FFの恋する小説スレPart12at FF
FFの恋する小説スレPart12 - 暇つぶし2ch131:名前が無い@ただの名無しのようだ
12/10/15 23:24:08.04 b68ORj5Y0
>>119
(ややスレ違いですが)その節は大変お世話になりました。
それと、読みたいと思ったものを自分で書くという方法もありますぞw

>>127-129
ユウナは自身の手で歴史を変えた責任を負ってビサイドに残ったんだろうけど、
翻弄され続ける周囲の人達の視点に立てるってところが彼女の強さだよね。
…X-2で印象がらっと変わっちゃったけど、それも若い子らしくて良いと思った。
これ読んでふと、長く潜れるようになった(ユウナにとってのコツ)が、泣くのをごまかす
(周囲に悟られない)為だとしたらなんかこう、良いなって思ったw何某かの毒気にyry

132:氷棺 - Cold Case 12 ◆Lv.1/MrrYw
12/10/15 23:31:35.28 b68ORj5Y0
前話:>>113-116
※拙作の一部には科学的根拠を欠いた描写がある事をあらかじめご了承下さい。
  (世界観じゃなくて、単に作者の頭が足りないと言うだけの話なので許してやって下さい)
----------



「彗星と流れ星の違い、か。……なあ小坊主?」
「だから、小坊主じゃ無くてデンゼルです」
 悪い悪いとデンゼルをいなす様にして言いながら、シドはライターと紙巻き煙草を取り出し、
慣れた手つきで火をつけた。小さな炎がシドの口元をほのかに照らす。
「あの……シドさん?」
 不安げな表情になるデンゼルの目の前で、シドはゆったりと煙草を味わっている様だった。
くわえた煙草の先端がほのかな光を放つと、たちまち鼻を突く匂いが立ちこめた。
「ちょっと真面目に……」
 不満を口にしかけたデンゼルを横目に、シドは上を向いて煙を吐き出すと、人差し指と中指
の間に煙草を挟んで立てた状態で差し出す。デンゼルの視線が煙草に固定されたのを見計
らって、シドは話を始めた。
「今し方、お前さんの目に煙草の先端が光って見えたのは、コイツが燃焼してるからだ」
 煙草の先端からは、今も細い煙が立ち上っている。
「流れ星の大半の正体は隕石だ。隕石ってのは、宇宙からこの星に降ってくる石っころだと
思えば良い。メテオみたいにデカいのは別だが、たいていは地面にぶつかる前に燃え尽き
ちまうぐらいの大きさだ。それが物凄いスピードで落っこちてくる時、空気に触れて摩擦を
起こすとそいつが燃焼する。隕石が光って見える原理は大体こんなモンだ」
 正確には燃焼ではないのだが、その辺をもっと知りたいなら専門の勉強をすると良いと
シドは付け加える。
「けど彗星ってのは、この星に落っこちてくるモンじゃねぇんだ。……なんつうか、“通り
すがり”だな。お前さんの質問に答えるなら、この星の中に落っこちてくる物が隕石。そう
じゃない物が彗星って事ったな」
「すい星は、ずっと遠くにあるって事ですか?」
「まぁそうだな。お前さんの持ってきたこの写真……」
 そう言ってシドが写真を指さす。
「ふつうのカメラじゃこんだけ綺麗なものは撮れないな。観測に適した機材が使われてるん
だろう。お前さん、こいつをどっから持って来た?」
「…………」
 黙って俯くデンゼルを見ながら、シドは口元を歪めてにやりと笑う。
「まぁ、こんだけの物となるとミッドガルしか無ぇだろうな。違うか?」
 デンゼルはなおも黙ったままシドの推測を肯定するように頷く。その姿を見て満足した
表情を作ると、シドは笑顔のまま声を潜めて言った。
「その様子だと、さてはティファに怒られたか? ……ま、ティファの気持ちも分かるがな。
オレ様としちゃあ、ちぃと嬉しいぜ」
 「嬉しい」という言葉に思わずデンゼルが顔を上げる。シドは笑顔を絶やさずに先を続けた。
「世界がこんな風になっちまってよ」まぁ、本当はその前からなんだが。と声には出さずに
言ってから「世の中、もうちぃとばかり空を見る余裕があっても良いと思うんだ」。

133:氷棺 - Cold Case 13 ◆Lv.1/MrrYw
12/10/15 23:35:44.82 b68ORj5Y0


 オレ様がガキの頃は空ばっかり見てたぜ? こう言うと今の若い連中は笑うかも
しれねぇが、オレ様が最初にやった事と言えば筋力トレーニングだった。けどよ、筋力を
鍛えてどんなに高く跳躍しても満足できなかった。そこで気付いたんだ、オレ様が目指す
べきなのは跳躍じゃなく飛行だってよ。
 鳥のように速く雲よりも高く。まだ誰も行った事の無い場所、あの青空の彼方を誰よりも
先にこの目で見てやるってな。そしたら月や、太陽にも手が届くんじゃねぇか? ってな。
 当時、神羅カンパニーはこの星で最も宇宙に近い組織だった。だからまずはそこに
入った。宇宙開発ってのは順風満帆とはいかねぇし、どっちかっつーと常に問題を抱えてて、
オレ様たち人間が束になって知恵を振り絞ってもどうにもなんねぇんだ。それも一日二日の
話じゃねぇ、何週間何ヶ月、時には何年何十年も、同じ問題と向き合ってるんだ。そうやって
一つ問題を解決しても、また新しく別の問題が出てきやがる。だからって腹立てたところで
問題は何も解決しない。とにかく解決のための最善を尽くすしかねぇんだ。途方も無い時間
と労力、さらにたくさんの知恵と資源が必要なんだ。
 結局、宇宙に行けたのはたったの一度きり。それじゃあ満足できねぇよな?
 だからよ、若い連中にはもっと開発を続けてほしいとオレ様は思ってる。
 けどよ、今の若い連中がガキの頃に空を見上げりゃ、そこにあったのは禍々しい輝きを放つメテオ。
 そいつは消えても、拭えない恐怖心を植えつけていきやがった。
 だから、空に夢を描く奴なんていなくなっちまった。
 たとえそれが、オレ様達の招いた災厄だったとしても、やっぱり……。


「やっぱりな、空には人を惹き付けて止まない魅力……みたいなモンがあるんだ。今の若い
連中には、それを教えてやりてぇ。そんでよ、オレ様達が到達できなかった場所まで行って、
もっといろんな物を見つけて欲しいんだ。オレ様の知らない事がまだまだ沢山あるに違い
ねぇんだ」
 些細な事かも知れないが、誰かが抱いた空への興味がその契機になり得るのだとシドは
固く信じていた。自分がそうであったように。
「シドさんは」
「まだるっこしいからシドで良いぜ」
 そう言うと煙草をくわえて、忙しなく視線を動かす。
 その様子を見たデンゼルは一度席を立つと、カウンターの隅にあった灰皿を持って来て
シドの前に差し出しながら続ける。

134:氷棺 - Cold Case 14 ◆Lv.1/MrrYw
12/10/15 23:38:54.28 b68ORj5Y0
「……宇宙飛行士だったんですよね?」
「『だった』とは失礼な。今でも乗り物と機会さえあれば、オレ様はいつでも飛べるぜ?」
 自信に裏打ちされた強気な笑みだった。
「怖い思いをした事はないんですか?」
「おー、もちろんそりゃあるぜ? 訓練も時には命懸けって事だってある。同じ空を飛ぶ乗り
物でも、飛空艇技術とロケット技術は別物だし、知られてないだけで失敗だってしてる」
「それでも?」
「おうよ」シドは笑顔のまま大きく頷いた「飛空艇もだけどよ、ロケットってのは良いぞ」
 加速と共に全身にかかる重力。体内の血管を流れる血液も、呼吸も、視覚や聴覚なにも
かもが押し潰される感覚。そいつはまるで、地べたを這いずり回っていた人間が、どうにか
して重力という枷を外そうとしているんじゃないかと思える。
「訓練も無しに乗れるもんじゃねぇ。けどな、青空の彼方ってのをおがめるんだ、訓練なんて
安いモンだぜ」
 切り取られた空から見えていた雲の浮かぶいつもの青空は、身体にかかる重圧と共に
その色を濃くし、やがて重力を振り切った先には漆黒の闇が広がる。
「つってもオレ様が経験したのだって、魚が水面に顔を出した程度。宇宙を覗くにはあまり
にも短すぎたんだ。あんなんじゃ、まだまだ物足りねぇ。オレ様達はやっと瞬きしたぐらいで、
宇宙の何も見えちゃいねぇんだ」
 そう語るシドの目は少年のように輝いている、と現役で少年のデンゼルは思う。
「……あれ?」見えると聞いてデンゼルはふと疑問を持った「さっきのすい星の話……」。
「おう、どうしたよ?」
「流れ星が、この星に落ちて来るいん石が空中で燃えるから光って見えるなら、この星に
落ちて来ないすい星は、どうして光ってるんですか?」
 その質問にシドは最初こそ驚いたような表情を作るが、すぐに笑顔に変わる。
「飲み込みが早いなデンゼル! そう―」言いながら、短くなった煙草を灰皿に押しつけた
「燃焼には空気が必要だ。逆に言えば、空気が無い所で燃焼は起こらない」。
 よくぞその矛盾に気付いたと、気前の良い笑顔のままデンゼルの頭を叩く。同時に、メテオ
災害以降の混乱期にどこでそんな基礎知識を身に着けたのだろうと思った。
「……すい星ってのはな、実は氷の塊だって言う説がある」
「氷?! ……ですか?」
 すぐさまデンゼルの頭の中には、冷たい飲み物の中に浮かんでいる氷の姿が連想された。
どう考えても燃焼とはほど遠い存在だ。
「空気も無い場所で、しかも氷が? どうやって燃えるんですか?」
「光を出すのは何も燃焼だけとは限らねぇんだ」そうだな、と腕組みしながら考えを巡らせて
いる様子のシドが、少しだけ間を置いてからこう切り出した。
「じゃあデンゼル。オレ様達の目には、他にも空で光って見える物があるだろう? たとえば……」
「太陽」
「そう。昼間にまぶしく輝いてるお天道さんだな。他には?」
「じゃあ月とか」
「そうそう、夜見えるアレだな。いろんな形に変わるし、この星から一番近い星だ、だから
見応えがあるぞ。……と、それじゃあここまでで4つ出たわけだ」
 流れ星、すい星、太陽、月。
「どれもオレ様達の目には、空で輝いているように見える。こいつらは見かけの大きさや形は
違う、だが共通してるのは光ってるって事だな」
「光り方が……違う?」
「そう。光って見えてるが、こいつらは全部違う原理で光って見える。燃焼して光ってるのは
流れ星、つまり隕石だけなんだ」

