06/09/03 01:54:33 XbkAZ7sr
>>257の続き
家に着いて自分の部屋で急に寂しくてしょうがなくなった。
孤独には強いつもりだった。
今までだって一人でやってきたじゃないか。
それにもうすぐ俺は寂しさすら感じなくなる。
薬を入れたスーパーの袋を引っ張り出して中身を確認した。
いざ溜めようと思うとなかなか溜まらないものだ。
こんな使い方していたら駄目だと思いながらも我慢できず
抗不安剤を睡眠薬代わりに10錠程口に放り込んで
寂しさから逃れるように眠った。
259:1
06/09/03 01:55:41 XbkAZ7sr
>>258の続き
次の土曜日、約束の時間を過ぎても俺は自分の部屋にいた。
(そろそろかな)
緊張して心臓がドキドキしていた。
彼女からの電話を待っていた。
「さとる!アンタに電話よ」
階段の下から母親が呼ぶ。
汗で湿った手で受話器を取った。
「何?」
心の動揺を悟られないように
受話器に向かって俺は無愛想に言った。
260:1
06/09/03 01:57:08 XbkAZ7sr
>>259の続き
「どうしたの?約束の時間過ぎてるよ」
心配そうだが落ち着いた声だ。
「もう会いたくないんだ」
「・・・どうして?具合悪いの?」
「もううんざりだ。嫌いなんだよ!顔も見たくない!」
なるべく嫌な言い方をしたつもりだが
声が震えてしまった。
沈黙が流れた。
俺は彼女が怒って言い返してくるのを待っていた。
261:1
06/09/03 01:58:16 XbkAZ7sr
>>260の続き
これでケンカして終わりだ。
俺はそう思っていた。
「そっか」
彼女はそれだけ言って電話を切った。
直ぐに電話が切れてホッとしたが、
あまりにもあっけなくて、それが余計に辛かった。
自分の部屋に戻って、罪悪感や寂しさで
どうしようもなくなった。
262:1
06/09/03 01:59:59 XbkAZ7sr
>>261の続き
どうして何も言い返してこなかったのか。
俺が言ったよりもっと沢山酷いこと言ってくれれば
こんなにも苦しくなかったかもしれない。
涙が出そうだったが泣けば余計に悲しくなりそうで
ベットに顔を押しつけて我慢していた。
それから1時間ほどしてチャイムが鳴った。
母親が階段を上がってくる足音が聞こえる。
263:1
06/09/03 02:02:22 XbkAZ7sr
>>262の続き
「さとる!アンタの友達が来てるわよ」
部屋に入ってきて母親が言う。
「誰?」
不安になって聞いた。
俺の友達は彼女しか居ない。
「いつも電話してくる女の子」
頭がクラクラした。
彼女が怒って家まで乗り込んできたのだ。
寂しいとか言って感傷に浸っている場合じゃなくなった。
264:1
06/09/03 02:06:11 XbkAZ7sr
>>263の続き
この前、彼女が自分の事を怖いと言っていたのを思い出した。
(やっぱり怖い人なんだ!)
窓から逃げ出したい衝動に駆られた。
「居ないって言ってよ」
変な汗をかきながら必死で頼んだ。
「何言ってるの折角来てくれたのに。
あまり待たせちゃ悪いわよ。早く行きなさいよ」
彼女が俺を殺しに来たことを母親は知らない。
265:1
06/09/04 22:28:48 W5BLW5ex
>>264の続き
こんなことじゃ駄目だと思い直して会うことにした。
冷たく彼女を追い返すつもりだ。
それで大きなケンカになれば
それはそれで好都合だと思った。
俺が彼女にしてあげられることは
それくらいしかなかった。
もう俺なんかに関わらない方が良い。
震える足で階段を降りると
廊下の先の玄関に彼女が立っているのが見えた。
266:1
06/09/04 22:29:47 W5BLW5ex
>>265の続き
俺を見つけると穏やかな笑顔で手を振ってきた。
「向かえに来たよ」
明るい声だった。
(えっ?なんで笑顔なの?)
調子が狂う。
その表情を見て思わず俺も顔がほころびそうになったが
慌てて顔を作り直して彼女の前に立った。
267:1
06/09/04 22:31:53 W5BLW5ex
>>266の続き
「何しに来たの」
精一杯冷たい言い方をした。
”バシッ!”
後ろからいきなり頭を叩かれた。
しびれる頭をさすりながら振り向くと
鬼の形相の母親が立っていた。
(なんでココにいるの?)
緊張しすぎていて
母親が後ろからついてきていたことに気付かなかった。
「友達が来てくれたのになんてこと言うの!
女の子泣かしたら私が許さないわよ!」
268:1
06/09/04 22:35:00 W5BLW5ex
>>267の続き
情けなく頭をさすっている俺の姿を見て
彼女が笑いを堪えた顔をしている。
(なんで笑ってるの?
酷いこと言われた後の世間一般の常識的なリアクションじゃないでしょ!)
「さとる君お借りします。」
もうほとんど笑い声になっている。
「どうぞ、こんなので良かったら」
母親が答える。
(自分の息子に”こんなの”は無いでしょ)
269:1
06/09/04 22:36:20 W5BLW5ex
>>268の続き
彼女が俺の手首を掴んで引っ張り
玄関のドアを開けて外に出ようとした。
「ちょ、ちょっと、靴、まだ靴履いてないよ」
転びそうになりながら慌てて靴を履いて
引きずり出されるように外に出た。
(俺格好悪いよ 格好悪すぎるよ・・・Orz)
ドアを閉めてから彼女が悪戯っぽい目で
からかうように小さな声で言った。
「女の子泣かしたら許さないよ」
母親の口調を真似しているつもりらしかったが似ていなかった。
(笑えないよ・・・)
270:1
06/09/04 22:40:40 W5BLW5ex
>>269の続き
「じゃあ行こうか」
「どこに?」
「私の家だよ。約束したでしょ」
そう言って俺の手首を掴んだまま歩き出した。
自分の格好悪さにヘコんでいた。
トボトボと引きずられるようにその後を歩いた。
「どうして俺の家が分かったの?」
「去年の暮れに年賀状送るからって住所教えてもらったじゃない。
さとる君に教えてもらったYahooの地図凄いね。
迷わずに来れたよ。」
そう言ってプリントアウトした地図をカバンから出して俺に見せた。
(はぁ~・・・)
271:1
06/09/04 22:41:48 W5BLW5ex
>>270の続き
駅に向かっていた。
「俺財布持ってないよ。」
「電車賃くらい出してあげるよ。
遠慮しなくて良いよ」
彼女の優しさに呆れていた。
俺が精一杯酷いこと言ったのに
これだけ綺麗さっぱり無視されるとなんとなく面白くない。
「嫌いだって言ったじゃん。顔も見たくないって」
最後の力を振り絞って言った。
272:1
06/09/04 22:43:21 W5BLW5ex
>>271の続き
彼女が立ち止まって振り返った。
ドキッとして心臓が止まりそうになった。
とうとう爆発すると思った。
しかし、彼女は俺の目を真っ直ぐ見て無言で”ニコッ”と笑った。
”私にそんな嘘が通用すると思ってるの?”
彼女は目でそう語り
また何も言わず前を向いて歩き始めた。
今ので完全に戦意を喪失した。
俺なんかが彼女に勝てるはず無いのだ。
ふて腐れて引きずられるように歩いた。
273:1
06/09/04 22:45:30 W5BLW5ex
>>272の続き
季節はもう初夏になっていた。
静かにしていればまだ充分に涼しいが
体を動かせば暑さを感じる。
彼女の額には汗が滲んでいた。
「もういい加減にしてよ!疲れちゃうじゃない。」
彼女が急に怒り出した。
「いつまで私に引っ張らせるつもり?
その足は飾りでついてるの?」
「あっ!ご、ごめん・・・Orz (そんなに怒らないでよ)」
274:1
06/09/09 18:23:35 md45pQRh
なかなか書けなくてすみません。
仕事がバカみたいに忙しくて・・・
社長!早く新しい人入れなさいよ!
dat落ちしそうになっていたら適当に上げて下さい。
なるべく人の居ない時間帯に上げてくれると嬉しいです。
少数の読者のみなさんと細々と楽しみたいので。
これから実家に帰ります。
実家のパソコンで書き込めれば良いですが
おそらく次の書き込みは月曜日になると思われます。
275:優しい名無しさん
06/09/09 18:44:09 KmXa6t4W
いそがないで 良いものを書いてくださいね
276:43
06/09/09 22:51:31 s2e+Nz6r
(・∀・) >>1 さん乙です
277:43
06/09/10 18:52:16 ARBoL/By
(・∀・) 今日もセルフヒーリング & 保守
278:1
06/09/11 20:22:40 ixx0XtFi
>>273の続き
「逃げないから、もう手を離して」
手首を掴み歩き続ける彼女に言った。
これじゃ連行されているみたいだ。
連行されているのか・・・
「じゃあ手をつなごうね」
そう言って手をつないできた。
やわらかくて温かい手。
自分の顔が赤くなるのが分かった。
今の俺は人のぬくもりなんか欲しくなかった。
危険なものの様な気がした。
279:1
06/09/11 20:29:19 ixx0XtFi
>>278の続き
「恥ずかしいから」
そう言ってつないだ手を引いた。
彼女は仕方ないなといった顔をしたが
それほど気にしていない様子だった。
手が離れると急に心細く淋しく感じた。
俺が人のぬくもりを恐れるのは
きっとこんなところにあるのだろう。
永遠に続く事なんて何一つこの世界に無いことくらい
こんな俺だってとっくに気付いている。
テレビでは歌手が甘い歌声で永遠の大安売りをしているが、
そんなものは何処にも無くて
手に入らないものだからこそ歌い続けているんだ。
280:1
06/09/11 20:32:42 ixx0XtFi
>>279の続き
彼女がこの先ずっと側にいて、
同じ気持ちで手を差し伸べてくれる保証など無い。
あらゆる全ては移り変わっていくんだ。
何一つ確かなものなんかなくて
この不安定な世界を生き抜くには確かな自分が必要だった。
最終的に頼れるのは自分自身しか居ない。
誰かを大切に思ったり
友情を育むのは決して悪い事なんかじゃない。
人生の豊かにもしてくれるだろう。
しかし、それが純粋で健全なものであるためには
何があってもしっかりと自分の足で立ち続ける強さが必要だった。
自分の足下すらおぼつかない俺には
人のぬくもりは時限爆弾にしかならない。
もうすぐ逝こうとしている俺には関係無い事だが
そんなことを思いながらうつむいて歩き続けた。
281:1
06/09/11 20:56:10 ixx0XtFi
>>280の続き
気がつくと彼女は数メートル後ろを歩く俺を待っていた。
「も~っ!」
”しょうがないな”そんな言い方で近づいてきてまた俺と手をつないだ。
体温を感じるとホッと安心して肩の力が抜けるようだった。
俺はもう逆らわなかった。
いったい俺はどうしたいんだよ・・・。
今の俺にはもっと考えなくちゃならないことがあった。
彼女がしてくるであろう質問になんて答えたらいいのか。
それが問題だった。
”何故約束を破ろうとしたの?”
”何故ケンカを売るような事を言ったの?”
それに俺はどうやって答えたらいいのか。
282:1
06/09/11 21:00:48 ixx0XtFi
>>281の続き
俺と関われば彼女を疲れさせるだけだった。
このままヒーリングを続け、それでも俺が自殺すれば
責任を感じるかもしれない。
これ以上巻き込みたくなかった。
俺を気遣ってくれればくれるほど離れなければならないと思った。
彼女が俺の心を何処まで読んでいるのか分からないが
まさかこんなこと正直に言うわけにもいかなかった。
それに、考えれば考えるほど
彼女の為だけに関わりを絶とうとしていたのかすら
疑わしく思えてきた。
283:優しい名無しさん
06/09/12 06:38:16 t0GYMRip
1さんへ
物語の途中で申し訳ないんですが レイキの治療を受けたいのですが
関西ではどこがお勧めという様なところありませんか?
