21/02/08 17:12:20.89 JHc8IRpt0●.net BE:112890185-2BP(2000)
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時の私は当然ながら研究者としては駆け出しどころか受精前の卵子のようなもので、研究の手法から論点の整理まで
「なにが分からないのか自体さっぱり分からん」というべき段階にありました。
当然色々とご指導いただいてはいるものの、そんなもんが最初から身についていれば苦労はしません。
ただ、幸い神経だけはずぶとかったので、割と素直に「何一つわかりません」と先生に言いにいきました。
S先生は別に怒りもせず、むしろ私の面の皮の厚さは気に入ってくれたようで、
「「分からない」と言えることはとてもいい。プライドが高くて「分からない」ということが
開示出来ない間にずるずる時間だけ食ってしまうのよりずっとマシ。
本学の学生(東大でした)も結構プライド高いから、そういう学生はちょこちょこいる」
と褒めてくれました。
「けど、アカデミズムの技法を学ぶ上では、質問の仕方は覚えておいた方がいい」
そういう前置きの上で教えてくれたのが、
「質問は、二台目の掃除機を買いにいくつもりでしろ」という言葉でした。
この時の会話は、さすがに細部までとはいかないんですが、そこそこ明確に覚えています。大体こんな感じでした。
「つまりだな、掃除機を買いにいくとするだろう。電気屋の店員さんに、ただ「掃除機欲しいんですけど」と言ったらどんな掃除機が出てくる?」
「え。えーと。セール中の掃除機とかでしょうか」
「まあ近い。答えは、「相手が売りたい掃除機」が出てくる。
当たり前だけど、ただ「掃除機」とだけ言うと、相手に判断基準を全部丸投げにしているわけだから。
ただの店の都合で、全然吸い込めない上にすぐ充電が切れて、電源を切ったとたんに吸い込んだものがぽろぽろ落ちてくる、
愚にもつかないコードレス掃除機とか買わされるわけだ」
「コードレス掃除機になにか恨みでもあるんですか」
「けれど、ここで自分の中に「一台目の掃除機」という基準があったらどうなるか。
その掃除機を使って感じた経緯、不満点、改善したい部分とか当然あるだろう。
吸引力が弱いのか?重いのか?音がうるさいのか?紙パックが高いのか?
「ここは良かったから二台目でも継続させたい」ってところもあるかも知れない。
吸引力には不満はないんだけどちょっと高くてもいいからもうちょっと軽いのはないか、とか。
そうすれば、電気屋の店員さんも、ちゃんとこっちのニーズに合わせて真剣に答えてくれるだろう?」
「……なるほど」
ちょっと話が見えてきました。
「まあ、電気屋だったら、親切な店員ならそういう一台目の不満点をインタビューしてくれるかも知れないが、研究者はそんなことは聞かない。
「一台目」の情報がなければ、この相手に答える意味はないと考えるか、あるいは自分が話したいことだけ話す。
だから絶対に、「自分は一台目の掃除機で何を試みて、何が出来て、何が出来なかったのか」を相手に伝えないといけない」
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