07/06/11 14:18:27 NS1bguTE
焼香による環境中ホルムアルデヒドおよび他のカルボニル化合物濃度
Concentrations of formaldehyde and other carbonyls in environments affected by incense burning
神仏に敬意を表すため香を焚くことは, 中国の家庭や寺院では一般的な日常習慣であるが,
その煙中には多環芳香族炭化水素やホルムアルデヒド, アセトアルデヒド等の変異原性物質が含まれることが
明らかにされている. しかし, 線香自体の主成分についての情報はなく, これまで焼香が環境中カルボニル濃度に
与える実際の影響についても報告されていない. そこで, パイロットスタディとして日々香が焚かれている香港の
家庭および寺院1軒ずつから室内空気を採取し, カルボニル類について分析した. (中略)
採取した試料を熱脱着後, GC/MS 分析した結果, ホルムアルデヒド, アセトアルデヒド, アクロレイン, 2-フルフラール,
ベンズアルデヒド, グリオキサル, およびメチルグリオキサルが含まれることが判った. これら7種のカルボニル類の総濃度は,
寺院の本堂で, 参拝者の多い週末に平日の3倍になることから, 濃度と焼香頻度は比例すると推測される.
寺院の本堂と境内の空気中カルボニル類濃度は, 屋外の大気中濃度より一般的に高いが, 時には23倍になることがあった.
さらにこれらのことは, 寺院内のカルボニル化合物の発生源が焼香であることを示している.
採取したカルボニル混合物中にホルムアルデヒドが最も多く含まれ, 寺院では54%, 家庭では57%を占めた.
また, ホルムアルデヒド含有濃度は, 寺院では 108~346 ppbv で, 家庭では平均 103 ppbv であり,
ピーク時の値は WHO のガイドラインに示された 100 μg m-3 (88 ppbv) を3倍も超えていた.
その次に突出して高い値を示したのは, アセトアルデヒドとアクロレインであり, 寺院で採取したサンプル中での割合は,
それぞれ13%と12%であった. アセトアルデヒド濃度および家庭内のアクロレイン濃度は, WHO のガイドラインの基準内で
あったが, 寺院内のアクロレイン含有濃度は, 22~99 ppbv であり, WHO 基準の 50 μg m-3 (22 ppbv) に近似したまたは超える値であった.
これらの結果は, 香を焚くことが周囲環境中のカルボニル類, 特にホルムアルデヒドとアクロレインの濃度を上昇させることを裏付けている.
Journal of Environmental Monitoring 4 : 728-733 (2002)
Ho SSH, Yu JZ
(香港科学技術大学 化学部, 九龍, 香港)
URLリンク(www.jpha.or.jp)