11/11/11 14:26:29.32
ドラマと真逆の魅力ある
根本敬さん 漫画家・エッセイスト
韓国と関わりだして、かれこれ20年以上になります。優しげでこじゃれた
韓流ドラマとは真逆の国だと感じています。あけすけで、ずさんでワイルド。
しかし人情がある。これが四半世紀、変わらぬ韓国の印象です。
韓国人は結構、家族で大衆キャバレーに行ったりもする。
日本のファミレス感覚で、お父さんが酒のんでホステスの太ももを触ってる
脇で、子供がはしゃぎ回ってる。地方のラブホテルに家族旅行で泊まりますからね。
おばあちゃんまでくっついてきて、部屋で自炊してたりする。その方が安いからって。
韓国人が、日本人にすぐに突きつける言葉が「日帝36年」。日本が朝鮮半島を
支配した足掛け36年のことです。いつだったか、韓国の知人が電話をかけてきて、
いきなり「日帝36年」とか言い出すから面倒臭いなと思ってたら、
「日本に行くので安い宿を取ってくれ」だって。
戦争の話しになると日本のインテリは「二度とあってはならない」なんて萎縮します。
それは考えなきゃいけないとは思いますが、枕詞みたいなもんですから、いちいち
贖罪意識なんか感じてたらきりがないですよ。
数年前、あてもなくソウルの下町をぶらぶらしてて、立ち話したアジョシ
(おじさん)に「安い宿ないか」と聞いたら「あるよ」と。で、連れてかれたのが、
その人の自宅なの。親切と言うか、小遣いが欲しいわけ。最初の一泊5万円が5千円に
なり、最後は1500円。台所で寝て行け、と。そこで「日帝36年」なんて絶対に
言わないし、カモだと見れば「日本人は何も悪いことしてない」とか平気で言い出しますからね。
韓国は、恨みを希望の原動力とする国。よくいう「恨(ハン)」とはそのことです。
でもそれだけじゃ重いから「ケンチャナヨ」(ノープロブレム)も潤滑油としてある。
ケンチャナヨはその場しのぎの合理主義で、あの国の気質をよく表しています。
ただ、韓国人って、そういうのを面白がられるのが、すごく嫌なわけ。
大衆音楽のポンチャック・ディスコなんて、道端にしゃがんでネギ売ってるような
アジュマ(おばちゃん)たちには、すごい人気ですけど、公には無いものとされてますから。
ドラマやKポップは、韓国人がこうありたい、ウリナラ(我が国)をこう見て欲しい
という希望を描いたものです。韓流ブームは、それがリアルな韓国だという誤解を、
日本人が進んで引き受けることで成り立ってる。そこで「実像とドラマは違う」なんて
絶対に言わないですから。ましてやお金が絡めば。
韓流ブームになにか言うつもりはないけど、自分が惹かれる韓国とは別のもの。
あけすけでずさんでどうしようもない、すべてを肯定しての愛すべき国なんです。
(聞き手・秋山惣一郎)
ソース:朝日新聞11月11日朝刊15ページ