そういう事は聞かれてはこまるというのならばほっといてくれて結構です
物語の方に専念してください
284:優しい名無しさん
06/09/12 06:45:18 dKEmKzI7
レイキって何ですか
285:1
06/09/12 23:41:23 0gqtxWUx
オススメと言うわけでは無いですが
関西で興味があるのは現代霊気ですね。
俺は遠いので断念しました。
代表の土居さんって方が本を出しているので
読んでみるのも良いと思います。
ティーチャーの中にも人間性に問題のある人も結構居るようです。
誰かの紹介より、自分の直感の方が頼れる場合も多々あります。
ご自分の直感に従って、相性の合う、
信頼できるティーチャーが見つかると良いですね。
286:1
06/09/12 23:47:08 0gqtxWUx
>>282の続き
駅が近づくと「喉が渇いたね」と言って
小さなスーパーに入っていった。
彼女は真っ直ぐに店員の所に行き
「冷やしていないミネラルウォーターありかすか?」と聞く。
(・・・なんでよ?)
生ぬるい水を2本買って一本を俺にくれた。
美味しそうに飲んでいる彼女の隣で
俺は飲む気になれずペットボトルとにらめっこしていた。
「飲まないの?」
「う~ん・・・」
もらったものにケチを付けるのも気が引ける。
287:1
06/09/12 23:48:36 0gqtxWUx
>>286の続き
気が引けるが
「冷たいのに換えてもらっても良いかな?」
そう言ってもう一度店の中に入ろうとした。
「さとる君はあまり冷たい物飲まない方が良いんだよ」
彼女の家でもいつも生ぬるいミネラルウォーターを出されていた。
「どうして?」
「冷え症だから」
「俺は冷え症じゃないよ」
どちらかと言うと暑がりだった。
よく顔が火照っている。
「さとる君は立派な冷え症だよ」
「・・・だから、俺は冷え症じゃないって」
「良いから飲んでよ」
仕方なく飲んだ。
(どうせ買うならギンギンに冷えたコーラでも買ってくれればいいのに)
だんだん俺も図々しくなってくる。
288:1
06/09/12 23:50:21 0gqtxWUx
>>287の続き
電車の中でも手をつないだまま
彼女は何も話そうとしなかった。
落ち着いた穏やかな顔をしている。
彼女の温かい手に心地よさを感じていた。
手を離したくなくなっている自分に、俺は一人苦悩している。
(俺なんか放っておいてよ
これじゃ共倒れになるよ)
289:1
06/09/12 23:52:14 0gqtxWUx
>>288の続き
途中ケーキを買ってアパートに着いた。
「誰かさんのせいでこんな時間になっちゃった」
明るい声で俺をからかう。
(誰かさんって俺しか居ないじゃない)
「紅茶とコーヒーどっちが良い?」
いちいち聞かないでよ。どうせ・・・
「コーヒー」
俺はわざと答えた。
「家にコーヒーが無いの知らないの?」
「知ってるよ」
「じゃあ紅茶ね」
まったく!なんの会話だよ。
290:1
06/09/12 23:53:57 0gqtxWUx
>>289の続き
「美味しそうだよね。これ。」
嬉しそうにケーキの箱を覗き込んでる。
彼女と一緒に居ると調子が狂いまくる・・・Orz。
ケーキを食べながら俺は目の前の不思議な生き物を観察していた。
「な~に?」
じっと見ている俺に首をかしげている。
「どうして何も聞かないの?」
聞かれても俺は適当な答えをまだ用意できていなかったが、
今日のことを何も質問してこないのが不思議でたまらなかった。
291:1
06/09/12 23:57:01 0gqtxWUx
>>290の続き
「混乱してる人に何を聞いても仕方ないでしょ。
人の心は複雑に出来てるからね。
そんな時に聞いても辻褄合わせの言葉しか出てこないでしょ。」
自分の顔が真っ赤になるのが分かった。
「理由とか動機とか、意味とか、
無理矢理言葉にすると嘘になっちゃうことも良くある話で」
その通りだった。
何もかもお見通しだ。
俺は素っ裸でパンツまで脱がされた様な気分になって恥ずかしくなった。
292:1
06/09/12 23:58:27 0gqtxWUx
>>291の続き
「これじゃ俺フリチンじゃない」
恥ずかしさを笑って誤魔化すしか無かった。
「なにそれ?」彼女も笑っている。
「俺のことなんでも分かっちゃうんだね」
「分からないことの方が多いよ」
彼女はそう言っているが
俺はフリチン気分が抜けない。
293:1
06/09/13 00:00:16 0gqtxWUx
>>292の続き
ケーキを食べ終わると
「パソコン教えて」と言って席を立った。
俺はそのまま座っていた。
「誰かさんのせいで遅くなっちゃったから早く」
立とうとしない俺に振り向いていった。
「もう良いよ。」
何をどう言って良いか分からなくてそれだけ言った。
彼女は困った顔をして俺を見ている。
294:1
06/09/13 00:01:51 a3cbGkxJ
>>293の続き
「もう良いから」
「これも?」
”これも嘘だと気付いているの”そう言う意味だと直ぐに分かった。
俺は黙ってうなずいた。
「全部?」
全部かどうか分からなかったが、それにも頷いて見せた。
「そっか。それで今日来なかったんだね。」
彼女の表情が少し陰った。
俺が嘘に気付いていることに彼女は気付かなかったのだろうか?
295:1
06/09/13 00:04:19 0gqtxWUx
>>294の続き
彼女はため息をついて座り直した。
困った顔で俺を見ている。言葉を探している様だった。
(だからもう終わりなんだよ)
彼女の目を見て俺は心の中でささやいた。
「あんな高い買い物しちゃって」
俺はパソコンが置いてある彼女の部屋の方を向いて言った。
「パソコンの購入は前から考えていたんだよ。
それに教えてもらいたかったのも本当だよ。」
そう言う彼女の目の奥を覗き込んだ。
嘘を付いている様には見えなかった。
俺はそれを聞いて少しホッとした。
パソコンを買ったのも、教えて欲しいと言ったのも
全てヒーリングだけが目的だと俺は思っていたからだ。
296:1
06/09/13 00:07:00 0gqtxWUx
>>295の続き
「でもね。私さとる君が思ってるほどバカじゃないよ。
物覚えの悪い私を見て呆れていたでしょ!」
彼女は俺を非難するように言う。
「時間稼ぎするために演技していた方が悪い」
俺はそう言いながらも、そんなことをさせてしまった自分が悪いのが分かっていた。
「失礼しちゃうよね。でもそれなりに時間稼ぎできた。
本当はもう少し引っ張りたかったんだけど。」
「もう終わりだね」
嘘と分かった以上、俺にはもうココに来る理由がない。
「何を言っているの?
今日からが本当の始まりだよ。
ヒーリングの効果が出始めているのに気付いてる?」
気付くも何も俺は何も変わっていない。
俺は相変わらず俺のままだ。
297:優しい名無しさん
06/09/13 19:47:35 1VDKjO/R
だからレイキって何なのさ!?
298:優しい名無しさん
06/09/13 20:12:59 b0ZCrBcE
冷気
299:優しい名無しさん
06/09/13 20:29:16 1VDKjO/R
ああ。霊気ね。
なんかの小説のタイトルかとオモテタ(^_^;)
300:優しい名無しさん
06/09/13 20:50:08 PP1NjjSj
(`・д・´)わからん!
301:優しい名無しさん
06/09/13 20:57:00 b0ZCrBcE
夏の終りを告げる冷気
302:43
06/09/16 12:04:14 JKskIplH
(・∀・)保守
303:優しい名無しさん
06/09/18 10:04:28 lJc/El0K
またまたお忙しいのかな?
続き楽しみにしてますね。
304:1
06/09/19 09:44:43 cwWHYo7t
すみません
もうちょっと待って下さい
頭の中では最後までほとんど出来上がってるんだけど
整理して文章にするのが困難で・・・
305:43
06/09/20 03:21:08 QYowDyjm
(・∀・)保守
306:優しい名無しさん
06/09/20 03:30:11 DjEgyyOO
父さん、霊気を感じます!
307:優しい名無しさん
06/09/21 01:32:07 GDs0HGRj
たのしみだ。ゆっくり待つよ。
308:43
06/09/23 00:53:37 1lufNNsY
(・∀・)保守
309:1
06/09/23 11:53:58 Y4CXoB1H
う~ん・・・見切り発車的に書き始めます。
しばらく我慢して読んで下さい。
310:1
06/09/23 11:55:03 Y4CXoB1H
>>296の続き
「先週私を飲みに誘ってくれたし
さとる君笑ってたでしょ。
それって心が動き出したってことだよ]
「・・・?」
「それに私のこと怒鳴ったし
今日だってケンカを売ってきた。
一月前のさとる君は怒ることすら出来なかったでしょ
怒るのだってパワーが必要なんだよ。
それだけのパワーが戻ってきたって事だよ」
自分の事なのに何故か一ヶ月前の自分の姿が思い出せなかった。
311:1
06/09/23 11:57:35 Y4CXoB1H
>>310の続き
「俺、一月前どんなだった?」
「疲れきっちゃって今にも死にそうだった。」
(今だって死にそうなのに・・・)
「さとる君は自分自身で変わりたいと思っているでしょ。
私にはそれを手伝えるだけの経験とノウハウがあるよ。」
自信たっぷりといった言い方だったが
それが余計に不安にさせた。
それにとっくに自分を変えることを諦めてもいた。
「俺、今まで自分を変えたくて色々やってきたんだよ。
カウンセリングも受けたし、鍼灸にも行った。
カイロプラクティックにも通った。
でも、どれもこれも効果が無かったんだ。」
312:1
06/09/23 11:58:30 Y4CXoB1H
>>311の続き
こんな話を誰にもしたことが無かった。
自分の弱さを晒すようで情けない気がした。
でも彼女の気持ちに答えるには正直に話すしかなかった。
話すうちに気持が沈んでいった。
「どれくらい通ったの?」
「3,4ヶ月かな」
「先生の力量にも寄るけど、それなりに効果が出ていたけど
それを本人が気付かなくて止めてしまった可能性もあるよ。」
彼女の話では、その人に合った治療法でも
本人が効果を実感するまで時間が掛かる場合も少なくないらしい。
そのまま続けていれば
良い結果がでたかもしれないと彼女は言う。
313:1
06/09/23 11:59:29 Y4CXoB1H
>>312の続き
西洋薬に慣れている現代人は
頭痛薬や胃腸薬のように直ぐに結果が出ないと
効果がないと考えやすいのだそうだ。
俺はどう考えたら良いのか分からなくて黙って聞いていた。
「ここにも色々なタイプの人が来るけど
鈍感な人と、さとる君の様な頭でっかちは効果を実感するまでに時間が掛かるんだよ。」
鈍感な人は分かるが、頭でっかちは関係ないような気がした。
真顔でそんな事を言われるといい加減傷つく。
(頭でっかちって言いたいだけなんじゃないの?)
「最初にイメージを作っちゃってるから
それに当てはまらないと何も変わっていないと考えやすいの。
ヒーリング受けた後、好転反応も出ているはずだよ」
314:1
06/09/23 12:00:20 Y4CXoB1H
>>313の続き
「コウテンハンノウ?」
「一番最初に説明したと思うけど、
健康を取り戻す過程で、治療中に様々な症状が出るのを好転反応って言うんだよ。 」
そう言えばそんな事を言っていたような気もするが、
俺は時々人の話を聞いていない。
「さとる君の場合はイライラしたり
下痢や吐き気を感じるんじゃないかな」
「あっ!料理が原因じゃなかったの?」
言ってからしまったと思った。
315:1
06/09/23 12:01:01 Y4CXoB1H
>>314の続き
「私の作った料理のせいだと思っていたの?」
「あっ、いや・・・それは・・・」
焦ってしどろもどろになる。
「ひど~~~い!
