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番組時評「テレビとはナンだ!」
【2回目以降もすこぶる楽しみな岡本太郎を描いたドラマ】
岡本太郎が生まれたのは1911(明治44)年2月26日のことだ。
生きていれば、まさに百歳の誕生日に当たる先週の土曜、NHKでドラマ
「TAROの塔」(全4回)の放送が開始された。
岡本太郎は紛れもなく美術界における巨人のひとりであり、同時に異端児でも
ある。その人と作品をどう評価するかによって、評価する側も問われるような
強い存在だ。何より15年前まで生きていた実在の人物である。
しかも「芸術は爆発だ!」に象徴されるように、多くの人が「時代のトリック
スター」としての太郎を記憶している。ドラマ化はそう簡単ではない。
今回制作陣が切ってきた大きなカードが岡本芸術の源泉ともいえる母・かの子
(寺島しのぶ)だ。寺島は狂気と童女が混在した女流作家を、まさに憑依したかの
ように演じている。これだけでも見る価値は十分だ。
カードはもう一枚。太郎の秘書であり後に養女となった梅子(常盤貴子)だ。
太郎の後半生で秘書や養女という言葉では説明しきれないほど重要な存在だった
梅子を常盤がどう演じるか。寺島とのガチンコ勝負である。
岡本太郎役に松尾スズキを選んだのもお見事。松尾自身が長い間、演劇界の
異端児だったからだ。太郎が2人の女性から何を得、何を与えながら、あの
岡本太郎になっていったのか。2回目以降もすこぶる楽しみだ。
(日刊ゲンダイ 2011.02.28)