135:氷棺 - Cold Case 15 ◆Lv.1/MrrYw
12/10/15 23:42:48.92 b68ORj5Y0
「え? 太陽は燃えてないんですか?」
 だって昼間、太陽に当たってると熱いし。いかにも燃えてそうだよとデンゼルは首を傾げる。
「この星に落っこちてくる隕石以外は、どれも燃焼が起きない場所にあるんだ。だから太陽も
燃えてるって訳じゃ無い。分かり易く言うなら……あれは途方もなく巨大なエネルギーの塊
って事だな」
「魔法……?」
 シドの話を聞いてもさっぱり想像がつかないデンゼルは、苦し紛れに言ってみた。すると
シドはまんざらでもなさそうな顔で答える。
「まァ、なんだ。……悔しいけどよ、太陽がエネルギーを作ってる原理ってのを、まだオレ様達
はハッキリ理解してるわけじゃねぇんだ。太陽まで行って直接たしかめた奴はいねぇしな」
 あんなに毎日見てる物なのに、分からないんだぜ? とシドは続ける。
「ただ、はっきりしてるのは、月や彗星が光って見えるのは太陽のお陰なんだ。ついでに、
この星があるのもな」
 興味津々という表情でデンゼルはシドの話の続きを待っている。
「月は太陽の光を反射して光ってる。太陽の光がなけりゃ、ただのでかい岩の塊だな」
「見た目の形が変わるのも?」
 シドは頷きながら、左手で火をつけたライターを自分の左頬に近づける。すると、彫りの
深い顔立ちに影が落ちる。
「こうすると影ができるな? 光を当てる角度を変えると」言いながら、ライターを持った左手
を自分とデンゼルの間に持ってくる「影の形が変わる。月も同じだな」
「太陽との位置が変わるから?」
 その通り。大きく頷いたシドは火を消してライターをしまう。
「この星と太陽、それから月の位置が変わるから、この星にいるオレ様達から見える形が
変わるんだ」
 これで3つは解決した。残り1つが最後にして最大の疑問。
「じゃあ氷のかたまりだって言うすい星も、太陽の光を反射してる?」
 ジュースの中に浮かんでいる氷だって、放っておくとすぐに溶けてしまうのに? 確かに
光を反射してきらきら輝いてる様には見えるけど、暑い日に氷を外に持って行ったら手の
上ですぐに溶けてしまう。
「もしかして溶けた氷が光ってる……とか?」
 カウンターに置かれた写真に目を落とす。月みたいに反射して光っているというよりは、
これ自体が光っているような、そのぐらいまぶしいとデンゼルは思う。
「んー」シドは唸りながら先を続ける「近い。が、正解じゃ無い。太陽の熱で氷が溶けて、
それが光を作り出すっていう発想はいい線だと思うぜ」。
 なにせ彗星の観測は機会が限られている。仮説として定着しているものではあるが、
やはり実際に彗星に行って見ている訳ではないので、まだ確証に乏しいというのが正直な
ところだ。だから断言ができずに歯がゆい思いもある反面、不確かな事を教えるのもどうか
と言う葛藤があった。
「氷つっても、コップに入ってるようなモンじゃなくて、もっと……雪みたいなモンだろうな」
 雪を見た事はあるかと尋ねると、デンゼルは昔テレビでと答えた。
 ミッドガルからエッジ周辺は降雪地帯ではないが、寒い日に山間部では見られるかも知れ
ない。どちらにしても居住地では積雪まで至らないから、デンゼルに言葉で雪と説明しても
連想しにくいだろう。こう言うときに冷気系魔法を使えれば実際に見せてやれるから便利
なのにと、思いがけない形でシドは魔法の利便性を痛感する。

136:氷棺 - Cold Case 16 ◆Lv.1/MrrYw
12/10/15 23:46:45.69 b68ORj5Y0
 大皿に料理を盛りつけていたティファが、いつの間にか彼らの会話に応じて冷凍庫から
食材を取り出すと、皿に置いてデンゼルの前に差し出した。
「冷凍食品、って言う方が身近だから実感しやすいかしら?」皿の上には、下拵えした冷凍
肉がのっている「シドの言っている“氷”って、こういう感じじゃないかしら?」。
 シドが大きく頷いて、ティファに相づちを打つ。
「こいつは分かり易い!」
『……あ、けど彗星の中心部は肉とは違いますよ?』
「分かってるって!」
 ケット・シーが茶化すように横やりを入れると、すかさずデンゼルが反論する。ティファの
とりなしを経てから、シドが話を締めくくる。
「凍った土が溶ける時に気化して、一時的な大気の層を作る。彗星自体が移動しているの
と、太陽からのエネルギーを受けて、こいつらが物凄いエネルギーで宇宙空間に吹き飛ば
されるんだ。観測者にはそれが輝く中心角と尾として見える。これが、彗星の正体だって
言われてる」
『せやけど、まだ実際には誰も見てへんのやね』
「そうだ。けどよ、オレ様達はいつかそれを見てやるぜ?」
 この星を飛び立つことができたのだから、今度はその先へ。

 彼らの視線は、カウンターに置かれた彗星の写真に吸い込まれていた。




----------
・FF7シドのリミット技(既得ブーストジャンプ)体得の動機を踏まえて、神羅空軍(?)入隊の
 動機なんかを妄想してみた結果がこれ。それと個人的見解としては「宇宙を語る大人は熱い」。
・ハイウィンド家とはいえあのジャンプ力あったら空軍じゃなく別の方面に行くと思うんだ。
 (そもそも神羅に空・海軍ってあるのかという疑問も)
・自分が書くデンゼルっていつも名前を覚えてもらえない立ち位置だったりします(ごめんね)。
・このお話は次回完結予定です。

137:名前が無い@ただの名無しのようだ
12/10/16 00:21:05.67 oqQxJRZ80
>>131
そういう考えも有ったか。
切ないな(^^;

◆Lv.1/MrrYw氏
GJ!

138:名前が無い@ただの名無しのようだ
12/10/19 15:05:51.79 4EyxSMtt0
GJ

139:名前が無い@ただの名無しのようだ
12/10/19 22:33:43.06 cRwCY/+D0
>>131
いや~おりゃ読み専で精一杯ですw
エロなんか書いた日にゃエロマンガのフキダシ並べたみたいになりそうですからねw
エロは抜きでも、皆さん文章書けてうらやましいですよ

140:名前が無い@ただの名無しのようだ
12/10/24 23:58:39.50 bwLDql4s0
保守

141:空白の数時間1  ◆w7T2yFC1l7Bh
12/10/27 00:11:42.25 GR0oHeHL0
10-2エンディングより、復活~ザナルカンドの間を埋めてみましたw
---------
カモメ団の飛空艇が、ビサイド島を飛び立った。
ブリッジに新しい人間が一人乗り込んでいる。
さっき、砂浜でユウナと抱き合った少年だ。
「おっす!お帰りぃ♪」
「う~っす!ただいまぁ♪」
少年は、リュックとハイタッチを交わす。
「ちょっとぉ、2年ぶりじゃないかぁ」
「あぁ、そうみたいだね」
少年は苦笑いを浮かべた。
「どんな感じなの?」
横に居るユウナが尋ねる。
「一日か二日寝たみたいな…まあ、そんな感じかな」
頭をポリポリ掻きながら答える。
「ふぅ~ん、そっかぁ」
リュックが相槌を打った。

一通り会話を交わすと、次は、パインを紹介された。
「よ、よろしくっす」
恐縮しながら手を差し出し、パインと握手をした。
「あぁ、よろしく。話は聞いてるよ、ティーダだっけ」
「うん」
ティーダと呼ばれた少年が頷いた。
「まさか成功するとはな」
「祈り子様すごいよねぇ」
ユウナとパインが盛り上がる中、ティーダは置き去りにされた。
「え?祈り子がなんかしたんすか?」
どうやら、まだ何も聞いてないようだ。
「えっとねぇ…これから話すっす♪」
「あぁ…そうっすか」
多分、そこに行くまでに、冒険話が長くなるのだろう。
ティーダは納得し、ユウナに連れられて他のメンバーを紹介された。

シンラ君は天才少年で、通信スフィアは彼の発明である。
「~だし」をやたら使う印象が有る。どうやら口癖らしい。
アニキさんはカモメ団のリーダーである。2年前の決戦でも操縦席に居た。
何故か自分を睨んでいる気がする。まあ気のせいだろう。
ダチさんはアニキさんの親友で、情報解析係である。実はこの人も2年前、一緒に居たそうだ。
何故かアニキさんを制止する体勢になっている。良く分からない。

一通り会話を交わすと、ユウナに各区域を案内される事になった―。

142:空白の数時間2  ◆w7T2yFC1l7Bh
12/10/27 00:15:00.40 GR0oHeHL0
動力室、甲板と案内されて、居住区にやってきた。
「この人はマスターさん。アニキさんに拾われて、この飛空艇に乗ってるの」
カウンターに居るハイベロ族を紹介する。
「よろしく~ね」
「よろしくっす」
マスター、次いでダーリンとあいさつを交わし、階段を上った。
「ここがベッドルームだよ」
「へぇ~…結構綺麗だな」
「ベッドメイクはマスターさんがやってくれてるんだ」
そう言って、ユウナが奥のベッドにティーダを連れて行く。
いつもここで寝るらしい。

ベッドに座ると、スプリングが弾んだ。
「おぉ、すげー」
ティーダがトランポリンみたいにお尻を弾ませて少し遊ぶ。
「でしょ」
隣にユウナが座り、一緒に弾ませた。
ティーダはそのまま、ベッドに仰向けに寝転んだ。
「だぁ~!」
意味も無く叫び、大の字になる。
「何してんの、もう」
くすっとユウナが笑う。
「だってさぁ、やった事ねぇもん」
気持ち良さそうに天井を見上げて、ティーダも笑う。
「確かにそうだねぇ…」
そう呟くと、ユウナも寝そべった。
ティーダの腕を枕にして、胸板に寄り添う。
「んしょっと…ふふっ」
「ユウナ…ははっ」
顔を上げ、ティーダと見つめ合い、二人で笑った。
「あ、そうだ…続き、聞かしてよ」
「うん♪」
ティーダは、寝返りを打つようにユウナの背中に腕を回し、優しく包み込む。
ユウナもティーダの背中に手を回し、胸板に顔を埋めた。
「あのねぇ…」
添い寝をしながら、順番に話し始めた…。