私の作った美味しい料理を毒物扱い?」
プリプリ怒っている彼女に俺はなんて言えばいいのか・・・
「ごめ~ん・・・」
頭を抱えながら力無く謝る。
316:1
06/09/23 12:02:20 Y4CXoB1H
>>315の続き
少しずつ彼女のペースにはまっていく。
このまま行けばココに通い続けることになる。
俺はどうしても不安だった。
「じゃあ、ヒーリングやろうか」
「ちょ、ちょっと」 立ち上がろうとする彼女を慌てて引き留めた。
「んっ!?」
「俺、変われないかもしれないよ」
「私は良い方向に向かっていると思うけど
万が一何も効果が出なくても何も失う物はないでしょ?」
317:1
06/09/23 12:06:59 Y4CXoB1H
>>316の続き
確かに俺にとっては計画を少し先延ばしにすれば良いだけのことだった。
しかし彼女にとっては何一つプラスにならない。
ココに通い続けて俺が変わらなかったら彼女は・・・
「私はさとる君が思っているよりずっと強いの。
何があっても平気だよ。
私に気を使ったり、心配してるなら10万年早いよ。
そういうの生意気って言うんだよ。」
なんか憎ったらしい・・・
俺の事を思ってそんな言い方しているのが分かっていても
パブロフの犬並みにカチンと来るのが人情と言うのものだ。
彼女の心配をしている自分がバカバカしくなってくる。
彼女は時々俺を怒らせるような言い方を敢えてする。
それが常套手段だと分かっていても気づくと
いつも術中にはまっていた。
318:1
06/09/23 12:09:45 Y4CXoB1H
>>317の続き
仕事部屋の一角に縦横に線が書かれている壁がある。
その前に立たされた。
彼女は今時珍しいポラロイドカメラを出して
記念撮影だと言って正面と横向きで写真を一枚ずつ撮影した。
「今度は出来るだけ体の力を抜いて」
そう言ってまた横と正面から一枚ずつ撮影する。
「私も撮って」
今度は俺が彼女を撮影した。
何の意味があるのか聞いたら後で説明すると言うことだった。
いつも通りのヒーリングが終わり、彼女の部屋に移った。
319:1
06/09/23 12:11:44 Y4CXoB1H
>>318の続き
「自分が真っ直ぐ立てていないの気付いてる?」
「あまり考えたこと無いな」
「歩いているより立ってるだけの方が疲れるでしょ。
腰が前に引っ張られるような感覚無い?」
思い当たるところがあった。
”立ち方が分からない”そんな感じがいつもしていた。
彼女は先ほど撮った数枚の写真を俺に見せた。
320:1
06/09/23 12:14:17 Y4CXoB1H
>>319の続き
「体の力を抜いた状態だと特に腰が前に出ちゃってるでしょ。
左右の骨格の歪みは無いけど、骨盤が傾いてるからこんな姿勢になっちゃうの。
気が上がって下に下がらない原因の一つにもなってる。
下半身のバランスが悪いから
そのバランスを取るために上半身に無駄な力が入る。
そうすると気が上がりやすくなるの。
気が上がると心に余裕が持てなかったり
緊張しやすくなったりするんだよ。」
いつになく真剣な顔で説明をしている。
321:1
06/09/23 12:27:25 Y4CXoB1H
>>320の続き
壁に書かれた線は姿勢の歪みを見るためのものだった。
そう言えばヒーリングを受けた3回目か4回目、
いつもはヒーリング中眠ってしまうが
その時は半分起きて半分眠ったような状態だった。
彼女は俺の背骨を指で触っていた。
”マッサージにしては中途半端だな”とぼんやりと思っていた。
今思えばあれは骨格を見ていたんだ。
以前カイロプラクティックに通っていた時も
同じ様な事をされていた。
「これが正しい姿勢」
そう言って彼女が写っている写真を見せられた。
真っ直ぐで綺麗な姿勢だった。
(意外とスタイル良いんだな)
「そこで、今日から宿題出すから」
「宿題・・・?」
322:43
06/09/24 10:10:09 3bN8iQDW
(・∀・)保守
323:1
06/09/25 22:24:30 Iv7/UwnM
>>321の続き
箇条書きで何か書かれたメモ用紙を渡された。
-------------
○真向法(朝晩)
○読書(一週間で読み切る)
○フラワーエッセンスを使う
○良く噛んで食べる(最低30回以上)
-------------
「なんか大変そうだね」
少しうんざりしながら言った。
324:1
06/09/25 22:25:31 Iv7/UwnM
>>323の続き
「読書以外は大したこと無いよ
それほど時間も掛からないし」
「お客さんにもこの宿題を出してるの?」
「人それぞれ抱えている問題が違うから全員メニューは違うの。
全てを投げ出してひたすら休む事を宿題にする場合もあるし
お客さんによっては宿題を出さない事もあるよ。」
325:1
06/09/25 22:26:35 Iv7/UwnM
>>324の続き
「これ何?」
メモ用紙に書かれた”真向法”を指さして言った。
まるで宗教団体の名前の様だ。
「真向法(まっこうほう)と言う体操。」
そう言ってやり方を教えてくれた。
真向法などと仰々しい名前の割には
ただの4種類の柔軟体操で、
俺の体が硬いことを除けば拍子抜けするほど簡単だった。
326:1
06/09/25 22:27:55 Iv7/UwnM
>>325の続き
これは姿勢の矯正と血流の流れを良くするのが目的で
精神的にも大きな効果があるのだそうだ。
この体操だけで心身の健康を取り戻す人も多いらしい。
「次は今週読む本を渡すね」
そう言って押入を開けた。
部屋の東側の壁一面が押入れになっている。
一畳半の幅だ。
その下の段がすべて本棚になっていた。
半畳の幅の本棚が横に三つ並んでいる。
キャスター付の手前の本棚を引くと奥にもう一つ本棚があった。
合計六つの本棚に本がビッシリ詰まっている。
327:1
06/09/25 22:28:43 Iv7/UwnM
>>326の続き
左側の本棚には各種医学書。
西洋医学や東洋医学、精神医学、漢方医学
カウンセリングなどが置いてあり。
中央にはアロマテラピーやカイロプラクティックなど
いわゆる民間療法
右側には宗教書や小説、雑誌類が置いてあった。
あまりの本の量に俺は唖然としていた。
328:1
06/09/25 22:29:45 Iv7/UwnM
>>327の続き
「これは・・・」
「全部仕事で使ってる本だよ。
これでも大分整理したんだけどね。」
「ヒーリングするのにどうしてこんなに本が必要なの?」
素朴な疑問だった。
「お客さんによって抱えている問題が違うからね。
タイプも人それぞれ違うから色々と知識が必要になってくるの。」
329:1
06/09/25 22:30:52 Iv7/UwnM
>>328の続き
「これ全部読んだの?」
「うん、読んだよ。
医学事典は必要なところを読むだけだけど。
それ以外はね」
「でもどうして歯科の本まで?」
何故か歯科の本が置いてあった。
「心身の不調が噛み合わせとかが
影響している場合もあるから。」
「ヒーリングで噛み合わせが直るの???」
330:1
06/09/25 22:32:05 Iv7/UwnM
>>329の続き
「ヒーリングでなんでもかんでも直ってくれれば私も苦労しないんだけど
残念ながら万能じゃないの。
歯が原因だと疑われる人には歯医者を紹介してる。
ヒーリングを何でも願いを叶えてくれる魔法か何かと
勘違いしているお客さんも結構居て困っちゃうの。
明らかに何か重大な疾患があると思われるのに
病院で検査もしない人も居て・・・
体調が悪ければまず病院で検査するべきでしょ。
そういうお客さんの場合は
病院に連れて行くのが私の仕事になるの。
『ここに来る前にもっとやることがある
順番が逆だ』って説教して
手遅れになる前に嫌がるのを無理矢理。
ヒーリングを受けるなら
病院の治療と併用した方が良いからって言って。」
331:1
06/09/25 22:35:41 Iv7/UwnM
【物語の途中ですが1です】
こんな調子のやりとりが
しばらく続きますが頑張って読んで下さい。
それとココに登場している彼女は
一般的なレイキティーチャーとは違います。
レイキの治療やセミナーを受ける際は
ご自分で情報収集して自己責任でお願いします。
俺はレイキをそれなりに使えると思っていますが
賛否両論があるのが現実です。
332:43
06/09/26 01:13:37 MT+PMC+z
真向法は私もやったことがあります。
今日から再開してみようかな・・・
333:43
06/09/28 01:07:11 TVmUzKyI
(・∀・)保守
334:1
06/09/30 14:28:17 Zfomkd7j
真向法はかなり良いですよ
時間もお金も掛からずお手軽で
効果は絶大です
335:1
06/09/30 14:29:52 Zfomkd7j
>>330の続き
「それでお客さん減らないの?」
なんか心配になってくる。
「どんな形でもお客さんが最も必要とすることをしてあげれば
また他のお客さんを紹介してくれるよ。
何も宣伝しなくてもやっていけるのは
ほとんどはお客さんからの紹介のお陰なの」
口コミで経営が成り立つなら
それだけの実力があるのだろうと思った。
336:1
06/09/30 14:30:55 Zfomkd7j
>>335の続き
「こっちは何?」
押入の左上の棚に無数のファイルがあった。
「お客さんの情報、カルテみたいな物だよ」
「もしかして俺のカルテもあったりするの?」
「さとる君はお客さんじゃないから作ってないよ。
でも私のココとココにちゃんとあるから安心して」
頭と胸に手を当てて言った。
(凄いな。この仕事に本気なんだ)
彼女の仕事に対するイメージが変わっていった。
337:1
06/09/30 14:41:55 Zfomkd7j
>>336の続き
「今週の本はコレ」
2冊の本を手渡された。
一冊は真向法の本で、もう一冊は冷え症の本だった。
真向法は分かるが、冷え症って・・・
「俺、冷え症じゃないと思うよ。どちらかと言うと暑がりで・・・」
遠慮がちに言った。
「本人が自覚していない冷え症って言うのがあるの。
そう言うの”隠れ冷え症”って言うんだよ」
338:1
06/09/30 14:43:04 Zfomkd7j
>>337の続き
漢方医学では人の体質を陰と陽に分けるらしい。
俺は完全に陰に傾きすぎているそうだ。
体を温めるだけで日々の生活がもっと楽になると言う。
彼女は体の冷えが万病の元で
いかに心身に悪影響を与えるかを
真剣な顔で説明してくれた。
真向法を宿題に出したのも姿勢の矯正だけではなく
冷え症を改善する目的もあるのだそうだ。
339:1
06/09/30 14:46:49 Zfomkd7j
>>338の続き
彼女の知識量に驚いていたが
いまいちピンと来なかった。
今まで冷え症で悩んだことが全くないからだ。
「特に内蔵が冷えてるの。自分のお腹触ってみて」
俺は言われたとおり下着の上からお腹を触った。
「その感覚覚えておいてね」
今度は俺の腕を掴み、
彼女の服の中に入れた。
(何やってるんだよアンタ!!!)
