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「生活保護の現場ルポ 2012」から変わらない日本の今を考える<3>
2021年08月19日 8時00分
略
2012年7月30日、新宿区内で、この片山議員を囲むトークイベント「片山さつきと語り合おう!『生活保護問題』」が開催された。
参加者は片山ファンを中心に約50人。比較的小規模のイベントではあるが、それだけに片山議員の本音を聞き出すチャンスでもある。私は編集者とともに出席し、会場の最前列に陣取った。
なお、当初このイベントは「生活保護・あなたの隣にもいる河本」なるタイトルがつけられていた。
生活保護そのものを否定的イメージでとらえるかのようなタイトルに、私は強い違和感を覚えた。そもそも河本自身は何ら不正を働いたわけではない。理不尽に過ぎる。
そうした考えを抱いた人は少なくなかったのであろう。主催者である企画会社の担当者はイベントの冒頭で「多くの批判が寄せられたのでタイトルを変更した」と参加者に告げた。
それを「だから何なの?」とでも言いたげに憮然とした表情で聞いていた片山議員の姿が印象に残っている。
彼女はこの日も饒舌だった。生活保護見直しを滔々と訴える。
「私は生活保護の不公平感を正したいわけです。正直者がバカを見る、悪いやつほどよく眠るような世の中であってはいけない。
そんな大勢の方からの声が私のもとには届いています。一部には私が河本さんの個人批判をすることで制度改正に利用しているといった声もあるようですが、それは違う。
税と社会保障の一体改革を進めていくうえで、この問題を捨て置くわけにはいきません」
会場からは賛同意見が相次いだ。
「(生活保護を)ズルしてもらっている人はたくさんいるはず。そのことを批判するきっかけを片山先生がつくってくれた。感謝しています」
「先生の主張に大賛成。簡単に生活保護がもらえてしまう仕組みがおかしい。だいたい河本だって在日なんでしょう? 制度の歪みを感じる」
こうした参加者の言動だけでも、差別と偏見に満ち満ちた“片山ファン“の内実が透けて見える。
場の雰囲気を壊してしまうことは覚悟のうえで、私は片山議員を真正面に見る席から質問した。
─片山さんの河本攻撃が、結果的に生活保護叩き、利用者バッシングにつながっているように思う。片山さんはどう思いますか?
片山議員はなにひとつ表情を変えることなく、次のように答えた。
「犯罪加害者よりも被害者の権利が貶められてきたこの国において、一罰百戒は歓迎すべきこと。
生活保護の不正受給にしても、これまでいろいろと問題があったにもかかわらず、取り上げようとすると反貧困ネットワークのようなところによって潰されてきたんです」
重要なのは生保改革であり、利用者へのバッシングなど取るに足らないということなのだろう。一点突破、全面展開の勢いだけは彼女の言葉から感じることはできた。
続いて同行した編集者が質問する。
─片山さんの話を聞いていると、生活保護を利用することじたいが「いけないこと」のようにも感じてしまうが……
これにも片山議員は自信たっぷりに応じた。
「生活保護というのは日本文化からすれば恥です。人様の税金で生活しようとするのですからね。それがいいことなんだと、権利を謳歌しようなどと国民が思ったら、国は成り立たなくなる」
生活保護が恥─その言葉に思わずため息を漏らした私は、会場でも圧倒医的に少数派であったはずだ。「国は成り立たなくなる」と言い終えた瞬間、待ってましたとばかりに会場からは一斉に力強い拍手が沸いたのであった。
おそらく、これが生活保護をめぐる世の中の空気なのだと思う。頭の良い彼女はそのことを十分に理解しながら言葉を発しているはずだ。
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