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る不利益や弊害を防ぐことを目的として,懲戒委員会の審査に先立っての綱紀委員会による調査を前置する制度が設けられているのである。
現に,本件懲戒請求についても,広島弁護士会の綱紀委員会は,一括調査の結果,懲戒委員会に審査を求めないことを相当とする議決を行った
ところである。綱紀委員会の調査であっても,対象弁護士にとっては,社会的名誉や業務上の信用低下がもたらされる可能性があり,また,
陳述や資料の提出等の負担を負うこともあるだろうが,これらは弁護士懲戒制度が自治的制度として機能するためには甘受することがやむを
得ないとの側面があろう。2本件懲戒請求者の主体的な判断の意義また,私は,本件呼び掛け行為の不法行為該当性を考える上で,本件懲戒請
求者の主体的な判断を軽視ないし無視することは相当ではないと考えるところ,法廷意見が,本件呼び掛け行為は,あくまでも視聴者自身の
判断に基づく行動を促すものであったとし,更に,第1審原告らに対して多数の懲戒請求がされたについては,多くの視聴者が第1審被告の
発言に共感したこと等が大きく寄与したものとしている点は重要である。より具体的に,本件懲戒請求者の主体的判断について考えれば,
本件懲戒請求者の大多数が,本件番組を視聴し,また,ウェブサイト上の懲戒請求の書式の利用により簡便に懲戒請求できたことは事実であ
ろうが,自身の実名,連絡先等を記入した書式を作成,提出して懲戒請求という能動的行為を行うに当たっては,本件懲戒請求者において大
きな関心を持ってそれなりに主体的な判断を行ったと考えるべきであろう。多数の本件懲戒請求が行われた背景として,本件弁護団の弁護活動
については本件番組が放送される以前にも種々の議論がマスコミにおいても見られたと