13/07/29 11:09:43.02 NIcbPi0f0
乙+保守
ケフカ、カッパの順かなあ
412:真偽と虚飾の自己定義 1/4
13/08/05 16:47:56.65 KJsrJXSJ0
************
「そういえば、あのさざなみの剣は置いてきて良かったんですか?」
「ああ。元はソロが持ってたヤツだし……後で回収するかもしれないと思ってさ。
それに、俺はやっぱコイツが一番しっくりくるんだ。
あれも業物なんだろうけど、ちょっと細すぎて頼りないんだよなー」
「……ワンッ」(忘れたわけじゃなかったのね。……拾って来ようと思ったけど、止めて良かったわ)
「でも……大丈夫なんですか?」
「え? 何が?」
「いえ、敵に拾われたらと思いまして」
「ユウナって子もアーヴァインって奴もガンナーなんだろ?
あれぐらいしっかりした作りの剣は、逆に素人じゃ使いこなせないぜ。
専業の剣士―セフィロスぐらいじゃないか? まともに扱えそうな、今生きてる危険人物っていったら。
あいつがどこにいるかはわかんねーけど、誰も会ってないってんだから、近くに居るとは思えないぜ」
「ワン」(あっ)
「あっ」
「え?」
「い、いえ……何でもありません」
「クゥーン……ワンワン」(だ、大丈夫よね……今のセフィロス、カッパの姿だし……)
*************
413:真偽と虚飾の自己定義 2/4
13/08/05 16:49:58.54 KJsrJXSJ0
スワンプマンの思考実験というものがある。
『沼の傍で落雷に撃たれて死んだ男がいた。
その横に別の雷が落ち、沼の汚泥と科学反応を引き起こした。
どういう偶然か、雷のエネルギーと汚泥の分子が死んだ男と全く同一、同質形状の生命体を生み出したのだ。
見た目も同じ、知識も同じ、記憶も同じ、人格も同じ。
沼から生まれた沼男(スワンプマン)は、死んだ男の姿で帰宅し、死んだ男のベッドで眠り、翌朝目覚めて死んだ男の職場に向かう。
死んだ男と同じ記憶を持つスワンプマンには、自分自身がスワンプマンだという自覚はない。
スワンプマンが生きている限り、周囲の人間は男が死んだとは欠片も考えないだろう。
このような状況下で、『男は死んでいる』と言えるのか?』
ここにいる私は本当に『セフィロス』なのか。
その疑問は、スワンプマンに己の正体を問うようなものだ。
スワンプマンは自分を『男』だと答えるに決まっている。
そして私もまた、真実はどうあれ自らを『セフィロス』と定義するしかない。
ふと、視界の先に死体が二つ見えた。
パパスとルカだ。隣にはザックが手つかずのまま残されている。
サイファーは既に二つザックを持っていたし、ソロも死人の荷物を漁るのは気が進まないという理屈で置き去りにしていた。
辺りには誰も居ない。
この忌々しい姿でも扱える道具が無いか、少しばかり探してみるとしよう。
―。
悪くはない武器が揃っている。
人の姿であったなら、だ。
魔法が使えなくなった時点で薄々予想はついていたが、この姿ではマテリアを扱うことは出来ないらしい。
防御を固めようにも、水かきと粘液のせいで盾すら上手く持てない。
この姿でもまともに装備として機能しそうなのは、このルビーがついた腕輪ぐらいか。
明らかに装飾品の類であるが、銃弾ならルビーに当てて弾くことも出来るだろう。
無いよりはマシというだけだが、文句など言える状況ではない。
>セフィロスは ルビーのうでわを そうびした。
……ふむ。着け心地は悪くない。
だが、腕輪のデザインを鑑みると、この姿でいることが口惜しく思えてきた。
それに冷静に考えてみれば、死体漁りなど私らしくもない。
下等な人間の中でも最下層の人種だけが行う、浅ましくせせこましい所業ではないか。
例え私の正体が何であろうと、私自身は自らをセフィロスであると定義していたい。
無論、そこらの人間にどう思われようと興味はないが……
『セフィロス』を知る者に嘲られるような真似をすることは、即ち私自身の否定ではないのか?