―2時間後―

そのまま寝息を立てる二人が居た。
二人とも穏やかな寝顔である。幸せそうだ。
「ん…ふぁ…」
先にユウナが目を覚ました。

143:空白の数時間2  ◆w7T2yFC1l7Bh
12/10/27 00:16:15.19 GR0oHeHL0
首を曲げると、すぐ目の前にティーダの寝顔が映る。
「…ふふっ♪」
思わず、ユウナの顔が綻ぶ。
こんな時間が来るとは思って無かった。ずっとこのまま傍に居たい。
ぽすっとティーダの胸板に顔を擦りつけ、目を閉じ―

「ユ・ウ・ナん♪」

突然、背中から声を掛けられた。アルベド訛りの、いつも側で聞く声だ。
(!?―見られてる―!)
一体いつからか。全く気付かなかった。
急に恥ずかしくなり、顔が熱くなる。一気に汗が噴き出した。
「中々幸せそうな顔だったな」
聞き慣れたクールな声もした。
ユウナは硬直し、動けない。
いやそもそも、ティーダにがっちり捕獲されているので逃げられないのだが。
「い…いつ…か、ら…?」
ユウナが恐る恐る訊く。
「10分ぐらい前かなぁ」
「流石に盛り上がってると思ってな…2時間ぐらい待ってみたんだ」
二人してにやついているのが、声のトーンで分かった。
「いやぁ、まさか添い寝で終わるとはねぇ」
「マスターに聞いたら、そういう気配は全く無かったってさ」
「ますっ…!」
そう言えば存在を忘れてた。挨拶もしたのに。
素っ頓狂な声が出て、耳まで真っ赤になった。

そうこうしている内に、ティーダがもぞもぞと動き出した。
「ん…んん……ユウ、ナぁ…」
ティーダの腕に力が籠る。
「へっ?」
ユウナを抱き寄せ、額に顔を近づける。
「ん~…ユウナ…」
そしてまた、寝息を立て始めた。
「ほほぉう、仲が宜しいようで♪」
「羨ましいな」
体が熱い。抱きしめられているから…だけでは無いだろう。
「ひ、冷やかさないでよぅ!」
「ユウナぁ、声おっきいよぉ♪」
リュックが弾んだ声で言う。
「起きちまうぞ」
パインもからかうような口調だ。
「う゛っ…」
ぐうの音も出ない。

144:空白の数時間2  ◆w7T2yFC1l7Bh
12/10/27 00:18:23.86 GR0oHeHL0
「で…あの……い、いつまで、ここに居るの?」
背中越しに、恐る恐る訊いてみた。
「ユウナが起き上がるまで♪」
「そいつが起きるまで、だな」
リュックの言葉に、パインが更に被せる。
「え゛っ!」
それまでこの状態という事か。
「いいいやちょっと待って」
慌てるユウナに、二人はニヤニヤが止まらない。
「なによぉ?」
「なんだ?」
「あ、あのさぁ…二人とも暇なの?」
ユウナの必死さが、二人には滑稽に映るらしい。
「あ~…うん暇」
「まあ、暇だな」
だから冷やかしに来ているんだ。
そんな事を言われ、ユウナは沈黙してしまった。

そんなやりとりをしていると、ティーダがまたもぞもぞと動き出した。
「ん……んん…ふぁ~…」
どうやら目を覚ましたらしい。
ユウナの拘束を解き、目を擦った。
「あ~……良く寝たぁ」
そう言ってまた暢気にあくびをする。
「おはよー♪」
リュックがニヤニヤしながら言った。
「あぁ…おはよっす」
寝ぼけ眼のまま、手を挙げて応える。
ユウナの方を向くと、ふにゃっと笑った。
「おはよう、ユウナ」
「う…うん……おはよう…」
不覚にも、ドキッとしてしまった。

「てゆーかさぁ、朝じゃ無いよね」
「あはは、そうっすね」
ティーダは、リュックに同意しながら起きた。
一緒にユウナを起こす。
「随分と気持ち良さそうだったな」
パインがからかうように言う。
「あ~…そう言えば、こんな感覚は久しぶり…」
ティーダはそう呟くと、頭をポリポリ掻いてユウナの方を向いた。
「?…な、何?」
ユウナが戸惑いながら訊くと、ティーダが一人納得したようにこう答えた。

―あぁ、そっか…ユウナが居るからだ、多分―

言うや否や、ユウナを抱きしめる。
(!?…あばばっばbっばbbっばああbっば)
頭が真っ白になり、何も考えられない。

145:空白の数時間5  ◆w7T2yFC1l7Bh
12/10/27 00:20:23.13 GR0oHeHL0
少し呆けていると、ティーダの体が離れた。
「よしっ!」
少し気合を入れて、ベッドを降りる。
「ちょっと甲板に行ってくるっす」
「えっ?」
ユウナが聞きかえす。
「眠気覚ましにさ、風に当たって来るよ」
ユウナの頭を撫でながらそう言うと、階段を降りて行く。
「あ、い、行ってらっしゃい」
ユウナの声に手を振って、ティーダはエレベーターに乗り込んだ。
「行ってらっしゃい、だってさぁ」
「見せつけてくれるなぁ」
「あ゛っ!…いや……えっと、あの…」
ニヤニヤする二人に挟まれ、ユウナは顔を真っ赤にして俯いてしまった。

一方、当のティーダはそんな事はつゆ知らず、甲板で髪をなびかせていた。
自分の体を眺めまわし、ユウナの冒険話を思い出す。
祈り子の力で復活した。
何をしたのか―多分、こういう事だろう―と、自分なりの仮説を立てる。
両手を下げ、前を向く。
流れ去る風が頬と髪を撫でていく。
気持ちいい。
目を瞑り、数秒その感触に浸ると、再び目を開けた。
力強く、うん、と頷くと、彼は甲板を後にし、ユウナ達の所へ戻って行った…。
~fin~

146: ◆w7T2yFC1l7Bh
12/10/27 00:21:15.81 GR0oHeHL0
タイトルの番号間違えたorz

147:名前が無い@ただの名無しのようだ
12/11/01 23:33:37.02 /5TrEk/C0
GJ !

148: ◆w7T2yFC1l7Bh
12/11/09 22:20:30.22 +zGZvRaY0


149:名前が無い@ただの名無しのようだ
12/11/11 21:48:08.50 8m8js0Z00
>>141-145
なんという据えz…いやいや。
よく堪えた!えらいぞティーダ!!(…と、考えてしまう自分が汚れているのだろうか?w)

10から含めてユウナの苦労が報われた気がして、10-2のあのEDはとても良かった~。
(自力じゃ100%出せなかったけど…orz)

150:氷棺 - Cold Case 17 ◆Lv.1/MrrYw
12/11/11 22:00:26.07 8m8js0Z00
前話:>>132-136
----------


 場所は変わってWRO<世界再生機構>本部最上階に位置する、局長執務室。
「……で、局長」
 デスクの前にまるで審問官のようにして立ちはだかっているのは、すらりとした体格に
独創的かつやや扇情的な衣装と、その上から白衣を羽織った女性だった。彼女の視線は
失われた片方を補っても余りあるほどに鋭く、左上膊部からの義手も悲壮感より勇猛さの
象徴であるかのような印象を見る者に与える。そんな外見的な要素に加えて彼女自身の
持つ気迫が、対峙する者にはさらなる圧力としてのしかかるのだ。
 しかしその正体は審問官では無く、WRO技術部に所属する科学者シャルア=ルーイ博士
その人である。
「ミッドガル地下へ調査団を派遣すると言う話はどうなった? よもやWROが何もせず手を
拱いて傍観に徹すると言うのでもないだろう」
 彼女自身の所属する組織WROの最高責任者を目の前にしても、臆した様子は全くない。
 ここ最近、エッジ周辺を中心に相次いで報告される異変があった。中でも特に少数の
住民が行方不明になるという事件は、報道管制を布いて部外への情報流出を制限して
いたものの、状況の深刻性は問うまでも無い。住民達の間でまことしやかに囁かれるように
なったミッドガルの噂も、拡大の兆しを見せている。シャルア博士でなくとも、この状況は
見過ごせる物ではない。
 しかし席に座っていたWRO局長ことリーブ=トゥエスティは、このときデスクワークに集中
していたのか、シャルアが声をかけてから返答までには少しの間があった。
「……もちろんです。ただ、調査団本隊を派遣する前に下準備は必要でしょう。ちょうど
先遣隊が現地に入りました」
 それらの事情を全て踏まえた上での行動ですよと、リーブは穏やかな笑みを浮かべて
答えた。
「ケット・シーか?」
「そうです」笑顔も口調も穏やかなままで、リーブは続ける「……私が元神羅の、それも
都市開発部門の責任者だったからといって、別にあなたに隠し事をする必要はありません。
部隊を派遣する際にはあなたがた技術部の協力も必要です、どうかその点はご理解下さい」。
「……別に私が神羅に恨みを持っていたとしても、あんたを疑っている訳じゃ無い。
そこは誤解しないでくれ」
 ええ、と言ってリーブは笑顔で頷いた。
 その姿を見て、安心とも呆れともつかない表情でシャルアはやや肩を落とす。ここへ来て
得られた返答は予想通りだが、期待通りとはいかなかった落胆もあった。
「それじゃあ、必要なときは呼ん……」

