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日本が「韓国文学」から受けたすさまじい衝撃
編集者たちが見る「ブームの背景」
2019年12月29日
2019年、出版界に巻き起こった“韓国文学ブーム”。
出版不況と言われる中、韓国文学のヒット作を手がけた編集者たちは、そのとき何を思い、このヒットをどう見ているのか?
ブームの火付け役となった『82年生まれ、キム・ジヨン』を刊行した筑摩書房の編集者・井口かおりさんと、「韓国・フェミニズム・日本」特集号が3刷となり、その完全版を単行本として刊行したばかりの河出書房新社の『文藝』編集長・坂上陽子さん、そして韓国文学の翻訳者であり2冊のキーパーソンである斎藤真理子さんに話してもらった(全3回)。
第1回は、ここ数年での韓国文学をめぐる変化と、ヒットした背景についてです。
韓国で異例のヒット作
斎藤真理子(以下、斎藤):2017年8月に、『82年生まれ、キム・ジヨン』(以下、『キム・ジヨン』)が韓国で話題になっているという記事が出ていたんです。
韓国在住の作家、戸田郁子さんがベストセラーを紹介する記事で、『キム・ジヨン』が異例の売れ方をしているということで、それを見て本を取り寄せたのが最初でした。
私が取り寄せた当時は30万部か40万部ぐらいだったと思いますが、韓国で文芸がそれだけ売り上げるのは異例のことで、かつ、内容が女性問題を扱っているということで注目はしていました。でもまさか日本でこんなに話題になるとは、まったく思ってなかったですよ。
井口かおり(以下、井口):『キム・ジヨン』は女性が生涯に受ける困難や差別を描いた小説で、「フェミニズム小説」ともいわれます。「フェミニズム」というと中には、男性に攻撃的なものとか、女性優位とか思われることがあるんですが、私は男女平等とか性の平等として考えています。
以前から性差別をなくすということに興味があって、数年前から韓国でフェミニズムが盛り上がっていると聞いて、斎藤さんに何かいい本がないか相談していて、2017年秋ごろに紹介していただいたのがこの本です。
坂上陽子(以下、坂上):初版はどれくらいだったんですか?
井口:初刷4000部で、企画段階ではもっと少なかったです。アメリカの本で数十万部突破、といえば日本での売れ行きもある程度見通せますが、「韓国で数十万部」というのが、日本でどれくらい反響を得られる本なのか、企画を通した2018年2月の時点ではまだわかりませんでした。
斎藤:でも、4000部は海外文学としては多いじゃないですか。普通はそれを何年もかけて売るイメージですよね。
井口:Twitterで事前告知をしたところ、韓国のアイドルたちが読んでいたこともあってK-POPファンの方々などが待っていてくれて、それを見て部数を乗せたんです。
坂上:それでも発売当初(2018年12月7日発売)は品切れが続いていましたよね。
斎藤:家内制手工業な感じで本を作っていたら、年明けたら「本屋にない!」みたいに言われちゃって、普段そういうロットじゃない工場で働いているからすごく困ったよね。
井口:発売後2日で2刷、4日目に3刷が決まり、びっくりしました。
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