414:真偽と虚飾の自己定義 3/4
13/08/05 16:54:45.40 KJsrJXSJ0
だが、やはり見つけた二つのマテリアを他人に―ケフカに拾われるリスクは無視できるものではない。
これもまた純然たる事実だ。
「みやぶる」も「あやつる」も使いこなせば、下手な剣よりも強力な武器となる。
矜持と打算を天秤にかけるたところで、どちらも切り捨てられそうにない。
「……」
思考を重ね、妥協点を探る。
葛藤の果てに、『コピー』が置いていった銃とウィンチェスターを交換する事にした。
詭弁だとは私自身がわかっているが、これなら一方的な盗みとは言われないだろう。
それに人の姿に戻ったところで拳銃など使わないし、弾を抜いておけば拾うものがいたとしてもただの玩具。
問題はない。
寄り道をしすぎてしまった。
早く城に向かおう。
ソロ達に同行していた頃から違和感はあったが、一人で歩くとはっきりとわかる。
足が短くなったせいで、歩幅に比例して歩行速度が落ちている。
同行者がいればその速度に合わせれば問題ない。
しかし、一人では速度の基準がない。だから意図せず、不要なまでにゆっくりと歩いてしまうのだ。
少し歩行速度を意識するようにしなければいけないだろう。
―。
何分歩いたかはわからないが、ようやく、城壁がはっきりと見えてきた。
しかし眼を凝らすと、極彩色の人影が城門近くで跳ねている。
遠目でもわかるほど特徴的な衣装はケフカ以外にはないだろう。
さすがに声は聞こえないが、姿を見せているということは、まだこちらに気付いてない可能性が高い。
草原を背景に、緑の矮小な体躯を見つけ出せるほどの視力はないのだろう。
前線で戦わぬ人間などそんなものだ。
人影は姿を消さぬまま、城の中へ入っていった。
全ての部屋を回ったわけではないが、一階と二階の作りはだいたい覚えている。
ケフカが二階に上がる前にバルコニーに回り込むことが出来れば、ほぼ確実に不意を討てるだろう。
ケフカを殺せばカッパ化を解く手段の一つが失われるが、問題は無い。
思い返せば、私は既にカッパーの使い手と出会っているのだ。
今朝方ウィーグラフ達と共にいて、今は南東の祠に居る小娘・リルム。
どうやら南西に逃げたらしい『コピー』にこのウィンチェスターを渡し、
南東の祠にいる人間どもを殺す前に小娘を操らせ、カッパーを使わせれば良い。
ケフカを生かさずとも、それで私は人の姿に戻れる。
無論、【闇】の回収という一点だけを重視するなら、ケフカも『コピー』に始末させるべきではある。
アンジェロを探してから南東の祠に行き、不本意ながら敵意のないカッパを演じてリルムを守り、『コピー』の到着を待つ。
効率を考えるなら、それが一番賢いやり方だろう。
だが、果たしてそれは『セフィロス』たる私の思考回路だと言えるのか?
415:真偽と虚飾の自己定義 4/4
13/08/05 16:58:13.49 KJsrJXSJ0
魔術師一人に愚弄され、復讐の一つもせずに逃げ惑うカッパを、誰が『セフィロス』と認めるのだ。
犬と共に歩き、慣れ合う人間どもの影に隠れる緑色の矮小な生き物を、どうして『セフィロス』と呼べるのだ。
私がセフィロスである為に、何をすべきか。
それはやはり、ケフカをこの手で仕留める事ではないのか。
それも奴が変え、嘲った、この姿で。
見栄と言われればそれまでだ。
しかし見栄の一つも張れないような、非力な存在になった覚えはない。
事実、ケフカと相対した時、格闘術のみで奴を追い込めることが出来ていた。
逃がしたのは透明化の魔法を使われたから、ただそれだけだ。
ならば魔法を使わせなければいい。
今の私の手元にはスタングレネードがある。奴の動きを封じることは出来るのだ。
「―カー」
復讐を。
私が、私を、セフィロスだと認め続ける為に。
【ケフカ (MP:3/5)
所持品:ソウルオブサマサ 魔晄銃 魔法の法衣 アリーナ2の首輪
やまびこの帽子、ラミアの竪琴、対人レーダー、拡声器
リュックの支給品袋(刃の鎧、チキンナイフ、首輪×2、ドライバーに改造した聖なる矢×3)
サイファーの支給品袋(ケフカのメモ、白マテリア)
レオの支給品袋(アルテマソード 鉄の盾 果物ナイフ 君主の聖衣 鍛冶セット 光の鎧)
第一行動方針:デスキャッスルで進化の秘法の情報を集める
第二行動方針:脱出に邪魔なセフィロスを消し、アーヴァイン達に首輪を解除させる
第三行動方針:「できるだけ楽に殺す方法」を考えつつ全員を殺す
最終行動方針:ゲーム、参加者、主催者、全ての破壊】
【現在位置:デスキャッスル1F】
【セフィロス (カッパ 性格変化:みえっぱり)
所持品:村正 ふういんマテリア いかづちの杖 奇跡の剣 いばらの冠 プレデターエッジ 筆記具
ドラゴンオーブ、スタングレネード、弓、木の矢28本、聖なる矢15本、
ウィンチェスター(みやぶる+あやつる)、波動の杖、コルトガバメントの弾倉×2、E:ルビーの腕輪
第一行動方針:ケフカを殺す
第二行動方針:カッパを治して首輪を外すため、南東の祠に向かう
第三行動方針:進化の秘法を使って力を手に入れる/アーヴァインを利用して【闇】の力を得たジェノバとリユニオンする
第四行動方針:黒マテリアを探す
最終行動方針:生き残り、力を得て全ての人間を皆殺しにする(?)】
【現在位置:デスキャッスル近辺→デスキャッスル内部へ】
※ルカの死体の傍にコルトガバメント(残弾0)があります。
また、ルビーの腕輪・ウィンチェスター(みやぶる+あやつる)以外のルカとパパスの荷物は、手つかずで残っています。
416:傷つけ合うように、支え合いながら 1/9
13/08/06 02:04:39.97 fvGVZYIg0
彼らが南西の祠に辿りつくまで、何の障害も無かった。
生存者に会うことも、死者の遺体を見つけることもなく、食料の入ったザックを見つけることもなく。
ただ、踏み倒された茂みをなぞるだけで―二人と一人と一匹は、無事に目的地へ到着した。
「うーん。ボビィ、入れるかな?」
「頭さえ下げりゃすり抜けられるんじゃないか?
