11/09/17 23:58:12.26
>>327 修正
さらりーまん生態学(いきざまがく) 江波戸 哲夫(作家)
リスクと情熱
「2年前、おれの元部下が韓国の某企業にヘッドハントされたんだけどね」
大手メーカーX社にいた旧知の技術者M氏が、シニカルな口調でいい出した。
元部下のS君は40代半ばの技術者、示された給料は日本の2倍、彼が追求してきた
技術開発を応援してくれるという。ただし契約は2年で、ほぼ更新されない。
S君はそれに応じた。
X社は彼の技術を採用しなかった。彼は飼い殺しにされるより、それを韓国で
続けたかったのだ。M氏は苦笑する。
「彼の技術がいま花開いて、わが社を追いつめているよ」
だからといってX社に残っていたとしても、彼の技術が日の目を見る可能性はなかった。
「S君のチームに入った韓国技術者のやる気は半端じゃなく、自分がX社に入社した
当時を思い出したといいやがった」
つまり最近のX社の技術者にはやる気がないというわけだ。
「きみの責任だろう?」
からかったつもりだが、彼は渋い顔になった。
「うちでは経営陣がリスクを取ろうとしないから、何もできやしない」
きみも経営陣に連なっていたろうとはいわなかった。
「S君は、もう契約切れなのでその技術を引っ提げて日本に戻ってきたいらしいが」
「無理だろうな」
「ああ、日本は採用人事でもリスクを取らないからな」
(以下略
日経2011.9.14(夕刊)