340:1
06/09/30 14:58:50 Zfomkd7j
>>339の続き
「どお?私のお腹の方が温かいでしょ」
下着の上からお腹を触らせて言う。
頭がクラクラした。
こんな俺でも一応生物学上は男だ。
夢中に成っているのは分かるが何をやってるのよ・・・
俺のビックリした顔を見て彼女も気付いたようだ。
ハッとして顔を真っ赤にした。
341:1
06/09/30 15:00:23 Zfomkd7j
>>340の続き
「ちょっと無防備過ぎるよ」
俺の辞書に”押し倒す”と言う文字はない。
意気地が無いだけだが・・・。
しかし彼女から見れば俺だっていつ性欲が爆発しても
おかしくない若い男だ。
「ごめん、いつも女性のお客さん相手にしてるからそのノリで・・・
私のお腹の体温と比べてもらおうと思ったの。
さとる君は特にお腹が冷えてるから・・・」
顔を赤くしたまま小さく言った。
342:1
06/10/01 19:01:31 HtxecOr1
>>341の続き
「お腹の体温の違い分かった?」
分かるわけ無かった。
首を傾げて答えた。
「う~ん・・・」
もう一度やろうか迷っている様子だった。
「も、もう分かったから
本読むから」
夢中になっている彼女が何をしだすか分からない。
343:1
06/10/01 19:02:39 HtxecOr1
>>342の続き
「来週までに読んでおいてね」
「う、うん」
「この本を読むにあたって一番大切なこと分かる?」
「内容を良く理解することでしょ」
それ以外の正解があるとは思えない。
「違うよ。一週間で読みきること」
「内容の把握よりも」
「そう、一週間で読みきることが一番大事」
「・・・」
釈然としないまま本を借りて帰った。
344:1
06/10/01 19:03:59 HtxecOr1
>>343の続き
次の日の日曜日。母親と二人きりで朝食を取っていた。
二人兄弟の兄は、既に所帯を持ち独立しており
父親は出張で今日は居なかった。
「昨日の女の子よく電話してくるね。」
母親が興味深そうに聞いてきた。
「そうだね」
「あの子まだ未成年でしょ」
俺はまた何か説教が始まるんじゃないかと
嫌な気分になる。
345:1
06/10/01 19:05:54 HtxecOr1
>>344の続き
(彼女が仮に未成年だったとしても
悪戯に傷つけるようなことはしない。
少しは自分の息子を信用したらどうなんだ。)
勝手に叱られた気分になって
心の中で反論する。
「ああ見えて俺より年上だよ」
面倒臭いと思いながらも仕方なく答える。
「あらっ!随分可愛らしい顔しているのね」
母親は随分驚いていた。
346:1
06/10/01 19:07:19 HtxecOr1
>>345の続き
「そういえば、アンタ尻に敷かれている感じするもんね」
(放っておいてくれないかな)
「どれ位になるの?」
「もうずぐ1年」
「随分続いてるのね」
感心したように言う。
俺はここで母親が勘違いしていることに気付いた。
347:1
06/10/01 19:09:38 HtxecOr1
>>346の続き
「友達だよ」
「ただの友達?」
”ただの”と言う言葉が引っ掛かったが「そうだよ」と答えた。
ただの友達なんかじゃない。
俺の唯一の友達だ。
「良い子そうね」
「いい人だよ」
強引で乱暴で、時に意地悪で、口が悪くて嘘つきだけど
信用できるいい人であることに間違いなかった。
348:1
06/10/01 19:11:46 HtxecOr1
>>347の続き
「よく会ってるみたいじゃない」
母親はただの友達というのが
納得できないみたいだ。
「そうだね」
こんな俺に同情して
時間を割いてくれる奇特な人だ。
そんなことを説明するのも面倒だし
説明しだせば俺が自分自身のことで
悩み苦しんでいることまで
話さなきゃならなくなる。
349:1
06/10/01 19:13:01 HtxecOr1
>>348の続き
親には心療内科に通っていることも話していない。
薬だって隠れて飲んでいた。
薬の袋も名前が分からなくなるまで細かくちぎって
いつも駅のゴミ箱に捨てていた。
「アンタはあの子の事どう思っているの?」
「・・・・・考えたこと無いな」正直に答えた。
誰かを好きになっても意味がない。
辛い思いをするだけだ。
350:1
06/10/01 19:15:03 HtxecOr1
>>349の続き
皿に残っていた料理を飲み込むように食べて
逃げるように自分の部屋に向かった。
放っておいて欲しかった。
家に居る時は、
食事とトイレ以外は2階の自分の部屋に居た。
本当は食事も部屋で取りたかったが、
両親が許すはずもなかった。
親と顔を合わせるのが苦痛だった。
俺は親を恨んでいた。
自分をこんなにしてしまった事を。
351:1
06/10/01 19:17:26 HtxecOr1
>>350の続き
物心付いた時から母親は俺に向かって
「困った子ね~」「駄目な子ね~」と
口癖の様に言っていた。
それはきっと悪意のない
特別な意味もない
軽い気持で言った言葉だろう。
あるいは愛情表現ですらあったのかもしれない。
しかし幼かった俺はその言葉を正面から
受け取ってしまった。
352:1
06/10/01 19:19:04 HtxecOr1
>>351の続き
何か悪いことをして
それについて怒られるならまだ良い。
それは俺自身ではなく
俺の行為を否定しているだけだからだ。
しかし理由の曖昧な状態で
”困った子””駄目な子”と言われれば
自分の存在自体を否定されている様に感じる。
”俺は何をやっても駄目で
周りに迷惑を掛ける困ったヤツだ”
そういった自己イメージを気付いたら自然に持っていた。
353:1
06/10/01 19:20:40 HtxecOr1
>>352の続き
父親は普段小言をあまり言わなかったが
時に厳しく叱った。
いつも感情をぶつけるような言い方で
説明が一切無かった。
俺はいったい何がどう間違ったのか
次にどうすれば良いのか分からなかった。
だから何度も何度も同じことを繰り返し
その度に怒鳴られた。
354:1
06/10/01 19:23:02 HtxecOr1
>>353の続き
子供の頃(何歳くらいかは思い出せない。幼稚園か、もっと前か・・・)
よく家族で出掛けた。
家族と外出した思い出は
いつもトイレを我慢している記憶だった。
「オシッコしたい」
俺がそう言うと父親が怒鳴り
母親が呆れた顔をする。
幼い俺は家族と出かけた時に
トイレに行きたくなるのが悪いことなんだと思った。
(ぼくが駄目でわるい子だからオシッコしたくなるんだ)
355:1
06/10/02 22:12:00 DHQUENNV
>>354の続き
でもいつも我慢できなくなり
「オシッコしたい」と言って
怒鳴られることを何度も繰り返した。
そしてある日やっと分かった。
家族と日帰りで出掛けて
昼食を取るために飲食店に入った。
俺は怒られるのが怖くて
必死にトイレを我慢しながら
無表情に料理を口に運ぶ。
店を出て30分もしないうちに
我慢の限界に来た。
恐る恐るトイレに行きたいことを言った。
356:1
06/10/02 22:13:05 DHQUENNV
>>355の続き
この時は父親より先に母親が怒った。
「どうしてオシッコしたいなら
さっきの店に居る時に言わないの!」
俺が怒られていたのは
トイレに行きたいと言うタイミングの問題だった。
そんなタイミングや
怒られている意味なんて幼い子供には
ちゃんと説明しなきゃ分からない。
全てにおいてこんな感じだった。
357:1
06/10/02 22:14:48 DHQUENNV
>>356の続き
父親からは意味の分からない状態で怒鳴られ
母親からは駄目な子、困った子と言われ続ければ
どこか歪んでしまうのも仕方がない。
それでも幼い俺には両親はいつも正しく
間違っているのは俺だった。
それが小学生の高学年にもなれば
漠然とした違和感を感じ始める。
中学高校と成長すれば
偉そうにしていた親がスキだらけで
実は間違いだらけだった事も分かってくる。
358:1
06/10/02 22:16:12 DHQUENNV
>>357の続き
(もっとまともな育て方をしてくれれば
こんな俺じゃなかったはずだ)
いつの頃からかそう思うようになっていった。
そうやって親を恨んでいる自分が
格好悪く、情けなくて嫌いだった。
俺はもう大人だ。
自分の人生には自分で責任を持たなければならない。
無邪気に親を恨んでも許される歳ではない。
359:1
06/10/02 22:17:53 DHQUENNV
>>358の続き
結局は、まともに生きられない事を
親を非難することで慰めているだけだった。
いつかそんな思いからも卒業しなければならない。
そう考えてみても
親を恨む気持はいつまでも消えなかった。
360:1
06/10/03 21:27:18 fc7d+0RT
>>359の続き
部屋に籠もっていても特にやることもなかった。
天井を見上げながら、あれこれと考えを巡らせたり、
パソコンでネットサーフィンして時間を潰していた。
両親が居ない時だけ居間に下り、
テレビを見るのが家に居る時のささやかな楽しみだった。
気持ばかりが焦っていても何をしていいか分からない。
本当にゴミみたいな生活だ。
361:1
06/10/03 21:28:19 fc7d+0RT
>>360の続き
あまり気が進まなかったが渡された本を読み始めた。
他に特にやることもないし
彼女が俺のために選んでくれた本だ。
宿題をやらなければ彼女の気持ちを裏切ることにもなる。
本を読み慣れていないので
ただ文字は追いかけているだけだ。
俺は健康オタクじゃないから面白くもなんともない。
興味がなければ余計に頭に入ってこない。
362:1
06/10/03 21:29:43 fc7d+0RT
>>361の続き
どうやら体の冷えが
自律神経失調症や心身症の原因になることは
見出しから分かったが、内容はさっぱりだ。
これじゃ本を読んでいる意味も無いと思うが
彼女は内容の把握は最重要課題じゃ無いと言う。
一週間で読み切ることが一番大事などと
とても正気の沙汰とは思えなかったが仕方がない。
363:1
06/10/03 21:31:09 fc7d+0RT
>>362の続き
朝晩の真向法も約束通りやり始めた。
3日目、効果が現れた。
ただの柔軟体操だとバカにしていたが
ハッキリとした効果を実感した。
立っているのが前より明らかに楽になったのだ。
彼女の言ったとおりだった。
364:1
06/10/03 21:32:01 fc7d+0RT
>>363の続き
下半身がしっかりすることで上半身の力が自然に抜けやすくなり
いくらかリラックスしやすくなったのだ。
背筋が伸びて身長が2,3センチ高くなったような感覚もある。
もちろん実際背が伸びている訳ではないだろう。
俺は嬉しくなって彼女にメールを送った。
”凄いよ。凄すぎるよ”と。
次の日彼女から返信があった。
意外にもそっけないものだった。
365:43
06/10/04 00:34:47 iVAoIj/Q
>>334
サンクスコ
今日から再開します。
366:優しい名無しさん
06/10/04 19:08:54 VI4lj00F
URLリンク(www.google.co.jp)
367:1
06/10/09 02:17:04 1HEGAgmQ
>>364の続き
-------
喜びすぎ!
あまり今喜んじゃうと後で裏切られた気分になるから、
喜ぶのは3ヶ月後、半年後だから淡々と続けることが大事だよ
それより今度の土曜日もちゃんと来てね
もし来なかったら、さとる君の家に乗り込んで
窓ガラス全部叩き割るからね
分かった?
-------
368:1
06/10/09 02:17:46 1HEGAgmQ
>>367の続き
そのメールを見てガッカリした。
一緒に喜んでくれると思っていたのに
裏切られた気分になるってどういう意味なんだろう。
しかも脅迫文付きだ・・・Orz
369:1
06/10/09 02:18:57 1HEGAgmQ
>>368の続き
それも彼女の言ったとおりになった。
3日目、4日目驚くほどの効果を感じたのに
5日、6日と経つうちに効果が薄れてきたのだ。
土曜日それを彼女に話したら
それについて丁寧に説明してくれた。
370:1
06/10/09 02:20:33 1HEGAgmQ
>>369の続き
「その状態に慣れてしまって効果が薄れたように感じるだけだよ
真夏の炎天下に日陰に入ると涼しさを感じるでしょ
だけどしばらくそこに居ると慣れてしまって
さっきより快適なところに居ることを忘れていく
それに似ているよ
効果が薄れたわけじゃないから
疑問を持っても続けることがとても大事
あと結果を急いで無理しないこと
無理して体を壊したら意味がないからね」
371:1
06/10/09 02:22:11 1HEGAgmQ
>>370の続き
そんなに早く効果を実感する人は少ないらしい。
じわじわと効果が出始めて、
ある日前と違う自分を発見する。
そんな感じらしい。
本人が今までと違う自分に気付くまで
結果を急いで疑問を持ち始めたお客さんを
励まして続けさせるのが大変だと彼女は話していた。
372:1
06/10/09 02:23:06 1HEGAgmQ
>>371の続き
フラワーエッセンスも言われたとおり使っていたが
こちらは全く何も分からなかった。
それについても効果が緩やかだから
何も感じなくても不思議じゃない。
使い続けることが大事だと言っていた。
373:1
06/10/09 02:25:42 1HEGAgmQ
>>372の続き
彼女は読書について色々と質問してきた。
読書に一日どのくらい時間を使ったか、
何曜日に読み終わったか、
睡眠時間は削っていないか、等々。
本の内容に関する感想は何も聞いてこなかった。
それにも意味があるのだろう。
俺の方からは特に何も聞かなかった。
しかし次に渡されたのが推理小説だった。
(何故に推理小説????)
374:優しい名無しさん
06/10/09 18:28:01 PZ6P170k
URLリンク(bbs.2ch2.net)
スレリンク(budou板)l50
スレリンク(pure板:1-100番)
スレリンク(healmusic板:1-100番)
スレリンク(company板:1-100番)
375:1
06/10/10 02:18:39 zZ549ePT
>>373の続き
きっと何か人生の教訓になるような事が
書かれているのだろうと思った。
しかし呆れるほど普通の推理小説だった。
誰かが殺されて犯人が最後に分かる。
人生の教訓になりそうな箇所は見つからなかった。
先週渡された本より、
読みやすくそれなりに面白かったが
これは・・・???
