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参考資料>>916
2008年3月5日 東京新聞朝刊 *12版29面
「もうひとつの現実」 斎藤学
人々語ったり書いたりしていることのほとんどはうそだ とい
うか、人は休験している事実そのものを言葉に移すことかできな
い 私たちの休験していることはアナログでれ連続しているのに、
それを描与する言葉は途切れ途切れのテジタルでしかないからだ。
誠実に現実を語ろうとすればするほど、私たちは黙りこまざる
を得なくなる。そこで、人は工夫し、現実よりも現実らしいうそ
をつくりだす。
よくできた物語や会話は読み手や聞き手の脳に侵入してイメー
ジを紡ぎ出し、「もうひとつの現実」を提供する。精神医学で「
症状」とされているものの多くも、このようにしてつくりだされ
た物語だと思う、
ある女性は幼児期から二十代半ぱの現在まで、独特な腹部の不
快感に悩まされ、それを「おなかが痛い」「気持ちが悪い」など
と表現した。他人、特に異性が居る場所でひどくなる,その感覚
はなにやら恥ずかしいので、少女は考えることをやめてしまった。
彼女の吐き気は十代に入ってさらに強まり、学校へ行けなくなっ
た。やがて食物を詰め込むときにだけ楽になることに気づいた。
後年、この女性は「引きこもりの摂食障害者」として私の治療
を受けることになり、不快感が性欲だと納得してから元気になっ
た。しかし性欲という言葉も、それについての私との会話も、「
腹痛」と共に過ごした彼女の日々の重さを支え切れはしない。
(精神科医)