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南北で脱北のせめぎあい
【ソウル=中川孝之】
北朝鮮から苦難の末、韓国に逃れた後、再び北朝鮮に戻る脱北者が続出している。
昨年の金正恩(キムジョンウン)体制発足後、12人に達し、全員が「生き地獄
だった」と韓国批判を展開した。脱北者の増加を危惧した北朝鮮側の工作がある
とみられるが、韓国定着に失敗した脱北者の中には、自ら北朝鮮入りを図る
ケースも出始めている。
北朝鮮の朝鮮中央通信によると、7月に再入国した元脱北者の「座談会」が
9月30日に平壌で開かれた。このうちチャン・グァンチョル氏(33)は
「韓国では職探しが大変で給料も韓国人の半分以下。悪夢の日々だった」などと
語った。
北朝鮮メディアが、元脱北者の「座談会」や記者会見を報じ始めたのは昨年
6月、ソウルで6年間生活した後に帰国した女性の例からだ。報道内容は
▽中国で韓国情報機関にだまされ、連行された
▽韓国生活は最低だ
▽正恩氏は罪深い私を許してくれる―で共通。
韓国政府は、北朝鮮住民の韓国への憧れを壊す狙いの宣伝工作で、
セリフも丸暗記させているとみる。
再入国に北朝鮮当局が関与しているとの見方も強い。チャン氏の知人によると、
北朝鮮北部・恵山(ヘサン)からチャン氏の妻子が後を追って脱北したが、
中国で逮捕されて北朝鮮に送還された。チャン氏はソウル近郊で建設作業員として
働き、生活も定着。知人は「家族の逮捕を聞いて我を失っていた。北朝鮮当局に
脅迫されたのでは」と話す。他にも、家族の身柄拘束後に姿を消した脱北者がおり、
韓国政府は経緯を調査中だ。
北朝鮮消息筋によると、再入国後の待遇は劣悪で、少なくとも2人は政治犯
収容所に送られたとの情報がある。北朝鮮から再び脱北し、8月に韓国入りした
夫婦が韓国当局に語った話では、北朝鮮での取り調べで、脱北者仲間23人の
個人情報を話すよう強いられた。
(2013年10月9日10時41分 読売新聞)
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