06/10/25 21:58:11 7kQ+4X46
>>435の続き
「そこに座って待ってて」
弱々しい潤んだ声でそれだけ言って、
顔を背けて部屋に入っていった。
俺はしばらく立ちつくしたまま
床に散らばったクスリをぼんやりと見ていた。
罪悪感や、情けなさや、恥ずかしさ
色々な感情が一気に押し寄せてきて
何もかも止まってしまったような気がした。
大切な何かを自分の手で壊してしまった気がした。
437:1
06/10/25 21:59:15 7kQ+4X46
>>436の続き
床に散らばったクスリを一枚ずつ拾って
そっとゴミ箱に入れた。
こんな時は何故か時間が止まったようで
普段気づかないものがよく見えた。
床の小さな傷や、壁のシミ、窓から差し込む光・・・
外を走る車の音や、どこかで回している洗濯機の音・・・
しばらくすると部屋から彼女の声が聞こえた。
誰かと電話で話しているようだった。
438:1
06/10/25 22:03:23 7kQ+4X46
>>437の続き
1時間ほどしてやっと彼女が部屋から出てきた。
俺の正面を向かず
少し顔を背け椅子に横向きに座った。
「今先生を呼んだから」
「先生?」
「心療内科を開業してる私の師匠。
さとる君の断薬の指導をしてもらおうと思って」
この仕事を始めたのもその先生の影響で
何かと相談に乗ってもらっているのだそうだ。
彼女は話をしている間一度も俺の方を見なかった。
439:1
06/10/25 22:07:41 7kQ+4X46
やっぱりこういうのは一週間くらい缶詰になって
一気に書いて一気に読んでもらうのが良いよね
なかなか時間が無くて
最近通勤電車で東野圭吾の「手紙」を読んでる
疲れていても読みやすいから苦にならない
オススメだよ
440:優しい名無しさん
06/10/26 20:48:07 gOCO/4dR
>1
いあいあちょとずつも楽しみになっちゃいますので
さとるくんはもうかなり良くなってきてるんでしょうか
どきどき
441:あぼーん
あぼーん
あぼーん
442:1
06/10/27 23:56:34 XL58QCP0
440さん
そう言ってもらえるとホッとします
崖っぷちなのでage!
443:優しい名無しさん
06/10/29 15:01:30 B0BP7hxm
良い天気だな
age
444:優しい名無しさん
06/10/29 16:22:17 x2EGvlTC
何も悪かない
445:あぼーん
あぼーん
あぼーん
446:優しい名無しさん
06/10/31 10:44:41 lTkrj5Bl
ひーりんぐっていいなー
447:優しい名無しさん
06/11/03 01:59:38 j7IUhHmS
2か月ぶりくらいに覗いてみたら続きがっ!一気に読ませて貰いました~。フィクションなのですか…残念。「彼女」みたいな人が居たらイイなと思ってたもので。。
448:優しい名無しさん
06/11/03 02:03:53 j7IUhHmS
447です。続き。
レイキは何度か受けた事があったケド良い出会いした事ないんですf^_^;1さん、無理しないでユックリ書いてって下さいね。楽しみにしてます☆
449:優しい名無しさん
06/11/05 17:05:36 7mAK5hXI
げんきー?
450:1
06/11/06 12:50:25 +gIju2Ry
元気ですよ~
取り合えず・・・
451:1
06/11/06 12:51:04 +gIju2Ry
>>438の続き
彼女は、独立開業する3年半ほど前まで
この先生と関わりのある治療院で働いていた。
開業後、始めはまったく客が寄りつかず
軌道に乗るまで「若いが腕は確かだ」と先生が客を紹介するなど
あらゆるサポートをしてくれたそうだ。
「先生はすごい人だよ」彼女が言った。
傷つけてしまった彼女を慰めてくれるかもしれないという期待もあったが、
なんとなく追いつめられていく様な気分になっていった。
こんな情けない自分を誰にも見られたくなかった。
452:1
06/11/06 12:51:52 +gIju2Ry
>>451の続き
厳しそうな人を想像した。
この小柄な彼女ですら時に人を圧倒する迫力を見せることがある。
その彼女に凄いと言わせる人物はどれほどなのだろうか。
好奇心より、恐怖の方が強かった。
そう思っているところに
玄関をノックする音とほぼ同時に60前後の男性が
中に入ってきた。
(インターホンがあるのに・・・)
こんな時なのにそんな事を思った。
453:1
06/11/06 12:53:42 +gIju2Ry
>>452の続き
「こんにちは。貴方がさとるさん?」
靴を脱ぎながら顔だけこちらに向け先生が言った。
かすれた気の抜けた声だ。
「は、初めまして」
ドキドキして、逃げ出したい気持でいっぱいだった。
「どうも。坂野です」