151:氷棺 - Cold Case 18 ◆Lv.1/MrrYw
12/11/11 22:04:26.46 8m8js0Z00
「ところでシャルアさん。彗星ってご存知ですか?」
 部屋を出ようとしたシャルアの背中に唐突な質問が飛んできた。僅かに訝しむような表情
を作りながらも振り返ると、首を縦に振った。
「帚星の事だな。恒星系内に漂う、特に氷を含有した核を持つ浮遊物……それが、今回の
異変と何か関係があるか?」
「あ、いえ。そうではないんですが」困ったような笑みを浮かべながらリーブが続ける「さすが
は博士」。
「天文学者ではないので私も詳しいことは……。彗星自体は滅多に観測できるものでは
ないから、今後の学術研究で発見できるところも多いだろう」
「彗星の出現が凶兆を示すというような例は、恐らく文献に残る歴史的な要因によるもの
なのでしょうが、私自身もいつからそう認識したのかが分からないですね……」
 話の口火を切った当人は真顔で考え込んでいるから、からかい目的でない事が辛うじて
分かっただけで、シャルアにしてみれば一体どういう経緯から話が出たのか見当が付かない。
「局長、悪いが話が見えない」
「氷棺。……彗星そのものが、氷でできた棺の様な役割を担っていたら―」たとえば
冬眠する動物の様に、生命を維持するための必要最低限のエネルギーだけで長距離を
移動するための手段だとしても、眠りから確実に覚める方法があるとは言い難い。だから
それは棺なのだと想像できた。
「もしかしたら『空から来た災厄』の記憶が、彗星を凶兆とする潜在的な畏怖の根源にある
のではないかと。根拠はありませんが、そんなことをふと思いまして」
 空から来た災厄がジェノバの事を指しているのだとは、シャルアにもすぐ分かった。
「彗星が、冷凍仮死状態のジェノバをこの星に運んだと?」
 かつて古代種が多くの犠牲を払って北の地の底にジェノバを封印した。つまり極低温で
生命活動をほぼ停止する状態に追い込み、無害化を図った。仮に彗星によって運ばれた
存在なら、この星に飛来した時と同じ状態に戻したという事になる。
 つまり古代種から続くこの星の住人達は、まだ誰一人としてジェノバを完全に駆除する
方法を知らない。
「……なかなか興味深い仮説だが、なぜそんな話を?」
 シャルアの言葉でようやく、彼女に対する状況説明が足りていなかった事に気付く。
「すみません。実は今、ケット・シーがエッジにいるんですが、そこにいる子どもが持って
来た写真が彗星の観測写真なんです。恐らく神羅ビルの展示場にあった物だと思います。
ちょうど飛空艇師団のシドもいましたので、彼が彗星について講義しているところなんですよ」
 元神羅カンパニー宇宙開発部門所属の優秀なパイロットにして、現在は飛空艇師団の
長を務めるシド=ハイウィンド。なるほど宇宙について訊くなら、彼以上の適任者はいない
だろうとシャルアは納得した。
「彼らを見ていて考えさせられたのですが、子ども達への教育の機会というのも早急に
解決しなければならない問題です。メテオ災害では特にミッドガルやジュノンなど都市部では
教育機関が破綻してしまいましたし。特にこの分野についてはボランティアに頼っている
面が非常に大きいのが実情です。我々WROは街の再建や物流、経済の復旧など、目先の
問題に追われるばかりで、対応はすべて後手に回っていました。ですがそろそろ将来を
支える基盤、つまり子ども達の教育機会という重要な問題にも着手するべき時期が……」

152:氷棺 - Cold Case 19 ◆Lv.1/MrrYw
12/11/11 22:06:38.04 8m8js0Z00
 半ば独り言のように止め処なくしゃべり続けるリーブをこのまま放置して部屋を出て行く
事も考えた。むしろそれが最善なのだろうと思えたのだが、シャルアはそうしなかった。
 覚悟を決めてデスクに向き直ると、腰に手を当て大きく息を吸い込んでから、呆れ半分、
諦め半分の心境で大きく溜息を吐き出した。
「……差し出がましいようだが」
 その言葉にリーブが顔を上げる。
「局長の言っている事は正しいし、それを成し遂げられるだけの人材と組織力と資金も
ここにはある。だが問題を一気に抱え込んだところで、いくら自慢の猫が手を貸してくれて
も、効率的な動きが取れるとは思わない」
「二兎を追う者は一兎をも得ず、ですか。確かにおっしゃる通りです」
 言いながら頷くリーブの表情は至って真剣だ。
「今はボランティアもいる」同じ事を考えているのは局長ばかりでは無い、だからこそ彼らの
活動が表立っているのだ「しばらくは彼らに委ねてもいいのではないか?」。
 世界を再生するのは、何もWROだけに課せられた義務ではないのだ。
「なにより、WROにしか出来ない事がある。局長自身がそれを見失うのは……」
「分かっています。ミッドガルの件を放り出そうとは思っていません」
 先に結論を言われてしまい、シャルアは言葉を飲み込んだ。
「ご忠告、ありがとうございます」
 身の丈を知り足が地に着かない状態では、きわめて流動的な世界情勢の中で安定した
舵取りなど到底できませんからねと、自嘲気味な笑顔を浮かべながらリーブは礼を言った。
 そんな彼の姿には、隠しきれない疲労の色が見て取れる。
「……他人に何かを忠告できる程、余裕がある訳じゃないんだが」
 まるで自身の発言を後悔したようにシャルアが呟くと、良く聞こえなかったらしいリーブが
首を傾げて問い返す。
「シャルアさん?」
 ますますシャルアは居心地が悪くなって、そのまま無言で執務室を後にした。


 妹さえ見つかればそれで良い。
 この時のシャルアにとって、世界にはそれだけの価値しかなかった。
 そんな世界を再建しようと奔走するWROに籍を置くのは、自分の目的を果たすためだ。
 人と情報が集まる場所。そこが、妹がいる場所への近道。WROを選んだのは間違いでは
無いと、確信さえあった。
 なのにここは。
(とんでもない場所だ)
 後悔する要素は無いが、不安要素が多いのは事実だった。

153:氷棺 - Cold Case 20 ◆Lv.1/MrrYw
12/11/11 22:10:56.25 8m8js0Z00
                    ***

 シャルアが出て行った部屋にはいつも通りの静寂が戻った。
 とはいえ、モニタ上には次々と新しい情報が表示され、随時書き換えられていく。言い方
を変えれば、世界が復興に向けて歩んでいく様子が文字として映し出されている。
 目下のところ各地の復興支援を掲げるWROともなれば、活動の場の多くは現地だ。元々
は各地に神羅が残した遺産―遺産と一口に言ってもその種類は様々で、とりわけライフ
ラインやネットワーク、各部署に勤務していた者達の技術的なノウハウ―を持ち寄った
有志達を、世界規模でまとめあげた組織、あるいは巨大な寄り合い所帯だ。
 しかし局長の仕事は机上で出来る事の方が多い。たとえば情報収集、状況分析、計画、
指示、折衝―神羅が残した負債の清算を請け負うために便宜上、指導的立場にいる彼は
こうして日々を送っている。
 少なくとも今は、それが最善だと考えているからだ。
 未曾有の危機を脱した世界は、失われたものを取り戻すべく今この瞬間も歩み続けて
いる。先程のシャルア博士にしても、彼女自身が失った大切な何かを取り戻そうとしている。
個々にそれぞれ事情はあるだろうしいちいち詮索するようなことはしない。なぜなら、そんな
人達の助けとなるためにWROがあり、自分がいる。迷いは無いし、迷うための選択肢も他に無い。
 もっとも、迷っている暇さえ無い。はずだったのだが。
(急にどうしたんでしょうね。子ども達に感化されたのでしょうか?)
 リーブの脳裏には目の前のモニタではなく、ケット・シーが見ていた彗星の写真が映し
出されていた。
(彗星……)
 その写真が一瞬にして神殿壁画にすり替わる。メテオが描かれた古代種の神殿の壁画だ。
(……氷の棺)
 空から来た災厄。
 古代種の神殿。
 人の世で起きた出来事としては未曾有の災厄でも、星や宇宙の規模で見ればありふれた
現象でしか無いのかも知れない。
『なんや~? 人がロマンと将来への希望に溢れた話で盛り上がってるところに、容赦なく
水をさす様なマネせんでもエエのに』
 エッジにいるケット・シーだった。彼はリーブの持つインスパイアという異能力によって存在
する“生命”。
 ケット・シーとは別の躯体でも意識を共有できる、自立した意識を持つ生命。しかし生命
とは言っても、本来であれば生命維持のために行うあらゆる行為を必要としない。それは
生命と呼ぶにはあまりにも曖昧な存在。
(そんなつもりではなかったのですが)
『しゃーないとは言え、アレは強烈なイメージやからなぁ~』アレが示すのが古代種の神殿
壁画である事は疑うまでも無い。ケット・シーに言わせると、リーブの脳裏に描かれた強烈
なイメージに意識を引っ張られた、と言ったところだ。ちなみに神殿壁画を実際に見た
ケット・シー1号機は、黒マテリア獲得という大役を務め神殿と共に失われた。彼の残した
記録、あるいは記憶が今のケット・シーに引き継がれ、彼らの共有する過去となっている。
 ここまで話し終えたところで、暢気だったケット・シーの口調が一変する。
『で、ボクが問題にしとるんは、なんでアンタが今アレを連想してるんや? っちゅー話』
(……)
 返答の代わりの沈黙。
『あんな。ボクが言うのも何やけど、そーやってすぐ思考にフタするクセ、良い傾向とは
言えんで?』

154:氷棺 - Cold Case 21 ◆Lv.1/MrrYw
12/11/11 22:18:04.71 8m8js0Z00
 詰問が説教に変わる。
(違うんですよ)ことさら軽く流すようにしてリーブが反論する(これは一種の妄想です。
根拠も無い妄想を不用意に晒すのは憚られます)。
『ジェノバが氷漬けにされて宇宙に放り出されて、それが彗星になってこの星に落っこちて
きた。それがあの壁画やって? まぁそんな妄想ぐらいエエやないか』
(確かにそういう連想はしましたけど、私の言うのとは違います)
『じゃあ何や? 別に言いふらしたりせえへんし、ボクがそんな事するように見えるか?』
 ケット・シーは自分の半身、彼がその気になれば“妄想”の正体にもいずれ辿り着く。
インスパイアとは実に面倒な能力だとリーブは思う。
 観念したようにリーブは打ち明ける。
(古代種から数千年を経ても私達は、まだ何も進歩できていないと言う事なのでしょうか?)
むしろ大きすぎる過ちのせいで、進歩どころか後退しているのかも知れないと。
 するとケット・シーが言う。
『ん~、ボクならそれ“のびしろがデカい”って考えるで? まだまだこれからやないか』
 人はこれまでに幾多の災厄を退けてきたのだから。
『魔晄が無うなっても、ボクらにはもっとできることがある』
 今までが無理でも。今は無理でも。将来は可能になる事がたくさんある。
『リーブはんの言う通り、彗星がジェノバを運んだ氷棺だったとしても、その原理を応用して
ボクらが遠くの星に行くことだって出来るかもしれんって事やろ? 考えただけでワクワク
するで』
 リーブの表情が自然とほころぶ。
(そうですね。その為にも今やるべき事をやらないといけませんね)
 そのための、WROなのだから。

                              ―氷棺 - Cold Case <終>―


----------
・FF7インタ版のジャケット絵が彗星に見えた事と、ジェノバの由来と行方って結局あいまいな
 ままだったのを個人的な見解でつなげたお話。
・Cold Caseはそのまま「氷の容器(棺)」と言う意味合いと「未解決事件(≒作中で明かされ
 なかったジェノバの謎)」という意味をかけてみた。
・各キャラクターの話を詰め込みすぎた結果、話の落とし所がぼやけてるのは相変わらず。
 ここまでお付き合い下さった方、ありがとうございます。

155:名前が無い@ただの名無しのようだ
12/11/12 22:26:32.41 ONZ5/9sa0
GJ

156: ◆w7T2yFC1l7Bh
12/11/12 23:14:45.86 JWzhOzro0
GJ

157: ◆w7T2yFC1l7Bh
12/11/13 22:52:52.18 CWAAk3v20
>>149
据え膳食っちゃった話をエロパロ板に投稿しましたw
やれやれ(自嘲)


