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なぜ、1本の裁判官の論文が波紋を広げているのか。
逸失利益をめぐっては、東京、大阪、名古屋3地裁のベテラン裁判官が
1999年、将来に可能性を秘めた若い世代に対しては手厚く配慮することを
うたった「共同提言」を発表。おおむね30歳未満の人が交通事故で亡くなったり
重い後遺症が残ったりした場合、事故前の実収入が同年代の平均より
相当低くても、将来性を考慮したうえで全年齢平均賃金などに基づき原則
算出する統一基準を示した。
2000年1月以降、この基準が全国の裁判所に浸透したが、長引く不況による
非正規労働者の増加に伴い、事故の加害者側が「平均賃金まで稼げる
見込みはない」として訴訟で争うケースが増えている。交通事故訴訟に携わる
弁護士らによると、実際に非正規労働者の逸失利益が正社員より低く認定される
司法判断も出てきているという。
こうした中で発表された徳永裁判官らの論文。非正規労働者側は、
交通事故訴訟に精通した裁判官の考えが他の裁判官にも影響を与え、
こうした動きを後押しする可能性があると不安視する。(阪本輝昭)
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〈逸失利益〉交通事故などで亡くなったり、重度の障害を負ったりした人が
将来的に得られたとして算定される収入。以前は男女別全年齢平均賃金などを
基準とする「東京方式」と平均初任給を基準とする「大阪方式」で未就労者の
逸失利益を算定する方法があり、地域格差があった。2000年1月以降は
東京方式に沿った基準に統一され、不況で急増した若い非正規労働者にも
適用されている。25歳の男性が交通事故で死亡した場合、67歳まで働けた
として、09年の男性の全年齢平均賃金(約530万円)をもとに生活費を
半分差し引いて試算すると約4600万円になる。