無表情で無愛想に言った。
彼女を泣かせたことで、先生も怒っているのかもしれないと思った。
浅黒い長い顔、クセ毛の髪は少し薄かった。
映画によく出てくるボーッとした感じの俳優の誰かに似ていると思ったが、
その俳優の名前は思い出せなかった。
454:1
06/11/06 12:55:18 +gIju2Ry
>>453の続き
「すみません休日に呼び出して」彼女が言う。
今日は祭日の土曜日で、
先生のクリニックは休業だった。
「寝てたんですか?」
アクビをしている先生に彼女が言う。
「新しいクーラー買ったんだよ。
冷えすぎなくてなかなか良いんだ。これが気持ちよくてね」
寝癖の付いた頭を掻きなあら呑気そうに先生が言う。
ヨレヨレのシャツを着ている。
ファッションなのかもしれないが、
なんとなくだらしなく見える。
455:1
06/11/06 12:57:12 +gIju2Ry
>>454の続き
まるで緊張感がなく、覇気も感じない。
今の俺には、その緊張感の無さがありがたかった。
先生が来て張りつめていた空気が変わった。
俺は少しホッとしていた。
「これ見てください」
ゴミ箱からクスリの入った袋を取り上げて彼女が先生に見せた。
俺は居たたまれない気持ちになる。
「ふんふん。これじゃ死ねないな」
無表情に中のクスリを手に取ってかすれた声で言った。
456:1
06/11/06 12:58:03 +gIju2Ry
>>455の続き
来る途中に買い物をしてきたのだろう。
手に持っていたスーパーの袋から
缶コーヒーや、お茶、ジュースなど計7本を
一本ずつ取り出してテーブルの上に置いた。
種類も本数も無茶苦茶だった。
目に入ったものを適当にかごに放り込んで
買い物している姿が目に浮かんだ。
457:1
06/11/06 12:58:56 +gIju2Ry
>> 456の続き
「どれが良い?」
俺の方を向いて先生が言う。
「じ、じゃあそれを」
缶コーヒーを指さして言った。
先生は缶コーヒーを取ると
振ってから栓をあけて渡してくれた。
「いただきます」俺は恐縮していた。
458:1
06/11/06 13:00:23 +gIju2Ry
>>457の続き
先生は食器棚を勝手に開け小さな皿を一枚取り出し
テーブルの上に置いた。
「この店の柿の種はなかなかなんだよ」
そう言いながら、もう一つの和菓子屋のものらしき袋から
今置いた皿の中にザラザラと入れた。
一粒が3センチくらいの大きなものだった。
先生は皿ごと俺の方に寄せて食べるように促した。
それどころじゃ無かったが仕方なく一粒口に入れた。
口が渇いていて上手く飲み込めず、コーヒーで流し込んだ。
459:1
06/11/06 13:01:23 +gIju2Ry
>>458の続き
「どうだ?」
「美味しいです」
味なんか分からなかった。
「あっ、コーヒーと煎餅じゃ合わないな。
つまみは柿の種だって先に言えばよかったかな」
「いえ、大丈夫です」
そんなことより俺は彼女の方が心配だった。
彼女はさっきから早く話始めたくて
じれている様だった。
俺はその様子をヒヤヒヤして見ていたが
先生はまったくお構いなしでマイペースだった。
460:1
06/11/06 13:03:58 +gIju2Ry
>>459の続き
「ビールの方が良かったんだけど車で来たからね」
飲んでなくてもどことなく酔っているようにも見えた。
先生が皿に手を伸ばすと
「手ぐらい洗ってください!」
声の調子から彼女が苛ついているのは明らかだった。
「あ~、そうか」
彼女にしかられて流し台で手を洗っている。
呑気そのものだ。
461:1
06/11/08 21:29:22 Qm/hy4j5
>>460の続き
先生がやっと落ち着いて、彼女は
今までのヒーリングや指導の内容や期間などを話し始めた。
専門用語らしき言葉も出てきて
俺には理解できないところも多かった。
時折、目に涙を溜めながら話をしていた。
その涙を見るのが何よりも辛かった。
「もう半年前から溜め続けてたみたいなの
しかも最近まで・・・
ヒーリングだって上手くいっていたし
状態だって確実に良くなっていたのに
どうして自殺なんて考えるのかな」
俺に向けられなかった怒りを
先生にぶつけているような気がした。
462:1
06/11/08 21:30:15 Qm/hy4j5
>>461の続き
万引きして捕まった少年の様に
俺はうつむいて小さくなっていた。
しかし先生は涼しい顔をしてまったく動じていない。
「ふんふん」
柿の種をポリポリ食べながら頷いている。
コレで良いのかと俺の方が不安になるほど
まるっきり緊張感がない。
463:優しい名無しさん
06/11/12 21:51:20 Wk9PbnBU
ゆっくりでいいからね
464:1
06/11/13 22:14:11 S70CRJmv
書けるかな?
