07/11/11 09:40:10 wTrROOXa
混合診療問題についての小話
その昔、教育は全て公立の学校で国の定めたカリキュラム通りに行われることになっていた。
塾や予備校に通うと学費を全額自己負担しなければならない決まりのため、皆文句はあれど公立校に通っていた。
田舎の学校だろうが都会のマンモス校だろうが同じ教育を受けられるという点では少なくとも平等ではあった。
ある時から公立校以外での教育も認められることになった。
多くの生徒達は放課後に塾に通うようになったが、塾に通わない生徒や塾のない田舎の生徒との学力差が広がり始めた。
国のカリキュラム通りに試験を課すと塾に通っている生徒達はほとんど全員が満点を取ってしまう。
こうして入試の難易度は次第に高くなり、公立校だけに通っていたのでは合格は極めて難しくなった。
塾の乱立する都市部と違って田舎では塾の経営も成り立たず、今も公立校の教育に頼るしかないのが現状だった。
地域の校長や保護者達は国に時代に沿ったカリキュラムの改善を要望したが、国は財政難を理由に断った。
「とにかく予算がありません。公教育は最低限必要な学力を保証する場で受験勉強のためにあるものではありません」
日に6時間あった授業はいつの間にか4時間に削減され、教科書は数年に一度改訂されるだけになってしまった。
公立校しかない地域の人々は時代遅れの教育に甘んじるしかなくなった。
一方、都市部では「ゆとりある教育」を掲げる私立校が人気を集めていた。
高いレベルの教育に加えて、校内の環境もよく生徒は無論教師にも好評を博していた。
より高い教育と生活の質を得られる上に給与も高いことから、優秀で熱意のある教師達はこぞって私立校へと移っていった。
この結果公立校の教育はますます荒廃し、モンスターペアレントや校内暴力がそれに拍車をかけた。
「公立校での教育は既に時代の要請にはこたえられない。私立校を見ろ。全ての点で公立校を上回っているじゃないか」
日々の激務とクレームの対応に追われる公立校教師達の間では、公立校教育の全廃を叫ぶ声が次第に高まり始めていた。