12/10/15 23:31:35.28 b68ORj5Y0
前話:>>113-116
※拙作の一部には科学的根拠を欠いた描写がある事をあらかじめご了承下さい。
(世界観じゃなくて、単に作者の頭が足りないと言うだけの話なので許してやって下さい)
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「彗星と流れ星の違い、か。……なあ小坊主?」
「だから、小坊主じゃ無くてデンゼルです」
悪い悪いとデンゼルをいなす様にして言いながら、シドはライターと紙巻き煙草を取り出し、
慣れた手つきで火をつけた。小さな炎がシドの口元をほのかに照らす。
「あの……シドさん?」
不安げな表情になるデンゼルの目の前で、シドはゆったりと煙草を味わっている様だった。
くわえた煙草の先端がほのかな光を放つと、たちまち鼻を突く匂いが立ちこめた。
「ちょっと真面目に……」
不満を口にしかけたデンゼルを横目に、シドは上を向いて煙を吐き出すと、人差し指と中指
の間に煙草を挟んで立てた状態で差し出す。デンゼルの視線が煙草に固定されたのを見計
らって、シドは話を始めた。
「今し方、お前さんの目に煙草の先端が光って見えたのは、コイツが燃焼してるからだ」
煙草の先端からは、今も細い煙が立ち上っている。
「流れ星の大半の正体は隕石だ。隕石ってのは、宇宙からこの星に降ってくる石っころだと
思えば良い。メテオみたいにデカいのは別だが、たいていは地面にぶつかる前に燃え尽き
ちまうぐらいの大きさだ。それが物凄いスピードで落っこちてくる時、空気に触れて摩擦を
起こすとそいつが燃焼する。隕石が光って見える原理は大体こんなモンだ」
正確には燃焼ではないのだが、その辺をもっと知りたいなら専門の勉強をすると良いと
シドは付け加える。
「けど彗星ってのは、この星に落っこちてくるモンじゃねぇんだ。……なんつうか、“通り
すがり”だな。お前さんの質問に答えるなら、この星の中に落っこちてくる物が隕石。そう
じゃない物が彗星って事ったな」
「すい星は、ずっと遠くにあるって事ですか?」
「まぁそうだな。お前さんの持ってきたこの写真……」
そう言ってシドが写真を指さす。
「ふつうのカメラじゃこんだけ綺麗なものは撮れないな。観測に適した機材が使われてるん
だろう。お前さん、こいつをどっから持って来た?」
「…………」
黙って俯くデンゼルを見ながら、シドは口元を歪めてにやりと笑う。
「まぁ、こんだけの物となるとミッドガルしか無ぇだろうな。違うか?」
デンゼルはなおも黙ったままシドの推測を肯定するように頷く。その姿を見て満足した
表情を作ると、シドは笑顔のまま声を潜めて言った。
「その様子だと、さてはティファに怒られたか? ……ま、ティファの気持ちも分かるがな。
オレ様としちゃあ、ちぃと嬉しいぜ」
「嬉しい」という言葉に思わずデンゼルが顔を上げる。シドは笑顔を絶やさずに先を続けた。
「世界がこんな風になっちまってよ」まぁ、本当はその前からなんだが。と声には出さずに
言ってから「世の中、もうちぃとばかり空を見る余裕があっても良いと思うんだ」。