465:1
06/11/13 22:16:03 S70CRJmv
なんかね。
最近週末になるとアクセス規制で書き込めない事が多いんだよ。
OCNユーザーの誰かさんが週末にイタズラしているんだろうね。
466:1
06/11/13 22:17:19 S70CRJmv
>>462の続き
今度は胸のポケットからタバコを取り出し火をつけた。
しばらく吸ってから、何かを探すようにキョロキョロしている。
灰皿を探している様だ。
「タバコは?」
「僕は吸わないです」
「そうか」
そう言って立ち上がり、キッチンの隅から灰皿を持ってきた。
このアパートに灰皿があるのが意外な気がした。
467:1
06/11/13 22:18:16 S70CRJmv
>>466の続き
「この灰皿。私専用なんだよ。
あっ、タバコ吸って良いかな」
「あ、はい。どうぞ」
もう吸ってるじゃないか・・・と思ったが今の俺はそんなことを思うことすら許されない。
「タバコ吸う時は換気扇回して下さいといつもお願いしてるじゃないですか」
トゲのある言い方で彼女が言う。
俺は自分が怒られたような気分になって
さらに小さくなった。
「あ~、そうだったな」と言って、先生は立ち上がり換気扇に手を伸ばす。
しっかり者の娘と駄目オヤジといった感じだ。
468:1
06/11/13 22:19:04 S70CRJmv
>>467の続き
席に戻る時、先生は彼女を背後から指さし
俺に向かって笑顔で”こわいね”と声を出さず口だけで言った。
どんなリアクションして良いか分からず曖昧にうなずいて応えた。
(空気を読んで下さい!)
心の中で俺は叫び声を上げる。
469:1
06/11/13 22:20:40 S70CRJmv
>>468の続き
しばらく二人のやりとりを見ていて
不自然な事に気づいた。
話の最中に時折、突然の沈黙があった。
彼女の話を聞きながら先生は時々目をつむった。
10秒とか20秒、それほど長い時間ではない。
先生が目を閉じると彼女は遠慮した様に
その間だけ話すのを止めた。
そして目を開けるとまた話し始める。
「そんな大したことじゃないよ。彼は大丈夫だよ」
先生が彼女に言う。
470:1
06/11/13 22:21:48 S70CRJmv
>> 469の続き
”限界が来たら死ねばいい”そういう考えはいつもどこかにあったが
確かに最近は自殺をリアルなこととして考えられなくなっていた。
クスリは貯め続けていたが、それも以前貯めるために
一日の服用量を減らしていたので
その流れで今もそのまま余ったクスリを貯めている感じになっていた。
生きるとか死ぬとか
幸せとか不幸とか
意味があるとか無いとか
最近はあまり考えていなかった。
考える時間すらなかった。
471:1
06/11/13 22:22:38 S70CRJmv
>>470の続き
「私もそう思うんだけど
数ヶ月前まで酷い状態だったの」
「強さも持ってる」
「うん、分かってる
少しビックリしちゃっただけなの」
そう言って俺を睨み付けた。
睨んではいたが、強張っていた彼女の顔が緩んできていた。
彼女は話すうちに少しずつ落ち付きを取り戻していった。
472:優しい名無しさん
06/11/14 13:26:13 IRe8ofNI
>>465
そうでしたかー
あんまり、まだまだ?と聞くとせかしてるみたいだし…
でも、いつもチェックはしてますよ。
473:優しい名無しさん
06/11/17 14:41:31 kiZZly7Z
保守
474:1
06/11/19 00:09:44 tc9NLznv
「あああ」只今マイクのテスト中!
475:1
06/11/19 00:14:15 tc9NLznv
おっ!?なんか2ちゃんの様子が変わった
アクセス規制は掛かってないね
472さん
どんな内容でも書き込みがあると嬉しいものですよ
こんなに書き込みが遅いのに読んでもらえるだけでもありがたいもので
疲れすぎてアタマがバカになっているので
少しだけ書いて続きは明日書きます。
完全週休二日制はまだか・・・
476:1
06/11/19 00:15:26 tc9NLznv
>>471の続き
先生は今度、先ほどの和菓子屋の袋から、
コッペパンの様な形をした真っ白な和菓子を取り出した。
また勝手に流しの下の扉から包丁を取り出し八等分にした。
「コーヒーとじゃ合わないな」
俺の方を向いて先生が言った。
「いえ、これで良いです」
「これ中にクルミが入ってて歯触りが良いんだよ。
お茶もあるから飲みなさい」
ペットボトルを指さして言った。
477:1
06/11/19 00:18:57 tc9NLznv
>>476の続き
そんなやり取りを見て彼女がお茶を煎れてくれた。
「これ美味しいんだよ食べてみなよ」
彼女も俺に和菓子をすすめてくれた。
今日初めて見せてくれた優しさだった。
彼女は疲れた顔をしていたが
いつもの穏やかな顔が戻ってきていた。
478:1
06/11/19 00:19:35 tc9NLznv
なんだよこれ、、、改行が入らない・・・
479:1
06/11/19 00:24:24 tc9NLznv
>>477の続き
手に取った和菓子をかじると
中に果物やクルミや・・・
何か良く分からないけど色々入ってて
それが堅めの餅でつつまれている
洋菓子の様な味で・・・
食べたことのない食感で・・・
美味しくて・・・
彼女の煎れてくれたお茶も温かくて・・・
三人とも黙って和菓子を味わっていた。
彼女が冷静さを取り戻したことで
俺は安心しきっていた。
480:1
06/11/19 00:26:25 tc9NLznv
こんなに文字が詰まってたら読む気しないよ
ブログの方早めに準備してそっちに移ろうか
481:1
06/11/19 09:45:26 tc9NLznv
てすと
てすと
482:1
06/11/19 09:46:38 tc9NLznv
・・・?