<宣伝>
FF7のエロパロスレ作りますた
スレリンク(eroparo板)
宜しければご利用下さいm(_ _)m

158:名前が無い@ただの名無しのようだ
12/11/14 21:07:26.21 maGSXmbo0
>>157
スレ立て乙

159:名前が無い@ただの名無しのようだ
12/11/22 05:38:38.68 Xc8Rtnv+0
sage

160:名前が無い@ただの名無しのようだ
12/12/01 23:17:22.39 7kAqE3TT0
ho

161:名前が無い@ただの名無しのようだ
12/12/09 19:37:42.90 S20bnnQY0


162: ◆w7T2yFC1l7Bh
12/12/14 22:12:37.37 +RPqDFWq0
<訃報>
エロパロ板のFF7スレが落ちましたorz
ナムー(ー人ー)

163:名前が無い@ただの名無しのようだ
12/12/23 18:59:34.44 jH8XJCQI0
 

164:名前が無い@ただの名無しのようだ
12/12/31 01:36:23.84 YGOLRwc+0


165: 【大吉】 【180円】
13/01/01 11:37:43.39 AgNhfkYE0


166:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/01/01 17:08:47.04 hpidbSWe0
探してみたけどカップリングについて話すスレってないのな
FF7のヴィンユフィに急に再燃して
DCでユフィがヴィンセントに気があるっぽい描写がある件について話したいんだが
どのへんが適当なんだろう

167:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/01/04 00:00:48.76 FIkrOWh60
今年も沢山のSSが読めますように。

>>166
んー、作品によらずその手の話題って荒れる原因だから敬遠されるんじゃないかなと。
そういうスレ(カップリング専用スレみたいなの)が無いのなら尚更。
まーこのスレに来たのも何かの縁、166が思う根拠をもとに、ひとつ話を書いてみては
どうだろう?
ここはそういったスレだと思うよ~。

168:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/01/16 06:53:46.85 7xmtkg5I0


169:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/01/24 22:15:01.58 xEeKPhAT0


170:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/01/31 22:20:13.20 rrjvpdUA0


171:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/02/06 21:18:42.82 +YAI/YjJ0


172:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/02/17 16:39:14.07 bWN8rK/F0


173:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/02/24 21:46:29.37 pN/gVZ7n0


174:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/03/03 00:36:10.83 03400gqF0
保守あげ

175:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/03/10 22:00:08.08 p7GLcr4h0


176:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/03/18 06:47:42.14 V296w+Hr0


177:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/03/23 20:40:46.41 iZ+kPSrM0


178:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/03/26 00:44:43.42 IDTM1WNV0
XがHD発売情報につき記念保守

179:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/03/30 20:32:34.12 AXScSRYM0


180:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/04/03 19:50:54.43 s92xhUY30


181:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/04/11 21:10:25.31 1D8294Uy0


182:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/04/12 23:06:40.97 F8LoDUt50
各シリーズの名場面を小説に書き起こしてみたらどうなるんだろう

とふと思った件

183:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/04/13 23:35:47.69 UmxjC3c60
それいいかも
リーブ視点のFF7本編のノベライズは読んでみたい

184:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/04/14 11:20:21.37 wDi4oonc0
>>183それ読んでみたい

他には
5のギルガメッシュ自爆とか
6のダリルの墓イベントとか
9のダガーが髪を切る所とか
も読んでみたいw

185:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/04/17 20:31:45.27 sUWe7ha+0
おっなんだ
スレが板のどん底に来てるぞw
それはともかく>>182-184はいいねえ
読んでみたいス

186:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/04/18 00:51:19.18 xz+ZLMsK0
>>185ティーダ?

他のナンバーも名場面色々有るんだよな
と言いつつ保守上げ

187:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/04/21 12:45:40.61 QjW+e+xY0


188:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/04/22 23:19:19.25 1d6BdoRL0


189:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/04/25 18:57:07.93 GSJ3or/D0


190:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/04/27 17:48:49.55 rRFK5PCL0


191:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/05/03 05:25:32.15 kSEkJ3770
age

192:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/05/07 19:22:23.69 Gdjc9oOr0


193:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/05/11 00:59:10.52 5y1eklj+0


194:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/05/20 22:24:51.24 qjg6Tzrm0


195:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/05/28 22:03:24.81 cGJxaHNw0
age

196:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/06/03 01:14:26.20 oWWbnUsq0


197:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/06/07 21:10:39.29 +oTmlg5Z0


198:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/06/09 23:05:38.99 pZRY700H0
最下層だからageる

199:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/06/11 22:45:44.27 hRoxNe6P0
むう
なかなか面白いお話を書いてくれる人は現れんのぅ
てめーが書けとか言うなよ
文才ゼロだからなw

200:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/06/12 08:55:52.21 2sb9zO8e0
>>199
貴方が書いてくださいお願いします。
土下座して待機いたします。

201:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/06/12 21:09:33.17 JEDh5qpe0
>>200


俺7ファンだからなあ
題材が限られちゃうよ
あと既に上手い人いたろ
Lv1とかってコテトリつけた人

202:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/06/13 01:12:16.03 kmHndw9l0
>>201
別に題材限られてもいいだろ
人によって視点や文体とか違うんだから
まああの人は別格だと思うが
取り敢えず待ってるよ

203:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/06/13 01:15:42.31 kmHndw9l0
保守がてら名(迷)言書き出してみるか
・ウボアーッ
・いいですとも
・うちゅうの ほうそくが みだれる!
・お前とは1対1で勝負したかったぜ
・無とはいったい うごごごごご
・ホワッホッホッホ
・カレーライスむにゃむにゃ
・お前は・・・人形だ
・お前は俺が生きた証だ
・別に
・はぐはぐしよ♪
・蛙より美味いもの有るか?
・僕の記憶を・・・空に預けに行くよ
・会わせてくれ、愛しのダガーに!
・違うよ・・・君が夢なんだ
・もう、行かなくちゃ
・ありがとう・・・
・自分のおうちに帰るっす→ハイタッチ
・俺はこの物語の主人公だぜ
・あの人はそんな事望まない!→天空の繭を割る
・結局、死んだ人間の気持ちなんて、生きてる人間が勝手に解釈するしか無いのかもな

うろ覚えだな(^^;
13系と零式は分からんorz

204:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/06/13 01:47:14.50 vjE2y4wJ0
VIIならむしろ書いて下さい。土下座しっぱなしでお願いします。
Lv1さんは、早くどこかの公募に出す作業に戻って、いやそうじゃなく。

どのFFも需要がある。零式・FFTシリーズ・FFCCシリーズ等、
人気はとても高いのに、ここであまりカバーし切れなかった作品もある。
まったり書いて頂きたい。一名無しが言うのも変だけど…と、保守。

205:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/06/16 18:05:30.64 BJJVBmld0
まあ過疎ってるしな上げ保守

ついでに思い付いた一文を廃棄

真実は時に残酷な事実を眼前に突き付け、運命は時に過酷な選択を迫る。




どのシリーズでも使えそうだがな

206:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/06/22 15:42:39.97 cCn4zxg80
カッコイイのに廃棄とは…ほぼまりもんば!

207:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/06/25 01:48:42.32 6R/+inAc0
*それを捨てるなんてとんでもない!


思いついた文言からお話を膨らませていったり、
思いついた会話から展開を膨らませていったり、
思い浮かんだ場面に繋がる様に進めていったり、
(いいタイトル思い付くとなんかテンションあがったり)
…で、意外と書けちゃうモンじゃないかなと言ってみるw
閃きってとっても大切。あとは愛があれば何とかなるさ!

…ならないかな、なるといいな、なるんじゃないかな?
投稿まってるよ~。保守!

208:205
13/06/27 00:37:37.27 sl1DfQn80
FF10・土日どっちか・書き溜めじゃ無く投稿フォームの前で即興

で良ければネタ一つ有るけど

209:205 ◆w7T2yFC1l7Bh
13/06/29 17:14:58.45 vhobcF0J0
FFXを即興で投下
NGは番号かトリで。
時期としては最終決戦前、シンの両腕をもぎ取った後です。
-----------------------------
真実は時に残酷な事実を眼前に突き付け、運命は時に過酷な選択を迫る。
少年は窓の外に流れていく雲を見つめていた。
特に観察している訳では無い。目の焦点は何処にも合っていないように見える。
物思いに耽り、ガラスに映る自分の顔をただ漫然と眺めていた。
嘗てアーロンは言った。
このスピラには死が満ち溢れていると。
シンが死を振り撒き、死人が幅を利かせ、魔物が徘徊する。
そして究極召喚を行えば、召喚士は死んでしまう。
この死の螺旋は、何としても断ち切らねばならない。
幸い、召喚士が犠牲にならずとも、シンを倒す方法は見つかった。
これで、彼の少女も、スピラ共々救える。


―君は、消えないよね―


少年は不意に俯いた。先ほど少女に言われた言葉が、脳裏に蘇る。
シンの中に入り、エボン=ジュを倒せば、永遠にシンは復活しない。
ナギ節がずっと続くのだ。
もう、人々がシンに怯える必要は無くなる。
ただその代わりに、祈り子達は夢を見なくなる。
召喚獣たちも消え、エボン=ジュが召喚し続けている夢も消える。
少年の決意と運命に、果たして仲間たちは気付いているだろうか。
あの少女は気付いているかもしれない。

210:205 ◆w7T2yFC1l7Bh
13/06/29 17:20:26.09 vhobcF0J0
>>209の続き
-----------------------
人の死に対しては敏感な方で、しかも召喚士だ。
聖なる泉の大勢の祈り子達が、どれほど巨大な夢を見ているか。
その夢が少年の存在と直結している事を、具体的には分からなくても、薄々気付いているかも知れない。

夢を終わらせる夢―。

少年は自分の手のひらを見つめた。
1000年間夢を見続けるというのはどれほどのものか。
もう解放してやってもいいだろう。その間、苦しみ続けて来たのだから。自分の父親と同様に。
ザナルカンドに居た頃の自分なら、全く思わなかっただろう。
アーロンに全てを告げられ、少女の覚悟とザナルカンドの真実を聞くまでは―。

自分がスピラの悪夢を終わらせる―全ての覚悟と決意を拳に握りしめ、少年は再び前を向いた。
窓に映った顔、その目には見覚えが有った。少年は思わず苦笑いを浮かべる。
以前、ガガゼト山の入口で、ロンゾの長老に対した時の少女と同じだ。
鉄のように固く、ロンゾの屈強な戦士が何人束になっても折れない、強い意志。
究極召喚を使えば死ぬと分かっていても、それでも歩みを止めなかった。
同類の鋭い眼差しが、窓の向こうから自分を見返している。
今見られたら、他の皆にもばれるだろうか。
少年は儚げにふっと笑みを零すと、天井を見上げた。

「くそオヤジ、今行くから大人しく待ってろよ」

ポツリと呟くと、少年はうんと頷き、ブリッジへと足を向けた…。

~fin~
-------------------------
ムービーの間を自分なりに妄想してみました。
スレ汚しスマソ、保守代わりに。

211:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/06/29 20:11:52.77 vzJp9bKj0
乙乙乙!!

