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○本郷先生の産経新聞の記事によれば神皇正統記(北畠親房)にも
「王家の権さらになきがごとくになりぬ」という用例もあり
「王家」は一般的な用法だった。また、「皇家」は「王家」
ほど使われてなかった。
→まず神皇正統記の全文テキストファイルも検索しましょう。
URLリンク(www.j-texts.com)
検索結果は次のとおりです。
「皇」 695件
「天皇」359件
「王」 179件
「帝」 73件
「上皇」 46件
「朝廷」 4件
「朝家」 2件
「皇家」 2件
「王家」 2件
まず、「王家」は稀な用例であることが理解できるはずです。
また、「王」は古代の日本の王、漢籍で出てくる王、親王がほぼ
すべてです。
では、ここでそれぞれの用例を見ましょう。
まず「王家」の用例は次の二つです。前後の文章も必要でしょうから
転記します。
(用例1)
これより清盛天下の権をほしきまゝにして、程なく太政大臣にあがり、
其子大臣大将になり、あまさへ兄弟左右の大将にてならべりき
天下の諸国は半すぐるまで家領となし、官位は多く一門家僕にふさげたり。
王家の権さらになきがごとくになりぬ。
(用例2)
頼朝勲功まことにためしなかりければ、みづからも権をほしきまゝにす。
君も又うちまかせられにければ、王家の権はいよ<おとろへにき。
このように「王家」は「王家の権」として成句で2回しか使われていません。
検索結果を見てもそれぞれの文脈にあわせて適切に
それぞれの言葉を著者は使い分けていることは明らかです。
つまり、「王家」は権力構造の説明のためにのみ
成句として使用されていると考えるのが妥当と思います。
また、神皇正統記には「王家」より高い頻度で、「朝廷」、
同じ頻度で「皇家」や「朝家」があることも指摘しておきます。
従って本用例もNHKの「王家」の使い方の根拠としては弱いと考えます。
(黒田先生は「王法正理論」やこの用例を踏まえて「王家」を使ったと
思われますが、黒田先生が「王家」が中世史料で頻出するされたことの裏付けは
データベース上から発見することはできませんでした。)