483:1
06/11/19 15:06:04 tc9NLznv
てすと
てすと
てすと
484:1
06/11/19 15:06:47 tc9NLznv
>>479の続き
「おいしい・・・」
彼女が小さく言った。
初めて食べる和菓子の名前を聞こうとして
俺は顔を上げた。
(・・・・!!!)
体の力が抜けて
無防備なところをフルスイングで殴られたような衝撃を受けた。
彼女の目から大粒の涙がポロポロと流れていたのだ。
485:1
06/11/19 15:07:33 tc9NLznv
>>484の続き
「どうして・・・・どうして・・・・」
(えっ!?ええっ!?)
「・・・こんな美味しい物があるのに
・・・・私だって近くに居るのに
・・・・どうして・・・」
(な、泣かないで・・・)
「うっ、うううっ・・・・」
とうとう声を出して泣き出してしまった。
(な、泣かないでよ、もうお願いだから・・・泣かないで・・・)
486:1
06/11/19 15:08:30 tc9NLznv
>>485の続き
彼女の目から溢れる涙を
手で押さえたい衝動に駆られた。
俺の心の叫びも虚しく、
もうほとんど子供の様に泣きじゃくっている彼女。
一番恐れていた彼女の姿が目の前にあった。
(ごめん、ほんとうにごめん・・・・)
彼女の涙に打ちのめされて半ベソの俺は
助けを求め先生を見た。
(俺どうしたら良いですか!?こんな時はどうすれば良いんですか!?)
487:1
06/11/19 15:09:56 tc9NLznv
>>486の続き
「大丈夫だから」
落ち着いた笑顔で言った。
先生は二度うなずいて、俺の肩に手を置いて
座るように促した。
その時初めて自分が立ち上がっていることに気付いた。
先生はそのまま俺を慰めるように肩に手を置いていたが、
そんな事より泣きじゃくってる彼女をなんとかして欲しかった。
488:1
06/11/19 15:10:52 tc9NLznv
>>487の続き
俺は途方に暮れて何も出来ず
そのまま泣いている彼女を見ていた。
先生は2本目のタバコに火をつけ
美味しそうに吸っている。
助けを求め先生の方を見るが
その度にうなずいて見せるだけだった。
489:1
06/11/19 15:13:57 tc9NLznv
>>488の続き
「クライアントの前では絶対に泣くなって何度も言ってるだろ」
タバコの煙を吐き出しながらかすれた声で言う。
何を言っているんだよこの人・・・
「ヒーラーが泣いたらクライアントが動揺するだろ」
もう止めてよ
今そんな事を言わなくても良いじゃないか・・・
「ううっ、ぐすっ、・・・
さとる君はお客さんじゃないもん・・・友達だもん」
子供の様に泣いている彼女が痛々しくて・・・
「そうか、今回はぎりぎりセーフってことにしておくか?」
もう、なんなんだよこの人・・・
一番悪いのは俺なのに腹が立って仕方がない。
そして、彼女の泣きながらの逆襲が始まった。
490:1
06/11/19 15:21:57 tc9NLznv
>>489の続き
「先生!どうしてそんなに汚い格好しているんですか?う、ううっ、、、」
「汚くないだろ。ちゃんと洗濯してあるんだよ。
結構良い服なんだけどな・・・・」
「そんなにシワくちゃで・・・
この前買ってあげたアイロン使ってくれてますか」
「使わせてもらってるよ」
「だったらどうしてそんなしわくちゃのシャツ着てるんですか?うううっ、うう、、、えぐっ、、」
「アイロン使うと余計にシワが増えるんだよ」
「片手で伸ばして掛ければちゃんと使えるのに・・・うううっ
使い方教えたじゃないですか、、、う、ううっ
さとる君に初めて会わせたのに
私が恥ずかしいじゃない!う~う~えぐっ、、、」
491:1
06/11/19 15:23:50 tc9NLznv
>>490の続き
な、なんかよく分からないけど・・・
(そ、そうだ!もっと言ってやれ!)
俺は心の中で彼女を応援していた。
「せっかく買ってあげたのに・・・うううっ
白衣だってあんまりシワだらけだと患者さんの信用無くしますよ、、、ううっ」
「白衣は難しいからクリーニングに出すよ」
「アイロン使わなくても、洗濯物干す時に伸ばしてから干せば
そんなにシワだらけにならないのに・・・・ううっ、えぐ、、、」
492:1
06/11/24 02:42:53 D6UPk+mw
>>491の続き
彼女が泣き疲れておとなしくなると
先生が俺に話し始めた。
服薬自殺は成功率が低く
失敗して一生後遺症に苦しんでいる人達が居ることを
事例を挙げて話した。
さりげない話し方だったが、どの話もリアルで
俺を震え上がらせるのに充分だった。
493:1
06/11/24 02:43:55 D6UPk+mw
>>492の続き
「じゃあ、私はこれで帰るよ
さとるさん家まで送るよ」
俺も彼女も”えっ!?”という顔をした。
「まだ話したいことがあるの」
「もう解放してやりなよ
さとるさんもまいっているじゃないか」
「僕は大丈夫ですから・・・」
このまま彼女を一人にするのが心配だった。
494:1
06/11/24 02:45:02 D6UPk+mw
>>493の続き
「いいから行くよ」
先生の中では俺を連れて帰るのが決定事項のようだった。
「先生にお願いがあるんです」
彼女が慌てて言う。
「先生にさとる君の断薬の指導をしてもらいたくて」
「んっ?どうして?
