17/04/12 13:01:29.38 CAP_USER9.net
終わりの見えないシリア内戦の転換点になるだろうか--。
米トランプ政権はシリアのアサド政権軍が化学兵器を使ったとして、同国西部の空軍基地を巡航ミサイルで攻撃した。
米軍はシリアなどで過激派組織「イスラム国」(IS)と戦っているが、アサド政権軍を直接攻撃したのは初めてである。
2013年にもアサド政権の化学兵器使用が問題になったが、米オバマ政権はシリアへの攻撃を予告しながら棚上げした経緯がある。
そんなオバマ政権の「弱さ」がシリア情勢を悪化させたと批判するトランプ大統領は、素早い攻撃で「力の政策」を印象付けたのだろう。
化学兵器の証拠示せ
攻撃後の演説でトランプ大統領は、アサド政権が「恐ろしい化学兵器攻撃を行った」と断定し、全ての文明国がシリアにおける殺りくと流血を防ぎ、あらゆるテロの根絶に取り組むよう呼びかけた。
アサド政権の使用を物語る材料は攻撃前に公開するのが筋である。そうでないと攻撃は大統領の低い支持率を上げる苦肉の策とも映るからだが、呼びかけ自体は理解できる。
今のシリアは無法地帯と化し、人道危機が深刻化する一方だ。化学兵器だけではない。ロシア軍の支援を得たアサド政権は、破片が広範に飛び散るたる爆弾などを使って市民を無差別に殺傷してきた。
6年に及ぶ内戦で死者は30万人を超え、総人口のほぼ半分(約1100万人)が国内外で避難民と化したとされる。
しかもシリア難民の流入に欧州諸国は悲鳴を上げ、移民排斥を訴える極右のポピュリズムが高まる要因にもなっている。
米国が一過性の攻撃で矛を収めるのか、それともアサド政権を崩壊に追い込むまで続けるのか、現段階では見通せない。
だが、米国が本気で対処しなければシリアの混乱収拾は期待できず、しかも軍事行動だけで解決できないことは明らかだ。
米国が今回の攻撃に満足して関与を怠れば、アサド政権に足元を見られて情勢は悪化しかねない。
望ましいのは内戦収拾に向けて米露が緊密に協力し、政治解決への道筋をつけることだ。
反体制組織を支援してきた米国は、比較的穏健で民主的な勢力の結集を図り、ロシアはアサド政権を説得して円滑な権力移譲の環境をつくるべきだろう。
というのも、多くの国民を殺したアサド政権を存続させればシリアの安定と民主化は難しい。
かといってアサド政権を強引に倒せば、イスラム教シーア派とスンニ派の対立を軸に、激しい抗争が予想される。
仮に過激派組織のアルカイダやISに連なる勢力が権力を握れば事態はさらに悪化し、米国の同盟国イスラエルにも影響が及びかねない。
中東の活断層とも言われるシリアの複雑さを十分に認識して、後継政権の青写真を描くべきである。
露は大局的見地で協議を
ロシアや中国は国連安保理のシリア関連決議案に拒否権を使い続けた。国内に多くのイスラム教徒を抱えることと無縁ではあるまい。アサド政権崩壊に伴う宗派的混乱が飛び火する可能性もあるからだ。
だが、混乱波及を防ぐには、アサド政権から新政権への軟着陸を考えることも大切だ。
オバマ政権は内戦に有効な手を打てず、露中は決議案を拒否権で葬り続けた。
これでは何も解決しない。大国が意地を張り合って結局は無為無策に等しかった状況とは決別しなければならない。
米国の攻撃は中国の習近平国家主席の訪米中に行われた。まさに電光石火の攻撃は、「自分はオバマ氏とは違う」というトランプ大統領の意思表示だろう。
軍事的には弱小のシリアと核爆弾を持つ北朝鮮を同列には論じられないが、北朝鮮への軍事行動も論外ではないことを習主席に見せ付ける計算も感じられる。
安倍晋三首相は、化学兵器の拡散と使用は許さないという「米政府の決意を支持する」と述べ、
中国外務省は「情勢悪化を防ぎ、政治的解決のプロセスを維持すること」に力点を置いた。ともに北朝鮮問題を念頭に置いたコメントだろう。
一方、ロシアは攻撃に対し「主権国家への侵略」と強く反発している。ただ、ロシアもシリアへの深入りは望んでいまいし、人道危機の深刻さも承知していよう。
人類史的な悲劇と言われるシリア内戦に終止符を打つべく、ロシアが大局的な見地から米国と協議することを望みたい。
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