ちょっとお前ら降りて、やらせてみろ」
サイファーの指示に従って、リュックはアーヴァインを担ぎ降りる。
祠の扉は人間が通るには十二分に大きいが、自動車や馬車が通れるほどのサイズではない。
ただ、年若いボビィは普通のチョコボよりも一回り小さい。
そのサイズ故に二人乗りが限界であるほどだ。
「クエー♪」
アドバイス通り頭を下げ、ついでに翼をぴったりと身体に押しつけることで、ボビィは難なく扉をすり抜けた。
だが―
「……いけねぇ、止まれ!」
「ク、クエェッ!?」
サイファーが『そのこと』を思い出した時には、既に遅い。
ボビィは入口にあった段差に足を取られ、強かに転んでしまう。
「おい! 大丈夫か?!!」
「ク、クェッ、クェ~~」
足を捻ってしまったのだろう。ボビィは体勢を立て直したものの、涙を浮かべながらうずくまってしまった。
「な、なんでこんな所に段差なんて……」
何も知らないリュックが、ボビィに駆け寄りながら一人ごちる。
その呟きにサイファーは神経を逆なでられながら、自らの迂闊さを呪った。
いくら気力で取り繕うとも、人間には限界がある。
サイファーの身体は長時間の移動に伴う疲労で弱り、思考回路は二転三転する事態を前に悲鳴を上げている。
頭の回転は自然と鈍り、それが新たな苛立ちを生み出し、さらに彼を追い立てる。
募った焦燥と無力感は心にヒビを入れ、彼が殺めた者の魂と、精神に穿たれた隙間が【闇】を呼び寄せる。
けれども、それでもサイファーが【闇】に憑りつかれることはない。
すぐ近くにアーヴァインという別の依り代が―
その身体を蝕みながら【闇】を取り込む魔物がいるからだ。
擦れきった喘鳴を漏らす喉には、植物の根にも似た血管が絡みつくように浮き出ている。
サイファーの眼には、それが少しづつ長く、多くなっているように見えた。
その感覚は正しい。切り木の枝とて、土と水を与えられれば根を伸ばすのが道理だ。
しかしアーヴァインが苦しんでいることは分かっても、その事実が示す真の意味には、サイファーの思考は届かない。
彼の眼は【闇】を見る事など叶わないのだから。
417:傷つけ合うように、支え合いながら 2/9
13/08/06 02:07:06.32 fvGVZYIg0
「クエー、クエー……」
サイファーの自責を知ってかしらずか、ボビィは俯いたままめそめそと泣きだす。
「大丈夫だよ。転んだ時に、ヒザぶつけちゃったんだよね?
捻ったわけじゃなさそうだから、じっとしてれば治るよ!」
魔銃士の眼力で怪我の度合いを見抜いたリュックは、ボビィの頭を優しく撫でた。
甘えるように頭をすり寄せるボビィに向かい、彼女はぱちんとウィンクする。
「そうだ! 早く治るようにおまじないしよっか!
そーれ、いたいのいたいのとんでけー! いたいのいたいの、とーんでけーーー!」
彼女はしゃがんで傷を撫でてから、大げさなアクションとともに叫んだ。
「ク、クエー?」
ボビィはきょとんと眼を瞬かせる。
リュックはニコニコと笑いながら、再びボビィに触れる。
「よーし! 痛いの、バビュンって飛んでった!!
