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・日本を訪れる多くの欧米人観光客は、ベストセラーとなった「Memoirs of a Geisha」を片手に、
古き日本の情緒を味わおうと京都の祇園に押しかける。
だが、「飛田新地」は控えめで無垢な芸者の世界とはかけ離れた存在だ。東京の歌舞伎町や
札幌のススキノのようなネオン街の華やかさもない。
飛田新地は大阪の貧しい地域の一角にある。そこは都会の闇に日本がどう向き合ってきたかを
物語る場所でもある。
飛田新地の遊郭としての歴史は1900年代前半に始まり、1920年には売春宿がひしめき合う
ようになった。1958年に売春防止法が施行されてから、それらの店は“料亭”に姿を変えた。
だが外観にだまされてはいけない。飛田新地の料亭のメニューにミシュランの星は載っていない。
日本で売春は禁止されているが、風俗産業に対する締め付けは比較的緩いようだ。都市に
風俗街があることは珍しくなく、しかも堂々と営業している。だが飛田新地は、時代に
取り残されたような場所だ。古びた商店街、高架道路、公営住宅などの間にひっそりと
存在するその場所では何十年も前にタイプスリップしたような錯覚を覚える。東京にも
吉原や歌舞伎町などの風俗街があり、吉原は遊郭として古い歴史があるが、建築物の
魅力はない。
20年程度での建て替えが当たり前の日本で、飛田新地は、建築物の保存状態の良さで大阪でも
特異な存在だ。建物の多くは終戦直後に建てられた。飛田新地の不思議な魅力となっている
木造建築には、玄関ホールの木彫りの彫刻のように、かつての繁栄が刻まれている。提灯や
この地域を統括する「飛田料理組合」の垂れ幕も下がっているが、組合からコメントを得ることは
できなかった。(>>2-10につづく)
URLリンク(jp.wsj.com)飛田新地の幽玄/
※画像:URLリンク(online.wsj.com)