07/11/08 07:52:30 caduqLEn
以下そのイギリスの子爵の方の回想。
「あの時私は10歳でした。まだ幼かったとは言え、私の父は将軍であり、
いずれ私もそうなるのですから、日本とロシアの戦争の行方をずっと気にしていました。
もっと正確に言えば、同盟国である日本が敗れた後のことを気にしていたのです。
あの日の前夜も、私はそんなことを思いながらベッドに入りました。
日本の艦隊とロシアのバルチック艦隊が近々決戦するかもしれないということで
父はもうしばらく帰っていませんでしたし、もうまもなくロシアにアジアの覇権を握られる、
そうすれば我が大英帝国はどうなるだろう、と幼いながら不安を抱いていたのです。
今でもはっきり覚えています。
あの素晴らしい日の朝、私は執事の呼ぶ声に起こされたのです。
『ロード、ロード、起きなさい』
まだ眠いのにうるさいな、まずそう思ったことを覚えています。
『うるさいな、どうしたというんだ』
『日本とロシアの艦隊が対馬沖で戦闘をしたのです』
『そんなのわざわざ起こすようなことじゃないだろう。それでロシアが勝ったんだろう?』
『違います。日本が勝ったのです』
『なにっ!』
ベッドの上に跳ね起きたのを覚えています。まさかそんなことが起こるなんて、
夢にも思っていませんでした。しかし私の驚きはそんなものでは終わりませんでした。
『今朝方、お父上が急使をよこしたのです。ロード、バルチック艦隊は全滅しました』
『全滅!あのバルチック艦隊が!』
『ロード、それだけではありません。バルチック艦隊を撃滅した日本の艦隊は、
まったくの無傷だそうです』
私は絶句してしまいました。我がロイヤル・ネイビーでさえ何度も苦い思いをさせられた、
当時世界で最強とも思われたあのいまいましいバルチック艦隊が、
相手に何の損害を与えることもできずに全滅した、そんなことがありうるなんて。
死者が甦ったと言われた方がまだ信じられたでしょう。