12/12/17 16:19:33.50 0
>>3
ああ? なんだ、チビ助じゃねえか。
俺は今忙しいんだ、おとなしくあっちで遊んでろ。
…ハァ、まあガキのお守りも仕事の内ってことか。
ほら、こっちこい、少しだけだぞ。
…どっこいしょっと……おお、前よりでかくなったんじゃないか?
こりゃそろそろチビ助なんて呼べなくなるかもしれないな。
よし、もういいだろ…ってコラ頭に登るな。
あんまりなつくなよ、ったく…。俺も暇じゃないんだ。
わかった、もう少しだけな。だがそこからは降りろ、落っこちるだろ。
>>4
この村に興味があるのか?
そいつは光栄なことだが、特に面白い話があるわけでもない。
ご期待に添えるかは分からないが、それでも良ければ聞いていってくれ。
昔々あるところに…おっと、出だしからガッカリさせたか?
悪いな、こういうのはあまり得意じゃないんだ。
まあとにかく、昔々あるところに一人の男がいた。
そいつは普通の人間とは違い、全身は毛で覆われ、耳や尻尾が生えていた。
今で言う獣人だな、当時は別の呼称もあったそうだが定かじゃない。
その男は人里離れた森でつつましく暮らしていたそうなんだが、ある日人間の女がそこに迷い込んだ。
森を迷い歩いた挙げ句に荷物も落とし、腹は減って、もう駄目かと思った…。
女は崩れるようにその場に倒れて、目を閉じる。
すると、微かに足音が聞こえた。
じっくりと強く地を踏みしめる音、それは間違いなく人のものだった。
女はほとんど反射的に声を上げた、誰か来て…と。
それを聴いたのか、足音は女の方へどんどん近づいて大きくなる。
助かった、女はそう思い神に感謝した。
そして、足音は女のすぐそばで止まった。
虚ろな眼を擦り、石のように重い体を起こすと、そこにはなんと…。
まあ大方予想はついていると思うが、話の最初に出てきた獣人が立っていたわけだ。
驚いて声も出ない女を気にも留めず、男はその女を自分の住処まで運んでやった。
食べ物を分けてやり、風呂や着替えも貸してやって…。
最初こそ見かけに戸惑いはしたが、そいつが悪い奴ではないことを女はすぐに理解した。
そこで女は男に言った、ここであなたに恩返しがしたいと。
女は元々身よりがなかったからな、無理して森を出るまでもないと思ったのかもしれない。
特に拒む理由もなく、男はそれを承諾し、男の住処は村になった、二人きりだがな。
男女が寝食共に暮らしていれば、自然とお互いの距離も近くなる。
二人がそういう関係になるのに時間は掛からなかった。
女は男との最初の子供を身ごもり、そして産まれたのが、この村の長。
つまり獣人の男と人間の女の出逢いが、この村を作ったというわけだ。
ちなみに、俺はこの話は全く信じていない。
長々と話しておいてなんだが、色々とご都合主義でおかしい点が多すぎるだろう。
それに、そもそもこの村は最初から獣人しかいないからな、俺の知る限り人間がいたことはない。
つまりこれは……ホラ吹きの大嘘、飛んだ与太話ってわけだ。
…ふっ、…ハッハッハッハ!いや悪い、アンタがあんまり真剣に聞いてくれるから白状するタイミングを見失ってな。
面白くなってきて、つい話し過ぎた。許してくれ。
…ああ、だが村長が獣人と人間のハーフって話だけは本当だ。
もし気になるなら会いに行ってみるといい。
俺なんかよりは良い話が聞けるはずだ。