自分でやれば良いだろ」
「断薬の指導だけで良いの
他は私がやるから」
495:1
06/11/24 02:46:04 D6UPk+mw
>>494の続き
「さとるさんとよく相談しなさい。
二人とも納得したら私のクリニックに通えばいい」
先生は釈然としない顔をしながらも
俺に名刺を渡した。
名刺の裏にクリニックの地図が書いてあった。
彼女のアパートからそう遠くなかった。
明日も彼女と会う約束をして別れた。
496:1
06/11/24 02:47:11 D6UPk+mw
>>495の続き
先生の車は俺にでも高級車だと分かった。
このさえないおじさんと高級車が
合っていないと思った。
たくさんショックな事があっても
こうやってどうでも良いことを思う自分が意外だった。
「彼女一人にして大丈夫ですか・・・?」
車の中は程よくクーラーの利いてる。
「あ~、平気平気」
この呑気な言い方がなんとなくおもしろくない。
いつの間にか俺は自分の立場を忘れている。
497:1
06/11/24 02:48:14 D6UPk+mw
>>496の続き
「随分彼女に厳しいんですね」
特に期待していたわけではないが
この人が彼女の師匠である事実が不満だ。
「ヒーラーは人の命を扱う仕事だからね
常に冷静でなければいけない
あの子はいつもクライアントに感情移入しすぎるんだよ
それは危険な事だと何度も言っているんだけどね」
498:1
06/11/24 02:49:15 D6UPk+mw
>>497の続き
俺は先生の話を理解しようとするより
彼女の悪口を聞いている気になり
腹立たしさが先にたってしまう。
先生が俺の顔をチラッと見て微笑んだ。
(何を笑っているんだよ)
むかつきが止まらない。
「さとるさん。あの子のこと頼むよ」
「・・・・あ、はい」
「はい」と返事はしたものの
何を頼まれたのか分からない。
心配を掛けるなと言う意味だと解釈した。
499:1
06/11/24 02:51:28 D6UPk+mw
>>498の続き
家に着くとホッとしたのか
急に吐き気がしてトイレに駆け込んだ。
(やっぱり限界だったんだ・・・)
体も鉛のように重かった。
今日、俺を先生に会わせたのは
断薬の指導以外に彼女には目的があった。
もうすぐ訪れる別れの後
俺を坂野先生に託すためだった。
別れが近づいていることを
俺はこの時まったく気付いていない。
500:優しい名無しさん
06/11/24 09:07:52 OXGXIpuW
どうなっちゃうのー?!
501:43
06/11/27 01:44:08 kANA9pa6
(・∀・)保守
502:1
06/11/27 03:43:32 EjIpL54s
あ~っ!久しぶり43さん
飽きられて居なくなっちゃったのかと思ってました。
レイキからだいぶ脱線してるけどヨロピク
503:1
06/11/27 03:45:07 EjIpL54s
>>499の続き
その夜、布団に入ってもなかなか寝付けなかった。
彼女の顔が次々と浮かんできて・・・
怒っている顔・・・
怒鳴っている顔・・・
泣いている顔・・・
ごめん、ごめん、ごめん・・・・傷つけてしまって・・・
浮かんでくる彼女に何度も何度も謝っていた・・・
彼女が今まで見せてくれた笑顔や笑い声
ぬくもりやイタズラっぽい瞳・・・
そしてどこか壊れてしまいそうな背中も・・・
その何もかもを裏切ってしまったようで・・・
504:1
06/11/27 03:46:13 EjIpL54s
>>503の続き
痛みとともに何か温かいものが体に流れてくるようで・・・
自分の気持ちを誤魔化せないところまできていた。
(ねえ、俺に何が出来る?)
