17/07/15 21:34:08.05 CAP_USER.net
戦後、大阪砲兵工廠(こうしょう)跡で鉄くずを盗んで日々の糧とした「アパッチ族」を描く。熱烈でやがて悲しき群像劇だ。「温泉ドラゴン」のシライケイタ作、「チョコレートケーキ」の日澤雄介演出。
1959年、日本人ヒノマル(西條義将)は、在日朝鮮人のアパッチ族に加わり、警察の目を盗んで盗掘を働く。朝鮮人はみな済州島出身者で、四・三事件によって家族を失ったり、生き別れになったりした人々だった。
客席に間近な舞台が濃密。夕餉(ゆうげ)ではホルモン焼きの香ばしい匂いと煙が充満し、彼らの家族同然の絆と活力を体感させる。危険を冒しての盗掘シーンは、闇に怒号が交錯し、ピンと緊迫感が張り詰める。五感に訴える臨場感ある演出だ。
一方、済州島に子を置いてきたパイコ(月船さらら)と行商人ハル(清水直子)の会話など、女たちの哀愁もつづる。「動」と「静」の落差が鮮烈だ。とりわけ、言葉を失ったイップニ(佐原由美)がかすかに発語する場の劇的転換には戦慄を覚えた。
これは卑俗な少数者から国家を逆照射する試みだ。彼らは故国を追われ、日本で国策の負の遺産を処理する。
しかし、劇中のせりふによれば、彼らを「侵略するための武器」を作った工場跡で拾った鉄は、やがて朝鮮戦争で同胞の殺し合いにリサイクルされる。
この矛盾を生き延びる者が放つ「自分らに都合の悪い歴史はこうやって隠されてゆく」といったせりふが鋭く突き刺さる。17日まで、東京・早稲田のSpace早稲田。(演劇評論家 小山内伸)
URLリンク(www.sankei.com)
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アパッチ族の面々は、月を見上げながら、韓国から日本に逃げてきた経緯を話し出す