11/10/26 07:48:50.78
野田佳彦首相には今こそ、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加を決断し、明言してもらいたい。
参加への反対論や慎重論は激しさを増している。それだけに、首相が自ら最前線に立って参加の意義とメリットを語り、疑問や
不安を払拭しなければ、混迷は深まるばかりだ。
貿易立国として繁栄していくことが日本の通商政策の根幹であり、国家ビジョンそのものでもある。TPP参加に、より多くの国民
の理解を得ることが最高指導者としての責務である。
問われているのは首相の覚悟である。首相は25日の「食と農林漁業の再生推進本部」で、「高いレベルの経済連携と農林
漁業再生の両立を図るため、政府を挙げて全力で取り組んでいかなければならない」と語った。
20日には「完全にルールが決まって入っていくと、むしろハードルが高い可能性がある」と述べている。「結論はまだ決まっていない」
といった以前の発言より交渉参加に前向きな姿勢を示しているが、腰はまだ定まっていない。11月12、13日に米ハワイで開かれる
アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で、米国などはTPPの大枠合意を目指す。日本に残された時間は少ない。
◆日米同盟が強化される
多くの関連業界の中でも全国農業協同組合中央会(JA全中)の反発は激しい。「参加すれば日本農業は壊滅する」と、
交渉参加反対を訴える「請願書」を衆参両院の国会議員356人を通じて提出した。民主党内でも「TPPを慎重に考える会」
への賛同者が200人に上っている。
こうした反対論に政府・与党は揺れている。前原誠司政調会長が慎重派への配慮から「交渉参加後の離脱もあり得る」と
発言した。中途半端な姿勢では、混乱が増すばかりだ。
TPP参加はアジア・太平洋地域の成長を取り込み、日本企業の国際競争力強化に役立つ。さらに日米同盟を強化する
意味合いもある。レアアース(希土類)の輸出制限など国際ルールを無視し、独善的な行動が目立つ中国に対する牽制(けんせい)
にもつながるからだ。中国が陰に陽に日本のTPP不参加を働きかけている意図がどこにあるかを考えるべきだ。
一方、参加しなければ、米国などへの輸出が関税の分だけ不利になる。製造業が生産拠点をTPP参加国に移せば、超円高
で加速する産業の空洞化に拍車がかかり、雇用が失われる懸念がある。
デメリットは米国と自由貿易協定(FTA)を締結した韓国と比べれば明らかだ。韓国の自動車は5年後に関税ゼロで米国に
輸出できるようになるが、日本車はトラックだと25%の関税がかかったままだ。韓国は米韓FTAをアピールし、日本の自動車メーカー
に韓国立地を呼びかけている。
◆自民党のぶれも問題だ
関税以外にも農業や医療、食の安全、労働など幅広い分野がTPPの対象になる。反対派が業界や国民の間に広げている
根拠のない不安をなくすべきだ。
医療分野に関し、医師会などは保険診療と自由診療を併用する混合診療の解禁で「国民皆保険制度が崩壊しかねない」
と主張するが、現交渉では混合診療や公的医療保険制度は議論の対象外だ。
遺伝子組み換え食品や食品添加物などの安全基準に消費者団体が懸念を示している点は、国内基準の優先を世界貿易
機関(WTO)ルールが認めている。「雇用が奪われる」と恐れる労働問題では、単純労働者の流入はもちろん、医師や弁護士
などの専門家も含め日本が主体的に規制できる。
金融、電気通信など、TPP内のルールが国際標準になりそうな分野もある。日本抜きでルールが決まる不利な状況を避ける
ためにも、早くルール作りに加わって国益を守った方が得策だ。
(中略)
自民党の谷垣禎一総裁は「協議しながら国益に適(かな)うかを判断すべきだ」と交渉参加に前向きだったが、異論が出ると
「慌てて入っていくのは外交的失敗だ」と軌道修正した。重要政策を国益を最優先する立場からなぜ決めようとしないのか。
民主、自民両党に問われているのはこのことだ。
ソース(MSN産経ニュース) URLリンク(sankei.jp.msn.com)