212:205
13/06/29 20:42:23.52 vhobcF0J0
書くと事前妄想と実際のストーリーが乖離してしまうorz
神職人の皆さんが羨ましい(^^;

213:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/07/11 23:24:24.32 hYdIGtEx0


214:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/07/15 16:11:08.76 nYTuIRKO0


215:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/07/18 00:42:12.25 wh/zLoIE0
ho

216:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/07/20 04:32:13.07 CLWDpz3f0
bo

217:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/07/26 00:32:04.96 dvTiusUI0


218:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/08/02 01:03:21.55 MVeuwxWi0
>>209-210
ティーダにとっては二度(一度目は究極召喚、二度目は自分自身の立ち位置)も
この展開があったんだと考えると、彼は本当に「夢を終わらせる夢」という宿命を
背負っていたんだなとしみじみする。
けど、FF10ってパーティーメンバー全員それぞれが背負っているものがあって、
各々に冒頭一行目の件が適用できるっていうところが凄いと思う。
(だからストーリー自体もまとまりがあったんだと思ってます)
同時に、10のED時点でユウナは「選択」できなかったって事を考えると・゚・(つД`)・゚・

219:ラストダンジョン(465) ◆Lv.1/MrrYw
13/08/02 01:17:58.85 MVeuwxWi0
前話:>>80-82
今回は主にルクレツィアのお話ですが、作者の主観が多分に繁栄されています。
----------



 ―きっと、恋をしている。

「くだらない」
 ルクレツィア=クレシェントの見解を聞いた私の脳裏で真っ先に過ぎったのは、この
言葉でした。顔を合わせて対話しているのであれば、声に出さない限り伝わることの
無い思惑は、しかしこの場合は全く意味がありませんでした。
 なにせここが“脳裏”だからです。
「ふふ」それでも彼女は自嘲気味に続けます「……あなたからしたら悪例が言うの
だから、説得力なんて当然無いわよね」。
「……すみません」
「謝るけど、否定はしない。……あなたのそういう所、嫌いじゃないわ」
 今度は楽しそうに笑う。改めてルクレツィア=クレシェントの強さを思い知らされる。
そもそも断片にしてまで意志を保つことができるのは、強さという裏付けがあっての
事なのだろう。
「強さじゃないと思うの。強いて言えば“執着”の強さ、かな?」
「意識を共有しているというのは些か不便なものですね」心に浮かんだ疑問や、口に
出さない思考さえも共有してしまう。他者の断片を取り込む際の副次的な効果は、
当初考えていたよりも深刻な影響をもたらすものだと、今さらながらに身をもって
知ることになろうとは。
 けれどそれは、皮肉と言うよりも因果なのでしょう。
「でも安心して、もうしばらくの辛抱」
「『もうしばらく』とは、どういうことですか?」
「元々この断片化ファイルが作られた目的は既に達成されている。今の私は、あなたの
考えている通り副産物でしかない。直にここは、元の持ち主に書き換えられる領域。
書き換えられれば、ここにいる“私”は消える」

220:ラストダンジョン(466) ◆Lv.1/MrrYw
13/08/02 01:20:54.18 MVeuwxWi0
 そして今は、流れ込んでくる途方も無い量のデータを処理するために、一時的な受け
皿として私の代わりに働いてくれている、言ってみれば防波堤だ。
 不思議な共生関係、どちらかというと一方的に使役しているような、そんな罪悪感にも
似た思いがしますが。
「あなたは何も悪くないわ。本来なら当人以外の意志や個性を維持することはできない
から、異常だった状態が正常化するだけのこと。それにね、あなたよりは私の方が人生
経験は長いのよ?」
 確かに彼女の、彼女の言い方に倣えば“断片”の言う通り、元々は私の記憶領域に
移植されたもの。その説明に間違いはありません。
 ただ、今この領域を使用しているのは明らかに“私”以外の者であるのも事実。だから
こそ尋ねてみたくなりました。
「……怖くは、ないんですか?」
 もうすぐ消えるとなれば、少なからずそう思います。
 ところが彼女は平然として返答しました。
「まったく怖くないと言えば嘘になるけどね。だけど、それ以上に恐ろしいことを知って
いるから……」
 やや間があってから、彼女はこう続けました。

「本当の『私』は、事態の推移をただ見守っている事しか……いいえ、自分だけでは
見守る事さえできない。
 ……それは未熟だった私があがいた末に、辿り着いた答え。今の私がいる場所。
 だけどね、ここでは本当に何もできないの。あがくことも、逃げることさえも。
 何もしない、出来ないこと。それほど恐ろしい事は無いと身をもって知った」

 今さらだけどね、と彼女は笑います。

「だからね。しっかり自分の頭で考えて、行動するの。その結果が失敗だったとしても、
それは次に活かせるから。私の失敗を嗤いたい人はそうすれば良いわ。……もちろん、
持論を実証するのは科学者として重要な要素だけど、それは科学者に限った話じゃ
ないって、私は思うの」

221:ラストダンジョン(467) ◆Lv.1/MrrYw
13/08/02 01:23:58.05 MVeuwxWi0
 3年前。私はほんの僅かの間だけ“彼女”―ルクレツィア=クレシェントという科学者
の記憶と感情を共有し、その過程で彼女の半生を垣間見た。彼女が言わんとしている
事、その概要については理解できる。だからこそ、分からない。なぜ唐突に、恋などと
言うくだらない話を持ち出して来たのか。

「『くだらない』事なんて一つも無いわ。
 ……ねえ、シェルク。なぜあなたは『くだらない』と思ったの?」
「え?」
 確かにくだらないと思った。けれど、何故と問われると明確な答えが返せない。
「本来なら無関係の私が、あなたのお姉さんにお節介を焼くのが気に入らない?」
「そうではありません」
 そう、気に入らないという訳ではないのです。
「あなたのお姉さんの事を知らない私に、お姉さんの事を語って欲しくない?」
「そんな事ではありません」
 まるで子どもじみた独占欲。幼少期に姉と引き離され、10年間を孤独と不安と恐怖で
過ごす中で、確かに姉は唯一心の拠り所であり希望でした。だけど今の私は違います。
「お姉さんが、自分以外の人に執心しているとしたら嫌だから?」
「そんな筈がありません」
 子どもじみた独占欲どころか、ただの嫉妬。どうして私が? 姉は連れ去られた私を
必死に捜してくれていた。10年かかったけれど、ちゃんと助けに来てくれた。きっと
私以上に苦しい思いをしてきた。だからもうこれ以上、姉が私に縛られる事はない。この
先は姉の自由に生きて欲しい。
「じゃあ。……恋って、くだらないかな?」
「……わかりません」
 そんなこと私に聞かれても、分からない。分かるわけが無い。
「誰かを好きになるって、素敵なことよ」
「そう、ですか」
 どうでもいい。今の私には、必要が無いから。

222:ラストダンジョン(468) ◆Lv.1/MrrYw
13/08/02 01:26:32.65 MVeuwxWi0
 膠着状態と言うのに充分な間を置いてから、仕切り直しと言わんばかりに彼女は
こんな風に問う。
「聞き方を変えるわね。―あなたは、お姉さんが好き?」
「はい」
 当然です。一人しかいない肉親ですから。
「お姉さんは大切な人でしょう?」
「そうです」
「じゃあ、これからお姉さんにはどうしてほしい? どうなってほしい?」
「……姉の、望むままに、暮らして欲しいと……思います」
 問いに答えることは簡単だった。けれど、返答するうちに分からなくなった。現在の
姉が何を望み、どうしたいと思っているのか?
 あれだけ待ち望んでいたはずなのに、わたしは、お姉ちゃんのことをなにも知らない。
「そう。好きな人には笑顔でいてほしいわよね? 幸せでいてほしい」
「はい」
 ―『彼女が幸せなら、それで良い』そういった彼の気持ちも、今なら少し分かる気が
します。
 そもそもディープグラウンドに連れて来られてから、苦痛と恐怖を味わってきたのは
私だけでは無かったはず。私を必死に探してくれていた姉も、そうだったのだと。姉が
腕や目を失った経緯は、想像したくも無い。ルクレツィア=クレシェントの言う様に、私が
姉の幸せを、笑顔を望んでいる気持ちに嘘偽りは無い。
「だけどそのせいでお姉さんが変わってしまう事が、こわい?」
 彼女の言葉に、まるで過電流によって私の中の全ての思考が停止したような気がした。
一気に血の気がひき―もちろんここに体内の血流や皮膚感覚は直接影響しない筈
ですが―反応する事もできなかった。
「あなたは私のことを見ている。だから余計にそう思うかも知れない。こわい、よね?」
 否定も肯定もできなかった。
 だって分からないから。
「……昔から『恋煩い』っていう言葉があるけど、確かに恋ってウィルスに似ているわね。
感染すると思わぬ形で自分を変えてしまう。まるで今までの自分じゃ無いみたい。熱に
浮かされた様な感覚で、判断も思考も、大袈裟な言い方かも知れないけど、自分に
とって世界のなにもかもが変わる。だけどウィルス自体に悪意は無いし、感染しようと
思ってできるものじゃない。今のあなたの心境は、不治の病を恐れるのと似ているかもね」
 そもそもが人工物であるコンピューターにおけるウィルスとの決定的な違いは、その
誕生が人為的であるか否かです。多くの場合は作成者の意図を反映し利益をもたらす
為の道具。それは往々にして作成者以外には不利益にしかならない。
「だけどね、悪いことばかりじゃ無いわ。こうして私が存在しているのも、そのお陰。
……って言っても、説得力ないかしらね」
 私はウィルスに感染した結果、制御しきれずもたらされる影響を恐れている、……の
だろうか。それとも変質そのものを恐れている。あるいは認めたくないと、無意識に
思っている?
 こうして埋め込まれたルクレツィア=クレシェントの断片は、意識下にある感情に同期
したとでもいうのだろうか?
「ごめん、……そろそろ、時間切れ、みたい……」
 彼女の声にノイズが混じる。
「え?!」
「こっちに、割ける余裕……もう、ないみたい」
 ノイズは徐々に拡大し、彼女をのみ込んでいく。
「シェルク。あなた自身と、お姉さん、……悔いは、残さないで」
 悔い?
 あなたの言っていることは、理解に苦しむことばかり。だから。
(だから、もう少し)
 話したかった、のに……。

223:ラストダンジョン(469) ◆Lv.1/MrrYw
13/08/02 01:33:18.40 MVeuwxWi0
                    ***

 ―『足止め』には充分な量の情報と感情。
    だけどいくら過酷な環境を生きてきたとはいえ、
    これだけの量を処理……“中和”するのはあの子にはまだ難しい。
    もしかしてあの子の中にあった断片《私》の存在も織り込み済みかしら?

