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平太へ(1)
Q10から最初に送られて来た映像が、理科準備室でしりもちをついているあなただった時、私はどんなにうれしかったか知れません。
Q10を起動させたのは、あのノートに書かれていた通りあなただったと。
いつの頃からだったでしょう、タイムトラベルが可能になった頃でしょうか。
私には、来るべき未来がおぼろげながらも見えて来た様な気がしたのです。
たぶんこうなるのに違いないわ、と。
それは、あなたが高校生の時に描いた妄想だと言っていたQ10との事です。
私の命が見えて来た時、その時がいよいよ来たのだと思いました。
私はあなたに、私と出逢う前のあなたを見てみたいと頼みました。
タイムトラベル用のロボットを発注するに当たって、その容姿を私の若い頃のそれにしてもらうようにあなたに頼み、あなたはその通りにしました。
あなたが高校時代に想い描いたというQ10は女性型ロボットでしたが、発注するロボットの容姿を私の若い頃にする様に頼んだのは何故だかわかりますか?
私があなたとあの鉄塔の下で初めて出逢った時、あなたはピアニカの音をなんだか懐かしいと言いましたが、あなたは私の顔を見て明らかに動揺していました。
実はその時に私は感じたのです、あなたの眼差しが私の中に誰か別の人を見ていると。
ところが時が経つにつれて、その眼差しは次第に消えて行き、まったくなくなってしまいました。
それからしばらくしての事です、あなたがあのノートを見せてくれたのは。
何故、あなたがあのノートを私に見せてくれたのかはわかりません。
そこには、あまりにリアルなQ10という女性型ロボットとの出逢いから別れまでが綴られていました。
あなたの方からノートを見せてくれたのにもかかわらず、私がQ10の事をたびたび訊くと、高校時代に想い描いた妄想だと言います。
本当にそれ以上の事はわからない様でした。
おかしいですね、あなたが私に想像上のQ10の事を告げることにより、むしろQ10に対する関心は、あなたから私に移って来てしまった様でした。