376:1
06/10/10 02:20:07 zZ549ePT
>>375の続き
きっと俺の読解力に問題があり
何も吸収出来なかっただけだ。
そう思った。
「どうだった?」
彼女に本の感想を聞かれた。
「う、うん。面白かったよ」
自分がバカで何も本から学べなかったことを悟られたくなくて
曖昧に答えた。
「それは良かった」
それ以上は聞いてこなかった。
俺はホッとした。
377:1
06/10/10 02:22:22 zZ549ePT
>>376の続き
そしてまた推理小説を渡された。
先週より少し厚めの本だった。
(また???)
今度こそは本から何かを吸収しようと思った。
やっぱりただの推理小説としか思えない。
人生の教訓らしきものは何も学べなかった。
彼女はまた一日の読書時間と何曜日に読み終わったかなど
同じ質問をした。
そして更に厚い本を渡された。
378:1
06/10/10 02:23:11 zZ549ePT
>>377の続き
彼女の何を考えているのか
俺にはさっぱり分からない。
内容が面白くても読書に慣れていない俺にとっては
一冊の本を一週間で読み切ることは
それなりに大変な作業だった。
自分の時間のほとんどを削り読書に費やしたのだ。
睡眠時間は絶対に削るなと注意を受けていたので
読書の為に時間をやりくりした。
379:1
06/10/10 02:25:38 zZ549ePT
>>378の続き
なんだか無駄な事をしているような気になってきていた。
「俺本から何も学べなかったよ」
ちょっと恥ずかしかったが正直に答えた。
「面白くなかった?」
「それなりに面白かったけど・・・」
「それなら良かった」
「面白ければ良いの?」
彼女はふざけているのか?
まさかとは思ったがそんな考えも浮かんでしまう。
380:1
06/10/10 16:55:05 zZ549ePT
>>379の続き
「違うよ。一週間で読み切ることが一番大切。
面白いかどうかはグリコのおまけだよ。」
「これ意味あるの?」
彼女を信じたかったがどうしてもスッキリしない。
「あるよ」
自信に満ちた言い方だった。
「どんな?」
381:1
06/10/10 16:56:00 zZ549ePT
>>380の続き
「今は教えないけど意味はちゃんとあるよ。
私を信じて続けてもらうしかないの」
言っていることはふざけているとしか思えなかったが
顔は真剣だった。
「ごめん」
「謝るような事じゃないよ。当然の疑問だもん。
ただ、疑問を持ちながらでも続けてね。
今のさとる君に必要なことだから」
彼女は俺を指導している時、
天真爛漫で無邪気な姿は消え、
いつも真剣だった。
382:1
06/10/10 16:57:03 zZ549ePT
>>381の続き
おそらく俺が不満を持とうが、
怒ろうが一歩も引かないつもりだろう。
そんな迫力があった。
その迫力が俺をいつも支えてくれていた。
彼女のやり方はあるいは間違っているのかもしれないと
考えることは度々あった。
たえて間違っていたとしても
彼女の真剣な思いに答えることは
意味がることだとも思った。
383:1
06/10/10 16:57:59 zZ549ePT
>>382の続き
彼女の気持ちに答えるために俺が出来ることは
言われたことを続ける事だけだった。
彼女の姿を見ていると”覚悟を決める”という
言葉の意味が分かる気がした。
きっと、お客さんを相手にするときも
覚悟を決めて本気でやっているのだろう。
どこまでも強い人だった。
384:1
06/10/10 16:59:28 zZ549ePT
>>383の続き
宿題を出され始めて3週目。
彼女が俺を見て何か考え込んでいる。
「どうしたの?」
「思ったほどには心身のパワーが出てきてないんだよね・・・
もっとパワーが出るはずなんだけど」
「そう?それ程調子悪くないけど」
前に比べれば体調はそんなに悪くなかった。
「前よりは良くなっているのは確かなんだけど・・・
何か思い当たること無い?」
「う~ん・・・」
385:1
06/10/11 06:53:20 vW2Bjv2/
あげてみる
386:1
06/10/11 09:16:02 vW2Bjv2/
>>384の続き
「宿題はちゃんとやってくれてるよね」
「うん。やってるね」
「毎食良く噛んで食べてる?」
(あっ!)
彼女と食事している時や
会社の昼休みには良く噛んで食べるようにしていた。
しかし、家族と一緒の時は
飲み込むように早食いをしていた。
387:1
06/10/11 09:17:04 vW2Bjv2/
>>386の続き
「母親がうるさくて・・・」
いつも自分の部屋に引き篭もっているから
唯一顔を合わせる食事の時間に
小言を言われることが多かった。
俺は母親の小言が始まる前に
急いで食べて部屋に逃げ込んでいた。
「今度食事中にお母さんのお説教が始まったら
『そんなに説教されたら、せっかく作ってくれた
美味しい食事も味が分からなくなるよ』って言ってみなよ」
それは魔法の言葉だと彼女は言った。
388:1
06/10/11 09:19:22 vW2Bjv2/
>>387の続き
「さとる君はいつも自分の事を何も話さないでしょ
それだと周りの人は不安になるよ
何を考えているか分からないって思われちゃう
別に特別な事を話さなくても良いの
暑かったら『暑い』寒かったら『寒い』そんなことでも良いの
そうすれば周りは、この人は今暑いって感じて居るんだ
寒いって感じて居るんだと思って安心するの
自分が思ったこと、気付いたこと、感じたこと
どんな些細な事でも口に出してみる
そうすると周りは安心するんだよ
何を考えているか分からない息子を
心配する気持、私には少し分かるな」
389:1
06/10/11 09:22:22 vW2Bjv2/
>>388の続き
そんなもんなのかな~?
それに俺は周りから見てそんなに何を考えているか
分からないような人間なのだろうか
その日から家族と一緒の食事でも
時間を掛けて食べるようにした。
そして4日目、とうとう食事中に母親の小言が始まった。
「アンタいつまでフリーターやっているつもり?
アンタには危機感ってものが無いの?」
(始まったよ。これだから嫌なんだ・・・Orz)
軽く吐き気がして食事が喉を通らなくなる。
390:優しい名無しさん
06/10/12 02:51:54 AOUrUl86
>>1さんへ
これはフィクションではないのですよね?
読み物として素晴らしいと思います。
先日発見して1から一気に読み進めてしまいました。
続きを楽しみにしているので頑張ってください。
彼女は今もヒーラーとして活動している方なのですか?
ちょうど良いティーチャーを探しているので
可能であるならお会いしてみたいもんです。
391:1
06/10/12 08:45:04 7DsMKC5d
応援ありがとう
そしてごめんなさい
全てフィクションです。
彼女にもこれから登場する人物(彼女の師匠や兄貴。ちょい役ですけど)にも
会うことは出来ません。
兄貴とのやりとりはカットしちゃうかもしれません。下品なんで・・・汗
一つの物語として最後まで楽しんでくれたら嬉しいです。
392:1
06/10/12 08:48:01 7DsMKC5d
>>389の続き
俺は母親を黙らせたくて
彼女から教わった魔法の言葉とやらを言った。
「食事中にそんなことを言われたら
折角作ってくれた美味しい料理も味が分からなくなるよ」
「あっ!そ、そうね・・・」
効果てきめんだった。
母親がその時どんな表情をしていたのか
見ていないが、声の調子から驚いているのが分かった。
そして俺も母親の反応に軽く驚いていた。
393:1
06/10/12 08:50:33 7DsMKC5d
>>392の続き
少しの沈黙の後、母親が嬉しそうに話し始めた。
「このキンピラ美味しいでしょ。
アンタ昔から好きだったもんね。」
「うん、美味いよ」
嘘では無かったが本心でも無かった。
もうずっと母親の作った料理が美味いかどうかなんて
味わって食べたことが無かったからだ。
母親が作った料理の味が一番違和感がない。
そう言う意味では嘘ではなかった。
394:1
06/10/12 08:54:00 7DsMKC5d
>>393の続き
嬉しそうに話す母親を見て
後ろめたさを感じた。
俺は彼女から教えてもらったセリフを
ほとんど読むように言っただけだからだ。
そこには俺の心は何一つ含まれていなかった。
395:1
06/10/12 08:56:14 7DsMKC5d
>>394の続き
その日を境に表面的ではあったが
母親との関係が少しずつ変わっていった。
ある日会社から家に帰ると
母親が見慣れない服を着ていた。
いつもだったら何も言わずに通り過ぎるところだが
”気付いたこと感じたことを口に出す”という
彼女の言葉を思い出して
「あまり見ない服だね」それだけ言った。
母親の顔がパッと明るくなった。
「バーゲンで買ってきたのよ。良いでしょこの服。似合う?」
396:1
06/10/12 08:58:14 7DsMKC5d
>>395の続き
「悪くないね」
俺の”悪くないね”は文字通り”悪くない”
それ以上でもそれ以下でもない。
俺の辞書にファッションセンスと言う文字はない。
自分の服にも無頓着で
取り合えず恥ずかしくない程度の
”悪くない”服を買って着ていた。
似合っているかどうかなんて
聞かれても俺に分かるはずもない。
しかし母親は勘違いして大喜びだ。
397:1
06/10/12 09:00:05 7DsMKC5d
>>396の続き
「ちょっとこっち来てよ」
タンスの前に連れて行かれて
ファッションショーが始まった。
この服にはどのネックレスが合うか
スカーフはどれが良いかなどと色々聞かれて冷や汗ものだった。
(俺にそんなこと聞いても分かるはず無いだろ!)
でも心配には及ばなかった。
398:1
06/10/12 09:02:52 7DsMKC5d
>>397の続き
俺が「う~ん・・・」と考えている振りをすれば
「やっぱりこっちの方が合うわよね」と言いながら自分で答えを出していた。
母親の声の調子に合わせて
それに相づちを打っていれば良かったからだ。
「やっぱりこの組み合わせ良いわね!」
「そうだね。悪くないよ」
そう言っていれば間違いなかった。
母親のこんな楽しそうな姿をあまり見たことが無かった。
399:1
06/10/12 09:04:33 7DsMKC5d
>>398の続き
そんな母親とのやり取りを彼女に話した。
「何がどうなっているのか分からないよ」
「お母さんも寂しかったんじゃない」
(えっ!?母さんが寂しがってた?)
俺はいつも自分の事で頭がいっぱいで
親が何を感じているかなんて考えたことがなかった。
400:1
06/10/12 09:06:22 7DsMKC5d
>>399の続き
他人には色々気を使ったり
相手の気持ちに関心を持ったりするが
どういう訳か一番近くに居る人の気持ちには無関心だった。
「今日帰りにケーキでも買って行ったら?」
「・・・」
俺がためらっていたら
帰りに駅の近くまで彼女がついてきて
ケーキ屋に連れて行かれた。
仕方なく両親と自分の分、ケーキを3つ買って帰った。
母親の好きなモンブランだ。
401:1
06/10/13 09:53:27 Jn0LvwlD
>>400の続き
ぶっきらぼうに「ケーキ買ってきた」と言って
母親に渡した。
「どうしたの?」
「いや、別に・・・甘い物が食べたくなったから」
「私の好きなモンブランじゃない!」
軽くはしゃいでいる。
「ああ、この店はそれが一番美味いんだよ」
照れくさくて嘘を付いた。
402:1
06/10/13 09:55:24 Jn0LvwlD
>>401の続き
母親が好きなのを選んで買ってきたんじゃないと言いたかった。
我ながら可愛くないと思うが気恥ずかしさに勝てなかった。
母親はケーキの箱を父親に見せに行った。
「おお、美味そうだな」
それだけだったが、あまり聞いたことの無い嬉しそうな声だった。
(なんだよ。そんなのどこにでも転がっていそうなケーキじゃないか)
何故そんなにケーキごときで喜ぶのか俺には理解出来なかった。
403:1
06/10/13 09:58:11 Jn0LvwlD
>>402の続き
そういえば彼女が言っていた。
”子供の一挙手一投足に一喜一憂するのが親だよ”と。
それが鬱陶しくもあり、有り難くもあると言っていた。
子を持つこと、親になることは
どこか切ないな。
そんな事を思ったりした。
彼女の両親はどんな人達なんだろう?
