました。
マスターさんも422さんの頭を撫で回し、優しく抱き返していました。
…何だか、私まで冷却水が零れそうです。
289:9/12
08/04/29 23:16:03.15 Mxm8dC+S
獣男「…もう何処にも行かせないぜ!」
422 「ますたー…ごめんなさい、ごめんなさい…。
もうどこにもいきません、ずっといっ…」
獣男「俺のクレアダブルス基板~!!」
3人 「…へ?」
そう言うや否や、マスターさんは突然怒りに満ちた表情で422さんを叩いてしまいました。
私達は状況が良く飲み込めず、422さんを庇えず…くれあだぶるすきばん?
一体この人は何を言ってるんだろう? 422さんは422さんで、基板なんかじゃ…。
獣男「てめぇこの野郎! 俺がどれだけ苦労してその基板拾ったと思ってんだ!?
ようやく材料が揃って合成しようとしたその日にいなくなりやがって、アァ!?」
422 「きゃうっ…!」
マスターさんは422の胸倉を掴み、そのまま上に持ち上げました。
獣男「いなくなるんだったら、合成終わってからにしやがれ!
そうでなくても打撃100作るのはタリィんだ、分かってんのかこの糞が!」
422 「あ…あぐ…っ」
412 「ちょ、ちょっと! あんまりじゃないですか!
422さんは貴方に迎えに来てもらって、また仲良く過ごしたいと思ってたのに!」
私がいてもたってもいられず、噛み付くとマスターさんはギロリとこちらを睨みました。
獣男「何お前? うっぜー事言いやがんな、このデコ助が?
俺のクレアダブルス基板を見つけてくれた事には感謝するんだけどよー?
人んとこのパシリの扱い方に文句付けねーでくれる?」
412 「…デ、デコ助!? そ、それはともかく、貴方は422さんを何だと思ってるんですか!?
さっきから基板基板って、422さんはパートナーであって基板なんかじゃないです!」
獣男「あー、超ウゼーしお前。 コイツは俺のパシリだ、俺の為に動いてトーゼンだっつの。
人権とかそんなのは存在しねーんだよ、分かるー?」