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廃材をアートに 福井市出身美術家のギャラリーオープン
西アフリカ・ガーナの投棄場に捨てられた電子機器の廃材を使ってアートを手がける福井市出身の美術家、長坂真護（まご）さん（36）=東京都中央区=のギャラリー「MAGO GALLERY FUKUI」が6日、福井市中央1丁目の新栄商店街にオープンした。環境問題を強く意識した廃材を使った油絵や日本画など約30点が並ぶ。
作品の一つ「プラスチック化するアビドゥー」。少年アビドゥーの顔の左側を中心に、マウスなどの廃材が組み込まれている。コンセプトは「無作為に物を燃やして大気汚染していると、成分が結合して皮膚がプラスチックになる」。現地の少年をモデルに工業油まみれになった様子を表そうと、油絵で描いた。
高校まで福井市で過ごし、都内の文化服装学院に進学。卒業後は服について学ぶ留学費用を稼ごうと、新宿・歌舞伎町のホストクラブで働いた。ナンバー1になって3千万円もの大金を手にし、留学をやめて24歳でアパレルブランドを起業。が、1年で倒産し、1千万円の借金を背負った。
「ニートって言いたくない。でもプライドも高くて就職もアルバイトも嫌だった」。2009年に新宿の路上で、ライブペインティングを始めた。支援者に絵を売るなどして生計を立て、美術家として欧米での活躍を目指したが、かなわなかった。
そんな頃、たまたま読んだ経済書で、先進国の大量消費のしわ寄せが貧困国に及んでいるのを知った。17年6月、「電子機器の墓場」と言われる投棄場があるガーナのアグボグブロシー地区を訪問。「行かなきゃいけないという第六感」からだった。現地の子どもたちが、電子機器の廃材から銅などを得るために野焼きをし、有毒ガスが発生している。その光景を目にし「先進国の、我々の問題。ゆがみを変えたい」。
帰国直前、現地民からガスマスクがほしいと声を掛けられた。長坂さんは「お金がないから、そのごみをちょうだい。アートにして売れたら、ガスマスクを持って戻ってくる」。廃材を抱え、日本へ帰った。
廃材を使った作品は売れ、約束通りガスマスクを贈った。この取り組みが知られると、支持は拡大。18年3月、東京・銀座の個展に訪れたコレクターは「あなたのアートと活動に正当な値段をつけたい」。ごみから生まれた作品が、1点1500万円で売れた。
これまでに同地区へ850個のガスマスクを贈り、地区内に学校やミュージアムも設立。活動はドキュメンタリー映画になり、米映画祭で受賞もした。今の目標は30年までに100億円を集め、地区内にリサイクル施設を作ることだ。
自らの活動を「サステイナブル・キャピタリズム（持続可能な資本主義）」と呼ぶ。文化活動、その収益としての経済活動、廃材を使って環境を保つ社会貢献活動を、一つの枠組みで実現する取り組みという。
地元でのギャラリー出店は「故郷に錦を飾る一歩」。大阪、滋賀に続いて国内3店目で、年内に東京と岡山にも出店予定だ。店には地元のオーナーを置き、売り上げを折半することで地方創生も目指すという。「僕がピカソになった時、全世界の人がここを目指す。ここにしかない絵を見に来る基点に福井がなるのでは」。壮大な夢を胸に、今日も描く。