    人は生きていれば変わって行くもの。変化は成長であり進化。
    誰でも最初は、変化に戸惑いや恐れもあると思う。
    だけどね……。
    変化や成長がなければ、死んでいるのと何も変わらない。
    だから怖がらなくても良いんだよ。

    ライフストリームに還る事もできず、私はずっと地上に留まっている。
    その意味では本当に『死んで』しまったの。
    これってきっと、上書きされるか、消えてしまうかもしれないけれど……。
    伝えたいと思うのは自由よね?

    『どうか、“生きて”』。


----------
・ルクレツィアは非常に女性的で頼もしい存在だと言う作者の主観丸出しである。
・なので、なんとなくシャルアとは別の意味で“お姉さん”適任だと思うんだ。
・初見の方がいたらすみません。
 ずいぶん長い話になっていますが、続ける気は一応あるようですw
・作者のリーブ好きFF7好きが文章から伝染して(?)楽しんで頂ければ、
 それ以上の報酬はありません。
 (だからむやみにハードルを上げちゃダメ、絶対w)

224:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/08/04 20:41:07.63 GcfgGSsN0
きてたー

おつー

225:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/08/10 12:48:42.03 K20daN/SO
職人さんGJ

ついでにage

226:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/08/18 22:06:52.27 pNW96nrw0


227:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/08/21 03:00:39.04 D1gpQczg0


228:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/08/27 01:18:16.95 ZHNuNKbi0
職人さん期待保守

229:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/09/01 20:31:41.05 VT3bC96m0
乙です

230:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/09/07 07:16:08.40 7nQkbq/z0
乙!

231: ◆w7T2yFC1l7Bh
13/09/07 20:40:34.83 lSL8fy+C0
Xにドハマりしている漏れが来ましたよ
先日思い付いたシーンを一つ廃棄
---------------------------
とある平原に、一人の少女が佇んでいる。
周囲には、嘗てアルベド族が建てた避雷針が幾つも並んでいた。
昔では考えられない程晴れ渡った空を見上げている。

雷平原―数年前、少女が仲間と一緒にコンサートを開いた場所だ。
あの奇跡以来すっかり晴れてしまい、今では雷が落ちる方が少ないぐらいだった。
少女は昔を懐かしむように微笑み、風景を見渡した。
自分をここに連れて来た張本人は、他のアルベド族と共に避雷針の点検をしている。
カモメ団は解散したが、彼女は相変わらず忙しく、スピラ中を飛び回っているようだ。
発掘やら機械の教育など、やる事、やりたい事は沢山有るらしい。

一方自分はどうだろうか。
あの頃の気持ちには既に折り合いを着けた。
ワッカ・ルールー夫妻と一緒にイナミの世話をするのは楽しい。
イナミも成長し、子供たちと一緒に走り回っている。
このまま、ビサイドで暮らすのも悪く無いと思っている。
-------------------
オハリ

232:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/09/15 20:04:43.96 0aPtQ/Ov0


233:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/09/24 11:24:46.27 3z+I0Ob00


234:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/10/01 18:38:46.60 B8CPcqhD0


235:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/10/13 07:57:42.28 e0HTRGRh0


236:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/10/15 23:47:01.73 JoH6kMX40
ho

237:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/10/19 16:46:17.44 Rcu+n2Bo0
age

238:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/10/31 07:18:52.39 NtFhuRtQ0


239:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/11/06 09:29:15.14 vMKpsPVL0
乙です

240:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/11/18 12:51:28.95 6zii41Wk0


241:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/11/26 21:28:04.87 rDkY1Zn5O
某ネタスレで話題に上がってたフリオとシヴァの恋話上げてもいいかな、保守代わりに

242:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/11/27 01:04:10.42 h8Iidv7C0
おk

ついでにage

243:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/11/27 04:29:56.16 ULk/5N1OO
では少々お待ちをー&あげ

244:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/12/04 04:37:23.64 WRufkKlP0
ok

245:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/12/04 16:23:19.89 jdpNxSlXO
報告です
エロあり小説になったので、FFシリーズ総合エロパロスレ8に
「フリオニール×シヴァ」としてアップしました
ご了承ください

246:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/12/09 20:23:30.88 4Iq0GsIx0
>>245
わかったok

247:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/12/12 16:43:06.18 XYlh5YgxO
ほしゅ

248:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/12/22 10:51:54.55 WxR9aCWA0


249:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/12/25 12:37:18.32 49ZGHR7W0


250:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/12/28 22:17:24.39 absqHBkg0


251:パンケーキ【1】 ◆WzxIUYlVKU
13/12/30 17:56:31.49 MkykL9JU0
※FF6のエドガーとリルムです。恋愛要素をふくみます。苦手な方はご注意下さい。

************************
朝ごはんはふわふわのパンケーキだ。
生地には卵をたっぷり使った。
それを前の晩から一晩置いてしっかりと寝かせておいた。
そうすると、焼き上がりがよりいっそうふわふわになるのだ。
リルムがこんなにも張り切っていたのはアイテムを調達してきてくれた金髪の王様がメイプルシロップを手に入れてきたからだ。

「リルム、好物だって聞いたよ。」

チャーミングな笑顔でそれを渡された時になんと返事してそれを受け取ったか覚えていない。
うれしいような、くすぐったいような、それがなんだか悔しいような。
彼がまたパーティの女性陣にも花や果物を贈っているのを見てよりいっそう腹が立って。

252:パンケーキ【2】 ◆WzxIUYlVKU
13/12/30 18:00:09.59 MkykL9JU0
キッチンにはバニラエッセンスの甘い香りがただよって、フライパンの中のパンケーキは焦げることなく綺麗なきつね色になった。
リルムは大満足でそれを皿に移す。
空っぽになったフライパンをちょっと冷まして新たに生地を流し込む。
パンケーキをどんどん焼いて、それらは一枚の皿の上にどんどんと重ねられていく。
10枚目を積み上げたところで生地がなくなった。
リルムはそれをテーブルに運ぶと、予め用意してあったホイップクリームをたっぷりとのせ、その上から皿にいちごを煮込んで作った甘い甘いソースもかける。
ミルクと砂糖をふんだんに入れたお茶も用意した。

「完璧!」

リルムはナイフとフォークを持つと、パンケーキの山に挑みかかる。
まずは10枚まとめて一気に半分にカットする。

253:パンケーキ【3】 ◆WzxIUYlVKU
13/12/30 18:05:18.80 MkykL9JU0
手に少しクリームがついてしまったけど、気にしないで更にそれを半分に切る。
四等分されたパンケーキの一片にえいや!とフォークを突き刺し、刺さった分だけ口元に運ぶ。
そのとき、キッチンの扉が開いた。

「おはよう、リルム。」

よく通る甘い声。
みめよい長髪のエドガーと、筋骨隆々なマッシュの兄弟が入って来た。
リルムはエドガーの挨拶に応えずにパンケーキにかぶりつく。

「お!うまそうだな!」

マッシュがリルムの皿を目ざとく見つける。

「やらないよ、キンニク男。」

リルムの口の悪さはいつものことなので、マッシュは気にせず豪快に笑う。

「なんだよ、一口くらいいいだろ?」

リルムはパンケーキでいっぱいの口をもごもごさせながらマッシュにしかめ面をしてみせる。

254:パンケーキ【4】 ◆WzxIUYlVKU
13/12/30 18:07:49.29 MkykL9JU0
それを微笑ましく見ていたエドガーは、おや?と首を傾げる。

「リルム、メイプルシロップは使わないのかい?」

エドガーの言葉に、リルムはパンケーキを噛みつぶしながらそっぽを向いてしまう。
がっかりした様子にリルムは内心ほくそ笑む。
この台詞を言わせたいがために頑張ってパンケーキを焼いたのだ。

「こら、リルム!いっぺんに口に入れすぎだろ?」

マッシュがあきれてリルムの大きな帽子の上に大きな手を乗せる。と、帽子がぱふん、と音を立ててへこんだのがおかしくてエドガーは思わず吹き出してしまう。

「なにがおかしいんだよ!」

口の中のパンケーキは全てその小さな胃袋におさまってしまったのに、未だぷう、と頬をふくらませているのが愛らしい。

255:パンケーキ【5】 ◆WzxIUYlVKU
13/12/30 18:13:34.37 MkykL9JU0
「これは失礼。ただ、マッシュの言うとおり、一度に口の中のいっぱいにパンケーキを頬張るのはお行儀が悪いな。」

エドガーはリルムに歩み寄ると、その顔を覗き込み、

「ほら、ほっぺにクリームがついてるよ。」

と、リルムの頬に唇を寄せ、クリームをついばんだ。

「なななな、何すんだよ!」

リルムは驚いて跳ねるようにして立ち上がり、椅子が派手な音を立ててひっくり返った。

「別に。おいしそうなパンケーキがあったから、一口いただいただけさ。」

目をすっと細め、口角を品よく上げた完璧な微笑みでもって言われ、リルムは咄嗟に言い返すことが出来ず、ナイフとフォークを握りしめ、エドガーをキッと睨みつけた。

256:パンケーキ【6】 ◆WzxIUYlVKU
13/12/30 18:16:45.85 MkykL9JU0
リルム本人は睨みつけてるつもりなのだが、顔を真赤に染め、いきなりキスされた動揺のためかほんの少し涙ぐんで、さらにその身長差でリルムは自然とエドガーを見上げることになり、結果的に「瞳をうるうるさせた上目遣い」になっていることに本人は気付いていない。

「なんだぁ?リルム、おまえがパンケーキみたいにパンパンになってるぞ?」

耳どころか肩まで真っ赤になっているリルムの帽子を、またぱふぱふと叩いてマッシュがからかう。

「うううう、うるさぁい、クマ男!」

リルムはパンケーキの皿を抱えるようにして”クマ男”に大ウケしてがっはっはと笑っているマッシュの横をすり抜け、キッチンから出て行ってしまった。もちろん、ドアは乱暴にばたん!と閉めてた。

