16/06/13 22:21:09.17 CAP_USER9.net
三菱東京UFJ銀行が、国債入札の「特別参加者」を返上する方向だとの報道があった。これが新聞やテレビで大きく報じられたことにやや驚いた。
日本では、2004年10月以降、「国債市場特別参加者制度」を導入しているが、1990年頃から事実上、同趣旨の制度は存在していた。
これらは、欧米主要国で導入されている、いわゆる「プライマリー・ディーラー制度」を参考にしたものだ。
「国債市場特別参加者」としての資格を付与することにより、財務省は国債に関する情報提供を行う一方、特別参加者の金融機関には一定の応札・落札義務が発生する。
こうした関係を通じて、国債の安定的な消化の促進、国債市場の流動性の維持・向上等を図ることを目的とするとされている。
情報提供については、財務省(当時は大蔵省)が主催するパーティーに、金融機関の人が参加して、財務省の担当者と直接話ができることがメリットといわれていた。
さすがに今の時代は、パーティーではなく、国債市場特別参加者会合という形で実施されていると思われる。ただ、もはや財務省担当者と話すメリットはほとんどないのではないか。
特別参加者は三菱東京UFJ銀行を含めて22社あるが、入札参加者は5月時点で246社にのぼる。
三菱東京UFJ銀行は、特別参加者を返上するだけで、入札参加者にはとどまる方針のようだ。
特別参加者としてのデメリットが、メリットを上回ると判断したため返上するが、入札には引き続き参加するということだろう。この意味で、国債入札には支障は出ないだろう。
特別参加者の返上が検討されている背景には、銀行の国債ビジネスが変化していることがある。
国債の金利は他の金融商品と比較しても最低水準だ。そもそも国債で調達した資金は国が使うもので、収益性も最も低いものだからだ。
だが、デフレ下で融資先がなく、名目金利が低下傾向の時代には、国債投資は儲かる。
本来なら最低収益であるはずの金融商品に投資して儲かることこそ、デフレの異常性を示している。
ここにきて、日銀の量的金融緩和やマイナス金利の導入によって、デフレ脱却が見え始めた。
今回の三菱東京UFJ銀行の件も、デフレ脱却の過程で生じる現象として、良い兆候だとみることもできる。
三菱東京UFJ銀行は、マイナス金利政策についても批判的な立場だ。個別銀行としては、マクロ経済が良くなることより、自行の収益の観点で心配ということなのかもしれない。
そうしたなかで、国債の特別参加者資格の返上という話が大きくニュースで取り上げられると、日銀のマイナス金利に対する不満が背景にあるのではと皮肉な見方もしたくなる。
いずれにせよ、デフレ脱却に向かうなかで、国債への投資に依存した経営のままで高収益が続くというのは、普通の経済感覚でも有り得ないことではないだろうか。
(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
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