もう戻ってこないかんね、大丈夫だよー!」
「……クエ……クエッ!!」
言葉が通じたのか、気持ちが通じたのか。
ボビィは泣く事も痛みも忘れたように飛び跳ねた。
リュックはこっそり胸をなで下ろしてから、「よかったね!」とボビィに抱きつく。
「クエー!」と嬉しそうに鳴く鳥の羽をひとしきり撫でてから、リュックはサイファーに向き直った。
「ね、サイファー、どうする?
ボビィはこのまま休ませれば大丈夫だけど、さすがに階段は降りれないと思うよ?」
声をかけられ、我に返ったサイファーは、肩を叩きながら思案する。
「そうだな……」
この祠には侵入者を撃退する仕掛けが多い。
その利を生かすなら、やはり最下部に向かうべきだろう。
ボビィが盗まれる危険性は残るが、この若いチョコボは(泣き虫ではあるが)比較的賢い個体のようだ。
アーヴァインとリュックに懐き、ケフカから逃げおおせている以上、むざむざ他人に連れ去られはしないだろう。
そう判断したサイファーは、リュックに告げた。
「こいつは見張り代わりに残して、三人で下に行くぞ。
チョコボ、テメェだってこのクソッタレなご主人サマが死んだら嫌なんだろ?
妙な奴が入ってきたら大声で鳴いてみろ」
「クエッ!」
もちろん! と言わんばかりにボビィは大声で鳴いた。
サイファーは「ホネがあるんだかないんだかわかんねぇ鳥だな」と呟いてから、アーヴァインを担ぎ上げた。
階段を下り、人形の群れをすり抜けて、サイファー達は難なく最深部に到達する。
まず目についたのは、斜めに傾けられた玉座だった。
当然、サイファーには覚えがない。放送前にサイファーがここを発った後、誰かが動かしたのだ。
アーヴァインを壁際に横たえてから、二人で玉座とその付近を調べる。
すると、玉座の内部に水晶玉をはめ込んだ台座が見つかった。
418:傷つけ合うように、支え合いながら 3/9
13/08/06 02:09:53.48 fvGVZYIg0
「こいつが……スイッチか?」
サイファーはG.F.ケルベロスの力で、魔力の流れを操作する。
やがて予測通り、水晶玉が強い輝きを放つと同時に、『ブゥン』と羽音に似た起動音が響いた。
「やったあ!」
飛び跳ねて喜ぶリュックだったが―水晶玉の光が、不意に揺らぐ。
消えこそしなかったが、不規則に明滅する様は、サイファーの脳に一つの仮説を立てさせた。
「……やってくれたな、あのクソピエロ」
「え?……ん、んん? あれ?」
吐き捨て、歯ぎしりするサイファーに、リュックは台座を凝視し……彼が辿りついた結論に気付く。
水晶玉にあるべき魔力は、その大部分が失われていた。
誰が犯人だと声高に叫ぶまでもなく、疑わしい人間は一人しかいない。
(ケフカ……あの野郎とセフィロスだけは絶対にぶっ殺してやる!)
煮えたぎる怒りと憎悪を胸中に溜めこみながら、サイファーは一旦祠の機能を止めた。
どれぐらいのペースで残りの魔力を消費するかわからない以上、使い所は考えなければならない。
「着けっぱなしで一日持つならいいが、楽観は出来ねえ。
こいつは寝る時にだけ使うぞ」
「うん、わかった。
起きてる時なら、悪い奴が来ても二人でちょちょいってやっつければいいだけだもんね!」
二人は頷き合いながら、アーヴァインの傍に戻り、腰を落ち着ける。
サイファーはため息をつきながら水を飲み、リュックはアーヴァインに視線を注いだ。
そのまま、沈黙が辺りを包む。
移動によって生じた疲労はサイファーから気力を奪い、絶望に似た閉塞感はリュックから言葉を奪う。
事情説明を切りだせないまま、二人は口を噤み―時間が過ぎていく。
変化が訪れたのは、十数分後だった。
アーヴァインの右手が僅かに蠢き、下手な短剣よりも長大で分厚い爪が、ガリ、と床を削る。
「アーヴァイン?」
リュックが呼びかけると、彼は薄く目を開けて、ざらついた声を絞り出した。
「リュック……サイファー……」
やはり耐え難い苦痛に苛まれているらしく、不安定で虚ろな声音ではあったが、頭は正しく働いているようだ。
「ここは……しろじゃ、ない……? ほこら……?