「しまった、怒らせちまったかな?」

257:パンケーキ【7】 ◆WzxIUYlVKU
13/12/30 18:20:17.30 MkykL9JU0
呆気にとられてその後姿を見送ったマッシュだったが、テーブルの上にフォークとナイフが転がっているのを見つけ、

「リルムのやつ、手で食べるつもりか?」
「私が持って行くさ。」
「いいのか?兄貴からうまく謝っといてくれよ。」
「ああ、二人でちょっとからかい過ぎたかな。」

エドガーは新しいナイフとフォークを持って、リルムの部屋に向かう。
まったく、なんて可愛らしいんだろう、とエドガーは一人笑みを浮かべる。
リルムの反応はエドガーにとって上々だった。
メイプルシロップがうれしかったアピールを、ちょっとばかりひねくれた方法で表現する意地っぱりな少女がエドガーにはとても好ましい。

258:パンケーキ【8】 ◆WzxIUYlVKU
13/12/30 18:24:03.32 MkykL9JU0
彼女のそんな振る舞いが見られるのなら、

(次はどんな贈り物をしようかな、リルム。)

彼女が大人になるまで、何度でも贈り物をしよう。
そうして、時間をかけて自分以外は見えなくさせてしまおう。
そんな野望を抱いて、自信たっぷりにリルムの部屋の扉をノックするエドガーだったが、ドアが開いた途端にパンケーキが宙を飛んできて、端正なその顔に見事にヒットするなどとは思いもしなかったのだった。


おわり。

*********************************
読みにくくてごめんなさい。文字数制限のため、細切れになってしまいました。

259:名前が無い@ただの名無しのようだ
13/12/31 20:44:28.49 oOfOLceG0
職人さんキテターーーーーー!!!(・∀・)
GJ!
爽やか王子はストライクゾーンどんだけ広いんだwwwwww

260: 【225円】 【小吉】
14/01/01 01:27:24.10 gw87PNdI0


261:名前が無い@ただの名無しのようだ
14/01/04 14:14:40.55 DtW6LlqY0
乙です

262:名前が無い@ただの名無しのようだ
14/01/09 16:52:47.94 q1Vc/Fqn0


263:名前が無い@ただの名無しのようだ
14/01/16 00:17:02.18 FJAaaZ120


264:名前が無い@ただの名無しのようだ
14/01/19 11:34:15.79 +lA9X76H0


265:名前が無い@ただの名無しのようだ
14/01/26 16:44:13.73 h/Mmybqf0


266:名前が無い@ただの名無しのようだ
14/01/29 21:16:29.15 HjcHw1VJ0
右目が―ズキン―と疼いた。

光を失って10年になるが、今までそんなことはなかった。
彼女の姿を見るまでは―

薄暗い中でも、その艶やかな長い銀髪は輝きを放っている。
整った美貌は息を飲むほどに美しい。
妖艶な肢体を惜しげもなくさらすその美女を見たときに
アーロンの右目の疼きははじまり、それは強くなっていった。

「ユウナレスカ様!」

アーロンの盟友であるブラスカの忘れ形見、ユウナは彼女を見て
驚きながらもそう声を出した。
彼女はそのユウナの声に反応を示さない。
ベッドに腰を下ろし、手を太もものところに据えたまま
少しさびしげな様子でいる。
これは過去の人間の思念が幻光虫と結びつき作られた映像スフィアだからだ。

中央の豪奢な天蓋のあるベッドに座り、ユウナレスカは佇んでいる。
部屋はゆったりとした間取りになっていて、豪華な調度品の数々は
彼女の高貴な地位を如実に示している。

しばらく思い出すこともなかった10年前のあの時の記憶が脳裏によぎる。
苦い記憶、思い出したくない記憶…

―ふざけるな!ただの気休めではないか!―

激昂するアーロンに、ユウナレスカは表情一つ変えずアーロンを見つめている。
かつて絶世の美貌をうたわれたユウナレスカの美しさは1000年の時を経ても全く衰えるところはなかった。
1000年前の彼女は「召喚妃」として幾多の兵士たちをその豊満な肢体とあふれ出る色気で誘惑し、
暗殺者として仕立てあげ、他の召喚士たちを抹殺してきた。

しかし、その生々しいまでの色香を前にしても、アーロンはひるむことも惑うこともなく
握りしめる大刀に力を込めた。

―ブラスカは教えを信じて命を捨てた!

267:名前が無い@ただの名無しのようだ
14/01/29 21:17:47.42 HjcHw1VJ0
「史上初めて『シン』を倒し、世界を救ったお方です。」

シーモアの声がアーロンの過去への思念を現実へと引き戻した。
シーモアが怪しげな微笑をユウナに向けているのも気づかず、
アーロンは再びユウナレスカを見つめた。

エボンの教えでは彼女は『シン』を倒したスピラの英雄としてまつられ、
寺院では大召喚士たちよりひときわ大きな聖像が安置されている。

その圧倒的な美しさと、そして究極召喚をあやつり『シン』を打倒したという偉大な功績から
ユウナレスカはスピラ中から尊敬と崇拝を受けている。

いわばスピラの女神ともいうべき存在にアーロンは牙をむいたのだった。

―ジェクトはブラスカを信じて犠牲になった!
アーロンの刀を持つ手に力がこもった。

ブラスカの暖かい笑顔も…ジェクトの粗暴なだみ声も…
もうスピラには存在しない。

彼らが命を差し出して得た代償とは何か。
それはまさにまやかしの希望…

―信じていたから…自ら死んでゆけたのですよ。
忘れもしない満天の星空の下。
その残酷な女神は表情一つ変えずにアーロンに諭すように言うのだった。


「そして、あなたはその名を受け継いでいる。」

シーモアの声で再びアーロンは現実に引き戻された。

「父が…つけてくれたそうです。」

ユウナの父親はブラスカだ。
ナギ説をもたらした大召喚士として、スピラ中にその名前は知れ渡っている。
(…ブラスカ…)
アーロンの光を失った右目がさらに一層疼く。

268:名前が無い@ただの名無しのようだ
14/01/29 21:19:08.38 HjcHw1VJ0
―うおおおおおおおっ!!!!

アーロンは雄たけびをあげ、ユウナレスカへととびかかっていった。

そしてアーロンが大刀を振り下ろそうとしたその刹那、
ユウナレスカは手に闘気をこめてかかげた。


…一閃…


ユウナレスカの闘気は衝撃の瞬間に刃へと姿を変え、
アーロンの額から右目を通り、ほほのあたりまで斬撃した。

―ぐああああああ!!

衝撃で弾き飛ばされ、手の力を失って大刀も取り落とした。

ユウナレスカは弾き飛ばされうずくまるアーロンに冷たい視線を送った。

「ブラスカ様は、あなたに願いを託したのでしょう。
ユウナレスカ様のごとく、シンに立ち向かえ、と。」

シーモアの声が三たびアーロンの思念を中断させた。

スピラを救った英雄の名を冠した少女。
盟友の残した子。

今のアーロンにできることは、彼女をザナルカンドまで導くことだ。

聖地と称されるザナルカンドに、ユウナレスカは今もなおも存在する。
彼女に会いまみえ、そしてユウナはどんな決断を下すのだろうか。

269:名前が無い@ただの名無しのようだ
14/01/29 21:20:31.77 HjcHw1VJ0
―まだだっ!

アーロンは激痛をこらえ、必死でおきあがった。
その場を立ち去ろうとしたユウナレスカははじめて表情を少しだけ歪ませて、
再びアーロンに向き直る。
―まだ、終わってはいないっ…

なんとか体を起こしたものの、彼の体は悲鳴をあげていた。

―くっ…致命傷か…

切り裂かれたところからは絶え間なく血があふれ出ていて、止まらないのだ。

―くっ…うっ…

アーロンは激しい痛みに膝をつき、床に手をつき体を支えるのが精いっぱいだった。

―やられる…

ユウナレスカの白くて長い脚が一歩一歩こちらに近づくように歩んでくるのが
視界に入る。

―ぐっ…

彼女の歩みに合わせて、足元のアンクレットが無機質な金属音を立てる。

―ジェクト…ブラスカ…俺はっ…!

ジェクトの不敵な笑みが脳裏をよぎる。
ブラスカの温和な笑顔が脳裏をよぎる。

―二人とも…俺に力を貸してくれ…!

270:名前が無い@ただの名無しのようだ
14/01/29 21:24:55.95 HjcHw1VJ0
「しかし…ユウナレスカ様はおひとりで世界を救ったのではありません。
無敵のシンを倒したのは…二つの心を固く結んだ、永遠に変わらぬ愛の絆…」

シーモアの涼しげな声がアーロンはたまらなく耳障りだった。
この男は何を考えているのか、とアーロンはシーモアに目を向けた。
シーモアはユウナに近づき見つめあっているので、
アーロンの視線には気づいていない。

ユウナレスカの映像を見せることによって何を主張するつもりなのだろうか。
再びアーロンはユウナレスカに視線をうつす。

長く鮮やかな銀髪が薄暗い室内でも目を引くほど綺麗だ。

―そう…
―あの時と同じだ…

―やられるっ…
アーロンはエボンドームの苔むした石畳に視線を落としていた。
ユウナレスカの足音が止まった。
もうすぐそこまでいるのだろう。
アーロンに抵抗するすべはなかった。
―くっ…

アーロンの視線に豊かな銀髪が飛び込んできた。
はっとして顔をあげると、そこにはユウナレスカがアーロンの目の前で腰を下ろし
正座するような姿勢で相対している。
目の前で間近に対峙するユウナレスカは驚くほどに美しい。

―なぜ…殺さん…殺せ―

ユウナレスカはわずかにほほ笑むとアーロンに向けて手を伸ばしてきた―

271:名前が無い@ただの名無しのようだ
14/01/29 21:28:30.76 HjcHw1VJ0
続きますが今日はここまでです。

アーロン×ユウナレスカがどうしても書きたかったので…w

続きはエロパロに移動して投下する予定です。

272:名前が無い@ただの名無しのようだ
14/02/04 17:04:43.18 N+VgvisdO
>>271
乙!
エロパロでも待ってるよ

273:名前が無い@ただの名無しのようだ
14/02/06 18:51:53.07 go5hz1OP0


274:名前が無い@ただの名無しのようだ
14/02/10 22:00:08.05 AO7IdoF00
乙です

275:名前が無い@ただの名無しのようだ
14/02/14 04:01:19.87 Iatx5AJK0


276:名前が無い@ただの名無しのようだ
14/02/16 09:47:48.09 MyvYQuox0
おつ

277:名前が無い@ただの名無しのようだ
14/02/16 22:04:00.50 mQiA7ery0


278:名前が無い@ただの名無しのようだ
14/02/18 04:36:42.48 OQAEdrfDI
ほしゅー


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