何度か聞いたことがあったが
いつもはぐらかされていた。
彼女からは家族の匂いを感じなかった。
404:1
06/10/13 10:01:23 Jn0LvwlD
>>403の続き
このままずっと金も払わずに
ヒーリングを受けるわけにはいかないと思っていた。
しかし料金を払うと言えばいい顔はしないだろう。
何らかの形でお返しと言うか
お礼がしたかった。
インターネットで評判の良い店を調べ
よく食事に誘った。
彼女は割り勘にしようと言ったが
そこだけは引くわけにいかなかった。
405:1
06/10/13 10:02:26 Jn0LvwlD
>>404の続き
「どうしていつも奢ってくれるの?」
不思議そうに聞いてくる。
「別に意味は無いけど
普段あまりお金使わないから」
お礼だと言えずにいつも適当に答えていた。
こんなことをするよりも
「いつもありがとう」と言葉でちゃんと言うべきだが
それが一言がどうしても言えなかった。
406:1
06/10/16 22:16:46 7i6g/cg7
間違って書き込んでも修正できないのが辛い・・・
407:1
06/10/16 22:19:54 7i6g/cg7
途中からブログの方に移行しようと思っています。
408:1
06/10/16 22:21:10 7i6g/cg7
>>405の続き
「毎週俺の為に時間使って大変じゃない?」
「そんなことないよ」
平日は忙しく仕事をして
毎週末俺の相手では休まる暇が無いと思った。
「他の友達と遊ぶ時間はある?」
「平日にも会ったりもしてるから大丈夫だよ」
「仕事は?」
「今は仕事減らしてるから 。
新規のお客さんはほとんど断ってるし」
「えっ!どうして?」
彼女は戸惑った表情をして
返す言葉を探しているようだった。
409:1
06/10/16 22:30:39 7i6g/cg7
>>408の続き
「そんなにがむしゃらに働かなくても生活出来るから」
歯切れの悪い言い方で言った。
釈然としなかったがそれ以上聞かなかった。
「なんで俺なんかを構ってくれるのか分からないんだよね」
「俺なんか?
私なんかが俺なんかを相手しているのが、なんか変?」
(酔ってきてるね・・・この人)
やっぱりビールやサワーより
日本酒の方が回るのが早いらしい。
410:1
06/10/16 22:31:55 7i6g/cg7
>>409の続き
「さとる君の為と言うより・・・」
やっと聞き取れるくらいの小さな声で彼女が言った。
「えっ、何???」
「この日本酒美味しいね~」
話をそらそうとしている。
「俺の為じゃなかったら、、、何?」
「さとる君も飲んでみなよ。コレ美味しいから」
「俺の為じゃないってどういう意味?」
「しつこいな~もういいじゃない!」
軽く怒っている。
411:1
06/10/16 22:32:49 7i6g/cg7
>>410の続き
「『さとる君の為と言うより』って言ったよね」
俺の聞き間違いかと思ったりもした。
「うるさいな~!飲みが足りないから余計なことが気になるんだよ」
そう言って俺の口にグラスを無理矢理押しつける。
「さあ飲みなさい!記憶が無くなるまで」
口に押しつけられた酒で息が出来ず溺れそうになる。
ホント酒癖が悪い。
「わ、分かったから!もう聞かないから!」
胸元にこぼれた酒を拭きながら言った。
412:優しい名無しさん
06/10/17 01:36:53 QwIVOE4/
早く続き読みたい。。。
413:優しい名無しさん
06/10/21 09:42:02 yh0MxTv5
楽しみにしているよ
414:1
06/10/21 19:20:52 7vGsOqLf
ご声援ありがとう!
415:1
06/10/21 19:41:17 7vGsOqLf
>>411の続き
どれだけ一緒に居てもやっぱり彼女は
何を考えているか分からない不思議な人だった。
理由はどうであれ、ダメな俺を誰よりも分かった上で
こうやって一緒にいてくれる。
それに安心感を覚えたし、なにより嬉しかった。
家族の顔すらまっすぐ見ることが出来ないのに
彼女の目の奥を覗き込むように見ることが多くなった。
(俺にも彼女の心が分かればいいのに・・・)
いつもそんな事を考えていた。
416:1
06/10/21 19:42:07 7vGsOqLf
>>415の続き
彼女のヒーリングも次第に好きになっていった。
小学生の頃、友達と教室で遊んでいて
転んで頭を強く地面にぶつけたことがあった。
その後、気持ち悪くなった。
頭をぶつけたことは何度もあったが
その後に吐き気がしたのはそれが初めての経験だった。
不安になって机に伏せて
泣きそうになっていた。
417:1
06/10/21 19:43:01 7vGsOqLf
>>416の続き
その時担任の先生が「どうした?」と言って
背中に手を置いてくれた。
心細くなっていた俺は
その手のぬくもりを感じた時
(助かった、もう大丈夫なんだ)そう思った。
前後の細かいことは忘れてしまったが
その手の感触は今でもはっきりと覚えている。
彼女の手はその時の先生の手のぬくもりに似ていた。
ヒーリングパワーとか俺にはよく分からなかったが
誰かが自分の為に何かしてくれるというのは
どこか心強く温かい気持になった。
これが癒しと言うのなら
確かに俺は癒されていた。
418:1
06/10/21 19:43:57 7vGsOqLf
>>417の続き
週末が楽しみの一つになっていたが
俺は相変わらず俺のままだった。
些細な事で痛みを感じるのも
人付き合いが苦手なのも・・・
宿題を出されるようになって
一月半が経った頃だろうか、食事中彼女が聞いてきた。
「家や会社での人間関係に何か変化無い?」
「それなりに上手くいってるよ」
両親との関係も、会社の人間関係も少し変化があった。
419:1
06/10/21 19:47:05 7vGsOqLf
>>418の続き
以前はほとんど両親と会話することも無かったが
少し話をするようになっていた。
会社でも同僚から時々話しかけられるようになっていた。
二言三言、言葉を交わす程度だったが、
緊張もしたが少し嬉しかった。
高木は相変わらず高木ブーだが、あまり俺に構わなくなっていた。
「波長が変わってくると
本人より先に周りが気づくことがよくあるの。
周りが気づくと言ってもなんとなく話しかけやすいとか
安心感を覚えるとかぼんやりとしたものだけどね」
420:1
06/10/21 19:49:40 7vGsOqLf
>>419の続き
「波長が変わってきてる?」
「うん。波長って言うのがピンと来なかったら
その人が醸し出す雰囲気って言ってもいいかも」
「・・・」
「色々やってもらってるけど
特にヒーリングとフラワーエッセンスは
ダイレクトにその人の波長に影響を与えるんだよ」
「・・・」
状況の変化を俺はヒーリングと結びつけて考えていなかった。
いまいち良くわからない。
421:1
06/10/21 19:51:08 7vGsOqLf
>>420の続き
両親との関係が変わったのは
最近俺が気を遣っているからであって
会社の同僚から話しかけるようになったのも
高木にいじめられた事で、ある意味俺の存在感が増したからだろう。
以前なら俺が居ても居なくても誰も気づかなかっただろう。
高木が俺を構わなくなったのも
新しい仕事のやり方に慣れて、ミスが減ってきたことで
つっこみ所が無くなったからでは無いか。
422:1
06/10/21 19:52:46 7vGsOqLf
>> 421の続き
「無理して納得しようとしなくても良いよ。
でも、最近表情も変わってきているの気づいてる?」
「自分の顔なんか普段あまりちゃんと見ないからね」
「鏡持ってこようか?
鏡に向かってニコッてしてみなよ。
結構可愛いかもよ」
からかうように言う。
「い、いいよ」
423:1
06/10/21 19:53:51 7vGsOqLf
>>422の続き
「じゃあ、家に帰ってやってみたら。ニコッ!て」
「そんなことしないよ
今度から趣味特技の欄に”さとるをからかう”って書きなよ」
俺はムスッとして軽く嫌みを言った。
彼女はそんな俺を見て無邪気に笑った。
424:1
06/10/21 19:55:51 7vGsOqLf
>>423
その日の夜、風呂上がりに
彼女の言葉を思い出して洗面台の鏡を見た。
そこに映ったのは、相変わらずの仏頂面だ。
「・・・」
そういえば、鏡に向かって”ニコッ!”だっけ
やってみた
・・・・・Orz
(何をやらせるんだよ)
自分の顔にと言うより、自分のとった行動に鳥肌が立った。
誰も居ない一人きりの洗面所で顔が真っ赤になった。
425:1
06/10/21 20:02:22 7vGsOqLf
>>424の続き
「クスリ減らしていこうか。」
彼女のところに通い始めて2ヶ月くらい経った頃、
ヒーリング後に彼女に言われた。
「薬物療法には否定的?」
「精神薬を必要とする人も居るから否定はしないよ。
でも、今のさとる君には必要ないから。
それにヒーリングを次の段階に進めるのに
精神薬を飲んでると好転反応が強く出過ぎるから
少しずつ減らしていきたいの。
今度家に来るときに今飲んでいるクスリ持ってきてね。
クスリの種類や服用量を把握しておきたいから。」
自分が変わった実感はあまり無かったが、
納得してクスリを使っていた訳ではないので、
その日の夜からクスリを一切止めた。
それが彼女を本気で怒らせることになる。
426:1
06/10/22 21:08:32 NFdX7jz8
>>425の続き
三日目あたりから食欲が無くなり吐き気がしてきた。
久しぶりに好転反応が出たのか、それとも風邪かなと思っていた。
二日間会社を休んでしまった。
次の土曜日にも彼女のアパートに行く予定だったが、
あまりにも吐き気が酷いので家で寝ていようと思い、断りの電話をかけた。
427:1
06/10/22 21:09:09 NFdX7jz8
>>426の続き
彼女は心配そうに「どうしたの?」と聞いてきた。
「少し吐き気がするだけ。大したことないよ。」
「熱は?」
「熱は無いと思う。」
「クスリの量どれくらい減らしたの?」
「あの日から飲んでいないよ」
「全く飲んでいないの?」
「うん」
一瞬沈黙があり、空気が変わるのを感じた。
428:1
06/10/22 21:10:30 NFdX7jz8
>>427の続き
「急に止めちゃ駄目だよって言ったよね!
危険だから少しずつ減らしていこうねって説明したよね!」
怒りが伝わってきて焦った。
かなり細かい指示と注意をされていた。
でもそれほど神経質になる必要は無いと思っていた。
早く止めれば喜んでくれるとさえ思っていた。
「俺が飲んでいるのはそれほど強いのじゃないから・・・」
彼女の怒りを静めようと出てきた言葉だが、余計なことを言ってしまった。
「断薬を簡単に考えちゃ駄目!
あれほど説明したのにどうしてこんな大切なことを守ってくれないの!」
情け容赦ない厳しい声だ。
429:1
06/10/22 21:12:19 NFdX7jz8
>>428の続き
あんなに小さな体からどうしてこんな迫力が出せるのか。
女の人は怒るとこんなにも怖いのか・・・
「今すぐクスリを持って家に来て!」
とてもじゃないが「具合悪いから」などと言えない。
慌てた俺は、クスリの入ったスーパーのビニール袋をカバンに入れて家を出た。
430:1
06/10/22 21:13:04 NFdX7jz8
>>429の続き
「クスリ持ってきた?」
酷く不機嫌そうだ。
袋をキッチンのテーブルに置いた。
大きく膨らんだビニール袋を見て
怪訝な顔で俺の方を向いた。
彼女は大量に入ったクスリを見て顔を青ざめ
言葉を失っていた。
「なにこれ・・・」
やっと絞り出したような声だった。
431:1
06/10/25 21:48:01 7kQ+4X46
書けるかな?
