06/12/17 12:23:28 spks0HGx
この先あまり書きたくなくて2週間経ってしまいました。
今夜書きます。
529:優しい名無しさん
06/12/17 17:52:48 GHrlhg2m
久々だ!!
今夜楽しみだけど、えぇ~?!
530:優しい名無しさん
06/12/17 18:49:48 D0WFIZtD
あげ
531:1
06/12/17 23:03:22 spks0HGx
>>522の続き
「私子供の頃、親から虐待を受けてて・・・」
彼女がゆっくりと、そして淡々と話し始めた。
彼女は九州の港町で生まれた。
町のほとんどの住人は漁師だったが
父親は普通のサラリーマン、母親は専業主婦をしていた。
生まれて初めての記憶は、4方を柵に囲まれたベビーベッドの中を
満面の笑みで覗き込む両親の顔だった。
532:1
06/12/17 23:04:24 spks0HGx
>>531の続き
両親の笑顔を見ながら彼女は二人に会えた喜びと
これからの未来を不安に感じていた。
”これからの未来に起こる全てを知っている”
そんな感覚を抱いていた。
しかし思うように未来を思い出せなかった。
「”未来を思い出す”って変な表現でしょ
でもその時の私はそう感じたの」
彼女は言った。
533:1
06/12/17 23:05:05 spks0HGx
>>532の続き
幼稚園の記憶はあまり無いと彼女は言った。
いつもボーっとして現実感に乏しく
無口で友達は出来なかった。
”どうして自分はココに居るのか?” ”ココに馴染めない”
そんな違和感をいつも感じていた。
彼女自身は覚えていないが
泣いてばかりいたと後に母親に言われたそうだ。
534:1
06/12/17 23:06:40 spks0HGx
>>533の続き
彼女が5歳の時に産まれた弟をよく可愛がった。
「可愛がると言う表現は適当じゃないかも。
私は不安になると弟をお守りの様に抱きしめて、
弟が見せてくれる笑顔に安心したの」
漠然とした不安をいつも抱えながらも
いつも優しい両親に守られて
それなりに穏やかな毎日だった。
しかしそんな日々は長く続かなかった。
535:1
06/12/17 23:07:38 spks0HGx
>>534の続き
彼女が小学校に上がる頃になると
両親は度々口論するようになった。
両親の喧嘩が絶えないと子供は自分を責めるようになる。
彼女もその例外ではなかった。
喧嘩が始まるといつもすがるように弟を抱きしめた。
弟だけが自分を不安から救ってくれる存在になっていた。
しかし、別れは直ぐに訪れた。
536:1
06/12/17 23:08:27 spks0HGx
>>535の続き
小学2年の時、両親が離婚した。
彼女は母親に、弟は父親に引き取られその後一度も会うことはなかった。
母親と二人、新しいアパートに移ると
母親は彼女を抱きしめて言った。
「これからは二人で仲良くやっていこうね
お母さんなんでも頑張るから」
自分のせいで両親が離婚したのではないかと
不安を抱えていた彼女は
柔らかい母親の笑顔にホッとした。
537:1
06/12/17 23:10:47 spks0HGx
>>536の続き
新しい生活が始まり1年を過ぎた頃から
母親はため息ばかり付くようになっていた。
母親が経済的な理由で悩んでいたこと
腰を痛めて仕事にも支障をきたしていたこと
プライドが高くて誰にも援助を求めなかったことなど
子供だった彼女は知らなかった。
今まで子供には優しかった母親が
次第に彼女にあたるようになった。
それは彼女には耐え難いものだった。
父親、弟と別れ、学校にも馴染めず
母親にすら愛されなかったら自分は独りぼっちになってしまう。
538:1
06/12/17 23:11:42 spks0HGx
>>537の続き
”愛されたい”
彼女は母親に喜んで欲しくて
正月に祖父母や叔父夫婦にもらったお年玉を
母親の誕生日のプレゼントに使った。
どんなプレゼントなら喜んでもらえるか
一生懸命選んだ。
しかし喜んでくれたことはなかった。
539:1
06/12/17 23:12:44 spks0HGx
>>538の続き
「なんでこんな物を買ってくるの!」
血走った目でいつにも増して激しく怒り
そして泣き出す母親に彼女は震えた。
父親とケンカの時も涙を見せなかった母親が泣いている。
泣き続ける母親の背中を
黙って見ているしかなかった。
540:1
06/12/17 23:13:33 spks0HGx
>>539の続き
お年玉も取り上げられるようになり
プレゼントも出来なくなった。
母親がどうしたら喜んでくれるのか
どうしたら自分を愛してくれるのか
いつもそればかり考えていた。
541:優しい名無しさん
06/12/19 20:02:27 hoIMgQpD
ホシュ
542:1
06/12/20 07:53:42 +t1S1cpc
>>540の続き
小学校4年生になると料理を覚え
仕事で疲れて帰ってくる母親のために料理を作った。
「・・・不味い」
母親はいつも吐き捨てるように言った。
「ごめんなさい。今度はもっと上手く作ります・・・」
スーパーに買い物に行く時はいつも
母親の好きな料理
母親の好きな味付け
そればかりを考えた。
543:1
06/12/20 07:55:44 +t1S1cpc
>>542の続き
ある日、母親とそっくりの味付けで作ることが出来た。
(これなら絶対に美味しいって言ってもらえる
絶対に喜んでもらえる)
ワクワクしながら母親の帰りを待った。
帰宅した母親は珍しく機嫌が良かった。
しかし、料理を一口食べて泣きながら怒り出した。
「もういい加減にして!なんでこんなことばかりするの!」
母親は泣きながら狂ったように彼女を叩いた。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい・・・」
震えながら同じ言葉を何度も繰り返した。
544:1
06/12/20 07:58:56 +t1S1cpc
>>543の続き
喜ばせようと努力すればするほど
何故か母親は彼女に厳しくあたった。
(これなら喜んでくれるはず)
何故か自信が有る時ほど
母親は彼女に剥き出しの感情をぶつけた。
肉体的な暴力だけではなく、冬の夜に下着姿で外に閉め出されたこともあった。
当時の彼女はそれが虐待だとは思わなかった。
自分の存在が母親を苦しめている。
漠然と感じていた思いは
いつしか確信へと変わっていった。
545:1
06/12/20 08:00:51 +t1S1cpc
>>544の続き
愛されたい想いは
諦めから絶望に変わった。
自分が大人になれば今よりもっと周りの人を苦しめる。
大人になるのが怖かった。
毎年学校で行われる身体測定で
確実に成長していく自分の体に怯えた。
死ななければという想いに囚われていく。
546:1
06/12/20 08:02:43 +t1S1cpc
>>545の続き
どうやったら死ねるのかを考えるようになり
テレビの2時間ドラマで主人公が自殺するシーンを参考にした。
小学6年の冬休みの最終日。
母親が買い物に出掛けた後、彼女は浴槽に水を溜め始めた。
少しずつ上がってくる水面を無表情で見ている。
窓の外は雨が降っていた。
少し開いた窓の隙間から雨の日の匂いがした。
547:1
06/12/20 08:07:40 +t1S1cpc
>>546の続き
浴槽に水が一杯になると
化粧用のカミソリを右手に持った。
恐怖は無かった。
静けさの中、雨の音だけが響いている。
カミソリで手首を一気に引いた。
痛みは感じなかった。
(これで終わり・・・
お母さん・・・もう大丈夫だよ・・・)
血が滲む手首を水に浸けて
浴槽の縁に頭を付けて命が終わるのを待った。
548:優しい名無しさん
06/12/24 08:10:43 gWZ0j1fN
ほす