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■ 「首を切り落としてやる」 ■
虐殺を隠れて見ていた老人の話では、韓国兵は女性や子供を井戸に落とし、
助けを求める声を無視して手榴弾を投げ込んだという。
チャウは、盛り土をしただけの簡単な墓に家族の遺体を葬った。
「殺されたのは女や子供ばかりだ。共産主義者なんかであるわけがない」と、チャウは言う。
「韓国人は人間じゃない。目の前に現れたら、首を切り落としてやる」
ベトナムで虐殺行為を犯したのは、韓国軍だけではない。
アンリン郡から海岸沿いに北へ向かえば、68年に米軍部隊が500人以上の村人を虐殺した
クアンガイ省ソンミ村がある。
それでも戦争体験をもつフーイェン省の村人の間では、米兵の評判は必ずしも悪くない。
地方公務員のファム・トゥ・サン(47)は66年のテト(旧正月)のとき、
米兵と一緒に遊んだりチューインガムやキャンディーをもらったことを今も覚えている。
だが米軍はこの年、フーイェンから引き揚げ、代わって韓国軍がやって来た。
それから「67年のテトを迎えるまで、韓国軍は殺戮を続けていた」と、サンは語る。
「韓国兵に会ったら、死に出会ったも同然だった」と、
今は地元の退役軍人会の会長を務めているチャムも言う。
アンリン郡の村人によれば、韓国軍はとりわけ女性にとって恐怖の的だった。
韓国兵は残忍なやり方で女性をレイプしてから、殺すケースが多かったからだ。
こうした残虐行為が明るみに出てきたことに、ベトナム政府は神経をとがらせている。
虐殺があったこと自体は、政府首脳も承知している。
だがベトナム当局は、虐殺事件の報告書が国内で発表されることは望んでいない。
友好関係にある韓国政府はもちろん、ベトナムに莫大な投資を行っている大宇や現代、
三星といった韓国財閥の不興を買うことを心配しているからだ。
Newsweek 2000年4月12日号