(゜д゜)宇宙のあいさつ・・・星新一の夢世界5at SF
(゜д゜)宇宙のあいさつ・・・星新一の夢世界5 - 暇つぶし2ch695:名無しは無慈悲な夜の女王
11/07/21 18:04:25.10
新潮文庫「ようこそ地球さん」のあとがき(昭和四十七年三月 星新一)から引用。
打ち間違えあったらスマン。


 本書に収録してある『探検隊』はその数すくない例外の作品である。かつて話題となった、こんな事件があった。
わが国の南極探検隊が、帰途につこうとした時、使用したカラフト犬の二頭を収容できず、そのままおいてきた。
そのあと、犬たちはクサリをかみ切り、ペンギンなどを食べて生きのび、翌年ふたたび訪れた探検隊と再会した。
マスコミは劇的な記事として大きくあつかい、タロー、ジローという犬の名をたたえた流行歌までできた。

 しかし、私はなにかひっかかり、ペンギンの身にもなってみろと思って書いたのが、この『探検隊』である。
当時は読めばすぐわかる内容だったが、いまは、これだけの解説をつけないと、なんのことやら理解しにくいのではなかろうか。
時事風俗に密着した題材は、かくのごとくはかない。いかなる大事件も、たちまち忘れ去られてゆく。
私は、ニュース的なものから、ますます離れたくなるのである。

 余談となるが、この南極における犬の事件、イギリス人だったらこのような場合、射殺してしまうらしいのだ。
みずから動物愛護精神の持主をもって任じ、他にもそれを押しつけたがるイギリス人の行動である。
これ以上ペットを飼えないという事態になったら、殺すべしというのが常識になっている。
日本人にとっては射殺が残酷だが、イギリス人にとっては、おき去りのほうが残酷なのである。

 人間の思考はさまざまである。だからこそ世に事件がつきず、小説もたねぎれにならない。
また、日本のマスコミもイギリス人も、犬を当然のごとくペンギンよりも優位においているが、
私のようにペンギンに同情したくなる気分だって、あっていいのではないだろうか。

 しかし、それならペンギンの大群がよってたかって犬を、あるいは人間を、食い殺す光景が望ましいのかと反論されると、私も沈黙せざるをえない。
感情と理屈は必ずしも一致せず、かくのごとくずれがある。人間は、そのいいかげんな点が面白いのではないだろうか。


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