心配かけて、傷つけて・・・
そんなことばかりだ。
今までたくさん良くしてもらったのに
俺は何一つ彼女のためにしてあげられない。
あまりにも無力で・・・・
自分には何もなくて・・・・
気がつくと涙が止まらなくなっていた。
505:1
06/11/27 03:48:08 EjIpL54s
>>504の続き
次の日
アパートに向かう電車の中で
彼女に会える嬉しさを噛みしめていた。
断薬の吐き気や、昨日の痛みや罪悪感、恥ずかしさ・・・
そのなによりも彼女に会えることが嬉しかった。
でも・・・・
玄関の前まで来るとインターホンを押すことが出来なかった。
(もう、俺なんかに会いたくないんじゃないか・・・)
5分・・・10分・・・・
そのまま立ちつくしていた・・・
(・・・・帰ろうか)
そんなことを思った時、玄関のドアが開いた。
506:1
06/11/27 03:49:27 EjIpL54s
>>505の続き
「なにやってるの?」
少し目の周りが腫れていて
疲れた顔をしているけど
いつもと変わらない彼女が居て
「あっ・・・・」
「入りなよ」
「お、俺が来てるの分かってたの?」
「そっから見えるもん」
そう言ってキッチンの窓を指さした。
そういえば廊下に面している窓から人影が見えるのだ。
なんか恥ずかしかった・・・
507:1
06/11/27 03:51:00 EjIpL54s
>>506の続き
”バシッ!!!”
中に入るといきなり力任せに頭を叩かれた。
の、脳が揺れる・・・
(・・・・な、なに???)
「昨日叩くの忘れちゃったから
一発で我慢してあげる」
唖然としている俺に彼女が笑いながら言った。
(あ、相変わらずだね・・・この人・・・)
でも、俺の気持ちは少し楽になった。
彼女らしい励まし方だった。
今までと何も変わっていないんだ。
俺はそう思った。
508:1
06/11/27 03:54:50 EjIpL54s
>>507の続き
いつも通りのヒーリングと指導を受けた。
その後、彼女の作った料理を食べた。
雑炊だった。
彼女は何も言わなかったが俺は気付いていた。
毎回出してくれる食事も俺の状態を考えて作ってくれていた事を。
509:1
06/11/27 03:56:01 EjIpL54s
>>508の続き
最近は家に帰ってから
彼女の使った食材をインターネットで調べていた。
俺が風邪気味の時は、風邪に効く食材を
腹の調子が悪い時は下痢に利く物を・・・
時々やたらと待たされるのも
体の状態を見てから、適当な食材を買いに行っていたのだ。
今回雑炊にしたのも
食欲が無いのを分かった上でだろう。
510:1
06/11/27 03:56:48 EjIpL54s
>>509の続き
(ねえ、俺に何が出来る?)
一緒に食事を食べながら
俺は心の中で彼女に話しかけている。
これだけしてくれているのに
俺は彼女に何もしてあげられない
まったくの役立たずだ・・・
511:1
06/11/27 03:57:50 EjIpL54s
>>510の続き
「昨日ごめんね・・・・
俺・・・クスリ貯めてたけど・・・
最近はあまりそういうの考えて無くて・・・
なりゆきでたまっていったって言うか・・・・」
言い訳にしては苦しくて、
説得力も無くて
でも、安心してもらいたくて・・・
512:1
06/11/27 03:58:29 EjIpL54s
>>511の続き
「うん、分かってる
先生に聞いたよ」
「・・・・??(先生とは昨日初対面だが・・・)」
「でも、今はそうでも
以前は考えていたんでしょ。
前科一犯だね!」
そう言って俺をからかうが
そんな事より先生に聞いたって・・・??
513:1
06/11/27 03:59:50 EjIpL54s
>>512の続き
「先生はそういうの見えちゃう人なの。
一度しか話してくれたことなくて
詳しくは私も知らないんだけどね
先生はいつも結論しか言わないし
そういう能力を隠しているようなところあるし
病院のスタッフも知らない人の方が多いの
さとる君だから大丈夫だと思って話しているんだから内緒だよ」
「・・・・????」
514:1
06/11/27 04:00:50 EjIpL54s
>>513の続き
「そんな驚くことじゃないよ。
そういう人は結構居るんだよ。
ほとんどの人は隠しているから知られないだけでね」
「なんでも見えちゃうの?
人の私生活まで?」
「どこまで見えているか私にも分からないけど
映像で見えるらしいよ
先生の言うことはいつも当たっている
先生のやったことは正しかったと
後になって気付くの」
515:1
06/11/27 04:02:47 EjIpL54s
>>514の続き
「昨日のアレも?」
あのやる気のないだらしない態度も正しいのだろうか・・・?
「うん、上手いな~と思ったよ
さとる君の気持を最優先にしたのが分かったから
私は少し面白くなかったけどね
最初から最後までさとる君の味方だったよね」
ア、アレが・・・???
516:1
06/11/27 04:03:27 EjIpL54s
>>515の続き
「人の心も分かっちゃうの?」
「心を読むのが一番得意なんじゃないかな
でも、必要な時以外は見ないようにしているらしいから
そんなに怖がらなくてもだいじょぶだよ」
「怖いとは思わないけど・・・・」
心を読まれるのは彼女で慣れている
それより・・・
517:優しい名無しさん
06/11/28 16:59:42 nqPev/Bj
hoshu
518:43
06/12/02 12:48:03 72Pwwpgv
>>502
(・∀・)これはお久しぶりです。楽しく読んでおります。これからもヨロピク
519:1
06/12/04 23:56:05 ObP0rr1c
>>516の続き
「うらやましいな・・・」
彼女の事をもっと知りたい
彼女の心をもっと分かりたいと思う俺の
正直な気持ちだった。
「うらやましい?」
彼女が少し不機嫌な顔をした。
あれっ?俺変な事を言ったかな・・・
「そういう能力を持った人はみんな苦労しているんだよ
先生はそれで離婚もしてるの」
「そ、そうなんだ・・・」
夫婦が分かり合えなくて離婚は理解できるが
人の心が分かるのに離婚って・・・?
