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公的債務に関する歴史の教訓 By Martin Wolf
2012.10.11(木) Financial Times(2012年10月10日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
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高水準の債務を抱え、為替レートが過大評価されたレベルで固定されている
大規模な高所得国が公的債務の削減と競争力の回復を試みたら、一体何
が起きるだろうか? これは今日の情勢に関連する重要な問いかけだ。なぜなら、
これはイタリアとスペインが直面している課題にほかならないからだ。
しかし、国際通貨基金(IMF)が最新の「世界経済見通し(WEO)」のある章で
論じているように、これには前例がある。2度の世界大戦の間の英国の体験だ。
これを見る限り、「内的減価」(賃金や物価水準の引き下げ)の試みと債務力
学との相互作用は致命的な影響をもたらしかねない。しかも、イタリアとスペインの
窮状は多くの意味で、当時の英国のそれより深刻だ。
英国は最終的に金本位制を離脱できたが、ユーロ圏からの離脱はこれよりはる
かに難しい。また、当時の英国には金利を引き下げる能力も意欲もある中央銀行
があったが、現在の欧州中央銀行(ECB)がイタリアやスペインのために同じことをす
る能力と意欲はないかもしれない。
倒錯的な財政・金融政策に走った第1次大戦後の英国
第1次世界大戦直後の英国では、公的債務の残高が国内総生産(GDP)比
140%に達し、物価水準も戦前の2倍以上に跳ね上がっていた。政府は、戦前の
等価での金本位制復帰(これは1925年に実現させた)と、信用力を維持するため
の公的債務返済を決意した。当時の英国はティーパーティーの主張にぴったりの国
だった。
政府はこの目標を達成すべく、緊縮的な財政・金融政策を実行した
その結果生じたデフレと相まって、英国の実質金利は非常に高くなってしまった。英国
の支配階級に属する独善的な愚か者たちは、凄惨な戦争を生き延びた不運な人々
をこんなふうに扱ったのだ。