05/01/24 20:47:05 Qapny3w8
3人1組で止まっている軽トラックを押して、どこまで動くかを競う大会があった。
優勝チームには4トンの大型トラックが貰えることになっていた。
俺のトラック乗りの仲間で1人だけ自分のトラックを持っていなくて、会社のトラックを
借りている伊藤という男がいた。
そいつのために大会に優勝して、4トントラックを貰おうと俺ともう1人の仲間で言っていた。
大会の3ヶ月前から練習をはじめ、最初はぜんぜん動かなかったが
大会前には15メートルも押して動かせるようになった。
これは前年度のチャンピオンチームと同記録だった。
(これなら優勝を狙える)、そう思って望んだ大会当日、俺らの出番は1番最後だった。
その日の最高距離は14,7メートルで俺たちのベストスコアを出せば勝てる距離だった。
名前を呼ばれ、スタート位置につき、助走をつけ、スタートラインまで押して
軽トラックを走らせる。
軽トラックが勢いよく進んだ。
(これならイケる!)、そう思った時、なんと伊藤が軽トラックの前に立ちはだかって
軽トラックを止めてしまった。
場内はざわついている。
「伊藤、どうしたんだ?」
俺がそう聞いて、伊藤の方に行くとなんとコースに子犬が入り込み、座り込んでいた。
「そうか、このまま、軽トラックを走らせると子犬を轢いてしまう。
伊藤はだから軽トラックを止めたのか」
俺は伊藤の優しさに感激していた。
これでよかったんだ。