12/03/17 18:00:40.09 niPkGuMz
2010年のKOTYを振り返れば、新たな市場開拓を目論む携帯アプリが
恋に恋する乙女ゲーマー達を蹂躙するまさに地獄のような年であった。
数ある刺客の中で大賞の座をもぎ取った「天下一★戦国LOVERS DS」が行った
「続きはあなたの心の中で」ならぬ「続きはあなたのお金で見てね」という課金商法は
大きな衝撃を与え問題作となった。
もうこれ以上クソゲーが増えて欲しくないと願う乙女達のささやかな祈りを踏みにじるかのように
年が開けて間もない2011年2月24日――乙女ゲーム業界を根本から揺るがす一本のゲームが発売された。
その名は「遙かなる時空の中で5」
日本で始めて女性向け恋愛シミュレーションゲームを販売したとされ
乙女ゲーマーなら知らぬ者はいない老舗メーカー、コーエーより発売されたシリーズ5作目の乙女ゲームだ。
これまで平安時代、源平争乱期、異世界の古代と過去の歴史で世界観を作り上げ
さまざまな形の恋愛劇を魅せてきたコーエーが最新作に選んだ舞台は幕末。
その時代の歴史人物たちとどのような恋愛模様が描かれるかファンは大いに期待していたが
その期待は予想を裏切るどころか粉微塵に砕かれたのだった。
土佐弁がトレードマークの坂本龍馬を筆頭に、幕末の登場人物全員が標準語で話す。
作中、脱走した同志を処刑する沖田総司はその新撰組を上司の前であっさり抜けてお咎めなし。
合戦前だろうが薩長同盟の会談中だろうが国の未来よりも主人公を口説き落とすことに心血を注ぐ攘夷志士たちと
これが歴史ゲームの金字塔とも謳われたコーエーが出したゲームなのか?と疑うような世界観だった。
しかしこれは史実を忠実に再現した歴史ゲームではなく異性との恋を楽しむ恋愛ゲーム。
創作物で歴史の偉人達が脚色されるのは他作品でも多々あることなので
たとえ教科書で習ったものとかけ離れた人物でも、その幕末の世界で恋ができればプレイヤーも満足いくのだ。
――そう、満足いくはずだったのだ。
なんと遙か5には恋愛ゲームの基盤とされる『恋愛』部分そのものにも大きな問題を抱えていた。
ゲームが始まったばかりの共通シナリオ時点ですでに攻略対象が主人公を妄信的に慕い愛を囁き、中にはストーカー行為にまで及んでいるキャラもいる。
その主人公、蓮水ゆきも問題で己が慕われ賛美されることを当然のように受け止めており
異性に直球で口説かれ露骨なボディタッチをされても照れたり眉一つ動こうともしない。
しかし個別ルートに突入するといきなり両者は深く結ばれた間柄にされ
恋愛ゲームに大切な恋愛に到る過程がまったく描かれていないのだ。
また公式も強く推している豪華声優陣の熱演も大いに期待されていたが
全体を通してボイスが入っている箇所が圧倒的に少なく
先ほどまで喋っていたキャラが口パクを始めるグラフィックを見てプレイヤーはバグなのかと錯覚するほどであった。
このご時勢にフルボイスでなくとも恋愛イベント中に喋れば問題ないと侮っていても
その恋愛イベントでも口パクは終わらず「ここでボイスを入れる意味はあるのだろうか?」という箇所に
キャラが突然、喋れることを思い出したかのようにボイスが入る誰得チョイス。
もはや恋愛ゲームで恋愛を楽しむことができない仕上がりとなっていたのである。