ロックは……いっしょ、じゃ、ないのか……?」
彼なりに状況を把握しようと努めているのか、右腕の眼球がせわしなく動く。
当然ながら、そこに敵意は感じられない。あるはずがない。
419:傷つけ合うように、支え合いながら 4/9
13/08/06 02:12:07.57 fvGVZYIg0
「アーヴァイン。テメェ、あの『ロック』と何か話をしたのか?」
サイファーは身を乗り出し、アーヴァインに問いかける。
刺々しい怒気を孕んでいるのは、ロックに化けていたケフカの嫌らしい笑みを思い出したせいだ。
「はなし……そりゃ、した、けど……
ユウナと、ピサロの、けんきゅう、と、あの、カッパ……セ、セ、……い"、ぎぃい、うぁ"あ」
何かの名を口にしようとした途端、アーヴァインは頭を抱えて呻き出す。
「セフィロスだってんだろ?」
サイファーの言葉に一度は頷くも、顔を上げる事はなく、そのままうずくまってしまった。
身体を抱え込むようにスライドした右手の爪が、ローブを切り裂き、アーヴァイン自身の身体に容赦なく突き刺さる。
「ちょ、ちょっと! 落ち着いてって!!」
異変を感じ取ったリュックがサイファーを押しのけた。
だが、彼女の瞳に飛び込んできたのは、呻き声に合わせてのたうつ触手でも、爪を濡らすように滲む血でもなかった。
アーヴァインの身体から染み出るように舞い上がった、七色に輝く淡い光―
(―……幻光、虫?)
ここ数日間見ていなかった輝きは、リュックとサイファーの眼前で急速に収束し、まばゆい閃光を放つ。
「くっ!?」
「ひゃっ!?」
目が眩んだのは一瞬だった。
二人は我に返るなり、反射的に身構え―眼前の光景に、再び目を瞬かせる。
『リュック!! 良かった、そっちも無事だったんだな!!』
見慣れない緑のバンダナ、日焼けして色褪せた金の髪に、浅黒い肌。
一振りの剣を携え、場違いなほど朗らかに笑う『死人』が、二人の前に立っていた。
『あんたがサイファーってヤツか?
アービンとリュックのこと助けてくれてあんがとな!
それとロックは……って、なんだ、いないのか? アイツ、相変わらずわけわかんねーヤツだな』
我が目を信じられず、呆然と立ちすくむ二人を余所に、実体化したティーダは捲し立てる。
そして懐を探り、『えっと、こっちのヤツだよな』などと呟きながらメモを取り出すと、サイファーの手に押しつけた。
『これさ、スコ……じゃなかった、えっと、その、と、とにかく!
渡したから、できるだけ早く読んでくれよな!』
一方的に言い放ち、返事も聞かないまま、ティーダはアーヴァインに向き直る。
そこで初めて、召喚者の容体に気付いたのだろう。
『ア、アービン!? どうしたんだ?!』
明るい声音はなりを潜め、泣き叫ぶようにティーダは彼の名前を呼んだ。
震える肩に触れ、喰い込む爪を外すように右腕を抱えたティーダが、どんな表情を浮かべていたのか―リュックにはわからない。
ただ、ティーダが叫んだ声だけは、はっきりと聞き取れた。
420:傷つけ合うように、支え合いながら 5/9
13/08/06 02:16:52.57 fvGVZYIg0
『アービン、まさか、また無茶したのか!?
止めろよ! いくら頼まれたからって、そこまでしろだなんてアイツも…!』
「……、…………、………」
サイファー達にはアーヴァインの声は殆ど聞こえなかった。
声が枯れているせいもあるだろうが、意図的に小さい声で話しているらしい。
何かを喋っている、ということだけが辛うじてわかる程度だ。
『だからって……! じゃあ、なんで、そんなに苦しそうなんだよ!