でも、それ以上は聞けなかった。
520:1
06/12/04 23:57:09 ObP0rr1c
>>519の続き
「先生とはいつから?」
「知り合ってもう9年くらいになるかな
もともと私の主治医だったの
今は私の父親がわり」
そう言って左腕の長袖のシャツをたくし上げた。
(・・・・・・・・!!!)
真夏でも彼女は長袖を着ていたので
腕全体を見るのはこれが初めてだった。
521:1
06/12/05 00:00:50 Pmh5LjdH
>>520の続き
彼女の手首にリストカットの後らしき傷があることは
初めて会った時から知っていた。
(・・・・な、なんでこんな・・・)
リストカットの画像は何度かインターネットで見たことがある。
それはどれも真横に綺麗に付いた傷だった。
でも彼女の腕は肘のあたりまで
大小の傷が無茶苦茶に付いていた。
リストカットとは思えない斜めについた傷まで無数にあって
どうやったらこんな傷が付くのか・・・・
太陽の光にあたらない肌は透き通るように白くて
それが余計に痛々しかった。
522:1
06/12/05 00:03:01 Pmh5LjdH
>>521の続き
「・・・・・・」
体が震えた。
「昔やらかした傷跡
リストカットって知ってる?」
俺は声が出なくて、何度もうなずいて答えた。
「私子供の頃、親から虐待を受けてて・・・」
彼女がゆっくりと、そして淡々と話し始めた。
523:優しい名無しさん
06/12/05 09:22:09 Dy+ZxIw7
それで?orz
524:優しい名無しさん
06/12/10 01:13:00 PUMOLhjo
ホシュ
やば、おちちゃうよ
525:優しい名無しさん
06/12/11 00:10:17 7Up28MD4
仕事が忙しくて覗いていなかったので、半分位一気に読んだ。
レイキから離れて、かなり生々しい話になってきたね。
続きも楽しみにしています。
526:優しい名無しさん
06/12/13 01:59:04 CbURQNkf
ほす
527:優しい名無しさん
06/12/16 08:25:41 riZQ6bOL
ほす
528:1
06/12/17 12:23:28 spks0HGx
この先あまり書きたくなくて2週間経ってしまいました。
今夜書きます。
529:優しい名無しさん
06/12/17 17:52:48 GHrlhg2m
久々だ!!
今夜楽しみだけど、えぇ~?!
530:優しい名無しさん
06/12/17 18:49:48 D0WFIZtD
あげ
531:1
06/12/17 23:03:22 spks0HGx
>>522の続き
「私子供の頃、親から虐待を受けてて・・・」
彼女がゆっくりと、そして淡々と話し始めた。
彼女は九州の港町で生まれた。
町のほとんどの住人は漁師だったが
父親は普通のサラリーマン、母親は専業主婦をしていた。
生まれて初めての記憶は、4方を柵に囲まれたベビーベッドの中を
満面の笑みで覗き込む両親の顔だった。
532:1
06/12/17 23:04:24 spks0HGx
>>531の続き
両親の笑顔を見ながら彼女は二人に会えた喜びと
これからの未来を不安に感じていた。
”これからの未来に起こる全てを知っている”
そんな感覚を抱いていた。
しかし思うように未来を思い出せなかった。
「”未来を思い出す”って変な表現でしょ
でもその時の私はそう感じたの」
彼女は言った。
533:1
06/12/17 23:05:05 spks0HGx
>>532の続き
幼稚園の記憶はあまり無いと彼女は言った。
いつもボーっとして現実感に乏しく
無口で友達は出来なかった。
”どうして自分はココに居るのか?” ”ココに馴染めない”
そんな違和感をいつも感じていた。
彼女自身は覚えていないが
泣いてばかりいたと後に母親に言われたそうだ。
534:1
06/12/17 23:06:40 spks0HGx
>>533の続き
彼女が5歳の時に産まれた弟をよく可愛がった。
「可愛がると言う表現は適当じゃないかも。
私は不安になると弟をお守りの様に抱きしめて、
弟が見せてくれる笑顔に安心したの」
漠然とした不安をいつも抱えながらも
いつも優しい両親に守られて
それなりに穏やかな毎日だった。
しかしそんな日々は長く続かなかった。
535:1
06/12/17 23:07:38 spks0HGx
>>534の続き
彼女が小学校に上がる頃になると
両親は度々口論するようになった。
両親の喧嘩が絶えないと子供は自分を責めるようになる。
彼女もその例外ではなかった。
喧嘩が始まるといつもすがるように弟を抱きしめた。
弟だけが自分を不安から救ってくれる存在になっていた。
しかし、別れは直ぐに訪れた。
536:1
06/12/17 23:08:27 spks0HGx
>>535の続き
小学2年の時、両親が離婚した。
彼女は母親に、弟は父親に引き取られその後一度も会うことはなかった。
母親と二人、新しいアパートに移ると
