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「権利には義務が伴う」
といういい方を聞いたことがありますか。
権利ばっかり主張して義務を果たそうとしない、わがまま勝手で自己中心的な人に対して、
「権利を主張するなら、義務を果たしてから言え」
と言いたくなる気持ちは、どなたにも分かると思います。
自由民主党が2012(平成24)年に発表した日本国憲法改正草案には次のような規定が盛り込まれています。
(国民の責務)
第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力により、保持されなければならない。
国民は、これを濫用してはならず、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない。
ちなみに、現在の日本国憲法の条文は次のとおりです。
第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。
又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。
比較してみると、自民党改憲案には
「自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し」
という一節が挿入されていることに気付くと思います。
これは、「自由を享受し権利を行使するには責任を負い義務を果たすべきだ」という意味であるようです。
自民党改憲案の背景には「自由や権利ばかりを主張して責任や義務を果たそうとしないのはけしからん」という考えがあります。
改憲案が発表された当時、同党の憲法改正推進本部起草委員会の委員の1人が、ツイッターで「国があなたに何をしてくれるか、ではなくて国を維持するには自分に何ができるか、を皆が考える」
とつぶやいたそうですが、いみじくもこの点に関する自民党の考えを示しているように思われます。
なるほど、代金を払わないのに商品をよこせと言う人がいたら、図々しいというか、場合によっては泥棒か何かと疑われてもしかたありません。
代金支払いという義務を果たさずに、商品の引き渡しを求める権利を行使するという構図ですね。
ただこれは、あくまで私人と私人との間の問題ですから、憲法の出る幕ではありません。
国と国民との間の問題を、私人と私人との間の問題と同じように考えるのは間違いです。
人権とは生まれながらに持っている権利で、お金を払ったとか、何かの義務を果たした人にだけ与えられるものではないのです。
もし、税金を払わない(納税義務を果たさない)から表現の自由を認めない、働いていない(勤労義務を果たさない)から生存権を認めない、
というのであれば、もはやそれは近代国家の名にもとると言うほかはありません。
そもそも、「権利には義務が伴う」という言葉は誤解・誤用されやすいもので、「権利を行使するには義務も果たさなければいけない」という意味ではありません。
誰かの権利の反対側に別の誰かの義務がある、というような意味で、例えばAさんがBさんに100万円の金銭支払請求権を持っているなら、
BさんはAさんに100万円の金銭支払義務を負っているということです。
別な例を挙げれば、国民が人権を侵害されない権利を持っているのと反対に、国は国民の人権を侵害しない義務を負っている、と言ってもいいでしょう。
そう考えると、自民党改憲案12条は、「権利には義務が伴う」の誤用であると同時に、近代人権という観点からも誤っているということになりそうですが、
どうも後者については確信犯的な気配を感じますので、いっそう厄介なことです。
権利と義務と | いつも心に憲法を
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