10/10/28 19:55:25 YTJdiM5B0
パソコンを買ったんだけど、インターネットの仕方がわからないん
だ……、大学の教室で真理子が友達にそう話しているのを則男は聞き
逃さなかった。クラスで一番の美人と言われ、同じクラスの男たちの
大部分があこがれている真理子、だが、誰一人として真理子を陥落せ
しめることには成功していなかった。実家のある熊本に恋人を残して
きているのだとか、お嬢様育ちで厳しく躾られているのだとか、みん
なが勝手な想像をしていた。中には荒唐無稽としか言いようのない噂
もあったが、清潔でセンスのいい服を着て、爽やかな笑顔を浮かべる
真理子を見ているとそれも強ち外れていないんじゃないか、と誰もを
そういう気にさせた。
ルックスに絶大の不安を持つ則男も真理子に憧れている一人だった。
以前、今時旧98を買うほどの勇気を出して、デートに誘ったことも
あった(実際のところ、則男がボソボソしゃべるので、真理子には何
の話かちっとも伝わっていなかった)のだが、ごめんなさいの一言で
あっさり退けられていた。それでも、真理子への思いは募った。自分
の手の届かぬ存在なのだ、そう思えば思うほど、真理子が則男の心を
占めていった。則男にとって真理子と出会ってからの3年間は、毎晩、
真理子の名前をうわごとのようにうめきながら不潔な液体を放出し続
ける3年間だった。
その真理子に近づくチャンスが遂にやってきたのだ、則男は勝手に
そう思いこんだ。そしてその顔と同じくらい歪んだ性格を存分に発揮
して、真理子にぼそぼそと言った。
「それなら、ぼ、ぼくが設定してあげるよ。ぼ、僕はコンピューター
には詳しいんだ」