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戦局、最後の関頭に直面せり
敵来攻以来 麾下将兵の敢闘は真に鬼神を哭しむるものあり
特に想像を越えたる物量的優勢を以てする陸海空よりの攻撃に対し
苑然徒手空拳を以て克く健闘を続けたるは 小職自ら聊か悦びとする所なり
然れども飽くなき敵の猛攻に相次で斃れ、為にご期待に反し此の要地を敵手に委ねる外なきに至りしは
小職の誠に恐懼に堪へざる所にして幾重にも御詫申上ぐ
今や弾丸尽き水涸れ 全員反撃し最後の敢闘を行はんとするに方り
熟々皇恩を思ひ粉骨砕身も亦悔いず
特に本島を奪還せざる限り 皇土永遠に安からざるに思ひに至り
縦ひ魂魄となるも誓つて皇軍の捲土重来の魁たらんことを期す
茲に最後の関頭に立ち 重ねて衷情を披瀝すると共に
只管皇国の必勝と安泰とを祈念しつつ永へに御別れ申上ぐ
硫黄島総指揮官 陸軍中将 栗林忠道