06/10/30 01:47:07 ULC1mNS0
俺は父子家庭だったが、家事のすべては親父がやっていた。
子供に不憫な思いをさせないという考えもあったのだろう。
高校からは給食もなくなり、弁当になった。
親父の作る弁当は、質素で無骨で見映えの悪い物ばかりだった。
友達に見られるのが恥ずかしくて、毎日食堂へ行き、お弁当はゴミ箱へ捨てていた。
ある朝親父がどことなく嬉しそうに「今日は〇〇の大好きな海老入れといたからな」と
俺に言ってきた。
俺は生返事でそのまま高校へ行き、こっそり中身を確認した。
すると確に海老が入っていたが殻剥きもめちゃくちゃだし
彩りも悪いし、とても食べられなかった。
家に帰ると親父は俺に「今日の弁当どうだった?」としつこく尋ねてきた。
俺はその時イライラしていたし、いつもの親父の弁当に対する鬱憤も溜っていたので
「うるせえな!あんな汚い弁当捨てたよ!もう作らなくていいから」とついきつく言ってしまった。
親父は悲しそうに「そうか…」と言いそれから弁当を作らなくなった。
それから半年後、親父は死んだ。俺の知らない病気だった。親父の遺品を整理していたら、
日記が出てきた。
中を見ると弁当のことばかり書いていた。
「手の震えが止まらず上手く卵が焼けない」 日記はあの日で終わっていた。