母親は彼女を抱きしめて言った。
「これからは二人で仲良くやっていこうね
お母さんなんでも頑張るから」
自分のせいで両親が離婚したのではないかと
不安を抱えていた彼女は
柔らかい母親の笑顔にホッとした。
537:1
06/12/17 23:10:47 spks0HGx
>>536の続き
新しい生活が始まり1年を過ぎた頃から
母親はため息ばかり付くようになっていた。
母親が経済的な理由で悩んでいたこと
腰を痛めて仕事にも支障をきたしていたこと
プライドが高くて誰にも援助を求めなかったことなど
子供だった彼女は知らなかった。
今まで子供には優しかった母親が
次第に彼女にあたるようになった。
それは彼女には耐え難いものだった。
父親、弟と別れ、学校にも馴染めず
母親にすら愛されなかったら自分は独りぼっちになってしまう。
538:1
06/12/17 23:11:42 spks0HGx
>>537の続き
”愛されたい”
彼女は母親に喜んで欲しくて
正月に祖父母や叔父夫婦にもらったお年玉を
母親の誕生日のプレゼントに使った。
どんなプレゼントなら喜んでもらえるか
一生懸命選んだ。
しかし喜んでくれたことはなかった。
539:1
06/12/17 23:12:44 spks0HGx
>>538の続き
「なんでこんな物を買ってくるの!」
血走った目でいつにも増して激しく怒り
そして泣き出す母親に彼女は震えた。
父親とケンカの時も涙を見せなかった母親が泣いている。
泣き続ける母親の背中を
黙って見ているしかなかった。
540:1
06/12/17 23:13:33 spks0HGx
>>539の続き
お年玉も取り上げられるようになり
プレゼントも出来なくなった。
母親がどうしたら喜んでくれるのか
どうしたら自分を愛してくれるのか
いつもそればかり考えていた。
541:優しい名無しさん
06/12/19 20:02:27 hoIMgQpD
ホシュ
542:1
06/12/20 07:53:42 +t1S1cpc
>>540の続き
小学校4年生になると料理を覚え
仕事で疲れて帰ってくる母親のために料理を作った。
「・・・不味い」
母親はいつも吐き捨てるように言った。
「ごめんなさい。今度はもっと上手く作ります・・・」
スーパーに買い物に行く時はいつも
母親の好きな料理
母親の好きな味付け
そればかりを考えた。
543:1
06/12/20 07:55:44 +t1S1cpc
>>542の続き
ある日、母親とそっくりの味付けで作ることが出来た。
(これなら絶対に美味しいって言ってもらえる
絶対に喜んでもらえる)
ワクワクしながら母親の帰りを待った。
帰宅した母親は珍しく機嫌が良かった。
しかし、料理を一口食べて泣きながら怒り出した。
「もういい加減にして!なんでこんなことばかりするの!」
母親は泣きながら狂ったように彼女を叩いた。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい・・・」
震えながら同じ言葉を何度も繰り返した。
544:1
06/12/20 07:58:56 +t1S1cpc
>>543の続き
喜ばせようと努力すればするほど
何故か母親は彼女に厳しくあたった。
(これなら喜んでくれるはず)
何故か自信が有る時ほど
母親は彼女に剥き出しの感情をぶつけた。
肉体的な暴力だけではなく、冬の夜に下着姿で外に閉め出されたこともあった。
当時の彼女はそれが虐待だとは思わなかった。
自分の存在が母親を苦しめている。
漠然と感じていた思いは
いつしか確信へと変わっていった。
545:1
06/12/20 08:00:51 +t1S1cpc
>>544の続き
愛されたい想いは
諦めから絶望に変わった。
自分が大人になれば今よりもっと周りの人を苦しめる。
大人になるのが怖かった。
毎年学校で行われる身体測定で
確実に成長していく自分の体に怯えた。
死ななければという想いに囚われていく。
546:1
06/12/20 08:02:43 +t1S1cpc
>>545の続き
どうやったら死ねるのかを考えるようになり
テレビの2時間ドラマで主人公が自殺するシーンを参考にした。
小学6年の冬休みの最終日。
母親が買い物に出掛けた後、彼女は浴槽に水を溜め始めた。
少しずつ上がってくる水面を無表情で見ている。
窓の外は雨が降っていた。
少し開いた窓の隙間から雨の日の匂いがした。
547:1
06/12/20 08:07:40 +t1S1cpc
>>546の続き
浴槽に水が一杯になると
化粧用のカミソリを右手に持った。
恐怖は無かった。
静けさの中、雨の音だけが響いている。
カミソリで手首を一気に引いた。
痛みは感じなかった。
(これで終わり・・・
お母さん・・・もう大丈夫だよ・・・)
血が滲む手首を水に浸けて
浴槽の縁に頭を付けて命が終わるのを待った。
548:優しい名無しさん
06/12/24 08:10:43 gWZ0j1fN
ほす