432:1
06/10/25 21:54:26 7kQ+4X46
>>430の続き
その姿を見てやっと自分が失敗したことに気づいた。
全部持ってくる必要は無かったのだ。
彼女はクスリの種類と一日の服用量を知りたかっただけだ。
「どうしてこんなに沢山持ってるの?」
「・・・」
「ねえ、これ何?」
「・・・」
必死になって言い訳を探したが、頭の中は真っ白になっていくばかりだ。
433:1
06/10/25 21:55:18 7kQ+4X46
>>432の続き
「なんなのよ、これ!」
クスリの入った袋を
乱暴に掴んで俺の顔の前に差し出して怒鳴った。
勢いでクスリの束が数枚飛び出して床に散らばった。
体が固まり
胃が縮むような感じがする。
何か嘘を付かなきゃならない場面に限って、
表情で真実を語ってしまう。
434:1
06/10/25 21:56:01 7kQ+4X46
>>433の続き
俺の方に腕を伸ばしてきた。
一瞬殴られるのかと思った。
こんな時は殴られてしまえば少しは楽になったりするのだろうか。
俺の腕を掴んだ彼女の手が震えているのが伝わってきた。
「何やってるの? ねえ、何やってるのよ」
目に涙が溜まっていた。
「ごめん・・・」
泣かせてしまった・・・。
「こんなので死ねる分けないでしょ!」
クスリの入った袋をゴミ箱に叩き付けて彼女が怒鳴った。
「ごめん・・・」
それしか言えなかった。
435:1
06/10/25 21:56:43 7kQ+4X46
>>434の続き
こんなにも取り乱している彼女を見たことがなかった。
傷つけてしまった罪悪感で居たたまれない気持ちになる。
自殺してまわりに与える影響やショックをあまり深く考えたことが無かった。
俺が一人居なくなっても何も変わらない。
両親は悲しむかもしれないが、それも時間が解決してくれるだろう。
しばらくすれば、また何も変わらない日常が戻る。
その程度に考えていた。
彼女は背を向けてしまった。
小さな肩が震えている。
壊れそうな後ろ姿を見つめたまま途方に暮れていた。
436:1
06/10/25 21:58:11 7kQ+4X46
>>435の続き
「そこに座って待ってて」
弱々しい潤んだ声でそれだけ言って、
顔を背けて部屋に入っていった。
俺はしばらく立ちつくしたまま
床に散らばったクスリをぼんやりと見ていた。
罪悪感や、情けなさや、恥ずかしさ
色々な感情が一気に押し寄せてきて
何もかも止まってしまったような気がした。
大切な何かを自分の手で壊してしまった気がした。
437:1
06/10/25 21:59:15 7kQ+4X46
>>436の続き
床に散らばったクスリを一枚ずつ拾って
そっとゴミ箱に入れた。
こんな時は何故か時間が止まったようで
普段気づかないものがよく見えた。
床の小さな傷や、壁のシミ、窓から差し込む光・・・
外を走る車の音や、どこかで回している洗濯機の音・・・
しばらくすると部屋から彼女の声が聞こえた。
誰かと電話で話しているようだった。
438:1
06/10/25 22:03:23 7kQ+4X46
>>437の続き
1時間ほどしてやっと彼女が部屋から出てきた。
俺の正面を向かず
少し顔を背け椅子に横向きに座った。
「今先生を呼んだから」
「先生?」
「心療内科を開業してる私の師匠。
さとる君の断薬の指導をしてもらおうと思って」
この仕事を始めたのもその先生の影響で
何かと相談に乗ってもらっているのだそうだ。
彼女は話をしている間一度も俺の方を見なかった。
439:1
06/10/25 22:07:41 7kQ+4X46
やっぱりこういうのは一週間くらい缶詰になって
一気に書いて一気に読んでもらうのが良いよね
なかなか時間が無くて
最近通勤電車で東野圭吾の「手紙」を読んでる
疲れていても読みやすいから苦にならない
オススメだよ
440:優しい名無しさん
06/10/26 20:48:07 gOCO/4dR
>1
いあいあちょとずつも楽しみになっちゃいますので
さとるくんはもうかなり良くなってきてるんでしょうか
どきどき
441:あぼーん
あぼーん
あぼーん
442:1
06/10/27 23:56:34 XL58QCP0
440さん
そう言ってもらえるとホッとします
崖っぷちなのでage!
443:優しい名無しさん
06/10/29 15:01:30 B0BP7hxm
良い天気だな
age
444:優しい名無しさん
06/10/29 16:22:17 x2EGvlTC
何も悪かない
445:あぼーん
あぼーん
あぼーん
446:優しい名無しさん
06/10/31 10:44:41 lTkrj5Bl
ひーりんぐっていいなー
447:優しい名無しさん
06/11/03 01:59:38 j7IUhHmS
2か月ぶりくらいに覗いてみたら続きがっ!一気に読ませて貰いました~。フィクションなのですか…残念。「彼女」みたいな人が居たらイイなと思ってたもので。。
448:優しい名無しさん
06/11/03 02:03:53 j7IUhHmS
447です。続き。
レイキは何度か受けた事があったケド良い出会いした事ないんですf^_^;1さん、無理しないでユックリ書いてって下さいね。楽しみにしてます☆
449:優しい名無しさん
06/11/05 17:05:36 7mAK5hXI
げんきー?
450:1
06/11/06 12:50:25 +gIju2Ry
元気ですよ~
取り合えず・・・
451:1
06/11/06 12:51:04 +gIju2Ry
>>438の続き
彼女は、独立開業する3年半ほど前まで
この先生と関わりのある治療院で働いていた。
開業後、始めはまったく客が寄りつかず
軌道に乗るまで「若いが腕は確かだ」と先生が客を紹介するなど
あらゆるサポートをしてくれたそうだ。
「先生はすごい人だよ」彼女が言った。
傷つけてしまった彼女を慰めてくれるかもしれないという期待もあったが、
なんとなく追いつめられていく様な気分になっていった。
こんな情けない自分を誰にも見られたくなかった。
452:1
06/11/06 12:51:52 +gIju2Ry
>>451の続き
厳しそうな人を想像した。
この小柄な彼女ですら時に人を圧倒する迫力を見せることがある。
その彼女に凄いと言わせる人物はどれほどなのだろうか。
好奇心より、恐怖の方が強かった。
そう思っているところに
玄関をノックする音とほぼ同時に60前後の男性が
中に入ってきた。
(インターホンがあるのに・・・)
こんな時なのにそんな事を思った。
453:1
06/11/06 12:53:42 +gIju2Ry
>>452の続き
「こんにちは。貴方がさとるさん?」
靴を脱ぎながら顔だけこちらに向け先生が言った。
かすれた気の抜けた声だ。
「は、初めまして」
ドキドキして、逃げ出したい気持でいっぱいだった。
「どうも。坂野です」
無表情で無愛想に言った。
彼女を泣かせたことで、先生も怒っているのかもしれないと思った。
浅黒い長い顔、クセ毛の髪は少し薄かった。
映画によく出てくるボーッとした感じの俳優の誰かに似ていると思ったが、
その俳優の名前は思い出せなかった。
454:1
06/11/06 12:55:18 +gIju2Ry
>>453の続き
「すみません休日に呼び出して」彼女が言う。
今日は祭日の土曜日で、
先生のクリニックは休業だった。
「寝てたんですか?」
アクビをしている先生に彼女が言う。
「新しいクーラー買ったんだよ。
冷えすぎなくてなかなか良いんだ。これが気持ちよくてね」
寝癖の付いた頭を掻きなあら呑気そうに先生が言う。
ヨレヨレのシャツを着ている。
ファッションなのかもしれないが、
なんとなくだらしなく見える。
455:1
06/11/06 12:57:12 +gIju2Ry
>>454の続き
まるで緊張感がなく、覇気も感じない。
今の俺には、その緊張感の無さがありがたかった。
先生が来て張りつめていた空気が変わった。
俺は少しホッとしていた。
「これ見てください」
ゴミ箱からクスリの入った袋を取り上げて彼女が先生に見せた。
俺は居たたまれない気持ちになる。
「ふんふん。これじゃ死ねないな」
無表情に中のクスリを手に取ってかすれた声で言った。
456:1
06/11/06 12:58:03 +gIju2Ry
>>455の続き
来る途中に買い物をしてきたのだろう。
手に持っていたスーパーの袋から
缶コーヒーや、お茶、ジュースなど計7本を
一本ずつ取り出してテーブルの上に置いた。
種類も本数も無茶苦茶だった。
目に入ったものを適当にかごに放り込んで
買い物している姿が目に浮かんだ。
457:1
06/11/06 12:58:56 +gIju2Ry
>> 456の続き
「どれが良い?」
俺の方を向いて先生が言う。
「じ、じゃあそれを」
缶コーヒーを指さして言った。
先生は缶コーヒーを取ると
振ってから栓をあけて渡してくれた。
「いただきます」俺は恐縮していた。
458:1
06/11/06 13:00:23 +gIju2Ry
>>457の続き
先生は食器棚を勝手に開け小さな皿を一枚取り出し
テーブルの上に置いた。
「この店の柿の種はなかなかなんだよ」
そう言いながら、もう一つの和菓子屋のものらしき袋から
今置いた皿の中にザラザラと入れた。
一粒が3センチくらいの大きなものだった。
先生は皿ごと俺の方に寄せて食べるように促した。
それどころじゃ無かったが仕方なく一粒口に入れた。
口が渇いていて上手く飲み込めず、コーヒーで流し込んだ。
459:1
06/11/06 13:01:23 +gIju2Ry
>>458の続き
「どうだ?」
「美味しいです」
味なんか分からなかった。
「あっ、コーヒーと煎餅じゃ合わないな。
つまみは柿の種だって先に言えばよかったかな」
「いえ、大丈夫です」
そんなことより俺は彼女の方が心配だった。
彼女はさっきから早く話始めたくて
じれている様だった。
俺はその様子をヒヤヒヤして見ていたが
先生はまったくお構いなしでマイペースだった。
460:1
06/11/06 13:03:58 +gIju2Ry
>>459の続き
「ビールの方が良かったんだけど車で来たからね」
飲んでなくてもどことなく酔っているようにも見えた。
先生が皿に手を伸ばすと
「手ぐらい洗ってください!」
声の調子から彼女が苛ついているのは明らかだった。
「あ~、そうか」
彼女にしかられて流し台で手を洗っている。
呑気そのものだ。
461:1
06/11/08 21:29:22 Qm/hy4j5
>>460の続き
先生がやっと落ち着いて、彼女は
今までのヒーリングや指導の内容や期間などを話し始めた。
専門用語らしき言葉も出てきて
俺には理解できないところも多かった。
時折、目に涙を溜めながら話をしていた。
その涙を見るのが何よりも辛かった。
「もう半年前から溜め続けてたみたいなの
しかも最近まで・・・
ヒーリングだって上手くいっていたし
状態だって確実に良くなっていたのに
どうして自殺なんて考えるのかな」
俺に向けられなかった怒りを
先生にぶつけているような気がした。
462:1
06/11/08 21:30:15 Qm/hy4j5
>>461の続き
万引きして捕まった少年の様に
俺はうつむいて小さくなっていた。
しかし先生は涼しい顔をしてまったく動じていない。
「ふんふん」
柿の種をポリポリ食べながら頷いている。
コレで良いのかと俺の方が不安になるほど
まるっきり緊張感がない。
463:優しい名無しさん
06/11/12 21:51:20 Wk9PbnBU
ゆっくりでいいからね
464:1
06/11/13 22:14:11 S70CRJmv
書けるかな?
465:1
06/11/13 22:16:03 S70CRJmv
なんかね。
最近週末になるとアクセス規制で書き込めない事が多いんだよ。
OCNユーザーの誰かさんが週末にイタズラしているんだろうね。
466:1
06/11/13 22:17:19 S70CRJmv
>>462の続き
今度は胸のポケットからタバコを取り出し火をつけた。
しばらく吸ってから、何かを探すようにキョロキョロしている。
灰皿を探している様だ。
「タバコは?」
「僕は吸わないです」
「そうか」
そう言って立ち上がり、キッチンの隅から灰皿を持ってきた。
このアパートに灰皿があるのが意外な気がした。
467:1
06/11/13 22:18:16 S70CRJmv
>>466の続き
「この灰皿。私専用なんだよ。
あっ、タバコ吸って良いかな」
「あ、はい。どうぞ」
もう吸ってるじゃないか・・・と思ったが今の俺はそんなことを思うことすら許されない。
「タバコ吸う時は換気扇回して下さいといつもお願いしてるじゃないですか」
トゲのある言い方で彼女が言う。
俺は自分が怒られたような気分になって
さらに小さくなった。
「あ~、そうだったな」と言って、先生は立ち上がり換気扇に手を伸ばす。
しっかり者の娘と駄目オヤジといった感じだ。
468:1
06/11/13 22:19:04 S70CRJmv
>>467の続き
席に戻る時、先生は彼女を背後から指さし
俺に向かって笑顔で”こわいね”と声を出さず口だけで言った。
どんなリアクションして良いか分からず曖昧にうなずいて応えた。
(空気を読んで下さい!)
