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(判決分 4/5)
提供義務を負うとするものではない。また,本件基本契約は,加盟店経営者と被上告人との間の
権利義務関係を包括的に定めるもので,その一部を取り出して,受任者の報告義務を定める
民法645条の規定を適用することも相当ではない。本件基本契約には上記のとおり税の申告の
ための資料の提供義務について詳細な定めがあるにもかかわらず,被上告人と推薦仕入先との
取引内容について報告をする義務に係る明文の定めはないのであるから,被上告人は,上告人らに
対し,上記報告をする義務を負わないものと解される。
4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
前記事実関係によれば,加盟店経営者が本件発注システムによって商品を仕入れる場合,
仕入商品の売買契約は加盟店経営者と推薦仕入先との間に成立し,その代金の支払に関する
事務を加盟店経営者が被上告人に委託する(以下,これを「本件委託」という。)という法律
関係にあるものと解される。したがって,本件委託は,準委任(民法656条)の性質を
有するものというべきである。
もっとも,本件委託は本件基本契約の一部を成すものであるところ,前記事実関係によれば,
本件基本契約においては被上告人の支払った仕入代金がオープンアカウントにより決済される
ことから,被上告人は,仕入代金相当額の費用の前払(民法649条参照)を受けることなく
委託を受けた事務を処理することになり,しかも,支出した費用について支出の日以降オープン
アカウントによる決済の時までの利息の償還(同法650条参照)を請求し得ず,本件委託に
基づく仕入代金の支払について報酬請求権(商法512条参照)も有しないなど,本件委託に
通常の準委任とは異なる点(以下,これを「本件特性」という。)が存することは明らかで
ある。
そこで,以上の本件委託の性質を踏まえて,本件基本契約上,被上告人が加盟店経営者
である上告人らに対して仕入代金の具体的な支払内容について報告義務を負うか否かを検討
する。
本件基本契約には,本件発注システムによる仕入代金の支払に関する被上告人から
加盟店経営者への報告については何らの定めがないことは前記確定事実のとおりである。