あんたいつもそうじゃないか! 苦しい時に限ってカラ元気作って!』
「………、…、………」
『……そんなの』
「………、………、…………」
『……わかったよ。アービンの気持ちは。
だけどさ、これだけは言っとくぞ』
「……?」
『俺は……ユウナだけじゃなくて、あんたが死んでも、泣くからな!』
「ティ……ティーダ!?」
初めて、張り裂けそうな叫び声を上げたアーヴァインの前で、すう、とティーダの姿が薄れていく。
縋るように上げた顔も、差し伸べた左手も引き止めることは叶わずに。
舞い上がる幻光虫に飲み込まれるように、ティーダは幻のように掻き消えた。
「何なんだよ……」
サイファーは舌打ちしながら、渡されたメモを広げる。
焼け爛れた無残な死体に成り果てていたはずの男が、突然現れて消えた。
それだけでも理解の範疇を超えていたが、ティーダはさらにスコールの名前まで言いかけた。
だが、不可解極まる謎の答えは、この紙片に書かれているのだろう。
そんなサイファーの推測通り、そこには明らかに見覚えのある筆跡で文章が綴られていた。
【サイファーへ。
詳しい事情は後で話すが、どうしてもある道具の効果を確かめたいので、、
お前が今一番殴って問い詰めたい奴の事を考えながら眠ってみてほしい。
マッシュより】
「……何なんだよッ!」
署名こそマッシュになっているが、右手を腕ごと失っている彼がこんな字を書けるはずもない。
そもそも筆跡の時点で、間違いなくスコールが差出人だ。
けれども、肝心要の答えが書いていないどころか、更なる謎を呼ぶ文章しか記されていない。
「アーヴァイン! スコ……いや、テメェら何を企んでる!?」
メモを放り出したサイファーは、ティーダが消えた場所を見つめていたアーヴァインの胸倉を掴み上げる。
「サイファー、止めなよ!」
リュックが制止するも、怒り心頭のサイファーは手を離さない。
死人のような顔色をさらに悪くしたアーヴァインは、ぜひ、ぜひと喉を鳴らしながら、苦しげに答えた。
421:傷つけ合うように、支え合いながら 6/9
13/08/06 02:19:46.06 fvGVZYIg0
「し、ん……ぃ"い、て……」
「あぁ?!」
眉間に皺を寄せて恫喝するサイファーの耳に、グチュリと生理的嫌悪を掻きたてる音が響く。
「て、ちょ…う"ぅ…、はっ、は……ん、ちょ………しん、じ……ぇ……」
固く閉ざされた瞼は、何に耐えているのか。
その疑問はすぐに解消される。
リュックは見た。
息も絶え絶えに訴える、その背中に付いた浅くも無い四本の爪痕の奥で、何かが蠢くのを。
そして―二人は聞いた。
ギチリ、ギチリ、グチャリ、と。
裂けた傷口から、肋骨に似た突起がローブを突き破ってデタラメな方向へ飛び出す、その音を。
もはや悲鳴を上げる余力も無いのか、アーヴァインはサイファーに体重を預けたまま、動こうとしない。
溢れた血はぶくぶくと泡立ちながら死斑の浮き出た紫の皮膚に代わり、同じ色の粘液を滲ませる。
その奥からさらに別の組織が盛り上がり、『治った』ばかりの皮膚諸共に布地を貫いて、左側に小さな羽を形作る。
蝶とも蝙蝠ともつかない、血管の浮き出た被膜。
セフィロス・コピーの黒翼ではない、古代種に擬態したオリジナル・ジェノバと同質の羽―
―G.F.が使用者の魔力を必要としないのは、G.F.自体が膨大なエネルギーの塊であるからだ。
高度な自我を保持するために使用者の脳を利用するため、記憶障害という症状を引き起こすが、
仮に人間が居なくとも、自我の固定を可能とするほどの力場があれば単独での実体化が出来る。
しかし、ティーダは違う。
彼に限らず、通常召喚獣と呼ばれる存在は、自分自身を現実世界に実体化させることはできない。
強大なエネルギーを持つ点はG.F.と変わらないが、彼らの殆どは自我や魂の保持にリソースを割いているのだ。
故に、召喚者から魔力を提供され実体化した時だけ、自らの持つエネルギーを破壊の力として転用できる。
つまり、召喚士に求められるのは記憶を失う覚悟などではなく、召喚獣の信頼と、適正と魔力なのだ。
だが、アーヴァインにはティーダとの友情こそあれ、召喚士としての適性など欠片も無い。
魔力とて【闇】に侵された結果手にした、後天的でちっぽけなモノ。
それも魔王にすら才能が無いと太鼓判を押されたほどだ。召喚獣を召喚する魔力など、行使できる道理が無い。
けれども皮肉なことに、彼を異形たらしめたジェノバ細胞が、不可能を可能にしてしまった。
とある廃人となった青年が、ジェノバ細胞の力で一流のソルジャーの記憶と才能を転写したように。
呪われた細胞は近くにいたリュックとティーダの記憶から、一流の召喚士であるユウナの才能を転写した。
そして【闇】から得た魔力を放出することで、ティーダの召喚を成功させたのだ。
しかしそれは、ジェノバが宿主の意に屈した事で成し得た奇跡ではない。
魔道士ケフカの魔力と悪意を浴びて成長したジェノバが作り上げた、偽りの希望。