心の中で俺は叫び声を上げる。
469:1
06/11/13 22:20:40 S70CRJmv
>>468の続き
しばらく二人のやりとりを見ていて
不自然な事に気づいた。
話の最中に時折、突然の沈黙があった。
彼女の話を聞きながら先生は時々目をつむった。
10秒とか20秒、それほど長い時間ではない。
先生が目を閉じると彼女は遠慮した様に
その間だけ話すのを止めた。
そして目を開けるとまた話し始める。
「そんな大したことじゃないよ。彼は大丈夫だよ」
先生が彼女に言う。
470:1
06/11/13 22:21:48 S70CRJmv
>> 469の続き
”限界が来たら死ねばいい”そういう考えはいつもどこかにあったが
確かに最近は自殺をリアルなこととして考えられなくなっていた。
クスリは貯め続けていたが、それも以前貯めるために
一日の服用量を減らしていたので
その流れで今もそのまま余ったクスリを貯めている感じになっていた。
生きるとか死ぬとか
幸せとか不幸とか
意味があるとか無いとか
最近はあまり考えていなかった。
考える時間すらなかった。
471:1
06/11/13 22:22:38 S70CRJmv
>>470の続き
「私もそう思うんだけど
数ヶ月前まで酷い状態だったの」
「強さも持ってる」
「うん、分かってる
少しビックリしちゃっただけなの」
そう言って俺を睨み付けた。
睨んではいたが、強張っていた彼女の顔が緩んできていた。
彼女は話すうちに少しずつ落ち付きを取り戻していった。
472:優しい名無しさん
06/11/14 13:26:13 IRe8ofNI
>>465
そうでしたかー
あんまり、まだまだ?と聞くとせかしてるみたいだし…
でも、いつもチェックはしてますよ。
473:優しい名無しさん
06/11/17 14:41:31 kiZZly7Z
保守
474:1
06/11/19 00:09:44 tc9NLznv
「あああ」只今マイクのテスト中!
475:1
06/11/19 00:14:15 tc9NLznv
おっ!?なんか2ちゃんの様子が変わった
アクセス規制は掛かってないね
472さん
どんな内容でも書き込みがあると嬉しいものですよ
こんなに書き込みが遅いのに読んでもらえるだけでもありがたいもので
疲れすぎてアタマがバカになっているので
少しだけ書いて続きは明日書きます。
完全週休二日制はまだか・・・
476:1
06/11/19 00:15:26 tc9NLznv
>>471の続き
先生は今度、先ほどの和菓子屋の袋から、
コッペパンの様な形をした真っ白な和菓子を取り出した。
また勝手に流しの下の扉から包丁を取り出し八等分にした。
「コーヒーとじゃ合わないな」
俺の方を向いて先生が言った。
「いえ、これで良いです」
「これ中にクルミが入ってて歯触りが良いんだよ。
お茶もあるから飲みなさい」
ペットボトルを指さして言った。
477:1
06/11/19 00:18:57 tc9NLznv
>>476の続き
そんなやり取りを見て彼女がお茶を煎れてくれた。
「これ美味しいんだよ食べてみなよ」
彼女も俺に和菓子をすすめてくれた。
今日初めて見せてくれた優しさだった。
彼女は疲れた顔をしていたが
いつもの穏やかな顔が戻ってきていた。
478:1
06/11/19 00:19:35 tc9NLznv
なんだよこれ、、、改行が入らない・・・
479:1
06/11/19 00:24:24 tc9NLznv
>>477の続き
手に取った和菓子をかじると
中に果物やクルミや・・・
何か良く分からないけど色々入ってて
それが堅めの餅でつつまれている
洋菓子の様な味で・・・
食べたことのない食感で・・・
美味しくて・・・
彼女の煎れてくれたお茶も温かくて・・・
三人とも黙って和菓子を味わっていた。
彼女が冷静さを取り戻したことで
俺は安心しきっていた。
480:1
06/11/19 00:26:25 tc9NLznv
こんなに文字が詰まってたら読む気しないよ
ブログの方早めに準備してそっちに移ろうか
481:1
06/11/19 09:45:26 tc9NLznv
てすと
てすと
482:1
06/11/19 09:46:38 tc9NLznv
・・・?
483:1
06/11/19 15:06:04 tc9NLznv
てすと
てすと
てすと
484:1
06/11/19 15:06:47 tc9NLznv
>>479の続き
「おいしい・・・」
彼女が小さく言った。
初めて食べる和菓子の名前を聞こうとして
俺は顔を上げた。
(・・・・!!!)
体の力が抜けて
無防備なところをフルスイングで殴られたような衝撃を受けた。
彼女の目から大粒の涙がポロポロと流れていたのだ。
485:1
06/11/19 15:07:33 tc9NLznv
>>484の続き
「どうして・・・・どうして・・・・」
(えっ!?ええっ!?)
「・・・こんな美味しい物があるのに
・・・・私だって近くに居るのに
・・・・どうして・・・」
(な、泣かないで・・・)
「うっ、うううっ・・・・」
とうとう声を出して泣き出してしまった。
(な、泣かないでよ、もうお願いだから・・・泣かないで・・・)
486:1
06/11/19 15:08:30 tc9NLznv
>>485の続き
彼女の目から溢れる涙を
手で押さえたい衝動に駆られた。
俺の心の叫びも虚しく、
もうほとんど子供の様に泣きじゃくっている彼女。
一番恐れていた彼女の姿が目の前にあった。
(ごめん、ほんとうにごめん・・・・)
彼女の涙に打ちのめされて半ベソの俺は
助けを求め先生を見た。
(俺どうしたら良いですか!?こんな時はどうすれば良いんですか!?)
487:1
06/11/19 15:09:56 tc9NLznv
>>486の続き
「大丈夫だから」
落ち着いた笑顔で言った。
先生は二度うなずいて、俺の肩に手を置いて
座るように促した。
その時初めて自分が立ち上がっていることに気付いた。
先生はそのまま俺を慰めるように肩に手を置いていたが、
そんな事より泣きじゃくってる彼女をなんとかして欲しかった。
488:1
06/11/19 15:10:52 tc9NLznv
>>487の続き
俺は途方に暮れて何も出来ず
そのまま泣いている彼女を見ていた。
先生は2本目のタバコに火をつけ
美味しそうに吸っている。
助けを求め先生の方を見るが
その度にうなずいて見せるだけだった。
489:1
06/11/19 15:13:57 tc9NLznv
>>488の続き
「クライアントの前では絶対に泣くなって何度も言ってるだろ」
タバコの煙を吐き出しながらかすれた声で言う。
何を言っているんだよこの人・・・
「ヒーラーが泣いたらクライアントが動揺するだろ」
もう止めてよ
今そんな事を言わなくても良いじゃないか・・・
「ううっ、ぐすっ、・・・
さとる君はお客さんじゃないもん・・・友達だもん」
子供の様に泣いている彼女が痛々しくて・・・
「そうか、今回はぎりぎりセーフってことにしておくか?」
もう、なんなんだよこの人・・・
一番悪いのは俺なのに腹が立って仕方がない。
そして、彼女の泣きながらの逆襲が始まった。
490:1
06/11/19 15:21:57 tc9NLznv
>>489の続き
「先生!どうしてそんなに汚い格好しているんですか?う、ううっ、、、」
「汚くないだろ。ちゃんと洗濯してあるんだよ。
結構良い服なんだけどな・・・・」
「そんなにシワくちゃで・・・
この前買ってあげたアイロン使ってくれてますか」
「使わせてもらってるよ」
「だったらどうしてそんなしわくちゃのシャツ着てるんですか?うううっ、うう、、、えぐっ、、」
「アイロン使うと余計にシワが増えるんだよ」
「片手で伸ばして掛ければちゃんと使えるのに・・・うううっ
使い方教えたじゃないですか、、、う、ううっ
さとる君に初めて会わせたのに
私が恥ずかしいじゃない!う~う~えぐっ、、、」
491:1
06/11/19 15:23:50 tc9NLznv
>>490の続き
な、なんかよく分からないけど・・・
(そ、そうだ!もっと言ってやれ!)
俺は心の中で彼女を応援していた。
「せっかく買ってあげたのに・・・うううっ
白衣だってあんまりシワだらけだと患者さんの信用無くしますよ、、、ううっ」
「白衣は難しいからクリーニングに出すよ」
「アイロン使わなくても、洗濯物干す時に伸ばしてから干せば
そんなにシワだらけにならないのに・・・・ううっ、えぐ、、、」
492:1
06/11/24 02:42:53 D6UPk+mw
>>491の続き
彼女が泣き疲れておとなしくなると
先生が俺に話し始めた。
服薬自殺は成功率が低く
失敗して一生後遺症に苦しんでいる人達が居ることを
事例を挙げて話した。
さりげない話し方だったが、どの話もリアルで
俺を震え上がらせるのに充分だった。
493:1
06/11/24 02:43:55 D6UPk+mw
>>492の続き
「じゃあ、私はこれで帰るよ
さとるさん家まで送るよ」
俺も彼女も”えっ!?”という顔をした。
「まだ話したいことがあるの」
「もう解放してやりなよ
さとるさんもまいっているじゃないか」
「僕は大丈夫ですから・・・」
このまま彼女を一人にするのが心配だった。
494:1
06/11/24 02:45:02 D6UPk+mw
>>493の続き
「いいから行くよ」
先生の中では俺を連れて帰るのが決定事項のようだった。
「先生にお願いがあるんです」
彼女が慌てて言う。
「先生にさとる君の断薬の指導をしてもらいたくて」
「んっ?どうして?
自分でやれば良いだろ」
「断薬の指導だけで良いの
他は私がやるから」
495:1
06/11/24 02:46:04 D6UPk+mw
>>494の続き
「さとるさんとよく相談しなさい。
二人とも納得したら私のクリニックに通えばいい」
先生は釈然としない顔をしながらも
俺に名刺を渡した。
名刺の裏にクリニックの地図が書いてあった。
彼女のアパートからそう遠くなかった。
明日も彼女と会う約束をして別れた。
496:1
06/11/24 02:47:11 D6UPk+mw
>>495の続き
先生の車は俺にでも高級車だと分かった。
このさえないおじさんと高級車が
合っていないと思った。
たくさんショックな事があっても
こうやってどうでも良いことを思う自分が意外だった。
「彼女一人にして大丈夫ですか・・・?」
車の中は程よくクーラーの利いてる。
「あ~、平気平気」
この呑気な言い方がなんとなくおもしろくない。
いつの間にか俺は自分の立場を忘れている。
497:1
06/11/24 02:48:14 D6UPk+mw
>>496の続き
「随分彼女に厳しいんですね」
特に期待していたわけではないが
この人が彼女の師匠である事実が不満だ。
「ヒーラーは人の命を扱う仕事だからね
常に冷静でなければいけない
あの子はいつもクライアントに感情移入しすぎるんだよ
それは危険な事だと何度も言っているんだけどね」
498:1
06/11/24 02:49:15 D6UPk+mw
>>497の続き
俺は先生の話を理解しようとするより
彼女の悪口を聞いている気になり
腹立たしさが先にたってしまう。
先生が俺の顔をチラッと見て微笑んだ。
(何を笑っているんだよ)
むかつきが止まらない。
「さとるさん。あの子のこと頼むよ」
「・・・・あ、はい」
「はい」と返事はしたものの
何を頼まれたのか分からない。
心配を掛けるなと言う意味だと解釈した。
499:1
06/11/24 02:51:28 D6UPk+mw
>>498の続き
家に着くとホッとしたのか
急に吐き気がしてトイレに駆け込んだ。
(やっぱり限界だったんだ・・・)
体も鉛のように重かった。
今日、俺を先生に会わせたのは
断薬の指導以外に彼女には目的があった。
もうすぐ訪れる別れの後
俺を坂野先生に託すためだった。
別れが近づいていることを
俺はこの時まったく気付いていない。