11/09/29 08:54:02.00
○ドル枯渇、韓国は本当に大丈夫か 編集委員 滝田洋一
新興国が火砕流のような資金流出と通貨安に見舞われている。資金繰り難に陥った
欧州などの金融機関が、投融資の回収に走っているからだ。ちょっと前まで資金流入と
通貨高に悩まされていたのが、ウソのようである。
ブラジル、ポーランド、インドネシア、そして韓国が9月下旬になって、相次いで自国通貨
買い・ドル売りの介入に踏み切った。韓国はこれまでウォン安の容認で輸出を後押しして
いる印象が強かった。その韓国までがウォン買い介入に乗り出したのが目を引く。
23日のソウル外国為替市場で、午前9時の取引開始直後から韓国当局はウォン買い
介入に出た。1ドル=1195ウォンで寄り付いたウォン相場は、介入を受けてわずか1分で
1150ウォンまで急反発したものの、市場のドル買い圧力は強い。介入額はこの日だけで
40億~50億ドルと、ソウル市場の取引高の半分にのぼったもよう、と韓国紙『朝鮮日報』は
伝える。市場では「韓国政府は1ドル=1200ウォンを防衛ラインにしている」と読んでいる
という。資本流出→ウォン安→一段の資本流出という悪循環を断とうと必死なのだ。
韓国の企画財政部は同日午前、大手輸出企業の財務担当役員を政府総合庁舎に集めた。
大手企業が輸出代金として得たドルを抱え込まず、市場に放出することを促した。ドル調達に
困った銀行や中堅・中小企業が資金を手当てできるようにするための苦肉の策である。
■アジア通貨危機、リーマン・ショックのトラウマ
韓国は国際通貨基金(IMF)管理に陥った1997年のアジア通貨危機ばかりでなく、
2008年のリーマン・ショック後にも、ドル資金の不足に直面した。ドル枯渇は韓国に
とってのトラウマなのである。
ドルが手に入らないなら、円やスイスフランで資金を調達するほかない。政府が音頭を
取ったこともあって、鉄鋼大手のポスコはさっそく円建て外債の発行の検討に入り、
同社幹部が近く来日するという。
韓国の外貨準備は今年8月末時点で3122億ドル。07年当時に比べて500億ドル増えた。
短期対外債務の1497億ドルの2倍にのぼっている。だから大丈夫。韓国当局はそう言って
きた。だが、いざ資金流出が始まれば浮足立った空気が広まる。
それもそのはず。リーマン・ショック後の米金融緩和局面で、ドル建ての貸し出しが
急拡大してきたことを、企業経営者や金融関係者はよく知っているからだ。
貸し出しや債券投資などによるドル建ての与信額は、韓国では11年1~3月期までの
2年間に35%も増加した。ドル建ての与信残高は1100億ドルと、韓国の全与信額の
10%にのぼる。そのドル資金が取れなくなる事態は、悪夢以外の何ものでもない。
■新興国で急増していたドル建て与信
韓国ばかりでない。過去2年間のドル建て与信残高の増加率は、各国で次のように
なっている。
中国=112%、インドネシア=69%、香港=62%、インド=38%、ブラジル=33%。
米金融緩和の追い風を受け11年1~3月期までの2年間に、米国外でのドル建て
投融資は1.1兆ドルも増加した。米国外におけるドル建ての与信残高は今や5.8兆ドルと、
米国を除く全世界の国内総生産(GDP)の12%にも達する。
グローバルな金融不安と景気後退懸念が広まり、これらの貸し出しや債券投資の
巻き戻しが起きている。欧州危機が米欧の金融機関を与信回収に走らせ、新興国の
ドル不足を巻き起こす。今回の欧州危機が世界的な信用収縮の引き金を引きつつ
あることに、目を凝らすべきだ。
□ソース:日経新聞 2011/9/29 7:00
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