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理不尽すぎる扱いを受け続けた「氷河期世代」に救いはあるか
2019.06.08 16:00
中高年のひきこもりに関する報道が増えている。76歳の親が44歳の無職の息子を刺殺したかと思えば、
50歳の無職の息子がバットで隣の家を叩いているところを80代の父親が警察に通報し、息子が警官の顔面を殴って逮捕されるなどしている。
高齢の親が中高年のひきこもりの子供のことを心配する連鎖が広がっているのかもしれない。
この世代は、少し上の世代がバブル期の好景気によりいわゆる“一流企業”の内定を次々と取っていったり、高額のボーナスをもらったりしている話も知っている。
しかし、大学に入った時はすでにバブルは崩壊しており、卒業が近づくと就職氷河期に突入した。
過去に自殺未遂をした経験もあるという、都内在住の46歳無職男性・Aさんは自身の人生についてこう語った。彼は両親と同居している。
「工業高校に入り、板金塗装などを学んだのですが、当時の私はとても大学に入れるようなレベルではありませんでした。
だから高卒で働くことになったのですが、就職活動がバブル崩壊の年だっただけに、もう企業の採用数は抑えられて始めていた。
なんとか学んだことを活用できる小さな会社に入れたものの、今で言うパワハラに遭い、18歳の私には耐えられず数か月で会社を辞めました。
その後はホームセンターのバイトなどを転々とし続けたのですが、35歳ぐらいになった時、若い人達が正規雇用で会社に入れる時代になっていました。
この時、正社員で入って来た若者にアゴで使われるような扱いをされ、その職場も辞めました。
その後、自殺を図ったのですが、死にきれず、今はこうして親と一緒に住んでいます」
Aさんは淡々と語ったが、相当な苦労をしていたことが言葉の端々から透けて見える。
Aさんのように、自分よりも年下から見下されてこき使われる構図は、定年後に再雇用された従業員などにも見られるが、
そもそもの正規雇用の数を抑制された氷河期世代は、定年前から同様の扱いを受けてきたのである。
「手に職」をつけることもなく非正規で食いつなぎ、気付いたら「売り手市場」の頃に就職活動をした若い世代が出世していく様子を見てきたのが氷河期世代だ。
たとえ政府が「30万人雇用」というビジョンを示しても、これまでずっと非正規で働き続けてきた人間が、
いきなり正規雇用になってどんな仕事ができるのか、という問題がある。ましてや、ひきこもり状態から脱却できるのだろうか。
氷河期世代ながら正社員としての職を得ている44才の会社員女性・Bさんは、同世代の人間が苦しんでいる状況を踏まえて、以下のように語ってくれた。
「私は幸運にも正社員として仕事ができていますが、言い方は悪いですが、それは就職活動の時に他の人を『蹴落とした』ことで掴み取った道だと思っています。
あの時、正規雇用の仕事を獲得できた人が一人いたら、獲得できなかった人も一人存在するわけです。ただ私はラッキーだっただけ。そのためにも、きちんと納税をしたいと思います」
正社員として働く者も、非正規で働く者も、そしてひきこもり続ける者も、「氷河期世代」はそれぞれ見えない十字架を背負わされているのかもしれない。
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