13/07/05 02:29:34.44 AsDM8EMW
新島襄と学生たちは、しばしばハンティングに出かけた。
ある時、伴をしていた八重と徳富猪一郎(蘇峰)は勢子役を買って出る。
勢子とは、獲物を見つけて退路を防ぎながら追い込む役。
獲物を探して山野を駆けまわるのだが、あたかも山猿のように走り回る八重に比べ
日頃運動不足気味の徳富は早くもゼイゼイと息を切らしていた。
「本ばかり読んでいるから体力がつかないのよ」八重に言われても返す言葉がない。
「八重夫人、申し訳ない。少し休ませて下さい」体面もなく、ついに根をあげた。
「しょうがないわね。これを飲んで一息つきなさい」八重は背負っていた荷から
おもむろに水筒を取り出して徳富に差しだす。
徳富は一礼して水筒を受け取り、乾いた喉を潤すために中の液体を勢いよく流し込んだ。
「ぐえぇぇええ!!!」次の瞬間、徳富は断末魔のような悲鳴を上げて流し込んでしまった
謎の液体を鼻と口から噴き出す。見たこともない真黒な液体だ。
「こ、これは何です?八重夫人(このヌエ、俺に何を飲ませやがった!?)」
言論界の大巨人・徳富蘇峰が生まれて初めてコーヒーと出会った瞬間であった。