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異端裁判の弾圧に負けて地動説を撤回したガリレオに、落胆した弟子が、聞こえよがしに叫ぶ。
「英雄のいない国は不幸だ!」。すべてを引きとってガリレオは答える。「違うぞ、英雄を必要とする国が
不幸なんだ」。ドイツの劇作家ブレヒトの「ガリレイの生涯」の名場面である(岩淵達治訳)
▼尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件のビデオが流出した件で、海上保安官が名乗り出た。ニュースを知って
この台詞(せりふ)を思い出した。知る権利に応えた「英雄」なのか、それとも国家公務員法に背いた
「罪人」なのか
▼いずれにせよ日本の国民は、映像を見て事実を知るのに、この人物を必要とした。ガリレオ流に言えば
「不幸な国」ということになろうか。外交的戦術と、知る権利の微妙なバランスの上で、政府は無為に
すぎた印象が強い
▼ビデオの公開は賛否が割れていた。するならする。しないならしないで、情報管理を徹底するのが政府の
仕事というものだろう。煮え切らぬ甘い脇のまま、美挙にせよ愚行にせよ、やすやすと許すことになった
▼今のところはまだ、「自分が流した」という本人の申し出しかない。沖縄で撮影編集された映像を、
神戸勤務の一職員がどう入手したのか。動機は何か。大事なこと一切はまだ霧の向こうにある
▼〈たったひとりの人が立ち上がって「否」といっただけで、これだけのことが成しとげられたのだ〉。
冒頭の劇で、天動説の否定がもたらした世の変革を、弟子がこう誇る。この海上保安官も同じ思いで
いようか。ネット社会の威力と恐怖である。
ソース:朝日新聞
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