望む力を与えることで意識に入り込み、同化を促し、全てを奪い尽くす為の罠だ。
アーヴァインはそのことに気付かないまま、ジェノバの力に縋り……更なる侵食を許してしまった。
422:傷つけ合うように、支え合いながら 7/9
13/08/06 02:25:27.06 fvGVZYIg0
「おい!! くそっ、ふざけんな!!」
サイファーが悪態をつきながらアーヴァインを揺さぶる。
反応こそ返す余裕はなかったが、アーヴァインとてジェノバの意思に抗ってはいた。
だが、一人では止めきれない。
体内を間断なく貫く苦痛と流れこむ殺戮と捕食の衝動が、意識をかき乱すからだ。
のたうつことも出来ずに苦しむ彼を救ったのは―実体無き魔銃を掲げたリュックの一射だった。
「ホ、ホワイトウィンド!」
癒しの力を宿す、唯一の回復魔銃弾。
事態を把握したリュックが放った弾丸は、アーヴァインの身体を捕えるなり一陣の風となって部屋中を駆け巡る。
生あるものの活力を呼び覚まし、人に害なす邪悪を鎮める白き風。
魔女の力に阻害されてもなお、風が持つ浄化の輝きは、大地の理から外れた寄生生物の活動を弱めるには十分だった。
変化した身体こそ戻らないが、異形化の進行はぴたりと止まる。
「アーヴァイン! だいじょーぶ!?」
リュックは駆け寄り、サイファーと一緒にアーヴァインの身体を支えた。
アーヴァインは薄目を開けて何事かを呟く。
「……ぁ"ー、……っ、く……」
前にも増して不明瞭な発音であったが、名前を呼ぼうとしたのだということはすぐに理解できた。
「ぉ……ぇ、……」
『ゴメン』と唇が動く。
それから『信じて』。『手帳を』。『班長の言葉を』。『信じて』。と、繰り返し声なき声で訴える。
それらの言葉は彼の真意を裏付けると同時に、ここまで変貌を遂げてなお、正気を失わずにいるという証明だ。
リュックにとって、それは喜ぶべき事実だった。
そしてまた、アーヴァインにとっても人の心を見失わずに済んだ事は大きかった。
ただ一人、サイファーだけは、そうは思わなかった。
サイファーの脳裏に二つの影が過ぎる。
カナーンで死んだ剣士とウルで暴れ回った巨獣。狂気じみた精神力で、命尽きるまで止まらなかった者達。
人から異形に成り果て、明らかに苦しみながら生き足掻いているアーヴァインの姿は、どこか彼らと重なって見えるのだ。
アーヴァインに生を選ばせているのは、友情や希望といった甘い言葉ではなく―
テリーやブオーンを突き動かしたのと同じ、『呪い』の類なのではないかと、思えてきてしまうのだ。
(……殺すべきなんじゃないのか?)
一度は封印したはずの思考が、サイファーの胸中で再び鎌首をもたげはじめる。
(殺してやるべきじゃないのか? こんなになってまで生きて、その先に何があるってんだ……?!)
その怒りと殺意が【闇】を引き寄せてしまうことにも気づかず、サイファーはアーヴァインを見つめる。
423:傷つけ合うように、支え合いながら 8/9
13/08/06 02:27:14.84 fvGVZYIg0
(………)
一方でアーヴァインはサイファーの【闇】に気付いていた。
それでもその事には触れない。触れる事ができない。
声に出す気力が尽きたからではない。
自分が生きる事でサイファーを【闇】に晒すと理解していても、アーヴァインには自らの死など選べないからだ。
首輪を外す為にもユウナを救う為にも、魔女を倒す為にも、生き残らなければならない。
自分が殺めたも同然のティーダを、さらに泣かせることになるというのなら―尚更、死ぬことは許されない。
アーヴァインは左手と腹から生えた触手でサイファーの腕を振り払った。
当然、一人では立てずに膝から崩れ落ちる。
自重にすら抗えず、そのまま右側に倒れ込み―リュックに引き戻され、壁に寄りかけられた。
「……あ……ぃ、…が……と」
「前に言ったでしょ。ティーダの友達を見捨てるなんて選択肢はないって」
首輪に触れながらリュックは答える。
彼女は、純粋に仲間を信じていた。
【闇】すら寄りつけない、光に満ちた心は、誰よりも確かに未来と希望を目指していた。
リュックは考える。
アーヴァインが言葉を選ぶ余裕を失っている以上、フォローしなければならないのは自分だと。
「そんなナリになったせいかは知らないけど、とにかく、あんたが正気に戻ったってのはわかった!
だから、あとは新生カモメ団mkⅡ、テ・リ・サにおまかせしなさいっ!!」
「は?」
ビシッとポーズをつけてまで言い放つリュックに、サイファーが反応する。
南東の祠で分かれた時に、彼女がスコールとバッツを連れて『新生カモメ団ス・リ・バ!』と言っていたのを覚えていたのだ。
「なによ、文句あんの?」
「ああ。勝手に人を頭数に入れんじゃねえ。
それからテってのはティーダの事か? どういう理屈で化けて出たのかは知らねえが、幽霊を勘定に入れてどうする。
それに前半のカモメなんちゃらってネーミングセンスも気に入らねえ」
「もー! 気に入らなくてもなんでも、元気づけなんだからノっときなよね!
