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∞【正論】ヴァンダービルト大学 日米研究協力センター ジェームス・E・アワー 中国の海が既成事実化する危険
冷戦が終結してから、中国は、ソ連という邪悪な熊は飼いならされたのではないにしても、相当に
傷ついたのであり、中国は平和を愛する国なのであるから、米軍はもはや太平洋にいる必要は一切な
い、と言い始めた。
2001年に日本で行われた会議で発表した論文の中で、私は、米軍が撤退できないひとつの理由と
して、台湾や尖閣諸島に対する中国の武力攻撃が、西太平洋における日本と米国の国家安全保障上
の利益に反するからである、と述べた。
≪武力の脅しかけた中国の大使≫
その時、同じく会議に出席していた中国の大使が、拳で大きな音がするぐらい机をたたきながら、
中国の我慢は無限ではなく、挑発を受ければ、中国はその政策目標を達成するために武力を行使
することもいとわないだろうと、私に向かって2回も説教した。私はそれに対し、日本が冷戦後も米軍
基地を維持したいと願うのは、まさしく中国によるそうした類いの発言や行動のせいであると思う、と
反論した。
1989年、穏健派の胡耀邦・中国共産党総書記の葬儀に際し、中国の多くの学生や知識人たちが
国内諸都市で抗議を行ったとき、強硬派の李鵬首相率いる中国政府は、抗議を鎮圧するため戦車を
投入することで対応した。抗議者たちは、数は多かったものの、力はほとんどなく、中国政府は彼らを
尊重しなかった。今もなお未公表の数のデモ参加者が殺害され、抗議行動は、当局による弾圧を弱め
るどころか、むしろ強める結果となった。
96年に台湾で初めて民主的に行われた総統選を前にして、中国政府は台湾近海に向けて、ミサイ
ルを発射する対抗措置に出た。米国は、母港である横須賀からインデペンデンスを、地中海からスエ
ズ運河経由でニミッツをと、空母2隻を派遣して、これに応じた。中国は怒りの反応を示したが、ミサイ
ル発射は終わり、台湾住民が李登輝氏を総統にした選挙は円滑に進んだ。中国は力を尊重するの
である。
≪米空母に海自護衛艦随伴せず≫
米国の対応は効果的だったが、残念なことに、横須賀から台湾沖の海域まで、海上自衛隊の護衛艦
は1隻すら空母インデペンデンスに随伴しなかった。そうした状況が起きていれば、中国はもっと文句を
言っていたに違いないが、中国側の尊敬もまた、高まっていたであろう。中国は力を尊重するのである。
今日、中国は、国際法上の根拠もなしに南シナ海全域が中国のEEZ(排他的経済水域)であるとして、
そこでの航行の自由に対する支配権を主張することにより、危機を引き起こしている。
とりわけ、EEZに関する中国の法律は11条で、いかなる国も中国EEZの航行とその上空通過の自由
を享受するとうたう一方、14条では、この法律の規定は「中華人民共和国によって享受される歴史的権
利」に影響を及ぼしてはならないと明言している。そして、そうした「歴史的権利」は南シナ海の80%に
適用される、と主張しているのである。
>>2以降に続く
ソース:MSN産経ニュース 2011.12.5 03:05
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