06/09/22 17:57:10 3cdbnBBD
近頃うまくいかないことだらけ。
つまらん毎日。
なにか面白いことはないかと思い切って蓋を空けてみた。
怖々と天井裏を覗く。
そこには母親と父親、そして妹がいた。
それは紛れもなく離れて暮らす俺の家族。
しかし両親は今よりずっと若く、妹は幼稚園くらいだった。
三人は食卓を囲んでいた。
母親が俺に気づく。
「なにしてるの、はやく上がってきなさい。」
言われるまま天井を越え、席につく俺。
夕食はすき焼きだった。
俺の大好物。
うまかった。
やっぱり母の作る料理は世界一だ。
俺は無我夢中で食った。
気がつけば俺自身も少年の頃の姿に戻っていた。
それにしても家族全員で食卓を囲むなんていつぶりだろうか。
もう長いこと実家には帰っていない。
いつぶりだろうか、こんなに笑ったのは。
料理はうまいし、楽しかった。
俺は満足した。
もう元の世界のことなんて忘れていた。
しかし、母親の言葉で俺は我にかえった。
「あなたはそろそろ戻りなさい。」
戻りたくなかった。
ずっとここにいたい。
でも、戻らなきゃ。
俺は今を生きなきゃならないんだ。
「辛いことがあったらいつでも帰ってきていいんだぞ。」
普段はあまり口を開かない父親の言葉に、少しだけ涙が出た。
俺は照れ隠しに「わかってるよ。」とだけ、ぶっきらぼうに返した。
三人は笑った。
俺も笑った。
その瞬間、周囲が光に包まれた。
・・・。
気がつくとそこは元のユニットバスだった。
見上げると、天井の蓋はきっちりと閉まっている。
なぜだかよく分からないけど、自然と笑顔になった。
「ありがとう・・・。俺もう少し頑張ってみるよ。」