ねー!」
同意を求められたアーヴァインは当然のように口を噤む。
それから数秒ほど間を置いて、『のーこめんと』と唇が動いた。
「……も、もう。いいよ、そういうことなら。
とにかく、あたしがコイツのこと看病しとくから、サイファーは寝ときなよ」
リュックはメモを拾い上げ、サイファーの眼前で揺らす。
死んだはずのティーダが現れた理屈はわからなかったが、彼が見せた表情や言動は間違いなく本物のティーダだった。
そしてティーダとスコールが協力し合っているというなら、メモは、全員で生きて帰る為に必要な行動を示唆しているのだ。
仲間を信頼する彼女は、疑わない。迷わない。
424:傷つけ合うように、支え合いながら 9/9
13/08/06 02:30:51.75 fvGVZYIg0
「サイファーだって、走り通しで疲れてるでしょ?
あたしはボビィに乗せてもらったから、元気イッパイだもんね!
ね、ほら、横になってグッスリ寝ちゃっていいよ。時間が経ったら起こすからさ!」
「……わかったよ。うっせぇな」
サイファーは眉間に皺をよせたまま、彼女の手からメモをひったくる。
彼にも思う所はある。だが、それはリュックにぶつけても無意味だ。
"今一番殴って問い詰めたい奴"。
即ち、茶番劇を仕組んだ張本人であるスコールに対して怒鳴りつけなければ気が済まない。
殴られて問い詰められるだろうという自覚があるなら尚更だ。
しかし―やはり眠る前に、茶番劇の片棒を担いだ男には言っておきたいことがあった。
「おい、ガルバディア野郎」
「……?」
「さっきはテメェのクソ下らねえ命乞いを聞いてやったがな。
テメェが正気を無くしたら、誰が何と言おうと切り捨てる。
それだけは覚えとけ」
アーヴァインは頷きながら、『わかってる』と答えた。
口の両端を吊り上げて作った微笑は、空元気と言う以外に表現しようがないほど痛々しいものだった。
【サイファー(右足軽傷+重度の疲労)
所持品:メタルキングの剣、G.F.ケルベロス(召喚不能)、正宗、スコールの伝言メモ
第一行動方針:メモの指示に従って眠る/スコールを殴って問い詰める
基本行動方針:マーダーの撃破(セフィロス優先)
最終行動方針:ゲームからの脱出】
【リュック(魔銃士、MP9/10)
所持品:ロトの盾 クリスタルの小手 ドレスフィア(パラディン) マジカルスカート
破邪の剣、ロトの剣
第一行動方針:周囲を警戒/アーヴァインを看病する
第二行動方針:ユウナを止める/皆の首輪を解除する
最終行動方針:アルティミシアを倒す】
【アーヴァイン(変装中@白魔服、MP微量、半ジェノバ化(中度)、右耳失聴、声枯れによる一時的失声)
所持品:ビームライフル 竜騎士の靴 手帳、G.F.パンデモニウム(召喚×)、リュックのドレスフィア(シーフ)
ちょこザイナ&ちょこソナー、ランスオブカイン、スプラッシャー、変化の杖、祈りの指輪
チョコボ『ボビィ=コーウェン』、召喚獣ティーダ
第一行動方針:休む
第二行動方針:脱出に協力しない人間やセフィロスを始末したい/ユウナを止めてティーダと再会させる
最終行動方針:魔女を倒してセルフィや仲間を守る。可能なら生還してセルフィに会う
備考:理性の種を服用したことで、記憶が戻っています。
ジェノバ細胞を植え付けられた影響で、右上半身から背中にかけて異形化が進行しています。
MP残量が回復する前にMP消費を伴う行動をするとジェノバ化が進行します。
セフィロスコピーとしてセフィロスに操られる事があるかもしれません】
【現在位置:南西の祠】
425:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/08/06 20:41:19.23 DJrx8q/R0
連続で乙!
426:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/08/08 13:27:02.93 KXCnPT9C0
追いついた! 投下乙!
惨劇の幕開けの予感だったりする一方で、着々と進む脱出等の反逆手段。
ケフカッパにYUNネキとか乗り越える壁もあるけど……がんばれ!
427:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/08/13 00:08:26.86 KAgxm0uW0
アーヴァイ、やばいね。いや、色んな意味で。
428:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/08/13 12:38:50.66 tXdN75SH0
ジェノバS細胞を無効化してるザックスの細胞とか移植すれば進行止められたりしないだろうか
429:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/08/19 17:30:53.53 G+QLQzyP0
投下乙
430:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/08/20 23:21:32.45 LHLvUyI90
estar.jp/.pc/_novel_view?w=18021178
こんなの見つけたんだがこれは何処かでやってるロワなの?
3rdの展開コピペみたいな話もあるんだが、詳細希望。
431:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/08/21 00:35:46.80 yw604BUN0
なんだそりゃ
書き手の一人が投稿サイトにここの内容を書いてんのか